リアルタイムなジャーニー管理:顧客のマイクロモーメントをとらえたきめ細かな体験

2020年5月14日


顧客体験提供を重視している企業は、何らかの観点で顧客を区分けし、それぞれの集団の特性に応じた接客を心がけている。それぞれの集団を、顧客セグメントと呼ぶ。その目指す究極の姿は、一人ひとりに対して個別に対応すること、すなわち「ワントゥーワン」だ。ここまでの粒度に近づけようとすればするほど、困難さは際立つ。だが、それを目指すことこそ、顧客体験への取り組みに欠かせない。短期的および中長期的な顧客との関係をいかにして保つべきか、すなわち「カスタマージャーニー管理戦略」をどのように描き、自社のデジタル変革としていかに推進すべきか。これこそ、COVID-19のもたらした渦中だけでなく、アフターコロナ、さらには今後10年を見据えたときに、企業が戦略的に取り組むべき重要課題だと言えるだろう。

カスタマージャーニー管理戦略のあり方

カスタマージャーニー管理戦略のあり方

顧客一人ひとりの行動は、企業の思惑とは必ずしも一致しない。その旅路は、一直線ではなく、複雑な経路をたどる。そのため、顧客のニーズにきめ細かく対応するのは、容易ではない。また、顧客は自発的に行動する一方で、常に合理的な判断をするとは限らず、かといって自社のことを常に考えてくれているとは限らない。だから、折りをみて企業側から多くの顧客へ働きかけること、すなわち従来のプロモーションやキャンペーン活動が、不要になる訳でもない。よって企業は、一括キャンペーン、ワントゥーワンのカスタマージャーニーの双方を、継ぎ目なく同時に追求しなければならない。企業起点と顧客起点、すなわちアウトバウンドとインバウンドの両立と整合性、集団から個人までの粒度への適応性を、追求することが求められるのだ。カスタマージャーニー管理戦略は、極めて複雑かつ困難なチャレンジのように思えるかもしれない。

アドビが見いだした戦略とJourney Orchestrationの価値

アドビが見いだした戦略とJourney Orchestrationの価値

顧客体験中心型のビジネスに取り組む企業や、それを支援するパートナー企業からの声を、アドビはイノベーションの源泉としている。そうした声からアドビは、カスタマージャーニー管理のあるべき姿について、ビジョンと戦略を練り上げた。その成果として、アドビの年次カンファレンスAdobe Summit 2020で発表したのが、Adobe Experience Platform Journey Orchestration(ジャーニー オーケストレーション)という新たなサービスだ。

エンゲージメント領域のテクノロジーとしてアドビは、2013年にNeolaneを、2018年にMarketoを買収し、それぞれクロスチャネルキャンペーン管理のAdobe CampaignマーケティングオートメーションのMarketo Engageとして、両アプリケーションのイノベーションを進めてきた。2018年には、すべてのアプリケーションの共通基盤として新規開発された製品Adobe Experience Platform発表した(発表当時の名称はAdobe Cloud Platform)。そして2020年、さらなるイノベーションとして、Adobe Experience Platformのアプリケーションサービス層を発表するに至ったのだ。

Journey Orchestrationの特長
Journey Orchestrationの特長

Journey Orchestrationは、Adobe Experience Platformで稼働するアプリケーションサービスのひとつだ。「Adobe Experience Platformは、統合顧客プロファイルを収集、蓄積、活用する機能の集合であり、それらの機能を使いながらカスタマージャーニーを管理するサービスをJourney Orchestrationと呼ぶ」と考えるとわかりやすいかもしれない。これまでのAdobe Campaignは引き続き、企業起点の一括キャンペーン施策を得意とするアプリケーションと位置づけられる。一方Journey Orchestrationは、顧客起点のワントゥーワン施策を担うことになる。

顧客の「マイクロモーメント」をつかむ

顧客の「マイクロモーメント」をつかむ

顧客起点のワントゥーワン施策を実現するということは、繰り返しになるが、一人ひとりという粒度を対象に、一瞬の機会を捉えて行動を起こさなければならない。すなわち、ここぞという顧客の「マイクロモーメント」をつかみ、応える必要があるのだ。そのためには、様々な課題を乗り越えなければならない。主な課題を整理してみよう。

即時性:

顧客の感情に語りかけるのにもっとも適したタイミングとは、いつか。そのタイミングをきちんと捉え、かつ、すばやくそれに応えなければならない

文脈:

相手の置かれた状況の把握は、どうか。「起点」となるべき時点で、顧客はどのような状態にあり、何を期待しているのか。これは顧客の属性情報、すなわちデモグラフィック情報だけでは見えてこない。顧客の行動や反応などから、類推しなければならない

規模:

どれだけの人数を相手に、ワントゥーワン対応しなければならないか。一括キャンペーンの場合とは異なり、対応すべき顧客の数だけ施策も異なる。施策の準備工数も、システムの処理性能も格段に高まる

コンテンツ:

顧客に提案する、顧客からの要求に応えるとき、顧客には何らかのコンテンツを配信することになる。考え得るかぎりのあらゆる内容のコンテンツを、あらかじめ用意しておき、必要なときにすぐ取り出して、配信できなければならない

接点:

企業起点の施策では、顧客接点すなわちチャネルを選ぶのは企業側だ。そのチャネルを通じて情報が届き、それに顧客は応答するだろう。しかし顧客起点の場合、企業に選択権はない。企業は、顧客がコンタクトしてくるだろう任意のチャネルを監視し、応答できなければならない

他にも考慮すべき課題はあるだろうが、これだけでも大変なリストだ。もし、随時対応、一括発信、順次対応、定型訴求、特定接点といった、マイクロモーメントをとらえるための要素のどれかを除外すれば、これまでのテクノロジーでも対処できたかもしれない。しかしこれらすべてを満たすようなテクノロジーは、これまで存在しなかったと言って差し支えないだろう。そして、マイクロモーメントをつかむには、どの要素も外すことはできない。Journey Orchestrationは、こうしたこれまでの限界を取り払う。

顧客起点の施策、を標ぼうした概念として古くから知られているものに、イベントベースドマーケティング(EBM)がある。顧客の何らかの行動や状態変化を「イベント」と規定し、イベントの発生を起点として施策を実行するのが、EBMの基本的な考え方だ。一部では「イベント」を「ライフイベント」という粒度の大きなイベントに置き換えて語られることもあるが、本来はどのような些細な兆候すらイベントとなり得る。無論、人の心を覗くことは許されないので、イベントは蓋然性によって仮定することになる。ともあれ、EBMのような用語の定義は話者により異なるが、もっとも大事なことは、顧客の利便性、顧客の期待に資する施策を行うために、どのような兆候を捉えるべきか、という視点だ。

Journey Orchestrationが解決する課題

Journey Orchestrationが解決する課題

顧客起点の施策を実現する課題を、Journey Orchestrationがどのように解決するか見ていこう。

まず、何を起点としてアクションを始めるか。Journey Orchestrationでは、何らかの顧客の心の動きを「イベント」として扱い、イベントを起点として施策を展開する。イベントは、何らかのチャネルを通じて得られた兆候、と言える。例えば、商品サイトへの訪問、コールセンターへの問い合わせ、実店舗への訪問などだ。こうした、デジタルで表現される様々なイベントを起点として、即時性の高いエンゲージメントを行う。しかも、膨大な顧客の一人ひとりにも対応できるような拡張性も備えている。

Journey Orchestrationのジャーニー設計画面とイベントの例
Journey Orchestrationのジャーニー設計画面とイベントの例

では顧客の期待に応えるため、どのようにジャーニーをデザインし、エンゲージメントするのか。そこで顧客の文脈の把握に使われるのが、Adobe Experience Platformの統合顧客プロファイルだ。任意のデータソースからデータを収集し、一元的にアクセスできるよう管理する。そして文脈に応じて、カスタマージャーニーをデザインする。その際、あらかじめ準備しておいたコンテンツの中から適切なものを選び、届けるよう設計ことになる。これによってまさに、一人ひとりのためにパーソナライズされたエンゲージメントとなる。

そして顧客に対するアクションは、どう実行されるのか。顧客とのエンゲージメントは、何らかの顧客接点、つまりチャネルを通じてやり取りされる。APIファーストのアプローチを採用しているAdobe Experience Platformは、Journey Orchestrationのアクションについてもオープンだ。具体的には、顧客とのエンゲージメントを行う際、任意のチャネルに対して、RESTfulなAPIを通じて働きかけることができる。つまり、APIによって接続可能ならば、どのようなチャネルやデバイス、アプリケーションを通じてもエンゲージメントできるのだ。

Journey Orchestrationの構成要素
Journey Orchestrationの構成要素

加えてJourney Orchestration とAdobe Campaignと併用すれば、Adobe Campaignのカバーするチャネルを活用したアクションを実行できる。また、アウトバウンドの一括キャンペーン施策と、インバウンドのワントゥーワン施策を併用したとしても、顧客の反応は統合顧客プロファイルで一元管理されるので、ちぐはぐな体験を届けてしまうことも防げるだけでなく、より深く顧客を把握することにつながる。企業にとって最も大切な資産である顧客を、あらゆる施策の中心に置くことができる。

顧客起点、ワントゥーワン、パーソナライゼーション、EBM、そしてカスタマージャーニー管理。どれも普遍的な課題意識から構想され、古くから提唱されてきた概念であり、既にどこかで何らかの方法で取り組まれ、その時々の現実解が探られ、利用されてきた。しかし、普遍的であるが故に、目指すべき場所は果てしない。

とはいえ、今日得られる最新のテクノロジーで到達しうる、最善のカスタマージャーニー管理戦略を満たしうるのが、Adobe Experience Platform Journey Orchestrationだ。真には把握できない顧客の心のありように近づき、顧客の期待に最大限寄り添いたいとする取り組みを、アドビはカスタマージャーニー管理戦略として具現化した。顧客起点のビジネスを追求したい企業にとってJourney Orchestrationは、顧客のマイクロモーメントをつかもうとする旅路のよき伴侶となるだろう。

Adobe SUMMIT 2020

カスタマージャーニー管理についての動画配信は、こちらからご覧いただけます。

 

UNITE編集部


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