売上税の概要と対応方法
デジタルコマース企業は、売上税を適切に管理する必要がありますが、それには多くの苦労が伴います。変動する税率を追跡し、米国のどの州に対して売上税を申告する必要があるのかを把握するなど、課題は山積しています。
売上税とその法律について理解を深めることで、いつ、どのように顧客から売上税を徴収するのかを判断し、コンプライアンスを遵守することができます。
本記事では、米国のデジタルコマースにおける売上税について解説します。
- 売上税とは?
- デジタルコマースにおける売上税の徴収
- 売上税のネクサス
- 各州のエコノミックネクサス法
- 売上税の不適切な管理に伴うリスク
- 売上税の法令を遵守する方法
- デジタルコマースにおける売上税対策のヒント
- 売上税対策の始め方
売上税とは?
売上税とは、商品やサービスに対して課税される間接税です。企業によって、販売額の一定比率が自動的に適用されます。 売上税の特徴のひとつは、商品が販売された州によって徴収されるため、税率が州ごとに異なることです。ただし、例外もあります。
デジタルコマースにおける売上税の徴収
企業は、購入者が居住しており、商品が課税対象となっている州において、物理的な拠点を有している場合、その州とビジネス上の関連性(ネクサス)があると見なされ、売上税を徴収する義務が生じます。 ただし、物理的な拠点がなくても、ネクサスがあると見なされる場合があります。2018年のサウスダコタ州とWayfairの裁判は、その一例です。サウスダコタ州議会は、州外の企業がデジタルコマースによって不当な優位性を得ているという批判を受けて、州内に物理的な拠点がなくても「それに相当するネクサスがある」と見なされた場合は、売上税の徴収と納付を義務付ける州法を制定しました。
多くの州では、デジタルコマース企業に対して売上税の徴収を義務付けているため、各州の法令を把握し、対策を講じる必要があります。
売上税のネクサス
州法にもとづいて消費者に対して売上税が適用され、かつ企業が州内において十分なプレゼンスを有する場合、売上税のネクサスが発生します。企業が十分なプレゼンスを有しているかどうかを判断する基準は、州ごとに異なります。
一般的に、州内にオフィスや倉庫を有している、従業員が常駐している、ドロップシッピングの拠点がある、展示会などのイベントで商品を期間限定で販売している場合、ネクサスがあると見なされます。
Sales Tax Instituteでは、特定の州で売上税のネクサスが生じる一般的なシナリオを4つ挙げています。
- マーケットプレイスネクサス: 決済処理やカスタマーサービスなど、セラー向けのインフラストラクチャを提供するデジタルコマースマーケットプレイスを運営している場合
- クリックスルーネクサス: 州外企業が州内企業に対して、リンクを介した紹介や販売に対する手数料を支払う場合。最低売上額を設定する必要がある
- アフィリエイトネクサス: 州外企業が、商品を販売するために州内企業と提携している場合。事業を共同所有する必要はなく、「州内における販売、配送、サービス、事業拠点の維持」は必ずしも含まれない
- エコノミックネクサス: 州内に物理的な拠点はないものの、州内の売上額または取引件数が一定の水準を超えている場合。エコノミックネクサスの審査要件は、州ごとに異なる
各州のエコノミックネクサス法
デラウェア州、モンタナ州、ニューハンプシャー州、オレゴン州では、デジタルコマース企業に対して売上税の徴収を義務付けていません。その他の46州およびコロンビア特別区では、エコノミックネクサス法を制定しています。ここでは、各州のエコノミックネクサスのしきい値についてまとめています。売上税の詳細については、各州の公式サイトを必ず確認してください。
- アラバマ州:売上が25万ドル以上(州税なし、地方税のみ)
- アラスカ州:売上が10万ドル以上
- アリゾナ州:売上が10万ドル以上
- アーカンソー州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- カリフォルニア州:売上が50万ドル以上
- コロラド州:売上が10万ドル以上
- コネチカット州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- フロリダ州:売上が10万ドル以上
- ジョージア州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ハワイ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- アイダホ州:売上が10万ドル以上
- イリノイ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- インディアナ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- アイオワ州:売上が10万ドル以上
- カンザス州:売上が10万ドル以上(取引件数の要件なし)
- ケンタッキー州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ルイジアナ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- メイン州:売上が10万ドル以上
- メリーランド州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- マサチューセッツ州:売上が10万ドル以上
- ミシガン州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ミネソタ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ミシシッピー州:売上が25万ドル以上
- ミズーリ州:売上が10万ドル以上(2023年1月1日より発効)
- ネブラスカ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ネバダ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ニュージャージー州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ニューメキシコ州:売上が10万ドル以上
- ニューヨーク州:売上が50万ドル以上、または取引件数が100件以上
- ノースカロライナ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ノースダコタ州:売上が10万ドル以上
- オハイオ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- オクラホマ州:売上が10万ドル以上
- ペンシルベニア州:売上が10万ドル以上
- ロードアイランド州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- サウスカロライナ州:売上が10万ドル以上
- サウスダコタ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- テネシー州:売上が10万ドル以上
- テキサス州:売上が50万ドル以上
- ユタ州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- バーモント州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- バージニア州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ワシントン州:売上が10万ドル以上
- ワシントンD.C.:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ウェストバージニア州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
- ウィスコンシン州:売上が10万ドル以上
- ワイオミング州:売上が10万ドル以上、または取引件数が200件以上
該当する州のしきい値を超える場合は、顧客から売上税を徴収する必要があります。ここからは、リスクを最小限に抑えながら売上税を徴収および納付する方法について解説します。
売上税の不適切な管理に伴うリスク
企業は、売上税に対して責任を負います。顧客から直接徴収できない場合、自社で負担する必要があります。売上税を適切に管理できなかった場合、次のような事態を招くことになります。
- 最大10%の延滞金
- 未払い利息
- 徴収手数料
- 一部の州における懲役刑のリスク
ビジネスへの影響を最小化しながら売上税を徴収するには、適切な対策を講じる必要があります。
売上税の法令を遵守するための4つの方法
コンプライアンス違反は、企業が犯しやすいミスのひとつです。売上税の要件は州や企業ごとに異なりますが、ほとんどのケースで有効なベストプラクティスがいくつかあります。次の手順は、コンプライアンスを確保するための出発点となります。
1.課税対象の商品と州のネクサスを確認する
売上税の法令を遵守する第一歩は、自社の商品が課税対象かどうか、どの州でネクサスが生じているかを確認することです。同じ商品であっても、その取り扱い方は州によって異なります。例えば、ペンシルベニア州では、衣類は課税対象ではないため、売上税を徴収する必要はありません。関連する州法を確認して、ネクサスが生じているかどうか、どのような売上税を徴収する必要があるのかを判断しましょう。
2.登録して売上税許可証を取得する
多くの州では、書面による許可を得ることなく売上税を徴収することは違法です。許可がない場合、企業が徴収した売上税を窃取する可能性があるからです。
許可証を取得する際、毎月、四半期ごと、年1回など、売上税を申告する頻度を確認します。関連する州の税務当局で登録をおこない、詳細を確認しましょう。
3.売上税を徴収する
許可証を取得したら、マーケットプレイスやショッピングカートで売上税を適用するように設定します。設定方法は、ツールごとに異なります。デジタルコマースに対応するツールを利用すれば、容易に設定できます。優れたコマースツールは、売上税を正確に計算し、データを活用して売上税の適用、徴収、納付を自動化するだけでなく、サポートへのアクセスが容易で、セキュリティ対策も充実しています。
多くの州では、州外企業に対して発送先課税を採用していますが、州内企業については発送元課税が適用されることもあります。税率は、州ごとに異なります。各州は、企業が拠点とする州の税率を適用するのか(発送元課税)、顧客が居住する州の税率を適用するのか(発送先課税)を決定できます。
これにより、州政府は、あらゆる管轄地域において、正確な売上税額を把握し、消費者から確実に徴収することができます。
4.売上税の申告書を作成および提出し、納付する
最後に、各州の期日までに売上税を申告します。州ごとに売上税データを追跡することで、申告が容易になります。また、多くの州では、管轄地域における取引件数も提示するよう求めています。
対象となる期間の売上がゼロで、売上税を徴収していなかったとしても、必ず申告する必要があります。申告作業をできる限り容易に進めるために、売上を正確に記録しておくことが重要です。
売上税の免除手続き
ほとんどの規則には、例外があります。売上税の場合、そうした例外は州ごとに異なるため、州の資料を確認する必要があります。一般的に、次のような例外があります。
- 製造企業: 商品の原材料や製造に使用される機器は、原則として免税となります
- リセラー: 消費者に直接販売するのではなく、認定リセラーに販売する場合は、売上税が免除される可能性があります。その場合、リセラーが適切な証明書を保持していることを確認する必要があります
- 非営利団体: 慈善目的に直接関連する場合、非営利団体への販売は免税となることがあります
デジタルコマースにおける売上税対策の6つのヒント
ここでは、コマース企業が売上税を適切に管理するためのヒントを紹介します。
- データを詳細に記録する: ビジネスに関するデータを詳細に記録することで、あらゆる納税義務をしっかりと把握し、問題が発生した際にデータを追跡できるようにしましょう
- 売上税と他の資金を区別する: 売上税の徴収を開始したら、他の事業資金と区別して管理する必要があります。売上税がどこに保管されているのかを常に把握し、必要に応じて全額納付できるようにしておきましょう
- あらゆる申告期限を把握する: 各州の申告期限をカレンダーに設定し、常に把握しておく必要があります
- コンプライアンスチェックを入念におこなう: 自社の税務プロセスを定期的に見直し、該当する州の法令を遵守しており、ネクサスが生じていることを確認します。例えば、従業員が退職した場合、その従業員が居住する州への納税義務がなくなるかもしれません。コンプライアンス基準を定期的に確認することで、申告期限の間際に慌てて修正する、といった事態を避けることができます
- 州の売上税法に関する最新の情報を把握する: 現在の売上税法は、2018年の判例をもとに整備されたものであり、それ以降、毎年変化しています。税率の変更や新しいネクサス要件の導入など、最新の情報を把握する必要があります
- 専門家に相談する: 売上税法の基本的な知識を習得し、自社のコンプライアンスを把握することも重要ですが、専門家のサポートを受けるための時間と費用を惜しむべきではありません。CPA(公認会計士)などの専門家に必ず相談し、コンプライアンスを徹底する必要があります
売上税の対策を始めましょう
売上税は、商品やサービスに対して、販売額の一定比率が自動的に適用されることで徴収されます。デジタルコマース事業を展開している企業は、売上税を管理し、コンプライアンスを維持するための方法を把握する必要があります。売上税とその法律について理解を深めることで、いつ、どのように顧客から売上税を徴収するのかを判断できるようになります。
次のステップは、売上税の法令を遵守するための体制を整えることです。まず、信頼できるコマースツールを導入することから始めましょう。リアルタイムのデータを一元管理することで、コンプライアンスのプロセス全体を簡素化することができます。
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