=65アジャイルフレームワークとは?概要と種類を解説
今日のハイブリッドな作業環境に対応しながら、不確実な経済状況の中でビジネス目標を達成し、売上を伸ばすためには、適切なプロジェクト管理フレームワークを選択することが不可欠です。プロジェクトマネージャーは、チームがより効率的かつ効果的に作業できるようにする方法を常に模索しています。既存のプロセスがチームのニーズに対応できていない場合、タスクをスムーズに進めることを困難に感じることでしょう。
多くの場合、プロジェクトの成功は、チームが採用するフレームワークに左右されます。成熟したプロジェクト管理アプローチを採用している企業の63%が、期限までにプロジェクトを完了しています。一方、洗練されていない手法のプロセスを採用している企業の成功率は、39%にとどまっています。
プロジェクト管理を成功させるベストプラクティスのひとつは、責任と透明性に重点を置き、担当者の責任範囲、タスクの要件、期限を明確にするのに役立つフレームワークやワークフローを導入することです。優れたフレームワークは、アジャイルと呼ばれる反復的なアプローチにもとづいています。
この記事では、プロジェクト管理にアジャイルフレームワークを採用する利点と、チームの好みやビジネス目標に応じて選択できる、主要なフレームワークの種類を解説します。
アジャイルフレームワークとは?
アジャイルフレームワークとは、コラボレーション、計画、管理、導入、テストといった一連のプロセスを体系化し、設定された期間内に特定の成果を達成するための、反復的なワークフローステージのことです。
正式にプロジェクト管理アプローチを採用している企業では、チームは責任を果たし、より効率的に目標を達成できる傾向にあります。実際、実績のあるプロジェクト管理プロセスを導入していない企業では、ビジネスリソースの11.4%を無駄にしています。また、企業の89%がプロジェクト管理計画を策定しているものの、効率的なプロジェクト管理プロセスを実現できていると考えているチームは、48%にとどまっています。
プロジェクト管理アプローチを強化する方法のひとつは、プロジェクトの方向性、成果物、期限など、チームメンバー全員のニーズに対応したアジャイルフレームワークを採用することです。Project Management Instituteは、フレームワークの種類を問わず、企業がプロセスを最適化できるようにするために、プロジェクト管理を5つのフェーズに分割しています。
- 立ち上げ:すべての要件を確認し、プロジェクトを開始します
- 計画:プロジェクトを管理しやすいタスクに分割するための戦略を策定します
- 実行:タスクを一つひとつ進めます
- 監視/制御:進捗状況を追跡し、作業の正確性を検証します
- クロージング:提示された仕様に従ってプロジェクト全体を完了します
各フェーズを理解することで、自社固有のニーズに最適なフレームワークを選択できます。段階的なプロセスと成果物の観点から見ると、アジャイルフレームワークは柔軟性が低い傾向にあります。しかし、その強みは、プロジェクト参加者のコミュニケーションを促進しながら、責任と役割を定義できることにあります。
今日のビジネスでは、スクラム、カンバン、エクストリームプログラミング(XP)、クリスタルなど、さまざまなアジャイルフレームワークが採用されています。これらのフレームワークには、いくつかの共通点と独自の強みがあります。自社のプロジェクト管理ニーズに最適なフレームワークを選定することが重要です。
スクラム
最もよく知られているアジャイルフレームワークのひとつであるスクラムは、ソフトウェア開発プロジェクトを管理するためのアプローチとして考案されました。その柔軟性に優れた反復的な構造は、社内の関係者に価値を提供することに重点を置いている、技術部門以外のプロジェクトにも対応できます。
スクラムフレームワークでは、プロジェクトを複数のスプリントに分割し、各スプリントをさらに小さいタスクに分割します。各タスクは、自己完結型で管理しやすい必要があります。これにより、各チームメンバーは、明確に定義された基準に従って作業を進めることができます。各スプリントは、各チームメンバーに割り当てられた、一連のタスクで構成されています。
大規模なプロジェクトは、複数のスプリントで構成される場合がありますが、一度にひとつのスプリントのみ取り組むことができます。スプリントは通常2週間から4週間続くため、チームは関係者に成果物を定期的に提供し、確認してもらうことができます。また、プロジェクトを効率的に進めながら、新たな課題や情報に応じて戦略をすばやく調整できます。
スクラムは、対応できるルールや要件の数が限られているため、柔軟性に優れたフレームワークであると言えます。これにより、過度に厳格なプロジェクト管理によって、チームがクリエイティビティを発揮できなくなる、といった事態を回避できます。また、ミーティングの種類や提供すべき成果物も少ないため、チームメンバーはワークフローの全体像を容易に把握できます。
スクラムフレームワークでは、チームメンバーが責任を持ってプロジェクトを効率よく進めるために必要となる、いくつかの主要な役割があります。これらの役割には、次のようなものがあります。
- スクラムマスター: ミーティングのスケジュール管理と進捗状況の追跡を通じて、チームがアジャイルフレームワークに従ってプロジェクトを予定どおりに進めることができるようにします
- プロダクトオーナー: 関係者やビジネス要件にもとづいて、スプリントイテレーションのタスクを調整します
- スクラムチーム: プロジェクトの参加者で構成されるチームです。通常、ソフトウェア開発に携わるUXデザイナーやエンジニアで構成され、各スプリントのタスクを完了する必要があります
スクラムフレームワークは、変化する顧客や市場のニーズに対応し、優れたビジネス成果を達成するために、プロジェクトを迅速かつ反復的に遂行できるアプローチを求めているチームに最適です。
カンバン
カンバンとは、日本の自動車製造システムをもとに考案されたプロジェクト管理システムです。チームメンバーは、指示カードに従ってプロジェクトを遂行します。今日のデジタル世界では、これらの指示カードは、プロジェクトのステータスや開発段階を視覚化するツールとして、ソフトウェアプログラムに表示されることが多いです。各カードには、タスクの要件とイニシアチブのオーナーが記載されているため、誰が何に取り組んでいるのかをすぐに把握できます。
プロジェクトタスクは、縦の列のワークフローを通過するカードで表されます。カードには、タスクの詳細、ステータス、期限、メモ、担当者など、さまざまな関連情報が記載されています。列には、タスクのプロダクションに適用されるさまざまなステータス(「未着手」、「進行中」、「レビュー中」など)が表示されます。アイテムは、完了に近づくと、ボードを左から右に移動します。
このアジャイルフレームワークにより、チームメンバー全員が、各ステージにあるアイテム数をリアルタイムで明確かつ視覚的に把握できるようになります。また、プロセスを合理化して問題を回避し、次の作業に向けて準備を整えることができます。このアプローチにより、プロジェクトマネージャーは、チームの誰よりもタスクを詳細に把握し、プロジェクトをスムーズに進めることができます。チームメンバーは、作業指示に従って、割り当てられたタスクを完了することに集中できるようになります。
カンバンフレームワークは、膨大なリクエストを視覚化し、継続的に発生するタスクを管理する必要があるチームに最適です。
エクストリームプログラミング(XP)
XPは、開発者が変化し続ける作業環境や顧客の要件に対応できるように考案されました。このアジャイルフレームワークもまた、反復的なアプローチを採用しています。しかし、スクラムとは対照的に、開発部門が優先順位付けとタスクの共有を管理し、成果物を完成できるようにすることを目的としています。そのため、開発者は自身のタスクを比較的自由に管理できます。また、トラッカー(通常は開発者)をひとり選出して、プロジェクトの指標と進捗状況を追跡し、チームの生産性を維持することができます。
XPでは、カンバンのように厳密な手順や列に従うのではなく、チームの行動と責任を決定するのに役立つ、一連の価値を基盤としています。これらの価値には、次のものがあります。
- コーディング: 開発者は、ダイアグラム作成とモデリングを通じて作業を概念化し、ペアを組んで特定のタスクに取り組みます
- 検証: 開発者は、バグのないコードを作成し、将来の技術的なエラーや障害を防ぐために、チーム間の品質保証(QA)を強化します
- 傾聴: 製品機能のコンセプトを開発者に直接提示し、開発者がそれらのコンセプトを実行可能な開発タスクに落とし込めるようにします
- 設計: チームメンバーは、プロジェクトインフラストラクチャを共同で構築して、システムの効率性を確保し、長期にわたって効果的に使用できるようにします
- フィードバック: 顧客および社内関係者からのフィードバックは、今後のプロジェクト作業を決定し、開発者がタスクを繰り返し実行しながら、スコープの変更に対応するのに役立ちます
- シンプル: 開発者は、将来の要件ではなく現在のニーズに焦点を当て、すぐに導入できるソリューションを開発する必要があります
XPフレームワークは、急速に変化するワークロードと優先順位に対応する必要がある、独立したソフトウェア開発チームと検証チームに最適です。
リーン
リーン手法は、プロジェクトの遅延につながる過剰なミーティングや非効率的なプロセス、チームの作業を妨げる問題など、プロジェクトから不要な手順や無駄を排除することで、作業効率を最大化するように設計されています。
この手法を効果的に実践するには、チームメンバーが自身の役割と責任を明確に把握する必要があります。プロジェクトマネージャーは、各メンバーの作業を厳格に管理しません。そのため、各メンバーは仕様に従って、自律的に作業を進める必要があります。これは、チームメンバーとプロジェクトマネージャー間の信頼関係の構築につながります。また、プロジェクトチームの効率性と生産性を向上させながら、全体的なプロジェクトコストとリードタイムを削減できます。
リーンフレームワークは、次の7つの主要原則にもとづいています。
- 無駄を排除する: 現在のプロジェクトを完了するために必要な作業のみをおこないます。これにより、現在のスコープ外の成果物に費やす時間とリソースを削減できます
- 学習を強化する: プロジェクトやチームメンバーのニーズに対応するために、チームメンバーによる現場での積極的な学びを促進し、スキルセットを向上できるようにします
- 決定を遅らせる: プロジェクトスコープが不明確な場合、決定をできる限り遅らせることで、無駄をなくし、柔軟に変更できるようになります
- 早く提供する: プロジェクトを迅速に進めることで、意思決定の遅延を回避し、関係者からのフィードバックを得る機会を増やすことができます。これにより、チームは顧客が現在必要としているものを提供できます
- チームに権限委譲する: 各チームメンバーは、プロジェクトの主要な要素をスケジュール、定義、管理して、作業を迅速に進めることができます
- 統一性を作りこむ: プロジェクトを開始する前に、技術要件と顧客のニーズに対応できているかどうかを徹底的に検証する必要があります
- 全体を把握する: パフォーマンスを最大化するために、各チームメンバーが個別に作業を進めるのではなく、チーム全体の連携と成果を評価するような仕組みを導入します
リーンフレームワークは、定期的な成果を上げ、顧客や関係者の要求の変化に迅速に対応する必要があるチームに最適です。
クリスタル
プロジェクトのプロセスと段階に重点を置く他のアジャイルフレームワークとは異なり、クリスタルでは、チームの規模と取り組むべきプロジェクトに応じて、人材とコミュニケーションをプロジェクトの推進要因として重視します。このフレームワークは、ステップバイステップのプロジェクト管理フレームワークの柔軟性を向上するために考案されました。
クリスタルでは、十分な時間を確保できるようにスケジュールを設定することで、定期的な見直しとコラボレーションを促進し、作業効率を高め、プロジェクトを順調に進めることができるようにします。適用されるフレームワークは、チームの規模に応じて異なります。フレームワークの種類は、次のとおりです。
- クリア:7人未満
- 黄色:7から20人
- オレンジ:20から40人
- 赤色:40から80人
- マルーン:80から200人
- ダイヤモンド/サファイア:200人以上
こうしたチーム規模による分類により、チームリーダーは、次の7つの原則にもとづいて、チームのワークフローを適切に管理できるようになります。
- 定期的なデリバリー: プロジェクトスコープと顧客のニーズに応じて、繰り返しリリースをおこなう必要があります。リリースの間隔は自由に設定できます
- 見直しと改善: クリスタルの優れた柔軟性により、チームメンバーは改善すべき点を特定し、プロセスをすばやく調整できます
- 一貫性のあるコミュニケーション: チームの規模に応じて、ミーティングや共同作業の環境を調整し、コラボレーションを促進することが重要です
- 個人のセキュリティ: 各チームメンバーは、長期にわたってプロセスを改善するために、継続的なコミュニケーションを通じて自身の意見を共有する必要があります
- 焦点の明確化: 明確に定義されたタスクと目標は、チームの各メンバーとグループがプロジェクトを実行可能なアイテムに分割し、成果物に対する顧客の期待に応えるのに役立ちます
- 専門家/ユーザーからのフィードバック: チームの誰もが定期的なフィードバックと質問への回答を得られるようにすることで、プロジェクトを予定どおりに進めることができます
- 技術的な問題への対処: チームメンバーは、プロジェクトの検証および計画段階でエラーに対処し、フィードバックを共有することが推奨されます
クリスタルフレームワークは、急速に変化する要件に柔軟に対応し、緊密なコラボレーションを促進したいチームに最適です。
アジャイルフレームワークに取り組む
適切なアジャイルフレームワークを導入することで、期限、予算、要件を遵守しながら、プロジェクトを円滑かつ効率的に実行できるようになります。適切なフレームワークは、プロジェクトの内容や成果物に応じて異なります。
チームに最適なものを選択するには、各フレームワークを比較し、プロジェクトとチームメンバーのニーズに対応した要素を備えているかどうかを判断しましょう。複数のフレームワークを組み合わせて使用することも可能です。どこから取り組むべきかわからない場合は、チームの規模、組織構造、顧客の要求、自社の価値観が、プロジェクト管理のニーズにどのように影響するのかを検討することから始めましょう。
次のステップに進む準備ができたら、プロジェクト管理ツールを導入しましょう。これにより、コラボレーションと透明性を念頭に置きながら、プロジェクトに不可欠なあらゆる役割を一元管理できます。
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