リッチメディアを活用した、表現豊かな顧客体験を実現する3つのポイント

2020年9月11日


通信環境や技術の進化によって、私たちはいつどこにいても、表現豊かなコンテンツを享受できるようになった。過去にはネットワークやデバイスの制約から、テキストや静止画を中心にデータサイズを極力抑えたコンテンツの提供が主流であった。いまや音声や動画だけでなく、VR/ARなどの、インタラクティブでリッチなコンテンツ、すなわちリッチメディアが、さまざまなデジタルチャネルにあふれている。

デジタル写真のデータサイズ/数の変遷
デジタル写真のデータサイズ/数の変遷

その状況の一端がわかりやすく表れているのが上のグラフだ。過去90年のデジタル写真のデータサイズ/数の変遷を表したものだが、新しいテクノロジーの普及をきっかけにデータサイズ/数ともに拡大していることがわかる。特にソーシャルメディアが普及した頃と思われる、2012年から爆発的な増加が目を引く。このグラフによると、2020年現在は「動画による体験が期待される」状態から「動画による体験が当たり前となる」状態の過渡期と考えられ、今後の更なる爆発的な伸びが予想されている。

「私たちは、まさにデジタルコンテンツのルネッサンスを経験しているのです」。

アドビのシニアソフトウェアエンジニア、クリント グディ ナイス(Clint Goudie-Nice)は、現在の状況をこのように語る。

リッチメディアによる顧客体験が、顧客の満足度を左右する

リッチメディアによる顧客体験が、顧客の満足度を左右する

リッチメディアを活用すれば、顧客の目にするコンテンツに彩りを与え、豊かな表現力を持たせることができる。ブランド企業はより印象的に、顧客が求める体験を届けることが可能になった。たとえば、商品を3Dでさまざまな角度から比較検討できたり、動画からシームレスに商品を購入したりできれば、ショッピングの満足度も大きく向上する。

シームレスなショッピング体験
シームレスなショッピング体験

これは多くのブランド企業にとってチャンスであると同時に、大きな課題でもある。便利で判りやすく、心地よい体験に慣れた顧客の期待は高まるばかりなので、その期待に応える体験を提供するために、リッチメディアの活用を迫られているのだ。

顧客は、提供される体験が自分の期待に合ったものであることを期待している。そのため、ブランド企業は一人ひとりの期待をインサイトとして把握し、それに合わせたコンテンツを提供する必要がある。

さらに顧客は、オフィスや自宅ではPCで、外出先ではタブレットやスマートフォンなど、場所やデバイスを問わず、いつでも適切な体験が得られることを、“当然の体験”だと考えている。ブランド企業が用意すべき、コンテンツを構成するリッチメディアのデータ形式や形状、サイズなど、そのバリエーションは限りがない。

従来の制作フローにおける作業量や時間を考えれば、このように膨大なリッチメディアの制作と、そのアセット(画像や動画など、コンテンツを構成する要素)の管理は、実現不可能なことのようにも思えるだろう。しかし、コンテンツの市場への投入がわずかに遅れただけでも、ブランド認知や売上に大きな影響を及ぼす可能性がある。コンテンツをすばやく準備し、タイムリーに届けていくことは、避けて通ることのできない命題であると言える。

コンテンツのベロシティを高める3つのポイント

コンテンツのベロシティを高める3つのポイント

では、どのような解決策があるのか。

アドビのシニアプロダクトマーケター マックスウェル マベ (Maxwell Mabe)は、「コンテンツのベロシティ(すばやいコンテンツ制作/提供)」が求められていると語り、人間の工程を最小化した上でコンテンツのベロシティを高めるためには、以下の3つのポイントが重要だと話す。

(1)シンプルで重複のないワークフロー(作業工程)

(2)大量アセットの最適な管理

(3)各チャネル/デバイスへの適切な対応

最新のテクノロジーを活用すれば、この3つを実現することが可能だ。

(1)シンプルで重複のないワークフロー

以下は従来のワークフロー(上段 Legacy DAM)と、最新のテクノロジーを採用したAdobe Experience Manager Assetsのモダンなワークフロー(下段)を比較したものだ。

コンテンツ制作のワークフローの比較
コンテンツ制作のワークフローの比較

ここではコンテンツ制作のワークフローを、次のように整理している:

制作(CREATE)

レビュー/承認(COLABORATE)

管理(MANAGE)

配信(DELIVER)

従来のワークフローでは、各工程において非常に多くのツールが使用され、やりとりを複雑化させている。たとえば、アセットのやり取りにUSBストレージや電子メール、クラウドストレージなどを使い、校正や承認のレビューのために印刷する、といった具合だ。複数の担当者によるアセットの編集や承認作業をスピーディーに行うには、シンプルで重複のないワークフローが欠かせない。

Adobe Experience Managerの場合、クラウド上でワークフローが完結する。各工程におけるアセットのすべてがクラウド上に蓄積されるため、関係者間でのやり取りにさまざまなツールを使う必要はない。また、原本は常に集中管理されるため、作業の重複やバージョンずれも起こらない。

参加メンバーに作業を割り当て、更新されたアセットに対して必要なチームに確認/承認を促すなど、部署をまたいだ連携を促進。共同作業や承認、公開までを効率的に進めることができる。

(2)大量アセットの最適な管理

アセット管理(MANAGE)において重要かつ負担の大きい作業が、アセットの分類、すなわち「タグ付け」と呼ばれる工程だ。多様な用途に対応するため、クリエイターは大量のアセットを制作する。それらのアセットを、施策やチャネルに応じて適切なものをマーケターが選択し、コンテンツとして組み立てることで、優れた体験が生み出される。その大量のアセットを、マーケターに適切に活用してもらうためには、用途に合ったアセットをすぐ発見できる状態にしておかなければならない。この作業を効率化するのが、タグ付けだ。しかし、従来は制作者各自の判断に委ねられ、手動でタグ付けを行うことが多く、無駄な作業や、わかりにくいフレーズでのタグ付けを生み出していた。

この課題を解決するためにAdobe Experience Manager Assetsは、管理するすべてのアセットに対してタグを自動的かつスマートに付与する機能を備えている。どのアセットにどのようなタグを付与すべきかを判断するのは、人工知能(AI)とマシンラーニング(機械学習)のフレームワークであるAdobe Senseiだ。Adobe Senseiはアセットの内容を理解し、一般的なタグと企業固有のタグの双方から当該アセットに適切なタグを判断し、自動的に付与することができる。

(3)各チャネル/デバイスへの適切な対応

スマートクロップ機能
スマートクロップ機能

さらに、従来のフローで大きな課題となっていたのが、最適化(OPITIMISE)だ。

PC、スマートフォン、サイネージ、スマートウォッチなど、顧客の周りに存在する数多くのデバイスやチャネルには、独自の仕様がある。それぞれに適した表示を実現するためには、適切な形式/サイズ/解像度などのコンテンツを用意しなければならない。従来は、そうした多様なチャネルやデバイスに対応するため、個々の仕様に応じて手作業でアセットを加工し、膨大なバリエーションを用意しなければならなかった。

そこでAdobe Experience Manager Assetsには、人間を単純作業から解放する機能が搭載されている。デバイスに最適な色調の補正や画像の回転、動画の調整などを、配信時点で自動的に実行するのだ。手作業でアセットを加工する代わりに、あらかじめ保存しておいたアセットの原本から、あらゆるメディアに合わせた無数のバージョンを自動生成することができる。

動画のスマートクロップ機能
動画のスマートクロップ機能

PC用として制作した動画アセットをスマートフォンへ配信する際も、サイズの調整は自動だ。しかもAdobe Senseiが、動画の内容を理解し、もっとも訴求したい場所が中央に映るように動画を切り取ってくれる。港を出る船の様子を捉えた横長の動画を、縦長のスマートフォンで視聴しても、常に船が中央に収まるのだ。

よりクリエイティブな顧客体験提供を実現する

よりクリエイティブな顧客体験提供を実現する

リッチメディアによって、顧客により豊かな体験の提供が可能になったいま、大量のコンテンツ制作、大量のコンテンツ管理に忙殺されるジレンマを抱えたブランド企業は多い。しかし、その課題はテクノロジーによって解決することが可能だ。コンテンツ管理を軸にワークフローを見直し、自動化できる部分をすべて機械に任せることで、人間はクリエイティブな業務に十分な時間を割けるようになる。

Adobe Experience Manager Assetsはコンテンツのベロシティを実現可能にするアプリケーションだ。優れたコンテンツ管理を実現するだけでなく、他のAdobeソリューションと連携することで、その世界は広がっていく。

まずはぜひ、アセット管理の可能性を発見してみてほしい。

Adobe SUMMIT 2020

コンテンツ管理についての動画配信は、こちらからご覧いただけます。

UNITE編集部


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