D2Cを支えるコマース基盤に求められる3つの要件

2020年9月24日


D2C(Direct to Consumer、DTCとも)が近年改めて注目を集めている。モノ商材のメーカーが企画/製造した商品を、流通小売へ卸すかわりに、デジタルチャネルで直接消費者に販売するビジネスモデルだ。国内でも参入やブランドへの出資が相次いでおり、市場の成長が予測されている。

アパレル業界におけるSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)は、自社店舗を通じた直販というビジネスモデルだが、D2Cはデジタルを活用して直接顧客と結びつく。

店舗チャネルには商圏特性や立地、展示や在庫の面積といった制約要件などがあるが、顧客は新たな発見をし、商品を手に取り、試着などの実体験を通じて納得感を得ることができるというメリットがある。また、店員との対話から不明点を確認し、気付きも得られる。

一方でD2Cの利点は、デジタルを活用することで生まれるあらゆるメリットを享受しえる、ということにある。顧客は場所や時間に縛られることなく、ブランドから提供される情報をしっかり吟味することができるのだ。

そのD2Cを支えるのが、ECなどのコマース基盤だ。小売を介することなく、メーカーが直接顧客と対応することから、集客から接客、販売から事後の対応までを、デジタルを通じて担うことになる。では、D2Cに必要なコマース基盤の要件とは何だろうか。

コマース基盤の3つの要件

コマース基盤の3つの要件

1)顧客データを集約できるデータモデルを備えていること

D2Cの大きなメリットは、顧客のデータを集めやすいことだ。そこでコマース基盤には、あらゆる接触時点で発生しうる顧客データを集約するため、汎用性のあるデータモデルを備えていることが求められる。もしD2Cに参入しつつ自社店舗や既存流通チャネルも併存するなら、これにオフラインデータも加わる。データを一元的に扱うことで、一人ひとりの顧客を理解し、適切なコミュニケーションを図り、熱心なファン層の育成を目指すことができるのだ。

また、D2Cはブランドの世界観に共感した顧客との「共創」が重要となる。コミュニケーションを重ねるなかで、顧客が真に必要としている製品の要件を理解し、それを製品開発に反映していくことが欠かせない。そのとき、集めたデータを顧客ニーズの把握に活用しやすいかどうかが重要となる。

2)ブランドロイヤルティの強化を支援できること

D2Cの目的は、「商品を羅列して、購入してもらう」ことだけではない。顧客とのあらゆるやり取りを通じて、望ましい体験を生み出す場にすべきだ。そのためには、ブランドの姿勢などを通じて世界観を伝え、顧客にとっての利便性を高め、親近感を生み出すような豊かなデジタル表現が求められる。

たとえば、それぞれの顧客が関心を寄せている商品詳細や、状況に合わせたキャンペーンの提示など。商品の利用シーンや質感などを的確に伝える、動画や3Dイメージのようなリッチなコンテンツも、顧客の体験を向上させる。

3)パーソナライズできること

D2Cでは、顧客との長期的かつ深いつながりを形成していくことを目指す。「企業」と「顧客」の間にあった溝をデジタルでつなぐことで、顧客に「私はブランドの仲間である」「ブランドは、いつも私のために提案してくれている」と感じさせるような、パーソナルなコミュニケーションを構築する必要があるのだ。

コマース基盤は、顧客の購買履歴やコミュニケーション履歴はもちろん、外部データとの連携も図り、それらにもとづいて顧客一人ひとりを最適なコンテンツへと誘導することが求められる。そのためコマース基盤には、外部データ接続能力と、そうして集まった膨大なデータを賢く操るためのAI技術の活用が欠かせない。

D2C推進に貢献するコマース基盤 Adobe Commerce Cloud

顧客体験管理によって、未曽有の困難を乗り越え、ビジネスを将来へつなげる

こうした様々な要件を備えたコマース基盤は、個々の機能であれば市場にも散見されるが、その要件を高度に網羅し、本質的なニーズに応えられるものは極めて少ない。その数少ないテクノロジーの一つがAdobe Commerce Cloudの中核、Magento Commerceだ。これまでECツールとして世界的に多くのユーザーに活用されてきたMagento を、アドビはAdobe Experience Cloudへと統合し、Adobe Commerce Cloudとして提供した。

Magento Commerceは、長い歴史とグローバルな多数のユーザーを抱えるだけでなく、B2Bへの対応も加速させている。またAdobe Experience Cloudに統合されたことで、Adobe Analyticsによる分析、AIフレームワークのAdobe Senseiなどを活用できる統合的なコマース基盤へと大きく発展した。

これまでのイノベーションにより、コマース基盤に求められる全世界のニーズを組み込んでいる。ストアフロントの更新は、特段のIT知識がなくても可能で、スマホやタブレットにも対応。オーダー管理機能(OMS)をはじめ、在庫管理配送顧客アカウント管理決済連携など、不可欠なコマース機能はすべて搭載している。4000を超えるエクステンションが用意されているだけでなく、100%オープンソースのコードを容易にカスタマイズすることも可能だ。

Adobe Senseiを利用したパーソナライズは、レコメンデーションにおいて力を発揮。アイテムベース、ショッパーベース、類似商品、トレンド商品など、さまざまな角度から顧客に最適な提案を実施することが可能だ。すべてはMagento Commerceの管理画面から実行でき、豊富なKPIレポートも利用できる。

また、コンテンツ制作も効率化が可能だ。例えば、Adobe Stockの豊富なコンテンツを購入し、スムーズに活用することができる。Image GalleryからAdobe Stockにアクセスし、必要なコンテンツを選択するだけで購入処理が完結。すべてのイメージを自社制作するコストを考えれば、優良かつ豊富なコンテンツを常に選択肢に入れられる環境はありがたい。

さらに、3Dテクスチャ作成ツールであるAdobe Substanceとの連携は、表現力を格段に向上させるものになる。Adobe Substanceは、CADデータを取り込んで表面を彩色し、光の当たり具合や質感を含めてディテールまで鮮やかに表現できるツールだ。すでに2Dの分野では、写真ではなくCGを使うことが一般的になりつつあるが、それが3Dの世界でも実現する。

顧客体験に特化したさまざまな機能が、コンバージョン率/売り上げUPに繋げる

顧客体験に特化したさまざまな機能が、コンバージョン率/売り上げUPに繋げる

Magento Commerceは大規模なサイトでの実績も豊富だ。たとえばキヤノンオーストラリアは、Magento Commerceを採用して写真愛好家のために特別な体験を提供している。写真アンバサダーチームが各地で開催する有料、無料のイベントのチケットをCanon Storeから発券できるようにするなどの施策を実行し、コンバージョン率を7.5倍に上げた。

また、売り上げの向上にも役立てている。Magento Commerceの検索分析機能を活用し、顧客がカメラだけでなく、バッグや三脚、マイクロフォン、ブランド純正グッズなどを求めているというニーズを掴むことができた。そこで、各種ブランドと提携してアクセサリーを拡充。カメラとのセット販売などの施策も導入し、積極的なクロスセルおよびアップセル展開を実施している。

コマース基盤はD2Cの根幹となる存在である。ただ、D2Cにおける顧客中心型ビジネスモデルは、販売機能だけに注目するのではなく、顧客体験に特化したさまざまな機能が必要になる。リッチなコンテンツも豊富に用意しなければならない。Adobe Experience Cloudと完全に統合され、クリエイティブの作成からデジタルマーケティングまでをトータルに提供できるMagento Commerceは、D2Cにおいて大きな役割を果たすことになるだろう。

UNITE編集部


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