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- 1 購買行動調査から見えた特性:B2B/B2Cともに見直すべきカスタマージャーニー観
購買行動調査から見えた特性:B2B/B2Cともに見直すべきカスタマージャーニー観
2020年1月27日
【POINT】
- 企業と顧客のつながりの過程であるカスタマージャーニーを、顧客にとってよい体験になるよう整えると、双方の利益となる
- 顧客の行動は非合理的に見えるが、自律的に判断しようとする人の感情とコンテクストが行動を左右している
- 顧客行動に対する観点を顧客起点に変え、感情とコンテクストを理解し、任意のチャネルで適切な対応を行う能力を備えるべき
カスタマージャーニーは、企業からみた顧客の態度の移り変わりだ。現在、多くの企業が顧客体験中心型ビジネスへの転換を模索するなか、カスタマージャーニーへの注目も高まっている。企業の担当者はみな、直接か間接かを問わず、カスタマージャーニーのどこかの段階にいる顧客と接することになる。また顧客と企業は、何らかのチャネルを通じて接触し、関与を持ち、その体験が顧客の行動につながる。チャネルは多様な選択肢が存在するが、顧客は自律的に行動するので、顧客の利用チャネルを企業は恣意的に制御できない。複雑化する顧客行動に悩まされている企業は、顧客の購買行動をどう捉え、対応すればよいのだろうか。
現代の企業の目的地は、購入の先にある

カスタマージャーニーについて、おさらいしておこう。古くから使われてきたモデルでは、顧客が商品やサービスを知り、興味を持ち、購入を検討し、購入するという流れで単純化される。大量生産した商品を大量の消費者に購入してもらうことを意図した戦略の下で用いられ、直線的な行動は、ファネル型で表現することができた。顧客を導くべき目的地は購入であり、上から下へと顧客を誘導する施策が有効とされた。

ところが現在、目的地は購入のその先、顧客との関係づくりになっている。購入は関係づくりの重要な転換点ではあるものの、過程の一部にすぎない。消費財なら初回購入に続く継続購入が重視され、家電製品のような耐久財の場合にも、製品を使用してくれている間の体験を管理することが大切になる。継続購入したり使用を続けたりする中で、良かれ悪しかれ顧客は何らかの「体験」を通じて、企業と関係をつなぐ。
この、顧客と企業のつながりの過程すべてが、旅になぞらえてカスタマージャーニーと呼ばれる。もはや直線的ではなく、複雑な動きを辿る。ただよい関係が続く間、つまり旅の過程では、顧客は利便性や安心感といった便益を、企業は収益や波及効果などの価値を得ることになる。顧客にとって「よい体験だ」と感じられるよう周到に整えられたカスタマージャーニーは、結果的に双方にとっての利益となるのだ。
カスタマージャーニー全体を通した顧客の判別は難しい

B2Cであれば一人ひとりの消費者のカスタマージャーニー、B2Bであれば取引先各社のカスタマージャーニーは、当然ながら個人、個社ごとに異なる。また商材の特性により異なるだろうが、企業にとっての顧客は、B2Cであれば本人だけでなく家族や友人など、B2Bであれば取引先企業内の購買担当者だけでなく上司や部下、関連部門や経営陣などが、意思決定に関与するかもしれない。いずれのビジネス形態においても、顧客の最小単位はひとりの「人」であり、それぞれの顧客のカスタマージャーニーを左右するのは、感情と状況(コンテクスト)だ。ときとして人の行動が非合理的に見えるのは、感情ゆえではないだろうか。

企業は、自社の商品やサービスを軸に、典型的な顧客が辿りそうなカスタマージャーニーを想定し、描くことはできる。ただ、顧客は描いたとおりの道筋を通るとは限らないし、企業の想定していなかった軌跡を描くかもしれない。
また企業は、チャネルの特性に応じて、ある状況の顧客が利用しそうなチャネルを想定することはできる。例えば、マス媒体広告やデジタル媒体広告はブランド想記を促す告知チャネルとして、ブランドサイトは商品の提供価値を実感させる交流チャネルとして、店舗は商品への出会いと買い物の接客チャネルとして、ソーシャルは拡散チャネルとして、B2Bサイトは購買担当者が仕様や効用を調査し問い合わせる情報提供チャネルやコンタクトチャネルとして、そしてB2B/B2CともECサイトを購買チャネルとして、それぞれのチャネルの目的に応じた接客方法をデザインするだろう。
しかしこれも同様に、企業の意図した通りに顧客がチャネルを使うとは限らない。顧客はその時点で都合の良い手段を選ぶだろう。知人のソーシャル投稿で認知し、ブランドサイトで仕様や効用を調査し、店舗で商品を確かめ、その場でスマホからECサイトを訪れるかもしれない。専門媒体サイトで認知し、展示会やセミナーで調査し、B2Bサイトのチャットで不明点を確認し、候補企業リストを作って取引先や調達先の選定段階に入るかもしれない。
B2B企業やB2C企業にとって、こうした個々の行動が、顧客の自律的な情報収集と判断の過程として見えたとしても、顧客がどのような感情を持って接触してきたのか、体験によって感情がどう動いたのかをつかむことは、容易なことではない。また、その顧客がどのようなカスタマージャーニーの軌跡を描いてきたのか、どのようなコンテクストに置かれているのかを判別するも、簡単ではない。
先へ進むために持つべき観点

顧客は企業の思い描いた通りには行動しないし、企業の想定したチャネルを素直に使うとも限らない。B2B企業にとってもB2C企業にとっても、複雑化したカスタマージャーニーの前では、有効な打ち手がないようにも思える。企業の想定するカスタマージャーニーを顧客が辿り、企業が用意したチャネルを顧客が利用する、という観点に立っていては、先へ進めない。しかしここに、突破口はある。カスタマージャーニーに対する観点、チャネルに対する観点を、企業起点から顧客起点へ、顧客体験中心型へと変えるのだ。
B2B企業にとっての購買担当者、B2C企業にとっての消費者は、これまで、共通点よりも相違点にばかり着目されてきた。しかしどちらの顧客にも共通する事項がある。それは、経済が成熟し、膨大な情報が流通する一方、判断材料を集めることが容易になったことで、顧客の行動は自律的になり、購買行動の主導権を顧客側が持つようになった、という現象だ。つまり、企業は顧客をコントロールできない。顧客が自らをコントロールするからだ。そのため、消費者と購買担当者のニーズや行動には、類似点が見られるようになってきた。B2B企業とB2C企業のマーケターへの調査によれば、52%の企業が、双方の顧客の行動パターンに類似性があると同意している。すなわち顧客行動を考えるときに大事なのは、自社のビジネスモデルよりも、顧客の行動パターンなのだ。そして、顧客行動を規定するのは感情とコンテクストである点は述べた通り。
では、顧客行動の観点を顧客起点、顧客体験中心型へと変える、とはどういうことだろうか。それは、一人ひとりがカスタマージャーニーのどの段階にあり、どのような感情やコンテクストなのかを把握し、任意のチャネルを通じて相手の期待に応える、という戦略だと言えよう。ただ、そのための戦術と実行は容易ではない。どのチャネルを通じて顧客が接してきても良いように備え、顧客の接触してきたその瞬間を的確に捉え、感情やコンテクストを推し量り、適切に対応する、という能力を備えなければならない。顧客体験管理(CXM)のためのテクノロジーは、まさにこの企業の課題のためにある。
ここに、B2C企業にとっての消費者、B2B企業にとっての購買担当者の、購買行動の実態を明らかにしたデータがある。調査会社であるフォレスターリサーチのコンサルティング部門、フォレスターコンサルティングのレポート『購買行動調査:B2B企業とB2C企業に共通する複雑化したカスタマージャーニーの課題と提言』だ。各業態において共通する顧客行動の特性を企業調査から解き明かしており、顧客体験中心型へと戦略と戦術を変えるための4つの提言を示している。
自社の顧客の購買行動を見直し、身につけるべき能力を探るためのヒントを、このレポートから探すことができるのではないだろうか。ぜひ参考にしてほしい。
UNITE編集部
関連資料
法人顧客と個人顧客、B2B顧客とB2C顧客では、購買行動やカスタマージャーニーは違うと理解されてきました。一方でデジタル化の進展により、両者の購買に至る過程は変わっています。調査からその現状を明らかにします。
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店舗だからこそ見える、顧客の物語を可視化するカスタマージャーニーマップづくり
作者 UNITE 編集部
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企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
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