セールスパイプライン入門 — メリット、ステージなど
セールスパイプラインとは、進行中のビジネス取引を体系的かつ視覚的に表現したもので、営業部門がその取引を獲得し、成約させるまでの各ステップを表したものです。成約する可能性が高い取引、その潜在的な価値、そして営業部門のパフォーマンスに関する重要なインサイトを提供します。
このガイドの内容:
- セールスパイプラインのメリット
- セールスパイプラインとセールスファネルの違い
- セールスパイプラインを構築する前にすべきこと
- セールスパイプラインの6つのステージ
- 独自のパイプラインの構築方法
- セールスパイプラインの評価方法
- セールスパイプラインで避けるべきよくある間違い
セールスパイプラインのメリット
セールスパイプラインを販売戦略に組み込むと、複数のメリットが得られます。
- 取引の可視性の向上: セールスパイプラインは、アクティブな取引に関する詳細なインサイトを提供し、営業担当者が価値の高い機会を特定し、優先順位を付けるのに役立ちます。
- チームのパフォーマンス測定の強化: マネージャーは、個人とチームのパフォーマンスを把握して、目的を絞ったコーチング、トップパフォーマーの表彰、パフォーマンスの低い営業担当者のサポートを実現できます。
- 正確な売上予測: パイプラインは、取引の価値や成約の可能性に関する明確なデータを提供して、正確な売上予測を可能にします。
セールスファネルとセールスパイプラインの違い
よく区別されずに使用されますが、セールスファネルとセールスパイプラインはまったく異なる概念です。
- セールスファネル: 購入者のジャーニーに焦点を当て、認知から購入までの顧客の進捗状況をマッピングします。この視点は通常、マーケティングに利用されますが、後半のステージでは営業にも関係してきます。
- セールスパイプライン: 売り手のジャーニーを表現し、営業部門がリードの獲得、機会の醸成、取引の成約を行うためのステップを表したものです。これは、セールスオペレーションに特化したツールです。
パイプラインを構築する前に考慮すべきこと
セールスパイプラインを設計する前に、ターゲットオーディエンス、自社の目標、チームのプロセスに関する具体的な情報を収集することが重要です。主要な前提条件は次の3つです。
- 見込み客の理解: 定量的なデータ(業界や企業規模など)と定性的なインサイト(問題点や課題など)の両方を含む詳細な購入者のペルソナを構築します。こうした情報を利用して、よりカスタマイズされたパイプラインを構築できます。
- 明確な目標の定義: 営業部門と各営業担当者の両方の測定可能な目標を設定します。こうしたベンチマークにより、進捗状況を追跡し、営業プロセスのギャップに対処できます。
- チームメンバーとのコラボレーション: パイプラインの設計プロセスに営業部門を関与させます。チームメンバーの意見をもとに、実際のワークフローを反映し、新しいシステムの支持を促進する構造にします。
セールスパイプラインのステージ
セールスパイプラインの概念をもっとわかりやすくするために、例として、B2Bソフトウェア企業がプロジェクト管理ツールを中規模の組織に販売する場合にどのようなステージをたどるかを紹介します。
1. リードジェネレーション
このソフトウェア企業は、業界カンファレンス、LinkedInでのつながり、webサイトのトラフィック分析から得たデータを活用して、潜在顧客を特定しています。一例として、ある中規模の組織が頻繁に自社webサイトにアクセスし、プロジェクト管理に関するガイドをダウンロードしていることに気が付きました。この組織はフォローアップのためにリードリストに追加されました。
2. リードクオリフィケーション
営業部門は、ニーズを評価するために、その組織と連絡を取りました。会話の中から、タスクの追跡とチームコラボレーションに苦慮していることがわかりました。これらは、自社のソフトウェアで直接解決できる問題です。企業規模、購入の準備状況、潜在的な売上などの基準に従って、さらなるエンゲージメントのために、このリードの優先度を高く設定しました。
3. コンサルテーション
営業担当者は、組織の課題に合わせてカスタマイズした製品デモをスケジュールしました。デモの際に、リアルタイムのコラボレーションや各種ツールとの連携などの機能をアピールしました。このソフトウェアが組織の既存のワークフローとどのように連携し、課題を解決することができるかがわかる、カスタマイズされた提案書を渡しました。
4. 交渉
デモの後、組織は関心を示しましたが、ライセンスを複数購入する場合の価格の調整をリクエストしました。営業担当者は、ボリュームディスカウントと、自信を持って投資できるよう試用期間の延長を提示して交渉しました。
5. 成約
組織は提案を受け入れました。契約が締結され、オンボーディングチームが実装のために引き継ぎました。オンボーディングチームは、ソフトウェアを業務にシームレスに統合できるようトレーニングとサポートを提供しました。
6. フォローアップ
実装から1か月経ち、営業担当者は満足度を向上させるために組織をフォローアップしました。このフォローアップで、信頼とロイヤルティを確立し、今後の追加の機能、アップグレード、サービスについて話し合う機会を得ました。
セールスパイプラインの構築方法
効果的なセールスパイプラインを作成するには、次のステップを踏みます。
- 見込み客の特定: 顧客関係管理(CRM)ツールを使用して、リードを整理、管理します。
- パイプラインのステージの定義: 営業プロセスに合わせてステージをカスタマイズし、購入者のジャーニーにおける明確なステップを各ステージに確実に反映させます。
- 指標の設定: 通常、各ステージを進む見込み客の数と各ステージにかかる時間を追跡します。そうすることで、パイプラインを改善して、成果を向上させることができます。
- アクティビティの割り当て: フォローアップ、デモ、提案書の提出など、各ステージで必要なアクションを明確に定義します。
- 追跡と最適化: パイプラインの指標を定期的に確認して、目標達成に貢献していることを確認します。必要に応じてステージやプロセスを改善します。
セールスパイプラインを評価する7つのステップ
1. パイプラインの主要指標を測定する
まず、パイプラインの健全性に関するインサイトをもたらす重要な指標を追跡します。そうした指標には、以下があります。
- セールスベロシティ: これは、取引がパイプラインを移動する速度を測定します。速度が高い場合は営業プロセスが効率的であることを示し、低い場合はボトルネックや非効率な箇所があることを示している可能性があります。
- コンバージョン率: 次のステージへと進むリードの割合を追跡します。これは、リードが頻繁に脱落する箇所を特定するのに役立ちます。
- 平均的なセールスサイクルの長さ: 成約までの平均時間を把握します。一般的に、セールスサイクルが短いほど、生産性と売上が高くなります。
- プライラインの価値: パイプライン内の全取引の金銭的価値を評価し、売上目標と比較します。そうすることで、パイプラインが目標達成に役立つ十分な大きさかどうかを確認できます。
2. チームのパフォーマンスを分析する
CRMや分析ツールを使用して、個人とチームのパフォーマンスを評価します。以下の点に着目します。
- ノルマ達成: 営業担当者の目標に照らしたパフォーマンスの高さ。絶えずノルマを達成できていない場合は、クオリファイドリードが少なすぎないか、取引が特定のステージで停滞していないかなど、根本原因を探ります。
- アクティビティレベル: アウトリーチ活動、フォローアップ、顧客とのやり取りの数を確認します。アクティビティレベルが低い場合は、追加のコーチングやサポートが必要なことを示している可能性があります。
- 成約率: トップパフォーマーを特定し、その人のやり方を分析します。こうしたベストプラクティスをチームで共有することで、全体のパフォーマンスを向上させることができます。
3. ボトルネックを特定する
パイプラインのどこで取引が停滞しているかを特定します。よくある問題には、次のものがあります。
- 基準が明確でないために、リードがクオリフィケーションステージに留まっている
- 不明確な承認プロセスや柔軟性のない価格構造が原因で交渉に時間がかかっている
- 提案書の提出後にフォローアップしないために、取引の停滞や放棄につながっている
4. パイプラインの確認を定期的に実施する
パイプラインの定期的な確認をスケジュールして、説明責任を維持し、改善の機会を特定します。確認の際には、以下を行います。
- 営業担当者と個別に面談する: 各営業担当者にアクティブな取引について手短に説明してもらい、直面している課題について話し合います。実用的なフィードバックを返し、取引を前進させるための計画を立てられるように支援します。
- チームとしてコラボレーションする: グループとしてのパイプラインのパフォーマンスを確認して、知識の共有や問題の解決を促します。
5. CRMツールを利用してインサイトを獲得する
CRMは、パイプラインの評価を効率化できる強力なレポート機能を備えています。そうしたツールを使用して、以下を行います。
- パイプラインのパフォーマンスの過去の傾向を追跡する
- パイプラインデータをチーム別、担当者別または取引のステージ別に分割して、詳細な分析を実施する
- レポートを生成して、関係者と共有したり、営業戦略を調整したりする
6. インサイトにもとづいて行動する
パイプラインを評価したら、変更を実装して、特定された問題に対処します。以下に例を示します。
- クオリフィケーション基準を調整して、質の高いリードをパイプラインに確実に導き入れる
- 交渉ステップを効率化して、遅延を削減する
- パフォーマンスの低い営業担当者に効果的な営業手法をトレーニングする
7. パイプラインを時間をかけて改善する
パイプラインの評価は1回限りのタスクではありません。反復的なプロセスとして扱い、データやフィードバックにもとづいて調整を加えていきます。そうすることで、市場の状況やビジネス目標に即してパイプラインが進化します。
セールスパイプラインのよくある間違い
効率的なセールスパイプラインを維持するために、以下のような失敗に陥らないようにしてください。
- パイプラインの管理をおろそかにする: 定期的に更新し、停滞している取引を削除して、パイプラインの焦点がぶれないようにし、効率を維持します。
- 長いセールスサイクル: 不必要なステップは短くして、パイプラインをスムーズに進めるようにし、コンバージョン率を向上させます。
- コミュニケーション不足: チーム間での引き継ぎをシームレスに行い、引き継ぎ時に見込み客を失わないようにします。
- 不十分なリードクオリフィケーション: 基準に合致しないリードはリソースの無駄です。確固たるクオリフィケーション基準を用いて、価値の高い機会に注力します。
- 特定のステージの見落とし: 一貫してパフォーマンスを発揮できるよう、パイプラインの全ステージにわたってリソースの配分を調整します。
セールスパイプラインの構築を始める
よく管理されたセールスパイプラインは、予測精度を高め、効率を向上させ、チームの成約能力を引き上げます。タスクを自動化し、リードを育成し、進捗状況を効果的に追跡するために、Adobe Marketo EngageなどのCRMツールを実装することを検討してください。
Marketo Engageの一意にパーソナライズされたナーチャリング施策と強力なスコアリング機能を他のExperience Cloud製品と組み合わせると、営業に引き継ぐ前に潜在的な購入者を開拓し、適格性を高めることができます。