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- 1 アンダーアーマー:膨大な量のデジタル資産を扱い、最適な相手に見せる方法
アンダーアーマー:膨大な量のデジタル資産を扱い、最適な相手に見せる方法
2020年8月5日
顧客とのコミュニケーションにおいて、ブランドストーリーを体現するコンテンツが果たす役割は大きくなる一方だ。そうしたコンテンツの配信はかつて、ブランドを訴求する一つのコンテンツを広告やチラシなどに載せ、どの顧客にも画一的なメッセージとして届ける姿が主流だった。対していまは、ブランドを表現するイメージやテキスト、動画などの多彩なコンテンツ群を、顧客一人ひとりに最適な見せ方で、任意のデバイスから適切に配信し、顧客とコミュニケーションを取ることが求められる。
B2C事業を見たとき、多くのブランドは、その傘の下に複数の商品カテゴリーを持ち、各カテゴリーにさまざまな商品をラインアップしている。いま求められているのは、そのブランドやカテゴリー、商品を、顧客ニーズに最適な形で提案し、顧客とコミュニケーションを取る過程を通じて、ブランドの虜になってもらおうとするアプローチだ。
たとえば、ある顧客が商品の「機能」に魅力を感じているとする。そのような顧客に最適な体験を届けるとするならば、商品の使い勝手を想起しやすくするため、利用場面を提案する写真や動画、素材や商品外観を確認できる3Dイメージといったコンテンツが良いかもしれない。別の顧客がブランド特有のデザインを好んでいるのならば、デザイナーのこだわりを紹介するコンテンツが刺さるだろう。コアなブランドのファンに対してならば、ブランドのコミュニティの一員になった喜びを感じさせるようなコンテンツもあるとよいだろう。こうして様々な観点から、コンテンツを通じてブランドの世界観を形成するのだ。
そして、画像や動画、ドキュメント、パンフレットなど、さまざまな形のコンテンツを、モバイルやPCなど、チャネルに適した形で届ける必要がある。そのため、管理すべきコンテンツは膨大な量となる。
米スポーツウェア大手のアンダーアーマーも、大量のコンテンツ管理に頭を悩ませていた企業の一つだ。同社はこれまでも(記事参照)、ブランドの世界観を表現するため、コンテンツ管理に力を入れてきた。同社はさらなる効率化を図るため、デジタル資産管理(DAM)システムを全面的にAdobe Experience Manager as a Cloud Serviceへ移行し、ワークフローをさらに改善するプロジェクトに着手。コンテンツを制作してから顧客に届けるまでの期間を大幅に短縮した。
12テラバイトのデジタル資産を管理

同社の製品アナリスト、ベン スナイダー(Ben Snyder)氏は、デジタル資産管理のポイントを次のように語る。
「マーケティング部門がDAM(デジタル資産管理)に求めるものは、優れた検索機能です。すべてのコンテンツを一元的に管理し、目的のものに素早くたどり着けるような仕組みが必要でした。一方でIT部門は、データガバナンスに気を配ります。ソフトウェアのアップグレードや運用時のカスタマイズ開発、およびそれに伴うテストが負担になっていました」(スナイダー氏)。
アンダーアーマーのデジタル資産は、複数のシステムを組み合わせて管理されている。たとえば、写真関連のパートナーからコンテンツが納品されると、採番およびタグ付けされてDAM環境に格納される。それらのデータはMDM(マスターデータ管理)プラットフォームを通じてPLMシステムなど外部システムと連携される。
一方、オフィシャルECストアである「ua.com」などで顧客向けに配信する際には、ダイナミックレンディション機能の仕組みを使う。すべてをタグ付けして管理することで、たとえアセットの数が膨大でも再利用しやすくなっているのだ。

運用はうまくいっており、デジタル資産を関係先と共有するために設けたポータルには、1日に約225人のアクティブユーザーがアクセス。50万件、12テラバイト以上のデータが管理され、毎月ダウンロードされるデータは約6万件。シーズンごとに切り替えるスタイルは7000を超える。
期限管理も自動化した。著名な写真家に撮影を依頼する場合や、イメージ写真にモデルを起用した場合など、使用期限を過ぎてコンテンツを使い続けてしまうと料金が発生する契約条件になることがある。「ついうっかり」は許されない。同社は2年契約を標準としており、コンテンツ登録時にアップロード日の2年後をコンテンツの有効期限として自動設定するようにしている。もちろん、契約次第でこの部分を変更することも可能だ。
Adobe Experience Manager as a Cloud Serviceへ移行し、さらなる改善へ

このように、既にうまく運用できているにもかかわらず、アンダーアーマーはさらなる改善を図り、Adobe Experience Manager as a Cloud Serviceへの移行を決断した。
「従来は、AWSを使用していました」とスナイダー氏。「巨大なAWSインスタンスでアセット処理量の変動に対応していたのですが、AWSインスタンスが十分に活用されていない時間が大部分を占めていました」と彼は語る。つまり、無駄にコストがかかっていたのだ。
Adobe Experience Manager as a Cloud Serviceにはマイクロサービスと呼ばれる仕組みがある。クラウドサービスのため、常に最新のマイクロサービスを利用できる。コンテンツ需要が大幅に増減しても、マイクロサービスを使用してプラットフォームの処理量を任意に制御できるため、前述のようなクラウドの時間利用の無駄も発生しない。
実際に移行してみると、ネットワーク品質も高まった。AWSでは物理的なサーバをある地域に置いていたため、地球の反対側からアップロード/ダウンロードする際に時間がかかっていた。二重化することもできるが、コストがほぼ倍増する上に、セキュリティリスクも高まる。グローバル企業である同社にとって、これは大きな問題だった。
「Adobe Experience Manager as a Cloud Serviceのネットワークは高速です。たとえば、450メガバイトのファイルのアップロード時間は、35秒から16秒に短縮されました」(スナイダー氏)
コンテンツは生データの状態で保存し、スマート切り抜きやスマートタグといったAdobe Senseiサービスを活用。InstagramやTwitterなどのソーシャルプラットフォーム向けの写真の切り抜きプロセスを自動化した。そのほか、ローリングコードデプロイメント機能によるダウンタイム回避や、クラウドで最新機能が常に適用されるため、IT部門による定期メンテナンスが不要になるなどのメリットも得られた。

「Adobe Experience Manager as a Cloud Service内でコンテンツに自動でタグ付けできるため、自動化されたワークフローでメタデータを割り当てられるようになります。ua.comやモバイルの担当者はSEOプロセスを加速できるとともに、パーソナライズされた体験をエンドユーザーにスムーズに届けられるようになりました」(スナイダー氏)
アンダーアーマーは、この仕組みを業務効率化とコンテンツ制作期間の短縮、および顧客体験の品質向上に役立てている。今後もAdobe Experience Manager as a Cloud Serviceを活用し、IT部門に負担をかけず、コンテンツ制作チームの生産性を高めていく。
UNITE編集部
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