最適なCDPの選び方

顧客を理解する方法は無数にあります。アプリ内の行動、ソーシャルメディアのコメント、顧客が反応したプロモーション、カスタマーサポートへの問い合わせなど、様々なチャネルから顧客の興味や関心を把握することができます。

しかし、ビジネスインテリジェンス部門やIT部門にとって、こうした顧客データをひとつにまとめて管理することは簡単ではありません。しかし、そうした顧客を様々な面から把握できる貴重なデータがなくては、マーケティング部門が施策をパーソナライズし、顧客の期待に応えることは、ほぼ不可能です。

そこで、CDP(顧客データプラットフォーム)の出番です。CDPとは、オーディエンスに関するインサイトを集めて保存、管理するリポジトリのことです。これを利用することで、企業は、よりパーソナライズされた魅力的な顧客体験を構築できるようになります。

最適なCDPを選ぶのは、大変な作業です。無数にある選択肢の中から、自社のニーズに対応できるCDPを見つけ出すには多くの苦労を伴います。

この記事では、自社に最適なCDPを選ぶ方法を解説します。

CDPに必要な7つの機能と注意点

1.リアルタイムのデータのストリーミングと取り込み

マーケティングの未来を切り拓く上で、リアルタイムは不可欠なものです。その観点から、最新のCDPは優位な立場にあると言えます。CDPを使用してデータをリアルタイムでストリーミングし、取り込むことで、1週間以上前ではなく、現在の顧客の状況を常に把握できます。

2.信頼できる企業が開発したCDPの採用

マーケットプレイスで販売されているCDPの多くは、様々なテクノロジーを組み合わせて構築されており、実績のな​​い新興企業によって開発されたものもあります。CDPは。企業の最も重要な資産の1つである顧客データを扱うため、CDPをゼロから構築可能な、信頼できる企業のソリューションを選択することをお勧めします。

3.包括的な統合ユーザープロファイル

CDPの主な利点の1つは、個人ベースのパーソナライゼーションです。CDPは、マーケターに対して、顧客一人ひとりの既知データ(PII)および未知(匿名)データへのアクセスポイントを提供する必要があります。これにより、インテリジェントなセグメンテーション、個人の嗜好の把握、プライバシー保護、規制基準の遵守が可能になります。

4.堅牢なネイティブデータガバナンスツール

CDPは、データガバナンスを複雑にするのではなく、シンプルにする必要があります。事前構築されたカスタムデータタグ付け機能を備えたCDPを探してください。規制を考慮して、顧客データがタグ付けされるタイミングをベンダーに必ず確認してください。顧客データがCDPに取り込まれた後ではなく、取り込み時点でタグ付けされることが望ましいです。

5.リアルタイムのデータアクティベーション

CDPは、取り込み段階とアクティベーション段階の両方で、リアルタイムに対応できる必要があります。どちらも非常に重要です。リアルタイムのデータの取り込みにより、顧客プロファイルを常に最新の状態に保つことができます。しかし、リアルタイムのデータアクティベーション機能がなければ、顧客プロファイルへの変更に基づいて、顧客体験をパーソナライズすることはできません。

6.マーケターが使いやすい

CDPはデータを民主化し、マーケターが成果を上げるために必要な情報を提供します。優れたCDPは、マーケター向けに構築されており、マーケティングコンテキストにシームレスに適合するように構成されたインターフェイス、ツール、ワークフローを備えています。CDPの実装後、マーケターは、IT部門の支援を受けることなく、CDPを使いこなせる必要があります。

7.スケーラビリティ、柔軟性、拡張性

CDPは、既存のマーケティング/広告テクノロジースタックとシームレスに統合できる必要があります。IT部門の負担を増やさないことが重要です。自社に最適なCDPを導入すれば、ビジネスの複雑さに対応し、自社に合わせて拡張できるようになります。拡張しすぎて対応できなくなるCDPは、望ましくありません。

最適なCDPを探す際の注意点

「ポイント」CDP:

  • 特定の機能に特化したポイントCDPは、最新のフルサービスCDPのように、詳細かつ複雑な処理に対応できません。ポイントCDPは、最新のCDPのような強力な機能を搭載しておらず、既知および未知のデータを保存するという1つの主要な目的のみを果たします。つまり、IT部門は補完ソリューションの実装に時間を費やす必要があり、テクノロジースタックに不要な負荷がかかります。
  • 多くのベンダーがポイントCDPを単に「CDP」として販売しているため、最初は違いがわかりにくいかもしれません。上記の7つの機能を考慮しながら、自社に最適なCDPを選定してください。

顧客体験戦略は、CDPを選定するための最適な指標となります。顧客体験の目標を問わず、顧客体験戦略を上記の情報と併せて判断の指針としてください。ビジョンを適切なCDPに結び付けることで、ビジネスを強化し、成長させる顧客体験を実現できます。

最適なCDPの選び方

自社に適したCDPを見つけるためには、体系化された評価プロセスに従って選定を進めることが重要です。

1.関係者の特定

意思決定プロセスに関わる関係者を特定することが、最適なCDPを選ぶための出発点となります。一般的には、マーケティング部門、セールス部門、カスタマーサクセス部門から、それぞれ代表者を選出します。さらに、日々の業務でCDPを利用したり、CDP上で業務の管理やレポートの分析を行う従業員も、意思決定プロセスに関わる必要があります。早い段階で各関係者からの情報や意見を収集することで、より的確な判断を下すことができます。

2.ユースケースの明確化

CDPを利用する目的をリスト化することで、自社のニーズに対応するベンダーを絞り込むことができます。CDPの一般的なユースケースを以下に示します。

  • 顧客の全体像の把握: CDPを利用する利点の1つは、あらゆるデータを一元管理できることです。顧客データを包括的に管理し、詳細に分析することで、部門やシステムごとに分断されていたレポートでは見落とされていたインサイトを明らかにすることができます。さらに、マーケティング施策やカスタマーサクセスワークフロー、セールス部門による顧客対応など、様々な業務でデータをすばやく活用することが可能になります。
  • パーソナライズされた体験の構築: オーディエンスは、マーケティングかセールスかを問わず、詳細にパーソナライズされた体験を求めています。CDPを活用すれば、カスタマージャーニーの各段階で、顧客のニーズに即してパーソナライズされたコンテンツとコミュニケーションを提供できます。優れたCDPは、B2CとB2Bの両方に対応する、施策につながるリアルタイムのインサイトを提供します。
  • マルチチャネル/オムニチャネルマーケティングの改善: 広告、電子メール、マーケティングコンテンツ、アプリ内通知など、顧客とエンゲージメントする方法は数多くあります。CDPを活用すれば、あらゆるチャネルをまたいで顧客とやり取りし、その反応を追跡して、常に一貫性のある体験をシームレスに提供できます。
  • 分析の統合: 複数のチャネルやプラットフォームをまたいでデータを収集、分析するには、多くの時間を要します。CDPを使用すれば、オンラインとオフラインの様々なソースからデータを収集して保管し、分析に活用できます。
  • データの管理: あらゆる企業にとって、プライバシーとセキュリティは最重要課題となっています。GDPRやCCPAといったプライバシー法に対応しているCDPを使用すれば、現在および将来のデータプライバシー法を確実に遵守できます。

3.必要なツールの特定

このステップでは、既存のテクノロジースタックを検証する必要があります。フロントエンドでは、CRM、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール、データウェアハウスなど、様々な顧客データソースとCDPを接続することが求められます。

バックエンドでは、CDPを下流工程のシステムと連携させて、マーケティングメッセージやセールス担当者とのやり取り、カスタマーサポートをパーソナライズする必要があります。また、広告プラットフォーム、カスタマーサクセスシステム、ライブチャットツール、顧客エンゲージメントツールとの連携も不可欠です。

CDPベンダーのAPIドキュメントを確認したり、セールス担当エンジニアに問い合わせて、自社の開発に必要なAPIが組み込まれていることを確認しましょう。大規模なシステム統合は、先行投資が必要となるだけでなく、その後もアップデートを定期的に行うことになります。そのため、既存のツールと連携できるCDPを選ぶことが望ましいと言えます。

この段階で、関係者と話し合いの場を持つことも重要です。CDPと既存システムの連携に関するアイデアや、思いもよらない優れた機能を提案してくれる可能性があります。これらの意見を参考に、CDPの要件をまとめましょう。

4.課題の優先順位付け

残念ながら、あらゆるニーズに対応できる、唯一の万能なCDPは存在しません。そのため、自社が最も必要としている機能の優先順位を明確にする必要があります。例えば、利用頻度の低いプラットフォーム向けの組み込みAPIを導入するよりも、GDPRやCCPAなどのプライバシー法を遵守するほうが重要であると言えます。カスタマーサービスの改善や、優れたネットワークサービスの実装を支援するパートナーとの提携も欠かせません。

CDPの要件を「必須要素」、「望ましい要素」、「必須ではない要素」に分類して、優先順位を明らかにします。簡単な作業ではありませんが、それぞれの要件が将来もたらす価値を比較し、最も価値のあるものを優先することが重要です。各ベンダーの料金プランも参考になるでしょう。自社のビジネスに欠かすことのできない機能やサービスがあれば、「必須要素」に加えましょう。

5.ベンダーの比較

前のステップで優先順位を付けた要件をもとに、各ベンダーの評価を行います。まず、表の行に要件、列にベンダーを入力します。次に、5段階評価など、単純な評価基準を策定します。

関係者に、各CDP製品の機能が自社の要件に対応しているかどうか評価してもらいます。その際、アドビのCDP製品の比較レビュー参考にしてください。また、それぞれのCDP製品について、関係者にデモを行います。スコアを集計して、最もスコアの高いCDP製品を特定します。そのCDP製品が、すべての必須要素と一部の望ましい要素を備えていることを確認します。

6.CDPの選出

ベンダーの評価が完了したら、関係者との話し合いを行います。各ベンダーがどの程度自社の要件に対応しているかを検証し、関係者と意見を交換します。関係者からのフィードバックをもとに、必要に応じてCDPベンダーに不明点を問い合わせます。また、予算についても話し合い、経営陣の同意を得られるようにビジネスケースを強化します。

CDPを実際に導入できるかどうかについて、IT部門に相談することも重要です。自社で導入できる準備が整っていない場合は、CDPベンダーやパートナー企業の導入サポートを受けられるかどうか確認します。CDPの導入がビジネスの成功につながることを裏付けるために、他社の導入事例を入念に検証する必要があります。

このような6つのステップに及ぶ意思決定プロセスは、長い道のりに感じるかもしれません。しかし、適切な情報を収集し、関係者の意見をすり合わせることで、CDPの選出がはるかに簡単になります。

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パーソナライゼーションの促進、データ分析の強化、データ管理の改善など、企業がCDPを必要とする理由は多岐にわたります。最も重要な目的に焦点を当て、各要件に対応できるベンダーを明らかにすることで、自社に最適なCDPをすばやく見つけ出すことができます。

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