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- 1 CXMへの投資はどれほど企業に利益をもたらすのか?
CXMへの投資はどれほど企業に利益をもたらすのか?
2020年5月27日
【POINT】
- フォレスターの分析によると、CX Indexのスコアが1ポイント上昇すると、顧客一人当たりの年間収益額が最大104米ドル増加する
- 顧客体験に対する投資に含まれるすべての施策を、一元的に管理できるテクノロジーを採用し、それを適切に運用する必要がある
- ドラスティックな転換は大きなリスクを伴うが、それは企業が大きく成長するチャンスでもある
デジタルエコノミーにおける最大の環境変化は、消費者が主導権を持つようになったことと言えるだろう。かつてのように、企業からメッセージを一方的に届けようとしても、人々はそれを一歩引いた目で眺める。そして人々は、デジタルの世界にあふれる情報を参考に、自分にとって「最も良さそうだ」と判断したものを購入し、使用する。こうした流れが加速するに従い、企業側も市場に向き合うスタンスを変えてきた。顧客の感情に寄り添う、顧客中心型へとビジネスのあり方を転換。顧客体験管理(CXM)に取り組む企業も増えた。とはいえ、急速な変化はリスクを伴う。果たしてこの変革の方向性は、企業に利益をもたらすものなのだろうか。
顧客体験中心型ビジネスへの変革は実利をもたらす

調査会社のフォレスターは、顧客体験中心型ビジネスへの変革にポジティブな評価を下している。フォレスターには企業の顧客体験投資額を測定する独自の指標「CX Index」があり、深く分析すると興味深い結果を得られた。その分析によると、CX Indexのスコアが1ポイント上昇すると、顧客一人当たりの年間収益額が最大104米ドル増加することが明らかになったのだ。
具体的に、顧客体験に対する投資には、どのような内訳があるのだろう。より精緻なパーソナライズを可能にするコンテンツへの投資はそのひとつだ。より多くのCX施策を実施するためにマーケティング人員を増やすことも、顧客の感情をとらえるためのテクノロジーを調達することも、CXMへの投資となる。
しかし、それらの新しい施策の結果、膨大な量のコンテンツの管理が行き届かなくなる、組織の命令系統が複雑化する、といったことが起きては本末転倒だ。テクノロジーにしても、個別の施策でそれぞれのニーズにもとづいて闇雲に導入するわけにはいかない。個々の施策は顧客体験管理という傘の下に位置づけられるため、システムも個々の施策と全体との整合性を保ちながら、効率的にプロセスを整備できる構成を取る必要がある。
よってあるべき姿を描くとすれば、顧客体験に対する投資に含まれるすべての施策を、一人ひとりという単位を対象としつつ、迅速かつ大規模に展開することのできる、柔軟でありながら一枚岩のようなビジネステクノロジー基盤を具備すべきだろう。これまでのテクノロジーは社内業務効率化を牽引してきたが、いま求められているのは、顧客体験をベストなものにしようとする様々な施策を支援することだ。そのため、顧客を理解し、顧客の求める体験を任意の顧客接点で届けることを可能とするテクノロジー領域へと、的確にバランス良く投資することが望まれる。
コストだけ目に見えてしまうという問題

アドビの先進ユーザーは、顧客体験中心型ビジネスの実現とさらなる成熟度向上を希求し、顧客体験管理のためのテクノロジーとしてAdobe Experience Cloudを採用している。Adobe AnalyticsやAdobe Targetなど様々なアプリケーションを活用し、顧客ニーズを可視化するとともに、より良い顧客体験を提供しようとしている。これらアプリケーションを利用するためには、当然ながらライセンス費用がかかってくる。オンプレミスのシステムならば、ハードウェアやネットワークなどインフラの運用コストも定常的に発生し、運用における人的なコストも負担することになる。さらに細かな面を見ると、新たなテクノロジーを利用するにあたって施策担当者の教育もコストに含まれる。
それらをすべて積み上げていくと、コストの絶対値は相応のものとなる。とはいえ、かけたコスト以上の利益を得られていることが証明できたか、もしくは、将来その利益を享受できるようになると考えているが故に、彼らはこの分野に積極的に投資しているわけだ。
では、得られる利益にはどのようなものがあるのだろう。一般に、テクノロジーを採用する際には、そのROIを試算するとともに、何らかのKPIを設定し、想定どおりの利益もしくは便益を得られているかどうかをモニタリングすることになる。期待を上回る成果を得られると、プロジェクトは成功と見なされる。
ただ、この考え方は、既存のやり方を低コストに利用できるソリューションに置き換えたり、多少のコストをかけてもブラッシュアップしたりする際に有効なものだ。顧客体験中心型ビジネスへの変革という命題は、これまでの考え方を抜本的に改める施策だ。つまり、漸次的な改善への投資とイノベーションへの投資とでは、ROIの考え方も大きく異なる。そのため、これまでのやり方と比較してKPIを設定することは難しく、何をもってROIと言えるのか、という悩みも出てくるだろう。一方、コスト面は試算しやすい。そのため、経営層の中に、急速な変革に対するリスク意識に加え、明確化しやすいコストを目の前にして、不安を覚える人が出てくるのは当然のことかもしれない。
期待利益だけでなく便益も金銭に置き換えて価値を試算

そうした意思決定者の不安を乗り越えるためには、少なくとも顧客体験管理による目に見える利益や便益について、明快に説明する必要がある。たとえば、プラットフォームを一元化することで、少なくとも運用コストは逓減する。対顧客施策にスピード感をもって取り組めるようになることで、機会損失が減り、キャッシュフローの回転率が上がる。これらの便益を金額で示すことができれば、経営層にも納得してもらいやすくなるだろう。また、基盤運用をマネージドサービスに移管できれば、IT担当者の業務負担は大幅に減る。もちろん、そのROIも個別に出す必要はあるのだが、企業規模が大きくなればなるほど人件費は高くつく傾向にあり、運用を完全に外注することによって得られるコスト効果は高いと考えられる。
ドラスティックな転換には、大きなリスクも伴うだろう。しかし、それは企業が大きく成長するチャンスでもある。顧客体験中心型ビジネスが定着し、財務体質が強化されたという先進ユーザーも多い。フォレスターは、高いCX Indexを有すると見られるAdobe Experience Cloudの先進ユーザー9社を調査した。そして、ソフトウェアとそれに付随する投資と、投資によって得られた便益をすべて金銭価値に換算し、そのROIをはじき出した。『Adobe Experience Cloudの総合的な経済性調査』と題された本資料を参考に、経営層を説得する材料を探してほしい。
UNITE編集部
関連資料
企業は、CXM(顧客体験管理)に対する投資からどのようなビジネス上の便益を得ることができるでしょうか。フォレスターが行った、7つの業界9社のAdobe Experience Cloudユーザー企業を対象とした調査より、各社における総合的な経済性を明らかにします。
アドビがお手伝いします
企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。