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- 1 消費者のデジタル体験調査から読み解く、個人データ活用の可能性
消費者のデジタル体験調査から読み解く、個人データ活用の可能性
2020年2月13日
【POINT】
- 消費者の納得を得ない形でデータを用いた場合、適切な内容/タイミングでアプローチしても、消費者に不快感を与えてしまう可能性がある
- 消費者は、自主的に企業へ提供した情報や、自身の趣味、興味、関心などの情報を参照されることには好意的である
- 消費者が納得する形で顧客体験を管理することが、結局は消費者のデータを活用するうえで大切である
データを通じて一人ひとりの顧客すなわち「個客」を理解し、最適なタイミングで、最適なオファーを実現する。これは言うまでもなく、デジタル時代の顧客体験戦略の肝だ。「自分にとって最適な顧客体験を提供してほしい」という消費者の期待は高まる一方であり、企業はそれにこたえるべく、パーソナライズの精度を一層高めようと努力している。
ただ、ここで一つ忘れてはならないことがある。より良いサービスを提供したいというポジティブな意思で、「web閲覧履歴」や「購入履歴」、「属性情報」など、さまざまなデータを活用してパーソナライズの精度を高めたとしても、逆効果になる可能性があるのだ。顧客の心情を読み違えてしまえば、「この企業は自分のことを理解してくれている」という満足感ではなく、「なぜこんなにも私の情報を知っているのか」「なぜ突然おせっかいな提案をしてくるのか」などという不快感を与えてしまうかもしれない。
顧客の意に沿わないオファーにデータを用いることは、「不快感」につながる

ターゲティング広告が登場したころ、たった一度ECサイトのページを閲覧しただけの商品やサービスが、その後、別のサイトを閲覧していても広告バナーとして表示されることに、不安や不快感を抱くという声が聞かれた。消費者はそのような現象に慣れておらず、ターゲティング広告の仕組みが認知されていなかったため、「なぜ私の行動が知られてしまうのか」と感じる人が多かったためだ。閲覧した際には、確かに興味を持っていたかもしれない。しかし、同じ商品のバナー広告が何度も出てきて、「購入」へと誘導しようとする強引さに辟易する消費者は多かったようだ。
いまでこそ多くの消費者は、ターゲティング広告にはweb閲覧データが活用されていることを理解している。一方の広告主側も、バナーの掲出を適度な回数に調整することができる。またブランドサイトや企業アプリなどでも、しばしばターゲティングが行われていることに、消費者は気付いているかもしれない。ただ、「開示することを許容していない個人的な情報を勝手に使われた場合、消費者は不快に感じる」という教訓は、現在のパーソナライズ施策においても心に止めておく必要があるだろう。
注意しなければならないのは、消費者が納得しないような形でデータを用いることや、求めていない内容およびタイミングでオファーをすることなど。これらの行為は、立ち入りを望まない「精神的なパーソナルスペース」に踏み込み、不快感を与えてしまう可能性がある。
消費者の感情とデータ活用の関係値を探る

欧州のGDPRや2020年1月に米国カリフォルニア州で施行されたCCPAのように、「プライバシー」への関心は世界的に高まっている。一方で、「私のために用意された心地よい体験の提供」「面倒のない、便利なサービス」に対する顧客のニーズも高まりをみせている。
プライバシーの保護と、より良い体験への希求というニーズは、一見相反するように見える。企業は顧客のことを知れば知るほど、より効果的な体験を提供できるからだ。そのため企業は、消費者の同意を得たうえでデータを活用し、「心地よい」「嬉しい」と感じてもらえるような、データ活用への納得感のある顧客体験を提供することが求められている。過去とは比較にならないほど多くのデータをマーケティング施策に活用でき、一人ひとりをより深く知ることができるようになった。だからこそ、消費者にとって望ましいデータ活用について把握する必要があるのだ。
これを読み解くため、2019年12月にアドビと電通デジタルが発表した『消費者のデジタル体験に関するインサイトリサーチ』が参考になるだろう。このレポートでは、日本の男女20~69歳までの消費者1,000人を対象に、消費者が「どのような個人情報を、どのように参照されるなら、許容できるか」という基礎調査から、「消費者に喜ばれるマーケティングシナリオ」のあり方などが考察されている。
消費者の同意を得ていても、活用に際して留意しなければならない要素は多い。調査結果からは、それらが明らかにされている。細心の注意を払いながら、消費者の利益につなげるための方法論や、データ利用をポジティブにとらえてもらいながらコンバージョンを上げる因子とはどういうものか、などについて検討するときに有意義な知見を得ることができるだろう。
消費者のデジタル体験を向上し、より良い顧客体験を提供することは、自社の成長に不可欠だ。そのためにどのようにデータを活用し、どのような文脈で体験を提供するべきか、消費者のとらえ方を通して考えることができるだろう。詳しくは調査レポートを確かめてほしい。
UNITE編集部
関連資料
アドビと電通デジタルは、日本の消費者1,000人を対象として、デジタル体験の好みや企業への期待について調査しました。消費者がどのような体験なら好ましいと感じるか、企業が消費者のデータを利用するための前提となる条件は何かを明らかにしています。
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アドビがお手伝いします
企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。