これからのブランディングとは?識者に聞く最新事情とデジタルの果たす役割

2020年3月26日



デジタルの普及によって顧客と企業の関係が変化するなか、「ブランディング」も大きな変革を迎えている。かつて、市場全体に対する働きかけによって認知を獲得し、他社製品との差別化を図ることが、ブランディングの持つ大切な要素だった。しかし、それ以上に大切なこととして、認知の先に、ブランドへの共感を得るという命題が生まれている。

それはなぜか。そして、これからのブランディングはどうあるべきなのか。企業のブランディング支援に携わる株式会社博報堂コンサルティング パートナー 森門 教尊氏に、最新のブランディング事情を聞いた。

ブランディングを起点にビジネスの変革を図る

ブランディングを起点にビジネスの変革を図る

――森門さんは、20年近く企業のブランディング支援に携わっていらっしゃいます。近年大きく変わったと感じていることはありますか?

森門氏:「マーケティングに必要だからブランドを確立させなければならない」という考え方ではなく、「ブランディングを起点にビジネスの変革を図る」という意識が強くなってきていると感じます。

2000年代の「ブランド」は、他社と自社の違い、他社製品と自社製品との違い、などをアピールする差別化のための方法論でした。ですから、ブランディングの目的は、「より高額で」、「より多くを」、「より長い期間」、「売る」ことに置かれていました。「商品のブランディングが強かった時代」と言えますね。

当時のブランドは、企業から顧客へ一方的に送り届けられる「提供価値」という意味合いでした。

――それが変わったのは2010年くらいからでしょうか。

森門氏:2010年代に入ってから本格的にSNSが普及し、ブランディングに「顧客を巻きこむ」という発想が欠かせなくなりました。急にではなく徐々に変わってきた印象ですが、いまのブランディングの意味合いは、差別化ではなく「共創化」に移っています。顧客やパートナー企業のフィードバックを受けて、ブランドを一緒に作って行こうという考え方です。「提供価値」だけでなく、「体験価値」や「共創価値」が重視されるようになったのです。強いブランドを持つ企業ほど、共創化を進めているように感じます。

共創型ブランディングのゴールは「つながること」

共創型ブランディングのゴールは「つながること」

――ブランディングの共創化について、具体的に教えてください。

森門氏:商品やサービスをより良くアップデートする、という面が強調されることもありますが、それは本質ではありません。企業が提案したコンセプトに対し、その考え方に共鳴した顧客の反応を見ながら、一緒にブランドの世界観を作り上げていくことです。

たとえば飲料なら、どんなシーンでどんな人がどんな人と飲む世界観を持った商品なのかを、企業側が提案します。その上で、企業からの提案に対する顧客の反応を見ながら、そのブランドを熟成していく。そんなイメージです。

――共創化によって、何を得られるのでしょう。

森門氏:差別化のゴールは「販売」ですが、共創化のゴールは「顧客とつながり続けること」です。顧客がある単体商品を熱烈に支持してくれても、その商品の後継商品を同じく好きになってくれる保証はありません。共創化によって、商品を使ってもらいながら愛着を深めていく体験を重ねてもらうことで、最終的にはその世界観を共有する企業のファンになってもらうことができます。

――サブスクリプションビジネスとの親和性が高そうです。

森門氏:差別化は、顧客に所有してもらうことが前提ですから、「買ってもらう」ことが目標でした。そのため、マーケティングコストの大半をそこに投資して、サポートコストは抑えるべきものとして考えられます。

一方、共創型では、買ってもらった後の方が大切になります。「ゆるく」でもよいので、顧客との関係をいかに続けていくか。顧客の感情の動きを集める仕組みに力を入れるとともに、サポートを、顧客体験を高める重点的な強化ポイントとするべきでしょう。サブスクリプション企業では、「カスタマーサクセス部門」を創設する動きも一般化してきました。

顧客の変化をデジタルでつかみとる

顧客の変化をデジタルでつかみとる

――その中でデジタルの果たす役割とは何でしょうか? 

森門氏:最大の成果は、顧客の態度が変わるポイントをつかむのが、デジタルなら極めて容易なことです。顧客がブランドを知り、購入意欲を高め、実際に購入して使い始めて、ファンになっていく、という課程をカスタマージャーニーとしたときに、ジャーニーマップ上のさまざまなポイントを移動する顧客行動の大半は、デジタルで把握できるようになりました。具体的にはプライベートDMPなどの顧客データ基盤を構築し、そこを起点に顧客一人ひとりに最適な対応をしていくことになります。

――おっしゃるとおり、顧客データ基盤を軸にパーソナライズを実現したいと考えている企業は数多くあります。その考え方と、1つの世界観を市場全体に展開するブランディングとの間でズレは発生しませんか。

森門氏:企業側で確立させたブランドを顧客に投げかける手法は、通用しなくなってきています。ブランドを表現するコンテンツに共鳴した人が、世界観を構成する第一の集団になり、彼らとブランドを共創していく。そして、第二、第三のファン層が構成されていくことが理想です。顧客の想いをくみ取ることが上手な組織は、その仕組みをうまくデジタルの世界へと展開できている印象を受けます。

近年、外資系企業を中心に、そうした強いブランド力を持つ企業が台頭してきています。一方、それらの企業の攻勢に押されながらも、長年の真摯なモノづくりなどによって知名度を得ており、まだ「なんとなく選ばれている」国内企業も少ならからず存在します。そうした根雪のような世界観を持っている企業が今やるべきことは、「なんとなく選んでくれている」人たちのプールを作り、行動を観察することです。彼らがどんな人たちなのか特徴を見つけ、顧客を知ることで、次のステップにつなげていくことができるでしょう。

ブランドは「企業側がアピールするもの」ではなく、「顧客の感情の動きをつかみながら顧客と一緒に育てていくもの」になってきたということを前提に、デジタルをうまく使って顧客視点のブランディングという新しいやり方に取り組んでいただきたいです。

――ありがとうございました。

森門氏への取材によるアドビガイド「未来のブランディング:顧客から持続的に選ばれるための価値創造」では、共創型のブランディングのステップを具体的に解説している。理解を深めてほしい。

森門教尊氏

森門教尊氏
株式会社 博報堂コンサルティング

 

アクセンチュア株式会社を経て、株式会社博報堂に入社し、博報堂ブランドコンサルティングに参画。現在は株式会社 博報堂コンサルティングにてブランディング/事業戦略からインタラクティブ プロデュースまでのコンサルティング業務に従事している。

 

UNITE編集部


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