コマースのコンバージョン率最適化(CRO)
EC企業にとっては、コンバージョンがすべてです。マーケティングや広告でトラフィックを促進し、ブランド認知度を高めても、webサイトに訪問者を誘導しただけでは仕事は終わりません。むしろ、ここからが始まりです。
そこで注目すべきは、コマースのコンバージョン率最適化(CRO)です。CROでは、より多くの訪問者を有料顧客に転換することを目的として、webサイト、購入ワークフロー、ユーザーエクスペリエンスを調整します。こうした部分を改善することで、投資回収率(ROI)と顧客満足度を高め、コマース事業を拡大できます。
このガイドの内容:
コマースのコンバージョン率最適化とは?
コマースのコンバージョン率最適化(CRO)とは、webサイトのデザイン、使いやすさ、ワークフローを戦略的に改善して、期待通りの行動(製品の購入やニュースレターの購読など)を取るwebサイト訪問者の割合を増やす手法のことです。
例えば、次のような改善を行います。
- チェックアウトワークフローを簡素化する: 購入を完了するまでに必要な手順の数を減らします。
- 信頼を構築する: セキュリティに取り組んでいることを示すマーク(「セキュアチェックアウト」など)を支払いベージに追加します。
コンバージョン率が重要な理由
- 収益の拡大: 収益規模が1,000万ドルのサイトの場合、コンバージョン率が1%増加すれば、そのまま10万ドルの増収になります。
- マーケティングの効率向上: 既存トラフィックの活用の幅を広げ、新規リード獲得の必要性を抑えられます。
- カスタマージャーニーの最適化: ユーザーエクスペリエンスをスムーズ化し、認知から購入まで、ファネル内の移動を促進できます。
コンバージョン率の計算方法
コンバージョン率の計算式は、以下のように単純です。
(コンバージョン数÷訪問者数) x 100 = コンバージョン率
例えば、サイトの1日あたりの訪問者数が2,000人、購入者数が20人の場合は次のようになります。
(20÷2,000) x 100 = コンバージョン率1%
コマースのコンバージョン率の目標
目標にすべきコンバージョン率
目標とすべきコンバージョン率は、業界、オーディエンス、製品の種類によって異なります。
- コマース業界の平均値:3.3%
- 新規ストア:1~2%(デジタルプレゼンスの確立開始時点)
- 一般的なサービスベースのコマース:約9%(購入ワークフローがシンプルであるため)
自社のベンチマークの設定
平均値だけを基準にするのではなく、次の要素も検討してください。
- ターゲット市場: 一般に、高級品と展開の速い消費財ではコンバージョン率が異なります。
- 購入の複雑さ: 購入前に詳しい調査が必要な製品(電子機器など)は、それほど調査が必要ない製品(ファッションなど)と比べてコンバージョン率が低くなりがちです。
- 過去の実績: 自社のベースラインデータを参考にして、長期的な改善効果を追跡します。
成果の測定
CROの成果を測定するには、以下のような主要業績評価指標(KPI)を追跡します。
- カート放棄率: ファネルのどの段階でユーザーが脱落しているのかを把握します。
- リード対顧客比率: コンバージョンの効率を特定します。
- 平均注文額(AOV): コンバージョン率の増加に伴って購入額も増加しているかを測定します。
コマースのコンバージョン率最適化戦略
コンバージョン率が目標に届いていない場合は、まず現在のサイトとワークフローを調査することから始めましょう。以下に、コンバージョン率向上の効果が認められている戦略を示します。
1. 目を引くページの制作
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ユーザーエクスペリエンスを簡素化する: 重要な情報を目立つように配置するとともに、ページを直感的に操作しやすいように設計します。
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高品質なコンテンツを利用する: コストを惜しまずにプロらしいビジュアルや動画を用意し、製品をわかりやすく紹介します。
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製品ページを最適化する: メリットをはっきり伝えて信頼を得るために、詳細な説明や顧客の声、レビュー、動画を追加します。
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社会的証明を提供する:
- 「現在X人が閲覧中」または「今月の購入者数:500人以上」のように、緊急性や信頼性を訴える動的要素を追加します。
- 製品のレビュー数と平均評価を、各製品のページに直接表示します。
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CTAの利用は控えめにする: ポップアップやCTAを使いすぎると、ユーザーの邪魔になる可能性があります。明快で一貫性のあるメッセージを届けるように心がけましょう。
2. インセンティブの提供
以下のような期間限定の特典を提供して、行動を促進します。
- 購入金額が一定以上の場合に送料無料
- 初回購入時限定での割引または無料提供
- リピート購入特典付きのロイヤルティプログラム
3. ストアナビゲーションの簡素化
- ナビゲーションバーを合理化する: 直感的にわかりやすいようにカテゴリを整理し、ネスト化を最小限に抑えます。
- フィルターを実装する: ユーザーがすぐに製品を見つけられるように、サイズや色などの基準による並び替え機能を追加します。
- 検索機能を強化する: 自動入力機能やインテリジェントキーワードマッチング機能を導入して、検索精度を高めます。
4. 購入プロセスの簡略化
- ゲストチェックアウトを追加する: アカウント作成なしで購入できるようにして、購入時のつまずきを減らします。
- チェックアウトフォームを最適化する: 必須フィールドを最小限にし、可能であればデータが事前入力されるようにします。また、入力を簡単に行えるように、ドロップダウンを実装します。
- 返品のハードルを下げる: 購入を迷っているユーザーを安心させるために、顧客にとってわかりやすい返品規約を表示します。
5. webサイトパフォーマンスの最適化
- ロード時間を短縮する: ユーザーの脱落を防ぐため、ロード時間を2秒以下に抑えます。
- モバイルに対応させる: モバイルで直感的に操作できるレスポンシブデザインを採用します。
- コンテンツ配信ネットワーク(CDN)を利用する: ユーザーに最も近いサーバーからコンテンツを配信して、配信速度を高めます。
- Core Web Vitalsを改善する: CLS(Cumulative Layout Shift)やTTI(Time to Interactive)などの指標を最適化して、ユーザーエクスペリエンスを高めます。
6. 信頼の構築
- レビューや顧客の声を提示する: 顧客は他の購入者の意見を信じるものです。製品ページには、レビューを目立つように配置しましょう。
- 透明性を保つ: 連絡先情報、利用規約、価格を明確化し、アクセスしやすいように配置します。
- セキュリティマークを表示する: ユーザーが支払いに不安を抱かないように、安全性に関するロゴ(SSL証明書やサードパーティのロゴなど)の表示します。
7. テストと反復
- A/Bテストを実施する: 様々な見出しやCTA、レイアウト、オファーを試し、コンバージョンに最も効果のある要素を特定します。
- ヒートマップを監視する: ユーザーの行動を把握して、ボトルネックやエンゲージメントの多い部分を特定します。
- ユーザー分析を実施する: バウンス率、カート放棄率、コンバージョン率などのパフォーマンス指標を追跡して、戦略を見直します。
CROのよくある間違い
モバイル向けの最適化を行わない
オンラインの売上ではモバイルコマースが大部分を占めますが、シームレスなモバイルエクスペリエンスを提供しているwebサイトはほとんどありません。
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問題点: モバイル対応していないサイトは購入でつまずきやすく、バウンス率が高まりコンバージョン率が低下します。
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解決方法:
- GoogleのMobile-Friendly Testなどで自社サイトをテストし、ユーザビリティに関する問題を特定する
- 小さい画面でもボタンやCTAをタップしやすいように、ナビゲーションを最適化する
- 複数のビューポートにシームレスに対応できるレスポンシブデザインを導入する
ページ読み込み速度を軽視する
ページ読み込み速度は、ユーザーエクスペリエンスとコンバージョン率の両面で非常に重要です。ページの読み込みが遅いと、ユーザーは不満を募らせてサイトを離脱してしまいます。
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問題点: ユーザーが期待するページ読み込み時間は2秒以下ですが、多くのコマースサイトではこの上限を超えています。この傾向は、モバイルの場合に特に顕著です。
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解決方法:
- Bingの モバイルフレンドリテストツール などで自社サイトをテストし、ユーザビリティに関する問題を特定する
- 小さい画面でもボタンやCTAをタップしやすいように、ナビゲーションを最適化する
- 複数のデバイスにシームレスに対応できるレスポンシブデザインを導入する
- Google ChromeのLighthouseツールを使用して、自社のモバイルパフォーマンスを調査し改善の余地がある部分を特定する
- ラボデータだけを参考にするのではなく、Google Search ConsoleやCore Web Vitalsレポートなどのツールで実際のユーザー指標(FID(First Input Delay)やLCP(Largest Contentful Paint)など)を分析し、現実のユーザーの行動に関する実用的なインサイトを入手する
ユーザージャーニーを複雑化させている
購入プロセスが煩雑であったり、わかりにくかったり、長々しいものである場合、製品に興味のあるユーザーであっても離脱しがちです。
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問題点: ナビゲーションがわかりにくかったり、手順やフォームのフィールドが多すぎたりすると、ユーザーは購入プロセスを進める気を失ってしまいます。
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解決方法:
- 必要な手順の数を最小限に抑えて、チェックアウトワークフローを簡素化する
- 初回訪問客がつまずかないように、ゲストチェックアウトを提供する
- 明快で論理的なナビゲーション構造を実装し、直感的にわかりやすいカテゴリとフィルターを採用する
- CTAを、ユーザーが購入プロセスを自然に進められるように構築する
独自のCRO戦略の構築
CRO戦略の構築手順
- 自社webサイトを調査する: Google Analyticsやヒートマップなどのツールで、離脱率の高いページを特定します。
- SMART目標を設定する: CROについて、測定および達成可能で関連性の高い期限付き目標を具体的に定めます。
- 継続的にテストする: ユーザーからのフィードバックにもとづいて、A/Bテストを繰り返し実施します。
- KPIを監視する: バウンス率、カート放棄率、顧客のライフタイムバリューなどの指標を追跡します。
Adobe Commerce があれば、次のステップで自社を次のレベルに引き上げることができます。
- 製品ページのパーソナライズ機能 でユーザーを惹きつけ信頼を構築する
- 柔軟でセキュアな支払いオプションを用意し、チェックアウトを効率化する
- 内蔵の分析機能 で、戦略をリアルタイムに改善する
製品デモ で、Adobe Commerceが効率的な顧客コンバージョンをどのように実現するのかをご確認ください。