米Audible:カスタマージャーニーを可視化し、体験提供を改善し続ける

2020年8月21日


カスタマージャーニーは、一本道ではない。

これまでブランド企業は、「顧客に感じてもらいたいこと」や「体験を通じて進んでもらいたい次のステップ」の簡略なモデルを想定し、それを前提にマーケティング戦略を立て、それを戦術に落とし込んで実行してきた。カスタマージャーニー便宜上、一本道ファネルとして捉えられ、その企業側都合によるストーリー沿って顧客が行動すると見なされてきたのだ。

しかし当然ながら、顧客は自由な意思にもとづいて自ら行動する。多くの顧客の行動は、企業側から見れば合理的ではなく、複雑で捉えにくいものだ。

顧客の行動を掴めなければ、顧客の期待に応えることはできず、失望した顧客はブランドから離れてしまう。その現実に目を向けなければならない。

そこで取り組むべきが、カスタマージャーニー可視化というプロセスだ。顧客がどのように行動したのかきちんと把握することで、仮説検証や戦術の見直しが容易になる。リアルタイム可視化できれば、施策を進行しながら調整を加えることもできるだろう。

 

カスタマージャーニー可視化に必要な3つのプロセス

カスタマージャーニー可視化に必要な3つのプロセス

では、カスタマージャーニー可視化するために、何をすべきか。

(1)まずは、「Who」。

対象を明確化することだ。カスタマージャーニー歩んでいる顧客を、行動の似ているグループ、すなわちセグメントに分け、実際の行動の様子を把握する。究極的にはパーソナライズし、「個」客として把握することが理想だが、初期段階ではグループとして掴めていればよいだろう。「ある特定の行動をした個人」のグループという捉え方をしても良い。

(2)次に、「Where」。

彼らが向かおうとしている場所を理解する。また、共通の目的地あったしても、そこにたどり着くまでに経るステップはさまざまだ。彼らがどのような経路で進もうとしているのか把握する。

(3)さらに、「How」。

顧客が自由意志で進む「目的地に至る経路」どのような方法で進むのかを、インタラクション通じて理解するのだ。

これらWho、Where、Howの3つを理解することで、顧客への理解は深まる。同時に、ブランド企業が顧客に提供している体験は顧客にとって魅力的か、オファーに顧客はメリットを感じてくれているかなどを、顧客の行動から推察することも可能だ。

見込み顧客のジャーニーを可視化し、潜在的な問題解決に取り組むAudible

見込み顧客のジャーニーを可視化し、潜在的な問題解決に取り組むAudible

カスタマージャーニー可視化より、目覚ましい効果を挙げた事例して、米Audibleを取り上げたい。Audibleは、オーディオブック配信、Amazon Kindleの音声読み上げを担っている企業だ。顧客数は全世界で数百万人。50万以上のタイトルを提供している。Adobe Analytics長年のユーザーであり、様々な機能を使いこなして、顧客獲得プロセス日々最適化している。

同社の顧客獲得プロセスは、無償の期間限定メンバーシップ登録から始まる。まずは無料で楽しんでもらい、満足してくれた顧客に有償版へと移行してもらう流れだ。集客はさまざまなチャネルを通して行い、それぞれを評価。最も注意して見ているのは、「無償体験版登録ページにたどり着いたが、登録には至らなかった見込み顧客」がどのような行動を取ったかついてだ。

フロー図(データは架空のもの)
フロー図(データは架空のもの)

Audibleのディレクター、ケビン マシューズ(Kevin Matthews)氏は話す。

「Adobe Analyticsのフロー分析機能を使えば、顧客がサイトを移動する流れを連続的につかむことができます。一方、離脱が起こるポイント知りたい場合は、フォールアウト分析を使ってイベント間相対的な離脱率を確認することができます」

フォールアウト図(データは架空のもの)
フォールアウト図(データは架空のもの)

フロー分析では、流入元なったチャネル、製品カテゴリー詳細情報閲覧など、どのような行動をどれだけの人たちが辿ったのかを、視覚的に把握することができる。この例では無償体験版ページにランディングした約19万人の見込み顧客のうち、2.4%が無償体験版登録ページ移動し、最終的に無償体験を申し込んだ割合は0.8%である、ということが把握できる。

バウンス率を見てみると、ランディングページから登録ページに移動するまでに98%が離脱し、申し込みにあたって68%が離脱している。「移動するためのリンクがわかりにくい」、「無償で使えることが伝わっていない」など、考えられる原因はいくつか出てきそうだ。Adobe Analyticsで視覚化できれば、これらの潜在的な問題について考えるきっかけを与えてくれる。

さらに、アドビのシニアプロダクトマネジャー、トラヴィス セービン(Travis Sabin)次のように話す。

「Adobe Analyticsはセグメント対し、ルールを付与した“コンテナ”として扱うことができ、コンテナ同士を比較することができます。これは、セグメントをより高度に扱いたい場合に有用です」。

たとえば、特定のセグメントに向けてメールマーケティング実施したい場合、ひとりの顧客や見込み顧客に対して、似たようなオファー届けてしまったり、別の切り口から何度も複数のオファーを届けてしまったりする可能性がある。別のプロジェクト別の目的のためにセグメント切った際に、9割を超える重複が起こることもあるためだ。しかし全社でAdobe Analyticsを使って、過去に使ったコンテナを保存していれば、それらと比較検討しながら、適切な対象に適切なオファーが届くよう対応することができる。

「Who、Where、Howの3つをつかむ際に、Whoはセグメント化コホート分析有効です。Whereはフロー分析で見てみると良いでしょう。Howを知るためには、離脱ツールが役に立ちます」(セービン)

これらの知見はAdobe Analytics活用の初歩的な内容だが、基本に立ち返ることで顧客分析をシンプルにとらえ直すことも、ときには必要だ。また、これから取り組み始めるいう方は「高度な分析ができるAdobe Analyticsの“使い方”」ではなく、「Adobe Analyticsを使って顧客の行動をつかむ方法とその目的および価値」という、本質的なところから学び始めて欲しい。

Audibleは長年のAdobe Analyticsユーザーであり、極めて高度に活用している企業だ。彼らのように、データを様々な角度から分析することで課題を発見し、改善に活かすことで、ビジネス価値を生み出し続けることができるだろう。

Adobe SUMMIT 2020

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UNITE編集部


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