累積フローダイアグラム(CFD)は、アジャイル型のプロジェクト管理手法であるカンバン方式で使われる分析ツールです。チームに対してワークフローとプロジェクト全体の進捗を可視化して示します。CFDはチームがワークフローの安定性を監視し、ボトルネックをより正確に予測するのに役立ちます。
このフロー図は、作業がどのようにプロセスを流れていくかを示します。横軸(X軸)は時間を、縦軸(Y軸)は作業項目の数を表します。グラフ上の各色の帯は、ワークフローの特定のステージに対応しています。これらのステージには、たとえば以下が含まれます。
- 未開始
- 進行中
- 完了
累積フローダイアグラムはソフトウェア開発の現場で広く使われています。また、輸送などの他業界でも利用され、サイクルタイムの分析、仕掛かり作業(WIP)の上限管理、チームのスループット向上に活用されています。
累積フローダイアグラムは何を示すのか?
累積フローダイアグラムは、3つの主要な指標を可視化します。「ロック」と「閉じる」の説明は以下のとおりです。
- サイクルタイム: 各タスクを完了するまでにチームが要する総時間(開始から終了まで)です。CFDの利点のひとつは、ワークフローの最適化ポイントを示し、サイクルタイム短縮の可能性を明らかにできる点です。
- 仕掛かり作業(WIP): チームが特定の時点で実際に処理しているタスクの数です。チームの仕掛かり作業が多すぎたり少なすぎたりした場合、累積フローダイアグラム上のプロジェクトタイムラインにその非効率さが目に見える形で示されます。
- スループット: 一定期間内にチームが完了できるタスクの数です。これはチームの生産性を示す最終的な尺度であるため、CFDは努力とリソースをどう調整すればスループットが時間とともに向上するかを示してくれます。
この記事の内容:
CFDを活用するメリット
CFDはワークフローをより明確に可視化できるため、業務効率の向上やボトルネックの削減につながります。CFDを利用する主な利点は次のとおりです。
- ワークフローの可視化:ワークフローを明確に把握することで、データの傾向や潜在的な課題を早期に発見し、それを避けるためにプロセスを調整できます。
- アイデアの共有: CFDはアイデアやワークフローを関係者に伝える手段となり、プロセスの仕組みを理解してもらうのに役立ちます。
- リードタイムとサイクルタイムの測定: タスクが各ステージを移動するのにかかる時間を測定し、プロセスのどこが遅いのかを特定できます。
- ボトルネックの特定: CFDの帯の幅を明確にすることで、どのステージで作業が滞っているかを把握できます。これにより、チームはボトルネックの根本原因を特定し、対応できます。
- 正確な完了時期の予測: スループットラインやCFD全体の傾向を分析することで、プロジェクトの完了時期を正確に見積もれます。
- コラボレーションの強化: ビジュアル化により、全員が進行中の作業や潜在的なリスクを共有でき、協働を促進します。
- データに基づく意思決定: CFDは、データを根拠に議論を進め、意思決定を行うための助けになります。
- 課題の特定: CFDはタスク完了における不整合や非効率を明らかにします。たとえば、フロー図を使えば、タスクが想定以上に時間を要する原因となる箇所を特定できます。
- プロセスの標準化: CFDを利用することで、プロセスの標準化が進み、チームの効率と一貫した高品質な成果物を確保できます。
- WIPレベルの適正管理: CFDは仕掛かり作業の水準を監視し、それがキャパシティの範囲内に収まっているかを確認できます。
累積フローダイアグラムの主要構成要素
累積フローダイアグラムには4つの主要な構成要素があります。それは時間(X軸)、作業項目(Y軸)、ワークフローの状態、スループットラインです。それぞれがどのような役割を果たしているのかをもう少し詳しく見てみましょう。
- 時間(X軸): X軸は日、週、スプリントなどの時間を表します。これにより、作業の進み方を観察し、傾向やパターンを把握し、潜在的な遅延を見つけられます。
- 作業項目(Y軸): Y軸はタスクなど累積した作業項目数を示します。新しい項目がワークフローに追加されると、グラフが上昇し、作業の蓄積が明確に可視化されます。
- ワークフローの状態: 各ステージは色分けされた帯で表されます。各帯の幅は、そのステージにある作業項目やタスクの数を示します。広い帯は、ボトルネックや遅延の可能性が高いことを示唆します。
- スループットライン:「完了(Done)」の帯で強調されることもあり、タスクがどのくらいの速さで終わっているかを示します。右肩上がりの一貫した傾きは、安定した進捗と健全なワークフローを意味します。
累積フローダイアグラムの読み方
累積フローダイアグラムは、プロセスタイムラインのどの時点でもワークフローの各ステージのタスク数を明らかにします。タスクは縦軸に、プロセスタイムラインは横軸に表示されます。
異なる色の帯は、カンバンボード上にあるワークフローの各ステージを表しています。帯を見ることで、特定の時点でプロセスの各ステージにどれだけのタスクがあるかがわかります。
各帯の上端は各タスクがカンバンボードのそのステージに入った時点を、下端はそこから出た時点を示します。この2本の線の間隔が一定であれば、ワークフローは安定していることがわかります。
累積フローダイアグラムで注視すべき点。
- 平行な帯は、ワークフローが安定していることを示します。
- 広い帯は、ボトルネックになる可能性を示します。
- 狭い帯は、リソースが十分に活用されていない可能性を示します。
- 帯が下向きに傾くことはありません — エラーの発生を意味します。
グラフ下部の「Done(完了)」列は、各期間にチームが完了した作業を示します。2点間の帯の傾きは、チームの平均スループットを表します。
累積フローダイアグラムの作成方法
累積フローダイアグラムの作成に複雑な手順を踏む必要はありません。初めに、以下の手順を実行します。
- フローダイアグラムの目的を定義する。 CFDで分析するプロセスを特定する。達成したいものを明確にする。
- タスクを特定する。 タスクは時系列順に整理する必要があります。すべてのステップを理解するには、実際のプロセスを観察し、ドキュメントを確認することが必要になる場合があります。
- タスクを整理する。 作業フローの図形記号を使い、適切な形で機能をラベル付けします。たとえば意思決定にはひし形、作業の流れには矢印を使います。
- チャートを作成する。手書きでも、 Adobe Workfrontのようなデジタルツールを使ってもかまいません。
- フローダイアグラムを確認する。 実際にそのプロセスに関わっている人たちと手順を一緒に確認し、正確性を確かめます。
- 作業を追跡する: タスク、ユーザーストーリー、バグなど、すべての作業項目をプロジェクト管理ツールで追跡します。
- ワークフローのステージを定義する: 作業項目が通過するステージを明確に定義します。例:「未開始」「進行中」「レビュー」「完了」。
- データを収集してプロットする: 各ステージの作業項目の累積的な流れを、時間経過に沿って定期的にデータ収集して可視化します。
アジャイル手法における累積フローダイアグラム
アジャイルの枠組み(Kanban、SAFe、LeSSなど)では、CFDは複数チームやプロジェクトをまたいだワークフローの可視化と管理にますます活用されています。累積フローダイアグラムとバーンダウンチャートはいずれもアジャイル開発で使われますが、目的は異なります。CFDはタスクが各ステージをどう進んでいるかを追跡し、バーンダウンチャートはタスクの完了数を時間の経過とともに追跡します。
高度なCFD分析
CFDは基本機能に加えて、より深い分析にも活用できます。代表的な応用例は次のとおりです。
- サイクルタイム効率の測定: CFD上で作業項目の開始点と終了点の水平距離を分析することで、そのサイクルタイムを予測できます。特定のタスク種別のサイクルタイムが一貫して長い場合、その原因やタスクの価値を調べ、プロセスの効率化を進められます。
- 将来のパフォーマンス予測: フローグラフのデータや傾向を分析することで、将来のパフォーマンスを予測できます。これにより、リソース配分、リスク軽減、プロジェクト計画に関して、チームがより確かな判断を下せます。
累積フローチャートの種類。
CFDは目的ごとに異なる種類のフローチャートに分類できます。たとえば:
- ドキュメントフローチャート: システム内で文書がどのように流れるかを示します。
- データフローチャート: システム内でデータがどのように流れるかを示します。
- システムフローチャート: システムの主要コンポーネント間でデータがどう流れるかを表します。
- プログラムフローチャート: プログラム内の制御フローを示します。
フローチャートの一種とみなされる関連図には次のようなものもあります。
- データフローダイアグラム(DFD): 任意のシステムやプロセスにおける情報の流れを表します。
- プロセスフローダイアグラム(PFD): 産業プラント内の主要コンポーネント間の関係を示します。
- ビジネスプロセスモデルと表記(BPMN 2.0): 計画されたビジネスプロセスの手順をモデル化する際に使われます。
CFDを正しく使えば、ワークフローの安定性や改善すべき課題を特定できます。累積フローダイアグラムを正しく分析・監視すれば、継続的なプロセス改善のために注力すべき領域が明確になります。つまり、累積フローグラフはチームやプロジェクト全体の生産性と効率を高めるためのツールです。
累積フローダイアグラムツールを使い始める
CFDの作成・管理を支援するツールは複数あります。Workfrontのように、CFD機能を組み込んだプロジェクト管理ソフトも含まれます。専用のCFDツールは、CFDの作成と分析に特化しています。
ツールを選ぶ際には、次の要素を考慮してください。
- チームの規模
- 統合機能
- 使いやすさ
クラウドベースのワークマネジメントソリューションAdobe Workfrontは、チームによるリソースの計画、追跡、管理を支援します。アジャイルを含む複数の手法に対応しています。Workfrontはプロジェクト管理を一元化し、部門横断でのタスクを効率化します。
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