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- 1 迅速なデジタル体験創出を加速するクラウドCMSの最新動向
迅速なデジタル体験創出を加速するクラウドCMSの最新動向
2020年8月18日
顧客を取り巻くデジタル体験は、webサイトや広告からモバイルアプリ、サイネージ、VR/AR、IoTまで、さまざまなチャネルによって彩られている。企業はこれらを顧客とのタッチポイントとして活用し、ブランドメッセージを提供している。古くから企業が提供してきたコーポレートサイトやブランドサイトは、ブランドの世界観をリッチに表現し、体験を通じて顧客とのつながりを作り出す場として使われてきた。
ただ、デジタル化の進展に伴い、デジタルチャネルの多様化、複雑化は留まることがない。webブラウザーのような人の介在を前提としたチャネルだけでなく、近年では「ヘッドレス」と呼ばれる、人が直接介在しない双方向のデジタルチャネルも、急速に立ち上がりつつある。まさに「いつでもどこへでも、しかも迅速にコンテンツを届けなければならない」時代が、既に到来している。複雑化するデジタルチャネルを相手に、すばやく顧客へメッセージを届けるため、ビジネスリーダーやマーケター、ITリーダーが取るべき戦略とは何だろうか。
デジタル体験構築におけるこれまでの課題

かつてwebサイトがデジタルチャネルの主流だった頃、サイト構築を効率化するテクノロジーとして、コンテンツ管理システム(CMS)ないしwebコンテンツ管理システム(WCMS)が活躍した。では、デジタルチャネルが多様化した今はどうだろうか。答えはシンプルで、やはりCMSが重要だ。ただ、かつてのCMSを思い浮かべてはいけない。現代のCMSは、以前のそれとは大きく様相が変わっている。コンテンツが中核であることには変わりないが、膨大なコンテンツを集約し、チャネルに応じて動的に組み立て、最適に配信する一連の処理を効率化してくれる包括的なコンテンツ基盤が、「モダンなCMS」なのだ。
モダンなCMSが扱うのは、伝統的なWWWの系譜を継ぐ従来型CMSの側面だけでなく、ヘッドレスCMSとしての側面も担う(関連記事)。膨大なコンテンツとチャネルの任意の組み合わせを扱うようになったいま、コンテンツ管理の中核たるCMSが扱うチャネルは「webサイト」だけではないが、ここでは特に「サイト」に着目していこう。
サイトの構築は、昔も今も、時間と労力を要する。省力化してくれるテクノロジーは進化したが、同じくテクノロジーの進展によってデジタルは複雑化もしている。しかし市場は、顧客は待ってはくれない。陳腐化してしまった体験は、見向きもされない。企業にとって競争相手は、国内の同業他社ではなく、いち早く「優れた顧客体験」を提供することによって、顧客の期待水準をより高いものとしてしまった、世界中の先進企業だ。彼らのスピード感と顧客体験の質という脅威に、企業は常にさらされているのだ。
ではなぜサイト構築には時間がかかるのか。サイトリニューアルのプロジェクトにおける、これまでの典型的なプロセスを考えてみよう。
- 要件定義:サイトで展開すべきコンテンツや施策は広範で、それに関わる各部門からの要件の整合性を取りながら、表現すべき要素などの仕様を確定させる
- コンテンツ制作:デザインやコンテンツは、代理店もしくは制作会社に依頼することが多い。社内と社外の人材がひとつの仮想チームとして協働し、デザイン、メッセージや視覚要素を制作する
- 基盤構築:テクノロジーパートナーやシステムインテグレーターが、コンテンツ基盤を開発、実装する
- 検証:基盤にコンテンツを実装し、リリースまでに入念なテストを実施する

これらはすべて不可欠なプロセスだ。要件確定までの期間は主に社内の工程であり、省くことはできない。また代理店や制作会社による制作工程にも、相応の期間が必要だ。納期を圧縮すれば、品質が下がり、コストは上がる可能性がある。コンテンツ基盤の開発にも一定の開発期間がかかるし、実装の検証も欠かせない。
では、プロジェクトを加速することは不可能なのだろうか?
サイトリリースを迅速化させる3つのアプローチ
サイト構築の迅速化は、テクノロジーによって解決することが可能だ。プロジェクト期間を短縮し、市場へとリリースするまでの時間を早めるためのアプローチは、以下の3つ。
(1)分業化:設計とデザインを並行アプローチで推進すること
(2)再帰化:定義したエクスペリエンスの再利用性を確保すること
(3)標準化:表現したい要素を共通化、部品化すること
具体的な流れは以下のようになる。

- 単一のコンテンツ基盤を構築し、サイトはその上に複数のコンポーネント(コンテンツを表現するための部品)を配置する形で表現する
- デザインはコンポーネントを作る作業に集約し、コンポーネントにコンテンツを載せる
- テクノロジーパートナーは、コンポーネント配置を規定するテンプレートを選択し、ユーザーのエクスペリエンスに合わせてコンポーネントを展開するルールを整備する
- こうした分業によって徐々に完成品を作り上げ、最後にテストを行う
ここでコンテンツ基盤の構成要素を見ておこう。コンテンツ基盤は、いくつかの層で構成される。下層はアプリケーションとシステムやネットワークで、クラウドが主流となってきた。中間層にコンポーネントが位置する。そして上層が我々の目にするサービス群で、企業にとってはコンテンツ配信機能を、顧客にとってはコンテンツの体験機能を司る。サイト構築とは、この各層をバランス良く組み上げ、完成させる過程であると言える。コンテンツはリリース後も日常的に更新することになるが、それはコンテンツ基盤の上層部分で作業することになる。一方、中間層や下層に相当する部分は、ひとたび完成したら、手を入れる頻度は限られる。とくに下層にクラウドを利用すれば、企業は日常的なシステム管理業務からは解放されることになる。全体的に、サイト構築とサイト運営のコストは大きく抑えられることになる。
表現したい要素を共通化、部品化すると、デザインの自由度が限定されるのでは? という懸念もあるかもしれない。リリース後に、要件定義の段階では判らなかった新たな要件が出てきて、重要性も高いなら、中間層にあたるコンポーネントの追加開発が発生することになる。また時間が経てば顧客ニーズも変わり、表現すべき要素も変わっていくだろう。しかし原則を置くことは、例外の発生を減らすことにつながる。むやみに追加開発が発生する状況を避け、全体的な工数を抑えることができるため、期間だけでなくコストの削減にもつながる。
デジタル体験構築におけるこれまでの課題

デジタル体験を構築する新たなアプローチを実現できるコンテンツ基盤が、Adobe Experience Manager as a Cloud Serviceだ。CMS/WCMS市場において長い間業界をリードしてきたテクノロジーであり、従来型CMSとヘッドレス型CMSの能力を兼ね備えた、ハイブリッドCMSだ。モバイルファーストのwebサイトはもちろん、SPA(モバイルアプリ)、スマートデバイスやコネクテッドカーのようなIoTデバイスに対するマイクロサービスにも柔軟に対応する。また、サイト構築コスト削減を図るコンポーネントの標準化などに加え、クラウドファーストの設計へと進化した。これによって、さらなるサイト構築期間の短縮を図ることができるようになったのだ。

とはいえ、ITリーダーやテクノロジーパートナーは、「実際に触ってみなければわからない」と考えるだろう。そこで、アドビはWKNDチュートリアルを公開した。これは、Adobe Experience Managerを初めて使用する開発者向けに設計されたチュートリアルだ。最新の標準と技術を使用してAdobe Experience Managerでサイトを実装する方法について、実践しながら学ぶことができる。コンポーネント、スタイルシステムなどが含まれており、豊富なコンポーネントを使った新規サイト開発の過程を確認できる。
サイト構築期間を短縮し、リリースを迅速化するためには、上記3つのアプローチが有効だ。Adobe Experience Manager as a Cloud Serviceを使えば、それが可能になる。WKNDチュートリアルも参考にしながら、強固なコンテンツ基盤を構築することができるだろう。
UNITE編集部
関連資料
多様化するデジタルチャネルに向け、適切なコンテンツを迅速に提供するには、最新のコンテンツ管理基盤の活用が欠かせません。
アドビがお手伝いします
企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。