ソーシャルメディアマーケティング:今後取り組むべき戦略とは

A professional building a social media marketing strategy

ソーシャルメディアマーケティングは、あらゆる企業のマーケティング戦略において不可欠な要素です。大きな課題のひとつは、常に変化し続けるというソーシャルメディアの性質です。ソーシャルメディアの変化のスピードに対応できるかどうかが、マーケティング戦略の成功を大きく左右します。1年前に成果を上げた戦略が、現在でも通用するとは限りません。顧客が利用するチャネル、行動、好みも変化しています。今こそ、ソーシャルメディアマーケティング戦略を見直すときです。

本記事では、時代の変化に合わせてソーシャルメディアマーケティング戦略を進化させるための方法を解説します。

1. 戦略の目標と指標の設定

ソーシャルメディアマーケティング戦略を策定するには、まずその最終目標を明確にする必要があります。目指すべき方向性が定まれば、全社を挙げた取り組みを推進し、目に見える成果を上げることができます。

ソーシャルメディアマーケティング戦略の目標と、その成果を測定するための指標の例を次に示します。

2. ターゲットオーディエンスの特定と調査

戦略の目標を設定したら、ペルソナを策定します。適切なペルソナを策定できるかどうかは、リアルタイムの顧客データを取得できるかどうかにかかっています。その準備が整っていない場合は、堅牢なリアルタイムCDP(顧客データプラットフォーム)を導入することが最優先課題となります。統合された顧客データがあれば、実際の顧客の行動やニーズを反映した正確なペルソナを作成できます。

User persona example for social media marketing

しかし、顧客のペルソナを作成しただけでは不十分です。ソーシャルメディア向けにペルソナを調整する必要があります。顧客は、ソーシャルメディアを通じて企業とパーソナルにつながることを期待しています。そのため、企業はパーソナライズされたメッセージによるターゲットを絞ったコミュニケーションを実現することが求められます。年齢、興味関心、地域などの顧客のデモグラフィック情報は、ターゲットオーディエンスを見極めるのに役立ちます。

顧客データが多いほど、作成するペルソナの精度も高まります。

  1. 世代ごとにソーシャルメディアの好みが異なるので、年齢層を適切に分析することが重要です。
  2. 役職も重要な属性のひとつです。例えば、役員はInstagramやFacebookといった主要なソーシャルメディアの利用を避ける一方で、LinkedInなどのビジネスに特化したチャネルでのつながりを求める傾向があります。
  3. デモグラフィック情報と心理的特性を組み合わせたサイコグラフィックは、的確なペルソナの作成に役立ちます。

アドビでは、ペルソナのテンプレートをご用意しています。ペルソナの作成に向けたアイデアの創出にご活用ください。

3. 適切なソーシャルメディアチャネルの採用

あらゆるオーディエンスに対応する万能なソーシャルメディアチャネルはありません。ターゲットとするオーディエンス層は、チャネルごとに異なります。例えば、ITスタートアップ企業の若い創業者は、TikTokの動画やInstagramのストーリーを楽しみながら夜のひとときを過ごす一方で、B2B企業の経験豊かな役員は、朝のコーヒーを飲みながらFacebookを利用するかもしれません。就職を間近に控えた大学生は、毎晩のようにYouTubeでビジネスマナーを学んでいることでしょう。

ソーシャルメディアマーケティング戦略における重要なプロセスのひとつは、ターゲットオーディエンスに最適なチャネルを把握することです。

上記のデータを踏まえると、Instagramに1日3回投稿したとしても若年層の男性オーディエンスにリーチすることが困難であることは明白です。ソーシャルメディアマーケティング戦略の成功は、デモグラフィック情報に大きく左右されるのです。

まずは、自社のオーディエンスに最適なチャネルをいくつか見つけることから始めましょう。この段階では、チャネルの数よりも質を重視します。いくつかのチャネルでブランドのプレゼンスを確立してから、他のチャネルへと拡大しましょう。

4. ターゲットを絞った魅力的なコンテンツの制作

利用するソーシャルメディアチャネルが決まったら、コンテンツを制作します。優れたソーシャルメディアマーケティング戦略の実現には、ターゲットを絞った魅力的なコンテンツが不可欠です。そのような強力なコンテンツを制作するためには、各チャネルで配信できるコンテンツの種類を理解する必要があります。

Instagramによる動画への移行は、ソーシャルメディアの変化の速さを物語る典型的な例であり、マーケターはそうした変化に適応することが求められます。長年画像に主軸を置いていた同社が動画へ移行したことは、ソーシャルメディアマーケティング戦略も大きな変革を迫られていることを意味しています。

好まれるコンテンツは、ソーシャルメディアチャネルごとに異なります。Instagramの新しいアルゴリズムでは、基本的に画像は高く評価されません。適切な種類のコンテンツを正しいチャネルに投稿する必要があります。

ソーシャルメディアチャネル向けのコンテンツ制作を検討するにあたり、留意すべき点を次に示します。

画像と動画のバランスを取る

画像は動画に比べて制作が容易ですが、静止画像ではメッセージを確実に伝えることができない場合があります。動画の制作には時間と労力を要しますが、顧客に十分な情報を提供できます。

例えば、Facebookのコンテンツは約60%から70%が画像で、15%から20%が動画となっています。残りはライブ動画、ストーリー、テキスト、リンクです。

A Xerox social media marketing Facebook post

人とのつながりを重視する

ソーシャルメディアを利用する人々の多くは、日々の疲れを癒してくれるような、気軽に閲覧できるポジティブなコンテンツを求めています。ビジネスの目標や業界を問わず、人とのつながりを感じられる親しみやすいコンテンツなら、顧客の共感を得ることができるでしょう。

A Wendy's social media marketing Twitter post

Wendy’sがTwitterで投稿しているコンテンツは、皮肉的で傲慢すぎるように思えるかもしれませんが、そうした皮肉やユーモアがファンを惹きつけ、話題となり、大きな旋風を巻き起こしているのは明らかです。

デザインの方向性を定める

ソーシャルメディアマーケティング戦略の策定を、住宅の設計に例えて考えてみましょう。海と潮風を感じるような爽やかなインテリアや、モダンな雰囲気のミッドセンチュリーデザインなど、家全体のコンセプトを決定します。その際に重要となるのが色です。見る人に与える印象は色によって大きく異なるので、配色を慎重に決定する必要があります。ソーシャルメディアマーケティング戦略についても、同じことが言えます。ブランドのアイデンティティを象徴する色やデザインを取り入れたコンテンツをソーシャルメディアで配信することで、ブランドの認知度を高め、プロフェッショナルで洗練された印象を与えることができます。

コンテンツの割合を決定する

「80/20」ルール(情報提供向けコンテンツ80%、プロモーション向けコンテンツ20%)を基準として、自社のターゲットオーディエンスに最適な割合を採用します。ここで重要な点は、商品やサービスの販売のみを目的としたコンテンツをフォローする人は誰もいないということです。有益なハウツーやフォロワーが関心を持つ情報を提供すれば、プロモーション向けコンテンツであっても受け入れられ、成果につながりやすくなります。

5. ソーシャルメディアへの投稿スケジュールの設定

次に、ソーシャルメディアへの投稿スケジュールを設定します。人員やベストプラクティスにもとづいて、各チャネルへの投稿頻度を決定します。ベストプラクティスはチャネルごとに異なりますが、週に数回、または人員に余裕があれば毎日投稿することが推奨されます。

An example of a social media marketing calendar

投稿する時間と曜日も重要な要素です。最適な時間と曜日はチャネルごとに異なります。以下に例を示します。

投稿するタイミングを決定したら、チームの能力にもとづいてコンテンツの制作スケジュールを決定できます。各チャネルでのコンテンツ投稿の成果を最大化するためには、投稿を自動化してコンテンツをすばやく配信できるようにする必要があります。

6. 競合調査

競合他社がソーシャルメディアをどのように活用し、成功を収めているのかを把握することも大切です。自社のターゲットオーディエンスの興味関心について、新たな発見があるかもしれません。

チャネル

自社が30歳から40歳のオーディエンスにリーチするためにFacebookの活用に注力している一方で、競合他社はTwitterによるマーケティングに多くのリソースを投入しているとします。その場合、その競合企業は業界に対する男性の関心が高まっていることを把握し、Twitterでのエンゲージメントを強化しているかもしれません。競合他社が成功を収めているチャネルは、自社にとっても優れたチャネルとなるでしょう。

その一方で、主要なソーシャルメディアチャネルで競争上の優位性を確立できていない場合は、競合他社が見落としている各チャネルの利点を見つけ出す必要があります。各チャネルの利用者のデモグラフィック情報を見直し、自社のターゲットペルソナとのニッチな共通点を探してみましょう。チャネルでの先駆者となることができれば、大きな強みになります。

コンテンツ

競合他社のソーシャルメディアマーケティング向けコンテンツを分析することも、成果につながる施策を見極めるための優れた手法です。例えば、競合他社がインフルエンサーマーケティングによって大きなエンゲージメントを生み出している場合、自社でも取り入れるべきです。

A social media marketing influencer post

コンテンツの雰囲気やイメージも考慮する必要があります。例えば、自社がプロフェッショナルで真面目なコンテンツを配信している一方で、競合他社はユーモアのあるコンテンツで話題となり、大きなエンゲージメントを生み出している場合、自社の戦略を見直す必要があるでしょう。ブランド全体のガイドラインは遵守しつつも、各チャネルに適した方法で利用者とコミュニケーションを図ることが大切です。

レビュー

多くのマーケターは、自社の顧客の声に耳を傾けることの重要性を理解しています。競合他社の顧客の意見もまた、ビジネスに大きな価値をもたらします。主要なソーシャルメディアチャネルで競合他社を指名検索して、利用者の反応を探ってみましょう。

Facebookの投稿における商品の問題に関するコメントや、オンラインツールの問題解決に役立つアップデートの提案など、利用者の声から得られるインサイトは、業界の欠点を浮き彫りにし、ビジネス機会へつなげる手助けとなります。

業界の大規模企業

業界をリードする大規模企業の動向も見落とすべきではありません。規模の違いから自社の競合他社とみなしていない場合でも、大規模企業は今後の展望を予測して先手を打つための豊富なリソースを擁しているため、そうした企業の動向は新たなトレンドをいち早く把握するための指針となります。

7. ソーシャルメディアマーケティング戦略の監査

ソーシャルメディアマーケティング戦略は、一度策定すればそのまま維持できる、といったものではありません。ソーシャルメディアにおける人々の交流は途絶えることはなく、そのトレンドも常に変化しています。ソーシャルメディアマーケティング戦略もまた、そうした変化に合わせて見直す必要があります。

設定した目標と指標を参照しながら、戦略の監査を定期的に実施します。6ヶ月前に成果を上げていた施策が、現在も同じように効果があるとは限らないからです。監査を実施する場合、成果の分析が重要となります。最初に設定した目標と照らし合わせて現在の戦略の成果を測定し、成果を上げている施策とそうでない施策を把握する必要があります。それらのインサイトをもとに、次の施策に向けて戦略を調整します。

ソーシャルメディアマーケティングに関するよくある質問

ソーシャルメディアマーケティングを取り巻く環境は急速に変化しているので、現状を把握するのは容易ではないかもしれません。そこで、ソーシャルメディアマーケティングに関するよくある質問とその回答をまとめました。

ソーシャルメディアマーケティングとは何ですか?

ソーシャルメディアマーケティングとは、ソーシャルメディアチャネルを活用して見込み客にリーチし、交流を深めるマーケティング手法です。 ソーシャルメディアマーケティングは、ブランド認知度の向上、ブランドコミュニティの構築、新規顧客の獲得、既存顧客のエンゲージメントの改善、webサイトトラフィックの増加など、さまざまな価値をもたらします。

ソーシャルメディアマーケティング戦略とは何ですか?

ソーシャルメディアマーケティング戦略とは、特定の期間におけるソーシャルメディアでの施策と投稿に関する計画です。 企業の最終目標を念頭に置きながら、各段階の目標とソーシャルメディアのベストプラクティスの変化に合わせて定期的に見直す必要があります。

ソーシャルメディアマーケティング戦略に必要なものは何ですか?

2022年から2023年にかけてのソーシャルメディアマーケティング戦略に求められる要素は、次のとおりです。

今後求められるソーシャルメディアマーケティング戦略

モダンなソーシャルメディアマーケティング戦略は、既存顧客と新規顧客の両方のエンゲージメントを促進し、ブランド認知度を高め、顧客の生の声から実践的なインサイトを引き出し、webサイトトラフィックと売上を増加させるなど、多くの価値を提供できます。

まずは関係者を集めて、自社にとって最も重要な目標について話し合うことから始めましょう。目指すべき最終目標を決めることが、堅牢なソーシャルメディアマーケティング戦略の実現に向けた出発点となります。

Adobe Experience Cloudに含まれるAdobe Marketo Engageは、あらゆるチャネルをまたいでパーソナライズされた顧客体験のオーケストレーション、コンテンツの最適化、施策の効果測定をサポートする、包括的なリード管理ソリューションです。

Adobe Marketo Engageなら、複数のソーシャルメディアチャネルをまたいだ投稿の管理、エンゲージメントの自動化、効果測定を単一の基盤でおこなうことができます。詳しくは 製品ツアーをご覧ください