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- 1 CIOに求められる競争戦略の根幹:デジタル戦略の要件とは
CIOに求められる競争戦略の根幹:デジタル戦略の要件とは
2020年6月4日
CIOが主導する情報戦略は、ときに企業競争力を左右する。Netflix、Amazonなどの有力なデジタル企業は、顧客にとって価値あるデジタル体験を提供することで、既存市場から自らを差別化し、ディスラプターとして確かな存在感を放っている。もちろん、こうしたディスラプションは、あらゆる市場において、同様に起こる可能性がある。米の放送局CNBCの調査によれば、現在のS&P500企業の40%が、今後10年以内に市場からの撤退を余儀なくされるという。その成否を分けるのがデジタル戦略だ。
では企業のデジタル戦略を担うCIOにとって、ディスラプターに立ち向かう、もしくはディスラプターとして市場に乗り込む上で、デジタル戦略の根幹とすべきものは何か。
顧客体験価値を高めるための、顧客体験中心型のデジタル基盤

結論を先に言えば、それは「デジタル基盤の優位性」にあると言えるだろう。
スマートフォンアプリ、モバイル、オムニチャネル、IoT、仮想現実など、顧客を取り巻くテクノロジー領域は拡大している。先進企業は、それらを適切に使い分けて顧客体験価値を高め、市場を席巻しようとしている。顧客がどのような場所、どのようなタイミングにあっても、一人ひとりに適切な体験を届ける仕組みの構築だ。そこでクローズアップされてきたのが、デジタルを最大限活用して顧客体験価値を高めるためのテクノロジープラットフォーム、すなわちデジタル基盤である。顧客体験中心型のデジタル基盤は、あらゆる情報基盤と連携し、顧客を軸に統合する存在になる。
テクノロジープラットフォームの重要性については、ここ十年以上議論されてきた。しかし現時点において、オンプレミスかクラウドかを問わず、企業が運用する数多くの情報基盤は、うまく連携が取れていないケースがほとんどだ。システムのサイロ化、すなわち“情報基盤の乱立”状態にある企業も多い。歴史ある大企業の中には、接続性に乏しいレガシーシステムをリプレイスできないばかりか、そのレガシーシステムが業務の根幹部分を担っているケースも見られる。そして、システム間連携がなされているとしても、それが顧客中心のデータモデルになっているかどうかには疑問符がつく。優れた顧客体験は、顧客を起点とした施策の展開から形成されるが、データモデルが顧客中心ではなくシステム中心のままでは、すなわち企業起点の施策しか展開できないことを意味する。
事業を顧客中心に据え、組織も顧客中心に作り変えると考えれば、デジタル基盤の位置づけも変わってくる。ガートナーの調査によれば、89%の企業が「今後、競争の主戦場は顧客体験になる」と回答している。CXM(顧客体験管理)を目指すにあたって、顧客情報を統合するデジタル基盤は極めて重要な地位を占めることになるだろう。
顧客体験中心型のデジタル基盤を持たないことによるリスク

これについては、逆の視点から考えてみた方がわかりすいかもしれない。もしデジタル基盤がなければ、もしくは複数の基盤が分断されていれば、どうなるだろうか。
顧客とのエンゲージメントを担うアプリケーションは、顧客を軸にして顧客データを参照することが困難なので、勘や経験にもとづいて、一括した対応を行うことになる。すると、ありきたりのオファー、特定の顧客以外には興味の無いオファーを、顧客にとってのタイミングとは無関係に送ることになり、相手を混乱させてしまう可能性もあるだろう。例えば、店舗システムとデジタルチャネルで異なるアプリケーションを利用していた場合に、店舗で購入済み商品なのに、メールで割引クーポンを送ってしまう、といった不適切な体験が考える。
情報基盤の面では、ビジネスニーズのピーク時に合わせて処理能力を柔軟にスケールできず、ビジネスチャンスを逃すかもしれない。同一のコンプライアンスとガバナンス基準をすべてのアプリケーションに求め、保有する顧客データを適切な内容に保つのも困難だろう。対応したいテクノロジー領域が増えても、その新たな領域で生まれた顧客体験を統合的に管理できないリスクを背負い続けてしまう。
デジタル基盤の選定には、「未来像を共有できること」が不可欠

一方、顧客中心のデータモデルとしてデジタル基盤が構築されていれば、これらのような問題をクリアすることができる。顧客体験中心型のデジタル基盤では、データモデルの中心は会計でも製造でも販売なく、顧客だ。顧客一人ひとりを個別に管理し、彼らとのコミュニケーション履歴や彼らが得てきた体験のすべてを、顧客にひも付けて管理する。また、もしアプリケーション側に機能が増え、利用したいチャネルやテクノロジー領域が増えても、基盤との連携によって容易に対応できる。
アドビのガイド『デジタル基盤再編の本質』には、デジタル基盤の設計と構築についても詳細に解説されている。デジタル基盤の概要をつかみ、実際に運用する姿を構想することができるだろう。ぜひ一読いただきたい。
UNITE編集部
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デジタル時代の機運を捉えて成長している先進企業は、顧客体験の質によって差別化を進めています。組織全体でこれを実現するには、全社を支えるシステム基盤の見直しが欠かせません。基盤をどう見直すべきでしょうか。
アドビがお手伝いします
企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。