DRM(デジタル著作権管理)とは?重要性や仕組み、課題をわかりやすく解説
企業が管理するデジタルアセットの量は規模を問わず、今まで以上に増加しています。消費者の知的財産と利益を保護するには、適切なアセット管理とコンテンツワークフローの改善が必要ですが、その際に重要な役割を担うものが「Digital Rights Management(DRM)」です。
この記事では、DRMの基礎知識を踏まえつつ、ビジネスにおいて重要な理由、DRMの具体的な仕組みや課題などについて解説します。また、DRMに使用できるツールも紹介するので、ぜひご一読ください。
目次
- DRM(デジタル著作権管理)とは?
- DRMがビジネスにおいて重要な理由
- DRMの具体的な仕組みや技術
- DRMのユースケース
- DRMの課題と今後の展望
- DRMに使用できるツール
- デジタルコンテンツの管理状況を見直そう
DRM(デジタル著作権管理)とは?
DRMとは、第三者によるデジタルコンテンツの複製、編集、共有などを制限しつつ、コンテンツホルダー(コンテンツ制作者や関連企業など)の著作権を保護する仕組み/技術の総称です。日本語では「デジタル著作権管理」と訳されています。
DRMの対象となるデジタルコンテンツの例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 映像(動画配信サービスのコンテンツや映画のDVDなど)
- 音楽(音楽CDや音声データなど)
- 書籍(電子書籍)
- ゲーム
DRMのおもな目的は、各種コンテンツの不正アクセスや不正利用を防ぐことです。一方、DRMの仕組みを組み込まない状態を「DRMフリー」と呼ぶこともあります。
なお、デジタルコンテンツの「複製」に関して、日本では「私的使用のための複製」は認可されていますが、複製したコンテンツの販売や、インターネット上へのアップロードは違法行為です。
DRMがビジネス戦略において重要な理由
デジタルデータ化したコンテンツは、コピーを繰り返しても品質が劣化しません。それゆえ、オリジナルに劣らない複製品を制作されたり、不特定多数に配布されたりするなど、コンテンツホルダーを脅かす違法行為が起こりやすい状況です。
さらに、近年はデジタルコンテンツをビジネスモデルの中心に据えるケースが数多く見受けられます。コンテンツホルダーの権利や利益を守りつつ、ビジネスの機会損失を避けるには、DRMの導入が欠かせません。
広い意味では、企業がデータとして管理する機密情報や個人情報も、DRMで不正アクセスから保護する対象です。デジタルデータの安全な保持、ユーザーのプライバシー保護などの企業の目的を踏まえても、DRMは重要性が高いといえるでしょう。
また、ユーザーがコンテンツの利用方法を正しく把握できるよう、DRMを通じて著作権と所有権の情報を定義することも必要です。
DRMの具体的な仕組みや技術
DRMのおもな役割は、権限のないユーザーによるデジタルコンテンツへのアクセス、コンテンツホルダーが承認していない方法でのコンテンツ利用を防ぐことです。その役割を果たせるよう、以下のような仕組みや技術を備えています。
コンテンツの暗号化
デジタルコンテンツのデータそのものを暗号化することで、不正アクセスや違法コピーを防ぐ技術です。許可が与えられたユーザー(デバイス)のみ、複合キーを使ってコンテンツの表示やアクセスができる形式に変換します。
おもに動画や音楽の配信サービス、オンライン教育プラットフォームなどで利用されています。
アクセス制御
ユーザー名やパスワード、デジタル証明書などの認証を通じ、誰がどのコンテンツにアクセスできるのかを管理する技術です。不正アクセスを防止し、コンテンツを保護します。
万が一VPNやプロキシサーバーでアクセス元を偽装されても、位置認識技術で回避できます。
閲覧期限の設定
データの閲覧/ダウンロードができるURLを生成し、一定期間が過ぎたらURLを無効化する仕組みです。「ワンタイムURL」と呼ばれることもあります。
動画配信サービスのレンタル機能をはじめ、一時的な利用を前提とするビジネスモデルで利用されています。指定されたURL以外でコンテンツへのアクセスはできず、期間終了後はアクセス自体ができなくなります。
複製回数や印刷の制限
データの複製回数に制限をかけることで、違法コピーや海賊版の流通を防ぐ仕組みです。1回しかコピーできない「コピーワンス」や、テレビ番組をハードディスクに9回までコピー可能、10回目はムーブ(元データ削除後に移動)となる「ダビング10」が該当します。
また、デジタルデータの紙媒体へのコピー(印刷)を制限する機能は、PrintScreenキーやショートカットキーの機能を制御する「画面キャプチャ防止機能」と組み合わせて導入されています。
電子透かしの埋め込み
データに「透かし」という目に見えない情報(識別子)を埋め込むことで、元のソースを識別する仕組みです。「ウォーターマーク」とも呼ばれており、不正な共有やコンテンツの盗難、情報漏洩を防ぐ目的で利用されています。
使用状況の追跡
どのコンテンツがアクセス、使用、共有されているのかを追跡し、その状況を記録する仕組みです。ユーザーの好みや行動に関する貴重なフィードバックを獲得したり、違法行為へ至るまでのプロセスを可視化したりすることで、コンテンツホルダーは改善や対策に移行しやすくなります。
DRMのユースケース
ここでは、様々な業界の企業が、どのようにDRMを活用しているのかを紹介します。
メディア&エンターテインメント
一般的にメディア&エンターテインメント系の企業では、映画やテレビ番組、音楽、電子書籍といったデジタルコンテンツを保護できるよう、DRMを導入しています。コンテンツを適切に保護しなければ、不正な複製、配布、共有によって大損害を被りかねないからです。
DRMを使って保護することで、著作権コンプライアンスに則って収益源を確立しながら、ストリーミングサービスやオンラインマーケットプレイスでコンテンツを安全に配信できるようになります。
例えば、AppleはiTunes Storeで販売されている音楽や映画などのコンテンツを守れるよう、同社が独自に開発した「FairPlay」と呼ばれるDRMツールを使用しています。このツールで暗号化/ライセンス認証/デバイス認証などを実施し、各種コンテンツを保護している次第です。
FairPlayを通じてDRMが付与された音楽や映画のデータは、Apple IDを登録しているデバイスのみ対応しており、他のデバイスやアプリケーションでは再生できません。
ソフトウェア&ゲーム
ソフトウェア&ゲーム系の企業では、ライセンスが必要なコンテンツに権限のないユーザーがアクセスできないよう、DRMによる対策を講じています。
例えば、ゲームをダウンロード形式で販売する場合、アクティベーションキーによるライセンス認証やID/パスワードによるオンライン認証で正当性を検証し、不正アクセスや不正利用を制限しています。
出版&教育
出版系の企業では、電子書籍やデジタル出版物、インターネット上で公開されている学術記事や学術論文などのコンテンツを保護できるよう、DRMを使用しています。DRMでアクセス制御を行うことにより、コンテンツを表示できるデバイス数を制限可能です。
一方、教育機関はDRMを使用することで、著作権を遵守しつつデジタル教科書や教材を安全に配布できます。また、近年はストリーミング配信による講義やセミナーが行われていますが、そちらでもDRMを活用可能です。
医療
医療機関では、患者の健康や医学研究に関する膨大な機密データを管理/処理しています。DRMを使用すれば、医療記録や患者の病歴、健康保険の登録内容、研究成果といったデータを保護することが可能です。
DRMは各種データの機密性と完全性を確保しつつ、データプライバシー規制を遵守するのに役立ちます。また、データには患者のデリケートな個人情報も含まれているので、それを含めて保護できる点でも有用です。
データは、業種を問わず、あらゆる企業にとって価値のあるものです。そのため、どの業界においても、DRMのようなそのデータを保護する取り組みが必要です。
DRMの課題と今後の展望
コンテンツの保護やセキュリティの強化に役立つDRMですが、一方でいくつかの課題を抱えていることも事実です。ここでは、DRMを導入する際のおもな課題、今後の展望について解説します。
DRMの課題
DRMは決して万能ではなく、現状ではまだ課題もあります。
例えば、私的使用目的での複製や研究目的でのデータ引用など、法律で認められている行為が技術的に制約されてしまうケースがあります。「ユーザーの権利が守られていない」「正しく利用していても制限されるのはおかしい」といった指摘もあり、ユーザーの信用や満足度の低下につながる課題です。
また、以下のようなユーザビリティの低下も懸念されています。
- 特定のデバイスやアプリケーションでしかコンテンツを利用できない
- システムに不具合が起こると、正当なユーザーもアクセスできなくなる
あえて「DRMフリー」とするケースがあるのは、上記のような背景があるからです。このような流れから、コンテンツを扱う企業にはコンテンツホルダーの権利や利益を守りつつ、ユーザーの権利や利便性も考慮することが求められています。
DRMの今後の展望
デジタルコンテンツ市場の拡大にともない、DRMの重要性はますます高まっています。今後は不正アクセスや不正利用への対策として、AI(人工知能)や機械学習によるコンテンツ利用のモニタリングなども可能となるでしょう。
また、DRMはあらゆるデジタルコンテンツに付与できる一方、インターネットの普及やサービスの多様化により選択肢が膨大になったことで、ユーザーのコンテンツ購入難易度は上昇しました。DRMを運用する際はコンテンツホルダーの権利だけではなく、ユーザーの権利に配慮することも大切です。
今まで以上に高度な技術がDRMに取り入れられることで、先述した課題の解決が見込めるでしょう。
DRMに使用できるツール
ここまで紹介してきた通り、DRMへの取り組みは企業にとって必要不可欠です。
とはいえ、企業が管理すべきデジタルアセットの量は膨大です。また、コンテンツの保護や知的財産権の観点から、それぞれのアクセス制御やライセンス情報の管理なども行う必要があり、多くの企業がDRMに苦慮しています。
こうした問題の解決には、企業が持つ数百万ものアセットの一元管理が可能なデジタルアセット管理(Digital Asset Management:DAM)「Adobe Experience Manager Assets」の導入がおすすめです。
Adobe Experience Manager Assetsでは、膨大な量のアセットを容易に追跡しつつ、その保存先や利用方法をリアルタイムで把握できるので、高度なDRMを実現可能です。
企業関係者は必要とするアセットを容易に検索できるとともに、そのライセンス情報等も把握でき、コンテンツの効率的な利用につながります。
また、アセットのライセンス契約が終了すると、公開されたアセットを非公開にし、利用者が期限切れのアセットを編集、公開、ダウンロードできないようにします。
さらに、AI(人工知能)を利用した自動化により、アセットの調整、タグ付け、切り抜き、配信などの効率化を行うことができます。
【関連記事】
Digital asset management (DAM) — what it is, how it works, and best solutions(USサイト)
デジタルコンテンツの管理状況を見直そう
DRMとは、第三者によるデジタルコンテンツの利用に制限をかけて、コンテンツホルダーの著作権や利益を守る仕組みや技術のことです。デジタルコンテンツは性質上、不正アクセスや違法コピーが起こりやすいので、DRMでの保護が必要不可欠といえます。
より高精度かつ効率的にDRMを使用したい方は、アドビのDAM「Adobe Experience Manager Assets」の導入をご検討ください。各アセットのリアルタイム追跡機能や充実したアセット作成サポート機能を搭載しているので、デジタルアセットを最大現に活用することが可能です。
(公開日:2023/7/26)