CRM(顧客関係管理)とは?概要と利点を解説

Customer relationship management guide

CRM(顧客関係管理)とは、顧客とのやり取りで得られたデータを一元管理し、適切に活用することで、顧客との良好な関係を構築し、利益の向上を目指す経営手法です。この記事では、CRMの概要、仕組み、利点を解説します。

CRMとは?

CRMとは、既存顧客および潜在顧客とのあらゆるインタラクションと継続的なコミュニケーションを追跡するデータベースソフトウェアです。

通常、営業部門とマーケティング部門が利用しますが、その他の部門がCRMを日常的に利用していることもあります。ここでは、さまざまな部門や組織がどのようにCRMを利用しているのかを解説します。

CRMを必要とする理由

CRMがなければ、潜在的なビジネス機会を見逃してしまいます。CRMを利用することで、顧客体験を向上させ、売上と顧客維持率を高めることができます。また、CRMは、顧客中心型ビジネスへの転換、新規リードの獲得とコンバージョン、既存顧客の維持、顧客体験の向上に役立つ、貴重なツールでもあります。

さまざまな顧客データを適切に把握できなければ、顧客体験の質と売上の低下につながります。CRMを活用すれば、より詳細にパーソナライズされた顧客体験を提供し、リードのセールスファネルからの離脱を防ぐことができます。

CRMが重要であるもうひとつの理由は、リードジェネレーションを通じて、顧客のエンゲージメントを維持できることです。実際、リードジェネレーションを成功させている企業は、リードジェネレーション施策に苦戦している企業に比べて、より多くのリードを獲得しています。

why your business needs a crm

HubSpotの調査によると、成果を上げているマーケターは、そうでないマーケターに比べて、MA(マーケティングオートメーション)を利用している割合が46%高くなっています。顧客データの分析や顧客とのエンゲージメントに苦慮している場合は、CRMを導入することから始めましょう。これにより、ワークフローを迅速化し、ROIを大幅に向上できるようになります。

CRMの仕組み

CRMシステムの基盤となるのは、コンタクト先のデータベースです。リード、顧客、ビジネスパートナーからデータを収集、保存、管理できます。本質的には、Rolodexやスプレッドシートと同様の役割を果たします。しかし、CRMには、膨大なデータをすばやく整理して、顧客プロファイルを構築し、単一のシンプルなダッシュボードであらゆるデータを容易に把握できるという、大きな強みがあります。

CRMは、優れた電話オペレーターとしての役割も果たします。電話、テキスト、電子メール、ライブチャット、ダイレクトメール、ソーシャルメディアなど、さまざまなチャネルをまたいで、顧客やビジネスパートナーとのあらゆるやり取りを追跡できます。さらに、顧客一人ひとりのカスタマージャーニーを管理し、そのあらゆる段階で適切にコミュニケーションできます。

CRMには、カスタマーサービス、請求、会計、調査、ドキュメントへの署名など、重要なビジネス機能がすべて揃っています。そのため、セールスおよびマーケティング活動を一元管理する基盤となります。

CRMの利点(営業部門)
CRMの利点(マーケティング部門)
リードをスコアリングして、セールスファネル内のポジションを特定
メッセージを作成するためのインサイトを獲得
自動タスクリマインダーを作成
データにもとづいて顧客をセグメンテーションし、よりパーソナライズされたメッセージを提供
オーディエンス向けの自動化されたメールコミュニケーションファネルを円滑化
A/Bスプリットテストの促進
利益率の高い商品やサービスを優先するパターンを特定

CRMは、主に営業部門とマーケティング部門で利用されていますが、人事、プロジェクト管理、サプライチェーンなど、さまざまな業務に活用できます。

CRMの活用事例

ある小売企業が、CRMを最大限に活用したいと考えているとします。同社は、顧客情報を一元管理するデータベースとしてCRMを使用できます。連絡先情報や過去の購入履歴といったデータをもとに、顧客が望む連絡方法で、一人ひとりに合わせてパーソナライズされたマーケティング施策を展開し、適切な製品をプロモーションできます。

注文システムとCRMを統合すれば、しばらく購入していない顧客に連絡し、オンラインストアにアクセスして製品を購入するように促すことができます。また、過去の注文履歴を把握することで、オンラインストアで頻繁に買い物している顧客への過剰なプロモーションを避けながら、自社の製品をしばらく購入していない顧客のエンゲージメントを促進できます。

CRMの機能

営業部門やマーケティング部門がCRMを最大限に活用するには、顧客データの価値を引き出すための豊富な機能を備えたツールが必要です。ここでは、CRMをビジネスにとって価値のあるものにする主な機能をいくつか紹介します。

CRMの利点

CRMを導入することなくビジネスを展開することは、目隠しをしながら障害物競走に参加するようなものです。CRMを利用すれば、収集した顧客データをもとに、顧客が誰で、何を求めているのかを明確に把握できるようになります。ここでは、CRMがビジネスにもたらす主な利点を解説します。

CRMは、あらゆる顧客情報を一元管理するデータベースとしての役割を果たします。これにより、顧客が誰で、何に関心を持っているのかを把握し、より的確なやり取りとパーソナライズされた体験を提供できるようになります。また、顧客データが複数のシステムやスプレッドシートで別々に保管され、全体像を把握できない、といった事態を回避できます。

CRMを利用すれば、オーディエンスを小さいセグメントに容易に分割できるため、ユーザーの好み、行動、過去のやり取りにもとづいて、より効果的にターゲティングできます。これを手作業でおこなうと、時間と手間がかかるだけでなく、誤った特性にもとづいてセグメンテーションが実行される可能性があります。

CRMがなければ、あらゆるリードを同じタイミングでナーチャリングすることになり、時間とリソースを適切に配分できなくなります。CRMを導入すれば、焦点を当てるべきリードを把握し、営業部門へ引き渡す準備ができているかどうかをすばやく判断できます。

AIとマシンラーニングを備えたCRMなら、収集したデータをより的確に分析、活用し、リードと顧客を獲得する機会を最大化できます。

CRMは、パーソナライズされた顧客体験を実現する原動力です。パーソナライズされた体験を大規模に提供するには、さまざまな情報源からデータを収集し、つなぎ合わせることのできる基盤が必要となります。適切なCRMを使用すれば、顧客が期待する体験を提供するために、継続的に進化することが可能になり、将来のニーズにも対応できるようになります。

CRMは、カレンダーのリマインダーシステム、アプリケーションをまたいだデータキャプチャ、レスポンスをトリガーにしたメールファネル、社内チャットの統合、顧客との対話(特にシステム内からの電話)など、自動化のためのさまざまなツールを提供します。また、リードの獲得と管理、MAの能力も備えています。

CRMは、マーケティング部門と営業部門が、潜在顧客をより効果的にフォローアップするのに役立ちます。必要なデータを収集し、リードが誰で、ジャーニーのどの段階にいるのかを正確に把握できれば、各リードに容易にリーチし、最も効果的なメッセージをタイミングよく提供できるようになります。これにより、セールスファネル全体を通じてリードとの関係を維持し、時期尚早なリーチや、リードの購買意欲の低下を回避できます。

CRMの活用事例

顧客とエンゲージメントする場合、そのインタラクションには貴重なデータが含まれています。特定の顧客とその行動に関するデータを活用すれば、製品のプロモーションやメッセージなど、顧客体験を包括的にパーソナライズできます。

ここでは、企業が顧客とつながるのに役立つ、CRMの活用方法をいくつか紹介します。

CRM examples
ソーシャルメディア
ソーシャルメディアを通じて顧客とエンゲージメントする場合、CRMを利用してそのインタラクションを追跡できます。エンゲージメントから得たインサイトをもとに、顧客が関心を持つメッセージや製品を判断できます。ソーシャルメディアのダイレクトメッセージを介して顧客から苦情が寄せられた場合、CRM内のプロファイルにそのデータを追加することで、カスタマーサービス部門が後ほど顧客とやり取りする際に、そのフィードバックを念頭に置いて対応できます。
問い合わせフォーム
問い合わせフォームのエントリをCRMに保存しておくと、顧客がカスタマーサービス部門に問い合わせる前に、問い合わせ内容を事前に予測できるようになります。これにより、顧客を第一に考えたサービス体験をシームレスに提供できます。顧客が同じ質問や問題を何度も説明する必要がある場合、不満を感じたり、誤解を招いたりする可能性があります。
メールマーケティング
CRMを使用すれば、顧客が受信した電子メール、開封済みまたは未開封の電子メール、電子メール内で顧客がクリックしたリンクを追跡できます。これらのデータは、今後配信する電子メールをパーソナライズし、顧客がエンゲージメントする可能性が最も高いコンテンツを確実に届けるのに役立ちます。長期にわたってメールマーケティングの取り組みやオーディエンスの反応を追跡することで、電子メールを最適化できるようになります。

CRMの活用を始める

CRMは、営業、マーケティング、カスタマーサービスなど、ビジネスのさまざまな領域を包括的に把握するための優れた方法です。

自社に最適なCRMを選定する際は、あらゆる業務に対応できる堅牢性を備え、ビジネスの成長に合わせて容易に拡張できる、クラウドベースのCRMを選びましょう。Adobe Experience Managerなら、顧客の数にかかわらず、常に更新される単一の顧客プロファイルを活用して、パーソナライズされた体験を提供できます。

また、Adobe Experience Platformには、シームレスなCRM戦略に必要となる、あらゆるツールが揃っています。アドビの大規模なCRM向けツールは、今日の企業が直面している、競争上の課題を解決するのに役立ちます。リアルタイムのパーソナライゼーションから包括的なコンテンツ管理に至るまで、より優れた顧客体験の創出を支援します。

Adobe Experience Cloudの詳細については、アドビの担当者までお気軽にお問い合わせください。