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- 1 2020年市場動向予測:顧客体験戦略を読み解く5つのトレンド
2020年市場動向予測:顧客体験戦略を読み解く5つのトレンド
2020年1月17日
【POINT】
- 2020年のビジネス市場では、「顧客体験管理(CXM)の経済的効果」が明確になる
- CXへの取り組みに、確固としたビジネス上の根拠を持ち、経済的なメリットを達成することが求められる
- 「消費者が購入へと至るに足る体験」とはどのようなものなのか、理解すべき時になる
2020年のビジネス市場動向について語るとき、優れた顧客体験(CX)が経営に戦略的な価値をもたらすということに、異論を唱える人はいないだろう。
しかしながら、顧客体験がビジネスの成功に不可欠であるとの認識を持つことと、有意な成果を達成できるかどうかは、全く別物である。米調査会社フォレスターリサーチのレポート、「2020年の顧客体験(CX)に関する予測」によると、2020年には、顧客体験を第一に考え、その利点を売上げから純益にまで反映できる企業と、そうではない企業の違いがはっきりしてくるという。顧客体験施策のROIを証明できる者が利益を勝ち取り、体験を利益に結びつけられない者は職を失うことになる、とフォレスターは予測する。不透明な経済情勢が続くなか、「顧客体験のマネタイズ、という競争ルールが、勝ち組企業と残念な状況に陥る企業の明暗を分けるだろう」とレポートの著者らは警告している。
2020年は、「顧客体験管理(CXM)の経済的効果」が明確になる年

フォレスターのCXリサーチディレクター、ハーレー マニング氏は、以下のように述べている。
「顧客体験の改善に非常に熱心な人から、顧客体験管理(CXM)という概念が抜け落ちていることが多い。顧客を大切に扱うべきという考えは当たり前すぎて、“言わずと知れたこと”のように思えるのだろう」
しかし、これは“言わずと知れたこと”ではないとマニング氏は言う。
「CEOは株価の心配、CFOは限られた予算の使い道に気をとられ、マーケティングのトップでさえ、『従来のマーケティング戦略がそれなりに結果を出しているのに、よくわからないが流行っているらしい顧客体験管理とやらに予算を使うべきなのか?』と思案しているのが現実だ」
CXは、企業が市場シェアを勝ち取り、急激に変容する市場で顧客を保持できるが故に重要なのである。マニング氏は言う。
「顧客体験は金なり。収益に関わるからこそ、企業はCXを重視すべきだ」
この「CXが収益をもたらす」という事実が、フォレスターの2020年CX予測の背景になっている。以下に詳しく5つのトレンド予測を見ていこう。
2020年の市場予測と CXトレンド(1): CX実務担当者の4人に1人は職を失う

怖い話ではあるが、認識が必要なことだろう。マニング氏はこう指摘する。
「すでにこの数字は現実のものとなりつつあり、しかも加速傾向にある」
企業の経営幹部は実務者に、CXから定量的なビジネス価値を引き出すよう要求している。顧客体験の改善を収益またはコストの削減に結びつけられない実務者は、職を失うことになるだろう。鳴り物入りで就任したCMOであろうと、成果を出せなければあっさり切られるのと同じことだ。このトレンドは、特にB2B企業と金融サービス業界で顕著になるとフォレスターは予測している。失職の憂き目を見たくないCXリーダーは、カスタマージャーニー管理を徹底し、複数の層でビジネス成果を計測できる戦略を編み出さなければならない。
2020年の市場予測とCXトレンド(2): CX幹部職の数は少なくとも25%増加する

これは、上のトレンド予測1と矛盾するように見えるかもしれないが、そうではない。CXを統括する幹部職の数は、2014年から1,100%と爆発的に増えている。企業は、CXの経済的なメリットを熟知している指導者を血眼で探している。よそで失職した人材はお呼びではなく、競合からの引き抜きや、自社内での抜擢がメインになるとフォレスターでは予測している。
「CX経済効果の実現は、顧客体験の改善が仕事に大きく関わっている者にとって死活問題である」とマニング氏は述べる。
「CXへの取り組みに確固としたビジネス上の根拠があり、経済的なメリットを達成できる人材にとって、今後のキャリアの見通しはかなり明るい。しかしこれを達成できなければ、この分野で雇ってくれる企業はなくなるだろう」
2020年の市場予測とトレンド(3): 25%の企業が消費行動の促進に「ダークパターン」を使用する

「ダークパターン」とは、消費者にトリックを仕掛け、特に欲しいわけではないものを買わせる手口を指す。例えば、後から解約しにくいプレミアムプランなどがこれにあたるが、こうしたダークパターンの使用が増加している。プリンストン大学の最近の研究によると、大手eコマースサイトの10%以上がこの手口を使用しているという。CXデザインの専門家は、コンバージョン率最適化のプレッシャーに直面しており、あらゆるコマースサイトでダークパターンの採用が激増するとフォレスターは予測している。
しかし、これは大きな間違いであるとマニング氏は指摘する。消費者の反発を招くからだ。また大手テクノロジー企業は消費者を守るツールを投入し、法規制の動きも発生するだろう。
「短期的には、ダークパターンから成果は出る。消費者を騙して収益につながる行動を取らせることは可能だ」とマニング氏は言う。「しかし、長期的にみれば、会社の評判に傷がつくことになる。ダークパターンには手を出すな、というのが我々のアドバイスだ」。
2020年の市場予測とトレンド(4): 35%の企業がカスタマーサービス担当者向けのボットに投資する

AIボットの初期ユースケースとして、カスタマーサービスでの導入が始まっている。CX改善に最も大きく貢献できるのが、カスタマーサービスの向上だ。調査/コンサルティング会社のテムキングループが実施した2018年の調査によると、CXにおける中程度の改善が、年収10億ドル規模の企業において、3年間で平均8億2300万ドルの増収をもたらしたという。
通常、カスタマーサービスに対する顧客の態度は、「こちらの時間を取らせずに、すべての問題を今すぐ解決してくれ」というものだ。では、コールセンターでの体験を改善するにはどうしたらよいのか? ここで、カスタマーサービス担当者のレベルアップにテクノロジーを活用できる、とマニング氏。スタッフの顧客対応作業を助け、顧客が共感する言葉をかけるタイミングを知らせるなど、「アドバイスのためのボット」開発が進むだろう。
2020年 の市場予測とトレンド(5): 25%の企業は、社会的課題への対応を怠り収益の1%以上を失う

2019年にフォレスターが行なった極めて詳細なテクノグラフィー調査によると、米国における41%の消費者は、自らの政治的、社会的、倫理的な価値観を反映するブランドから買い物をしたいと考えているという。これは大きな発見であるとマニング氏は言う。
ただし、同氏は次のように付け加えている。
「企業はすべからく、ありもしない社会的信念を唐突に宣言すべき、と言っているのではない。我々が言いたいのは、多くの消費者は確固とした価値観を持ち、これが競合ブランドに客を取られる理由になり得ると理解すべき、ということだ」
消費者の決断は価値観に大きく影響される傾向にあり、人々は自分の信念に合致するブランドを選び、そうでないブランドは避けるようになる。この動向にいちはやく対応しているブランドもあれば、無視しても大丈夫と考えているブランドもある。2020年には、価値観ベースで動く消費者の客離れに泣く企業も出現するだろうと、フォレスターは予測している。
「我々は、このトレンドに破壊的な影響力があるとは見ていない」とマニング氏は言う。ただ、出遅れた企業があとで慌てて社会派ぶった行動を起こしても、消費者には嘲笑されるだろう。賢いCXリーダーは、自社の顧客が重んじる社会的課題に対し、率先してブランドの特色に根ざしたアクションを起こしている。
2020年は、真に優れた顧客体験、すなわち「消費者が購入へと至るに足る体験」とはどのようなものなのか、理解すべき時になるだろう。
「そこを理解したら、あとは実践あるのみ。ビジネスケースの確立を怠ってはならない。また、(ダークパターンのような)安易な手口に頼っていると、後で痛い目を見ることになるだろう」(マニング氏)
UNITE編集部
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企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。