マーケティングの中核は、顧客との信頼関係を築き、自社の評判を向上させることです。
しかし、自社の製品やサービスの価値を宣伝しても、見込み客が必ずしもそれを信じてくれるわけではありません。マーケターは、説得力のある方法で自社の魅力を発信し、オーディエンスの信頼を獲得する必要があります。
そこで、インフルエンサーマーケティング戦略の出番です。充実したコンテンツによってブランドの認知度を高め、競争上の優位性を確保できます。
この記事では、インフルエンサーマーケティングの概要、種類、導入方法を包括的に解説します。
主な内容:
- インフルエンサーマーケティングとは?
- インフルエンサーマーケティングの種類
- インフルエンサーマーケティング戦略の導入方法
- インフルエンサーの選定
- インフルエンサーマーケティングの価値
- インフルエンサーマーケティングのよくある質問
- インフルエンサーマーケティングのまとめ
インフルエンサーマーケティングとは?
インフルエンサーマーケティングとは、企業がインフルエンサーと提携して自社を宣伝する SMM(ソーシャルメディアマーケティング)の一種です。人気のあるインフルエンサーに自社の製品やサービスを紹介してもらうことで、潜在顧客に効果的に訴求できます。
優れたインフルエンサーマーケティング戦略は、幅広いオーディエンスにリーチし、売上を増加させることができます。
インフルエンサーの定義は幅広く、一般的には、ソーシャルメディアで何百万ものフォロワーを抱える有名人として捉えられています。しかし、真のインフルエンサーとは、特定の分野の専門家とみなされている人を指します。
インフルエンサーは世界中に存在します。従来の芸能人や有名人よりも親しみやすく、オーディエンスの共感を呼びながら、ビジネスに大きな影響をもたらすことができます。特定の分野に関心を持つオーディエンスをロイヤル顧客化できれば、ビジネスの可能性は無限に広がります。
特定の市場においてブランドや製品の信頼を獲得するのに役立つ、社会的証明を軽視すべきではありません。潜在顧客は、インフルエンサーの意見をもとに、購入の意思決定を下すことができるからです。消費者の69%が、企業の宣伝文句よりもインフルエンサーの意見を信頼しているため、社会的証明はビジネスの成功に不可欠なものであると言えます。
インフルエンサーマーケティングは、一部の広告主が大きな成功を収めたことで注目を集め、オンラインマーケティングの主要な手法のひとつとなっています。
優れたインフルエンサーマーケティングは、一日で成し遂げられるものではありません。長期的なマーケティング戦略の一部として、インフルエンサーとの関係を構築する必要があります。
インフルエンサーマーケティングの仕組み
インフルエンサーマーケティングの目的は、インフルエンサーを通じて、ポジティブかつ自然な方法で、ターゲットオーディエンスに効果的にリーチすることです。インフルエンサーと提携し、ソーシャルメディア、動画、ブログを通じて、自社のメッセージやコンテンツを宣伝してもらいます。
多くの場合、インフルエンサーとの緊密な連携が必要となります。
インフルエンサーマーケティングは、主に次の3つの要素で成り立っています。
- 企業
- インフルエンサー
- オーディエンス
インフルエンサーマーケティングを成功させるには、あらゆるオーディエンスに最適なメッセージを、自然な形で届ける必要があります。メッセージは、企業のガイドラインとインフルエンサーのスタイルに適応しているだけでなく、オーディエンスに誠実な姿勢をアピールできるものでなければなりません。
インフルエンサーマーケティングの現状
インフルエンサーマーケティングは、大きな発展を遂げています。インフルエンサーマーケティングがソーシャルメディアに与える影響を示す、データとトレンドをまとめました。
- インフルエンサーマーケティングの市場規模は、2022年に164億ドルに到達: Influencer Marketing Hubによると、市場規模は2016年の17億ドルから2020年には97億ドル、そして2021年には138億ドルに増加しました
- 2023年以降、インフルエンサーマーケティングコストが増加:Statistaは、インフルエンサーマーケティングのコストが2023年に61億6,000万ドル、2024年には71億4,000万ドルに増加すると予測しています
- 多くのマーケターがインフルエンサーマーケティングを導入: Oberloの調査によると、インフルエンサーマーケティングは、今日のマーケティング施策の重要な要素とみなされており、マーケターの93%が、インフルエンサーを活用していると回答しています
- Facebookで動画のエンゲージメントが増加: 動画は、最もパフォーマンスの高い広告チャネルのひとつです。静止画像よりもオーディエンスを効果的に引き留めることができるため、エンゲージメントを促進できます
- 社内インフルエンサー施策を実施する企業が増加: 自社の評判と信頼を向上させるために、外部委託ではなく、自社でインフルエンサー施策を実施する企業が増加しています
- 多くのオーディエンスが、製品やサービスの検索にInstagramを活用: ある調査では、マーケターの10人中8人近くが、Instagramをマーケティング施策に不可欠な要素であると考えていることが明らかになっています。また、オーディエンスの87%が、製品に関する投稿を閲覧したあと、企業のオンラインストアにアクセスする、企業をフォローする、製品を購入するなど、特定の行動を取っています
インフルエンサーマーケティングの種類
インフルエンサーをフォロワー数や知名度をもとに分類する、業界全体で合意された定義はありません。インフルエンサーの種類に関する定義は、プラットフォームごとに異なります。
ここでは、一般的なインフルエンサーの種類を解説します。
- メガインフルエンサー:100万人を超えるフォロワーを擁するインフルエンサーを指します。多くの場合、芸能人や有名人が該当します。例えば、Kylie Jenner氏は、Instagramで3億8,800万人のフォロワーを抱えるメガインフルエンサーです。
米国のリアリティ番組「Keeping Up with the Kardashians(カーダシアン家のお騒がせセレブライフ)」に出演したことで知られる同氏は、2015年にコスメブランドを立ち上げ、さらなる名声を獲得しています。
- マクロインフルエンサー:10万人から100万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーを指します。これらのインフルエンサーは今後、ソーシャルメディアで大きな注目を集める可能性が高いです。Amy Jackson氏は、85万人を超えるフォロワーを擁するマクロインフルエンサーで、ファッション、美容、ライフスタイル、インテリアに関するコンテンツを発信しています。
同氏は、webサイトやソーシャルメディアプラットフォームを通じて、さまざまなシーンに適したコーディネート、お勧めのコスメ、旅行に最適なバッグなど、オーディエンスに役立つアイデアやインスピレーションを提供しています。同氏のコンテンツは、「ファッションは複雑である必要はなく、ミニマルでありながら洗練されたスタイルを実現できる」というメッセージを主軸としています。
- マイクロインフルエンサー:10,000から100,000人のフォロワーを抱えるインフルエンサーを指します。例えば、Instagramで活躍するJean Lee氏(@jeaniuseats)は、大学卒業後、グローバルイベントプランナーとして、世界中のホテル、レストラン、文化活動を紹介しています。
同氏は、レストラン「Le Cirque」のPRおよびソーシャルメディア担当マネージャーとして数年勤務したあと、ニューヨーク市で旅行や観光に特化したソーシャルメディア代理店を立ち上げました。同氏は現在、食のインフルエンサーとして有名レストランと提携し、世界的なブランドとのキャンペーンで大きな成功を収めています。
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ナノインフルエンサー:フォロワー数が10,000人未満のインフルエンサーを指します。例えば、4児の母であるLindsay Gallimore氏は、フランス語で「ママオオカミの巣」を意味する「Maman Loup’s Den」というブランドを運営しています。
同氏のコンテンツは「エコ子育て」に焦点を当てており、母親と子どもたちに高品質の製品を提供しながら、環境に配慮する方法を模索しています。同氏はまず、布おむつのプロモーションを始めました。その後、さまざまな環境に優しい製品にも手を広げ、現在ではスポンサー、プレゼント企画、製品レビュー、新米ママ向けのコンテンツなど、幅広いブログ記事を投稿しています。
また、ペットインフルエンサーなど、新しいタイプのインフルエンサーも注目を集め始めています。ライフスタイル、フィットネス、スキンケアといった従来の分野で長きにわたって活躍しているインフルエンサーも、フォロワーが興味を持つ可能性のある新たなトレンドや分野に挑戦しようとしています。
インフルエンサーマーケティング戦略の導入方法
次の手順に従うことで、インフルエンサーマーケティング戦略を効率的に導入できます。
手順1:目標と指標の設定
次の質問に答えることで、インフルエンサーマーケティング戦略で何を達成しようとしているのかを明確にします。
- インフルエンサーマーケティングの成功をどのように定義するか?
- ブランド認知度を向上したいか?
- 新しい製品やサービスに対する認知度を向上したいか?
- ソーシャルメディアのエンゲージメントを促進できるか?
- コンテンツは売上の増加に役立つか?
施策の目標に応じて、重視すべきKPI(重要業績評価指標)を決定します。インフルエンサーマーケティングの一般的な指標には、リファラルトラフィック、リーチ、オーディエンスの増加率、エンゲージメントなどがあります。
コンバージョンや売上も、KPI指標として採用できます。ただし、マーケティング施策の成果を追跡し、予算に対する正確なROIを算出するのは困難な場合があります。
手順2:予算の策定
インフルエンサーマーケティングの予算を決定します。予算が限られていたり、インフルエンサーマーケティングを始めたばかりの場合は、最も費用対効果の高い分野を把握する必要があります。
例えば、自社に最適なマクロインフルエンサーをひとり選出し、そのインフルエンサーとの提携に投資することができます。
一般的には、複数のナノインフルエンサーとマイクロインフルエンサーと提携し、インフルエンサーマーケティング戦略全体でリスクを分散させることが、最善の方法です。
手順3:ターゲットオーディエンスの特定
ターゲットオーディエンスと、自社が提携するインフルエンサーは、ライフスタイルや興味関心など、多くの共通点があります。優れたインフルエンサーマーケティング戦略を策定するには、適切なツールを使用して訴求力のあるメッセージを配信し、的確なオーディエンスとエンゲージメントする必要があります。
そのためには、オーディエンスのペルソナを作成し、リーチしようとしているオーディエンスをより詳細に把握する必要があります。続いて、インフルエンサーのペルソナを作成し、インフルエンサーにどのような資質を求めるべきかを判断しましょう。
自社のターゲットオーディエンスとインフルエンサーのターゲットオーディエンスは、合致している必要があります。例えば、洗練されたスポーツウェアブランドの場合、流行に敏感な20代から30代のオーディエンスをターゲットとするでしょう。その場合、オーディエンスと同年代のスポーツ選手やフィットネス関係者をインフルエンサーに選出できます。自社とインフルエンサーは、同様のタイプのフォロワーを擁し、オーディエンスが重複している必要があります。
手順4:管理計画の立案
インフルエンサーマーケティング戦略は、一度策定すればそのまま維持できる、といったものではありません。
インフルエンサーとの緊密な連携、コンテンツの監視、報酬の支払い、KPI測定、関係の強化など、チーム内で誰がどの取り組みを管理するのかを決定する必要があります。
インフルエンサーマーケティング戦略を策定する際に、社内リソースをどこから調達すべきかわからない場合は、代理店の活用を検討しましょう。
手順5:インフルエンサーとの交渉
自社に最適なインフルエンサーを選出したら、それらのインフルエンサーに連絡を取りましょう。
電子メールやソーシャルメディアのメッセージ機能を活用し、提携を打診しましょう。自社の要件と報酬を明確に伝えることが重要です。また、メッセージは簡潔明瞭なものにし、インフルエンサーに合わせてパーソナライズする必要があります。