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- 1 効果的な顧客体験管理の3要素:テクノロジー、パートナー、優れた人材
効果的な顧客体験管理の3要素:テクノロジー、パートナー、優れた人材
2020年5月13日
成功を収めている企業は、差別化された魅力的な顧客体験を提供して売上やロイヤルティを高めるため、顧客理解の重要性を認識している。そしてデジタル化が進む今求められているのは、顧客体験を大規模に管理するためのフレームワークだろう。
アドビとEconsultancyが最近実施した調査によると、顧客体験に関する先進企業では、データの効率的な管理と、優れた顧客体験の提供を妨げる可能性のある組織の構造的、文化的、技術的な障害の排除に取り組んでいることが明らかになった。
しかし、データをリアルタイムで収集、評価、分析することのできる適切な仕組みがなければ、顧客理解は覚束ないものにしかならない。
この仕組みの中軸となるのが「顧客データプラットフォーム(CDP)」である、とEconsultancyは指摘する。そして、企業がデジタル基盤を構築する際に検討すべき、3つの重要事項を提言している。具体的には、(1)CDPを中軸とした基盤の構築、(3)活発なパートナーエコシステムの活用を通じた新興テクノロジーの導入、(3)戦略を支える人材とプロセスを整えることだ。
検討すべき重要事項(1)
CDPを中軸に、信頼に足る「唯一の情報源」を構築する
アドビのビジネス開発兼戦略担当バイスプレジデントのAmit Ahujaは、顧客体験はマーケティング部門だけでなく、組織のより広い範囲にまたがっていることを認識することが重要であると指摘する。そのため企業に求められるのは、様々な顧客接点とそれぞれのデータポイントを統合することのできる基盤をしっかりと整備することだ。それこそが、カスタマージャーニー全体を明確に可視化し、単一の顧客像を獲得する唯一の方法だからだ。Ahujaは指摘する。
「効果的な顧客体験管理(CXM)を実現するためには、組織内のあらゆる顧客データをオープンなテクノロジー基盤に統合する必要があります。その基盤は、顧客体験の構築、測定、最適化、モバイル化を進めるために、組織内の様々なアプリケーションにデータを提供する必要があります。適切なテクノロジーを選択し、単一のエコシステムを構築できることが重要です」
ではそのテクノロジー基盤に求められる役目は何か。それは、顧客行動データ、トランザクションデータ、財務、運用、ERPシステムやCRMシステムといった1stパーティデータを、リアルタイムの顧客プロファイルに統合することだ。なぜなら、顧客の状況は常に変化するからである。また、顧客が必要とする情報をタイミングよく届けるためには、即時性、つまりリアルタイムであることが不可欠となる。
求められる緊密な統合
重要なのは、十分な機能を備え、主要アプリケーションと連携可能なCDPを基盤として、顧客体験管理(CXM)のためのテクノロジースタックを組み上げることだ。
「組織が顧客へのサービス提供に使用しているあらゆるアプリケーションを、緊密かつネイティブに統合し、それらが信頼すべき唯一の情報源をもとに機能するようにする必要があります」(Amit)
これは調査からも裏付けられている。Forrester Researchのレポートによると、購入担当者の78%が、「マーケティングツールと、CRMやERPシステムなどのマーケティング以外のツールを統合する機能を重視している」と回答し、74%はマーケティングツールの最も重要な機能として「統合機能」を挙げている。
ところがマーケティングテクノロジーを提供しているベンダーのうち、この要件を満たす統合機能を備えているものはわずかしかない。そのため、堅牢性の低いシステムやオープンシステムを使用している企業にとって、悩みの種となっている。
コンサルタントであり、Experianのマーケティング兼戦略担当バイスプレジデントを務めていたBrian D. Ward氏は、次のように述べている。
「この数年で、顧客体験(CX)に関するアプリケーションの数は急増しましたが、それらを既存のマーケティングテクノロジーに統合するのは困難で、費用がかかります。そのため、相互に連携して効果を発揮できることが実証されている基盤とアプリケーションを選択する動きが出始めています」
検討すべき重要事項(2)
パートナーエコシステムの利用
次にEconsultancyの挙げた重要事項は、基盤を提供するテクノロジープロバイダーが、他のサービス企業とパートナーシップを構築しているかどうかを確認すること、だという。パートナーエコシステムこそが、顧客企業のために最大限の価値を提供することへの取り組みの証になる、からだ。
CDPを基盤として標準化を進める際には、統合に関する問題を考慮するべきだが、実際に取り組んでいるマーケターは少ないと、アナリストは指摘している。また、マーケティング部門が、IT部門、あるいは顧客対応する社内の他部門と連携し、非常に複雑な状況に対応できるようにすることも重要だ。
「統合や実装の全体を社内の関係各部門が把握できるようにする役目の担い手として、最も適しているのはIT部門です」(Ahuja)
Forresterのバイスプレジデント兼主任アナリストであるJoe Stanhope氏によると、大手のプラットフォームベンダーは、実際に相互パートナーシップを結び、統合する方法を用意しているという。なぜなら、こうしたベンダーは、システムが連携することを企業が望んでいると認識しているからだ。
「私が担当したマーケティングテクノロジーベンダーのほとんどは、狭い世界でビジネスを展開しているわけではなく、現代では競争が前提だとしても、統合やパートナーシップが重要であることを理解しています」(Joe氏)
CMOやCIOは、そうした競合状況にとらわれることのない、プラットフォームベンダーのチャネルパートナーエコシステムを評価し、他社との連携を考慮して、自社のスタックに適した価値あるテクノロジーを特定する必要がある。
リアルタイムの意思決定を支えるAIとマシンラーニング
高度なターゲティングやパーソナライゼーションを大規模に実施するためには、背後であらゆるデータを分析し、何をするべきかを提示するAI(人工知能)やマシンラーニング(機械学習)がなければ実現できない。企業がこうした機能を利用すれば、顧客の興味や行動、購入履歴などの要因にもとづいて、個人の粒度でメッセージをパーソナライズできるようになる。たとえ、多数の人々にメッセージを発信する場合でも、それは変わらない。
同時に、AIは、企業がマーケティングキャンペーンを効率化および自動化し、クロスチャネルのコミュニケーションとコールセンターでのサポートを最適化する際にも役立つ、とアナリストは指摘する。
「実際、顧客体験管理を拡張するとなると、手動では管理できなくなります」(Ahuja)
それは、AIが、増大するデータ量や、求められる多様性と俊敏性への対応を支援するものの、それを起因として、マーケターの作業がより複雑になっているためだ。
「データ量は増加し、その速度はよりリアルタイムになり、多様化も進んでいます。今後は、インテリジェンスレイヤーか、AIおよびマシンラーニングのフレームワークを導入することが、顧客体験を最適化するための鍵を握ります」(Ahuja)
ForresterのStanhope氏もそれと同意見で、データの複雑性が高まるのに伴い、AIやマシンラーニングがマーテクスタックに不可欠な要素になる、と付け加えている。
「人間の力だけでは不十分です。私たちの脳にはそれほどの力はありません。現代の顧客体験で求められるレベルは、人間の認知能力を超えています。人間がそのような作業をこなしたり、その量のデータを理解して処理したりすることは、現実的に不可能です。そのためForresterでは、あらゆる企業にこのテクノロジーが普及すると予測しています。また、それによってマーケターの仕事が奪われ、解雇や失職につながることはないと考えています。これはマーケターを支援するテクノロジーなのです」(Joe氏)
検討すべき重要事項(3)
人材とプロセスの重要性
もちろん、マーテクはシンプルなものであるとは限らない。IT基盤、アプリケーション、ツールなど、使用方法を習得するのには時間がかかる。そうしたスキルを、多くのマーケターが既に備えているとも限らない。
そのため、CMOは、マーテクの導入を支援するために、適切な人材と配置し、教育を整え、確実なプロセスを整備する必要がありる。
こうした人材の一部は、必然的にIT部門に所属しているが、CMOの管轄下でもスムーズに仕事を進めることができる。重要なのは、顧客体験の専門家が、できるだけ多くの適性あるAIのスペシャリスト、データサイエンティスト、様々な技術に精通しているエンジニア、カスタマーサクセスのスペシャリスト、クラウドアーキテクトと連携できるようにすることだ。LinkedInの『2020 Emerging Jobs Report』では、これらの職務は特に需要が高いことがわかっており、それには正当な理由もある。どの職務も、マーケティング部門が最適な顧客体験を理解して提供するためには不可欠だからだ。その傾向はしばらく続くだろう。
「顧客体験の最終的な責任はCMOが負います。そのため、CMOがマーテクスタックの責任者となり、関係者を自らの組織内に配備することが妥当と言えるのです。しかし、複雑性が増し、たとえばサイバーセキュリティのような、同様に重要な優先事項も考慮するとなると、責任を巡る対立が生じるかもしれません。あるいは少なくとも、マーケティング部門、テクノロジー部門、情報部門の間で、責任を共有する形になるだろう、と考えています。顧客体験を最適化するために、テクノロジーの優先順位をすばやく調整し、その一方で消費者のデータやプライバシーを保護できる企業が、大きな優位性を発揮するでしょう」(Ward氏)
顧客体験の未来
将来の顧客のニーズに備えることは、容易ではない。一方で、自社の現在の能力を把握することは難しくないだろう。顧客体験が重視される時代において、顧客にリーチしてアピールできるかどうかは、緊密に統合された業界トップクラスのアプリケーションやツールを備えたCDPを、活用できるかどうかにかかっている。CDPには、AIやマシンラーニングなどの最新テクノロジーに対応できるだけの、柔軟性や俊敏性が求められる。また、それを支える強固なパートナーエコシステム、や社内のサポート体制も必要とされる。
まずは、明確で戦略的なプランニングをおこない、イノベーションに注力しよう。そうすれば、どのような企業でも、他社とは異なる、パーソナライズされた魅力的な顧客体験を創出できるはずだ。それによって顧客の関心を引き付け、売上やブランドのロイヤルティを高め、ビジネスを大きな成功を導くことに結びつくだろう。
関連資料
デジタル時代の機運を捉えて成長している先進企業は、顧客体験の質によって差別化を進めています。組織全体でこれを実現するには、全社を支えるシステム基盤の見直しが欠かせません。基盤をどう見直すべきでしょうか。
アドビがお手伝いします
企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。