コマースのヒント:平均コンバージョン率
コマースを展開する企業にとって、コンバージョン率は重要な指標です。コンバージョン率の基準は、業界、ビジネス、商品によって大きく異なります。自社のコンバージョン率を詳細に追跡していても、業界標準と一致しているか、平均値を上回っているか、しきい値を下回っていないか、疑問を抱くこともあるでしょう。
コンバージョン率のベンチマークがなければ、自社の立ち位置や改善方法を把握することはできません。競合他社に大きく後れを取り、業界のリーダー企業としての地位を失いかねません。
業界標準を把握することで、自社と他社のコンバージョン率を比較し、ビジネスを最適化する糸口を見出すことができます。さらに、業界の平均コンバージョン率を把握すれば、自社が成果を上げているかどうかを判断し、競争を勝ち抜く方法を特定できるようになります。
この記事では、平均コンバージョン率の概要と、コンバージョン率を向上させるためのヒントを解説します。
主な内容:
- 平均コンバージョン率を把握する目的
- 平均コンバージョン率とは?
- コマースサイトにおける平均コンバージョン率
- デバイス別平均コンバージョン率
- 業界別平均コンバージョン率
- 地域または国別平均コンバージョン率
- チャネル別平均コンバージョン率
- コンバージョン率の測定方法
- コンバージョン率を最適化するためのヒント
- コンバージョン率を向上させる方法
平均コンバージョン率を把握する目的
デジタルコマースにおける平均コンバージョン率は、サイトがどの程度オーディエンスを説得し、望ましい行動を起こしてもらうように促進できているかを示す指標です。望ましい行動には、コンテンツのダウンロード、メールリストへの登録、商品の購入などが挙げられます。
企業は、平均コンバージョン率を追跡し、自社のオファーがターゲットオーディエンスにとってどの程度魅力的かどうかを把握する必要があります。オーディエンス100人のうち、ひとりしかオファーに反応しなかった場合、ターゲットオーディエンスがオファーに興味を持っていない、購入する準備ができていないなど、何らかの理由がある可能性があります。
コンバージョン率は、次の方程式で計算できます。
例えば、1ヶ月で2,000人のオーディエンスがサイトを訪問し、200件の注文を受けた場合、コンバージョン率は10%になります。
分析プラットフォームを利用すれば、コンバージョン率を自動的に計算できます。コンバージョン率だけでは、ビジネスに問題があるかどうか把握できないかもしれません。しかし、マーケティング、セールス、カスタマーサービスの効果を測定するのに役立ちます。
そのためには、特定の期間におけるコンバージョン率を計算し、過去のパフォーマンスと比較する必要があります。
平均コンバージョン率とは?
自社のコンバージョン率を追跡し、過去のパフォーマンスと比較することは重要です。しかし、これらの数値が業界の平均値と一致しているかどうかも把握する必要があります。
平均コンバージョン率は、ビジネスモデルやターゲットオーディエンスなどの要因に大きく左右されます。最新の調査によると、デジタルコマースの平均コンバージョン率は3.65%です。つまり、コマースサイト訪問者100人のうち、約4人が望ましい行動を起こしていることになります。
この数値は低く思えるかもしれませんが、コンバージョン率は上昇傾向にあります。例えば、コマースサイトを含むwebサイト全般の平均コンバージョン率は、2021年7月から2022年7月にかけて1.61%から1.92%に増加し、その増加率は19.63%に達しています。パンデミックの影響でオンラインショッピングに関心を持つ消費者が増加したため、デジタルコマースが再興期を迎えているのも当然であると言えます。
コンバージョン率は、webサイト、デバイス、業界、国、チャネルによって異なります。以下では、それぞれのコンバージョン率を詳しく解説します。
コマースサイトにおける平均コンバージョン率
コマースサイトの平均コンバージョン率は、1%から4%を見込むことができます。
- グローバルサイトのコンバージョン率:2.58%
- 米国サイトのコンバージョン率:2.57%
これらの数値は、webサイト全体の平均値である3.65%よりもやや低くなっています。それは、コマースサイトのパフォーマンスが、業界、ビジネスモデル、買い物客、価格設定、マーケティング、商品などの要素に大きく左右されるからです。
例えば、2022年1月のファッションサイトの平均コンバージョン率は1.72%でした。一方、アート&クラフトサイトの平均コンバージョン率は3.95%でした。
業界標準のコンバージョン率を把握することは重要ですが、他の業界と比較する場合は、全体の平均値を絶対的な基準として捉えるべきではありません。
デバイス別平均コンバージョン率
デジタルコマースでは、顧客はオムニチャネル環境で、複数のデバイスを介して企業と接触します。そのため、コンバージョン率は、顧客が使用するデバイスに応じて異なります。
2022年第2四半期のデバイス別平均コンバージョン率は、次のとおりです。
モバイルデバイスを利用する買い物客が増えているにもかかわらず、デスクトップPC、ノートPC、タブレットは、スマートフォンよりもコンバージョン率が高くなっています。
多くの買い物客は外出先でモバイルデバイスを使用して商品を検索し、帰宅後にPCで決済しています。企業は、モバイルチェックアウト体験を簡素化することで、スマートフォンのコンバージョンを促進できます。しかし、多くの買い物客は依然として、自宅のPCで購入することを好む傾向にあります。
ただし、コンバージョン率は、ターゲットオーディエンスや地域にも左右されます。例えば、英国では、オンラインショッピングのほぼ半数がスマートフォンでおこなわれています。また日本では、コマース取引の61%がモバイルデバイスで実行されています。
業界別平均コンバージョン率
平均コンバージョン率は、業界によって大きく異なります。2022年第4四半期時点で平均コンバージョン率が最も高い上位6つの業界は、次のとおりです。
- ファッション/アパレル:2.7%
- 医療/美容:3.3%
- エンターテインメント:2.5%
- 日用品:2.1%
- 電子機器:1.9%
- 食品/飲料:4.6%
2022年は、食品/飲料と医療/美容のコマースサイトが最も高いコンバージョン率を達成しました。その理由として、これらの商品が日用品や電子機器などと比較して価格が安く、購入までのハードルが低いことが挙げられます。
地域または国別平均コンバージョン率
買い物客の購買行動は、国によって異なります。例えば、一部の市場では、買い物客はオンラインで商品を検索し、実店舗で購入することを好みます。一方、他の市場の買い物は、オンラインですべてのプロセスを完了させたいと考えています。価格感度、商品の特徴、ローカライゼーション、デバイスなど、その他の要因もコマースサイトのコンバージョン率に影響を与える可能性があります。
2022年の国別平均コンバージョン率は、次のとおりです。
- 米国:2.3%
- ドイツ:2.22%
- デンマーク:1.8%
- オランダ:1.78%
- イタリア:0.99%
- イギリス:4.1%
チャネル別平均コンバージョン率
顧客を獲得する方法は、顧客がコンバージョンに至るかどうかを大きく左右します。例えば、リファラルチャネルを通じて獲得したオーディエンスは、購入意欲が高い可能性があります。一方、有料広告を通じて獲得したリードは、購入に導くためにより多くの訴求を必要とします。
2022年第2四半期のチャネル別平均コンバージョン率は、次のとおりです。
Kibo Commerceのレポートによると、ソーシャルメディアとダイレクトチャネルのコンバージョン率は低下しているものの、検索チャネルのコンバージョン率は平年並みであることが明らかになっています。リファラルトラフィックは、平均コンバージョン率が最も高くなっています。これには、商品にリンクされているアフィリエイトや、3rdパーティサイトからのトラフィックが含まれます。
コンバージョン率の測定方法
平均コンバージョン率を把握し、自社のコンバージョン率と比較することは重要です。ただし、平均コンバージョン率は業界によって異なることに留意する必要があります。
平均コンバージョン率に関する情報の一部は、分析およびパーソナライゼーションソフトウェア企業が公開しているデータから入手できます。StatistaやBaymardなどの調査機関が提供する詳細なデータは、業界全体のコンバージョン率のベンチマークやKPI(重要業績評価指標)を定義するのに役立ちます。
アドビのコンバージョン率に関する記事では、KPIの算出方法を詳しく解説しています。
コンバージョン率を最適化するためのヒント
自社のコンバージョン率が業界平均値を下回っている場合でも、諦める必要はありません。コンバージョン率は、ビジネスを改善するためのKPIのひとつにすぎません。改善点を特定し、修正することで、成果につなげることができます。
ここでは、平均コンバージョン率を向上させるためのいくつかのヒントをご紹介します。
- モバイルカスタマージャーニーの最適化: モバイルサイトの読み込み速度が遅い、反応が鈍い、魅力に欠けるなど、モバイル体験に何らかの問題がある場合、多くの買い物客は、モバイルデバイスからPCに切り替えて購入をおこないます。モバイルコマース体験を改善することで、より多くの買い物客に対して即座に購買を決断するように促し、コンバージョン率を向上させることができます。そのためには、コマースサイトにレスポンシブデザインを導入し、画面サイズに応じてユーザーインターフェイスを調整する必要があります
- 優れた顧客体験の提供: webサイト体験は、シンプルかつ直観的である必要があります。優れた顧客体験を提供できれば、買い物客が必要な商品を見つけて購入する可能性が高まります。webサイトの読み込み速度と画像の解像度を向上し、ナビゲーションを簡素化するとともに、サイト内検索ツールを配置しましょう
- スムーズな決済プロセスの構築: 買い物客が決済中に何らかのトラブルが発生した場合、ショッピングカートを放棄する可能性が高まります。これまでの努力を無駄にしないためにも、決済プロセスを改善して顧客の離脱を防ぎ、売上を高める必要があります。ゲストチェックアウトを許可し、フォームフィールド数を削減するとともに、Google PayやPayPalなどの多様な支払いオプションに対応しましょう。また、送料を明記することも重要です
- 顧客を第一に考える: コマースサイトを設計する際は、顧客のニーズを第一に考え、必要な情報をすばやく見つけられるようにしましょう。例えば、コンバージョン率の高い商品やカテゴリーをアピールし、買い物客をそれらの商品にすばやく誘導します
- 社会的証明の活用: オンラインショッピングでは、実際に商品を手に取って確認することができないため、商品が信頼できるものであることを示すことが重要です。そこで、社会的証明が重要になります。レビュー、口コミ、ビフォーアフターの写真、ライフスタイル画像などを掲載することで、より多くの買い物客をコンバージョンに導くことができます
- コンバージョン率の高いトラフィックチャネルを重視: 成果を上げているチャネルは、引き続き活用しましょう。リファラルトラフィックのコンバージョン率が高い場合は、リファラルトラフィックを拡大しましょう。効果が低いチャネルを改善することも重要ですが、コンバージョン率を向上するためには、まず優れた成果を上げているチャネルを最適化する必要があります
- 詳細なA/Bテストの実施: A/Bテストやスプリットテストは、CRO(コンバージョン率の最適化)に不可欠です。A/Bテストを実施することで、サイトで効果を上げている要素とそうでない要素を特定できます
コンバージョン率を向上させる方法
自社が業界の平均コンバージョン率を達成しているかどうかを把握することは重要です。これにより、業界のリーダー企業としての地位を確立するために、必要な改善をおこなうことができます。業界標準を基準として、改善点を特定することで、コンバージョン率を最適化できます。
コンバージョンを改善し、さらなるビジネスの成長を目指すのであれば、次世代のコマース基盤を利用してコンバージョン率を高め、エンゲージメントを促進する機会を見出しましょう。
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