スプリント計画とは、スプリントの目標を設定し、その目標を達成するために各スプリントを実行する前に開催されるミーティングのことです。この記事では、チーム全体のスプリント計画ミーティングを開催できるように、スプリント計画の全体を順を追って解説します。
この記事の内容:
- スプリント計画とは
- スプリント計画が重要な理由
- スプリント計画ミーティングのアジェンダ
- スプリント計画ミーティングの準備
- スプリントバックログ
- ストーリーの見積もり
- キャパシティの決定
- ベロシティの決定
- スプリント計画ミーティングの構成方法
- スプリント計画のベストプラクティス
- スプリント計画に取り組む
スプリント計画とは
スプリント計画では、すべてのプロジェクトは、通常2週間から4週間のタイムブロック、すなわちスプリントに分割されます(ただし、より短いスプリントを好むチームもあります)。スプリント計画では、各チームメンバーに、スプリント終了までに完了すべき作業項目と実行可能なタスクおよび期限が割り当てられます。
スプリント計画ミーティングでは、チーム(スクラムマスター、スクラムプロダクトマネージャー、スクラムチームを含む)が、次のスプリントで処理するバックログ項目を決定します。
このプロセスは共同作業であり、チームにとって優先すべきタスクやプロジェクト、そしてそれぞれにかかる時間について、全員に発言する権限が与えられます。ミーティングが終わる頃には、全員が、スプリント期間中に求められることを正確に把握し、スプリントの目標に関するコンセンサスを形成して、その目標を文書化する必要があります
スプリント計画は、チームメンバーが作業の実施時期について意見を述べることができる共同作業プロセスです。
スプリント計画の関係者

- プロダクトオーナー:バックログの絞り込みや優先順位付けなど、スプリント計画の準備を主導します。スプリントの目標(チームがスプリントを実行する理由)を定義し、スプリントのバックログまたは計画を策定します
- スクラムマスター:スプリント計画ミーティングのスケジュールを設定し、司会進行を務めます。チームメンバー全員にタスクを割り当て、過剰な負担が生じていないことを確認し、スプリントのバックログ作成を監視しながら、スプリント計画ミーティングの概要をまとめます
- 開発チーム:スプリント計画ミーティングの参加者であり、目標の達成に向けてタスクを遂行します。ミーティングでは、スプリント目標の把握、バックログの改善、ユーザーストーリー(アジャイルフレームワークの最小作業単位)の推定、各メンバーのキャパシティの決定に取り組みます。それらの決定事項にもとづいて、ユーザーストーリーとタスクを遂行します
スプリント計画が重要な理由
スプリント計画は、チームメンバー全員が参加するため、生産性の高い作業方法です。チームメンバーは、孤立して作業をするのではなく、プロジェクトやキャンペーンの展開に携わり、その中の自分の役割や責任を把握し、変化に対応することができます。
スプリント計画の利点
- 明確なスプリント目標を設定: ホワイトボードなどに主要な目標を書き出し、チームの誰もが目標を把握できるようにします
- 合意された計画に従ってスプリントを開始: 役割と責任は常に明確化され、プロジェクトの範囲や目標も明確化されるため、全員の時間を最も効果的に使うことができます。
- 現実的な期待値を確立: トラブルや遅延が発生した場合に備えて、余裕を持って期限を設定できます
- 潜在的な課題を特定: スプリント計画は反復的かつ俊敏なプロセスであり、課題が発生した場合に柔軟に対応できます
スプリントに関連する作業を管理することで、集中力と生産性を高めることができます。ワークフローに関する共通認識を構築することで、チームワークを大幅に改善できます。
スプリント計画ミーティングのアジェンダ
スプリント計画会議も他の会議同様、チームが集中して進められるようにアジェンダが必要です。スプリント計画ミーティングのアジェンダには、スプリントの最終的な目的とチームのキャパシティについての議論、そしてスプリントのバックログを詳細に検討してスプリントにタスクを割り当てることが含まれます。
スプリント計画ミーティングの準備
適切な準備を整えることで、スプリント計画ミーティングに要する時間を短縮し、失敗するリスクを低減できます。ミーティングを開始する前に、プロダクトオーナーは、他のチームメンバーの準備と動機付けをサポートする責任があります。
次の手順に従って、スプリント計画ミーティングの準備を進める必要があります。
-
プロダクトバックログを洗練化: プロダクトバックログは、製品を提供するために必要なすべてのタスクを優先順位付けしたリストです。スプリントバックログは、次のスプリントで対処する、プロダクトバックログから取り出された項目のリストです。プロダクトバックログを洗練するということは、アイデアやリクエストが寄せられたときに新しい項目を追加し、必要に応じて項目を削除または変更して、プロダクトバックログを積極的に管理することを意味します。
次回のスプリントに含めるタスクをプロダクトバックログから抽出するため、プロダクトバックログを洗練化することで、時間と労力を節約できます。開発チーム全員とスクラムマスターにプロダクトバックログの洗練化に協力してもらうことで、ミーティング時間を短縮し、次回のスプリントに適したタスクを容易に見つけることができます。
-
前回のスプリントを検証: 前回のスプリントを検証(スプリントレトロスペクティブ)を実施し、前回のスプリントで完了しなかったタスクと、次回のスプリントの所要時間を把握します
-
プロジェクト全体を検証: 顧客にどのような価値を提供しようとしているのかを、俯瞰的に検討しましょう。関係者から、フィードバックやコンテクストを提供してもらう必要があります。また、現在の市場の状況を考慮することが重要です。
スプリントバックログ
スプリントバックログは、スプリント中に達成する必要があるすべてのタスクのリストです。スプリント計画ミーティングでは、このバックログに何が残っているかを確認し、プロジェクトを軌道に乗せるために次に何をすべきかを決定します。
前回のスプリントで完了しなかった項目は、バックログに移します。また、前回のスプリントの間に出現した新しい項目もバックログに入れます。
ストーリーの見積もり
バックログ項目が完成したら、各項目を完了するのにかかる時間や労力を見積もることが重要です。この情報は、スクラムマスターやスクラムプロダクトマネージャーが、プロジェクトの予算やタイムラインをより効果的に管理するのに役立ちます。
このデータを適切に把握するために、スクラムチームは、各タスクの規模(多くの場合、ユーザーストーリーと呼ばれる)について話し合い、共同で見積もります。これは、数値ポイント、時間、比較サイズ(XS、S、M、L、XL、XXLなど)、または必要な労力を把握する別の手段を使用して行われます。
各チームメンバーの労力の評価を考慮することは重要です。これは、労力の評価が他のメンバーよりも大幅に高いまたは低い場合に、他のメンバーが考慮していないタスクの複雑さや単純さに関するインサイトをそのメンバーが持っている場合に特に役立ちます。このような議論は、より効果的な時間の見積もりをするのに役立ちます。
見積もりが完成したら、チームのキャパシティにもとづいて、これらのユーザーストーリーを何個、どの組み合わせで、次回のスプリントに組み込むことができるか決定できます。
キャパシティの決定
チームのキャパシティは、通常であればスプリント中にどれだけのストーリーポイントやバックログ項目を完了できるかを示すものです。チームのキャパシティは次のように計算します。
- チームメンバーの数に、1日に生産的に働ける時間数を掛けます。
- チームミーティングや他のタスクやプロジェクトに費やす時間を引きます。
簡単な例を見てみましょう。
- 単純な例では、1日に8時間働く7人のチームの場合、7人に8時間を掛ければ、そのチームのキャパシティがわかります。この場合、1日あたり56ポイント、週5日勤務の場合は280ポイントになります。
- 次に、会議や休暇、その他の要因で利用できない時間を引きます。たとえば、毎週水曜日に2時間のチームミーティングがある場合、総時間から14時間(7人×2時間)を引きます。2人のチームメンバーがそれぞれ2日ずつ休暇を取る場合、総時間から32時間(2人×8時間×2日)を引きます。そうすると、合計は234ポイントになります。
- また、すべてのメンバーが一日中100%の能力で作業すると考えることはできません。人間関係における会話やコーヒーブレイクはオフィス生活の一部であるため、各人の稼働率を考慮したほうがいいでしょう。1人当たりの生産性を75%と仮定すると、1週間当たりの総キャパシティポイントは234ポイントに0.75をかけて、175.5ポイントになります。2週間のスプリントの場合は、その倍の351ポイントになります。
ベロシティの決定
次に、チームのベロシティとキャパシティを同時に確認します。チームのベロシティを決めるとき、スクラムマスターやスクラムプロダクトマネージャーは、チームが同様の作業をどれくらいのスピードで完了できるかの参考にするために、過去数回のスプリントや過去のプロジェクトの例を準備しておく必要があります。
スプリント計画ミーティングの構成方法
適切に構成されたスプリント計画ミーティングは、スプリント計画の成功に不可欠です。スプリントの開始前、実行中、完了後のミーティングを効果的に調整することで、チームメンバー全員がタスクに対する共通認識を持ち、スプリント全体でコラボレーションを促進できるようになります。
- 目標の設定: スプリント全体の目標を、1から2行の文章にまとめましょう。プロダクトオーナーは、スプリント計画ミーティングの主要な目標を設定し、自由回答形式の質問を通じて、チームメンバーのコミュニケーションを促進する必要があります
- 変更点の議論: 前回のスプリントレトロスペクティブから起こったことを確認し、それが今回のスプリントに与える影響を話し合う必要があります。この段階では、綿密さと透明性が重要となります
- ベロシティの決定: スプリントの所要期間を把握する必要があります。これは、タスクを完了するために必要なスプリントベロシティまたは時間枠とも呼ばれます。ベロシティを判断する最善の方法は、過去のスプリントの所要期間を検証することです。通常、スプリントを完了するのに1~2週間かかります
- キャパシティの決定: チームメンバー全員が、自身の能力や作業負荷に応じて、スプリントで取り組むことができるタスクについて意見を共有できます
- スプリントバックログの項目の選択: まず、製品のバックログを確認します。続いて、ユーザーストーリーを推定し、管理可能であることを確認します。規模が大きすぎる場合は、より小さなユーザーストーリーに分割します。タスクは、短いスプリント期間内に実行する価値があり、達成可能である必要があります。取り組む項目を決定したら、製品のバックログからスプリントのバックログに項目を移動します。
- タスクの割り当て: 項目を決定したら、各チームメンバーが今回のスプリントで何を達成すべきか判断する必要があります。スクラムマスターは、チームメンバー全員が何に取り組んでいるのかを記録できます
- 懸念事項と依存関係の記録: タスクを割り当てたら、チームの依存関係(別の部門がスケジュールに関するフィードバックを提供しないなどの潜在的なリスク)を検証する必要があります。チームは、スプリント全体の時間管理などの懸念事項も検証する必要があります。
- 合意形成: チームメンバー全員が、スプリントの目標とバックログに合意する必要があります。
スプリント計画ミーティングの所要時間
スプリント計画ミーティングの所要時間は、開発チームの規模、プロジェクトの複雑さ、スプリントの期間によって異なります。一般的な経験則として、スプリント計画ミーティングの所要時間を求めるには、スプリントの週数に2時間を掛けます。ただし、時間が経つにつれて、より短いミーティングの方が効果的だと思う場合もあるでしょう。
この方程式により、徹底した議論を通じて各チームメンバーの意見を汲み取り、チームメンバー全員がスプリントの目標とタスクを把握できるように、十分なミーティング時間を確保できます。スプリント計画ミーティングが長すぎると、チームの集中力を欠いたり、全員が参加する必要のない会話に逸れたり、次回のスプリントには関係ないことが取り上げられたりする可能性があります。
スプリント計画のベストプラクティス
次のような有効であることが実証されている戦略を用いて、チームでの確認時間を最小限に抑え、関係者全員が協力的で前向きな体験ができるようにしましょう。

- 洗練されたバックログから始める: チームはユーザーストーリーを包括的に理解し、最も重要なタスクに優先的に取り組むことができます
- 明確な目標を定義する: ユーザーストーリーを先に進めるためには、目標を明確に定義する必要があります。
- 日次スクラムを活用する: スクラムマスターは通常、15分以内で終了する「スクラム」と呼ばれる朝のミーティングを開催します。スクラムの目的は、各人の日々の作業負荷を迅速に確認し、潜在的な問題を事前に特定することです。
- 必要十分の計画を立てる: 期待値を示すのは避けます。チームメイトが今後数週間のうちにどのようなことができると考えているかに耳を傾け、検討します
- 完了の意味を定義する: チームメンバーに必要な詳細を提供することと、マイクロマネジメントは紙一重です。可能な限り、スプリント計画の明確な終了点を定義する必要があります
スプリント計画に取り組む。
スプリント計画は、チームが時間やスキルなどの様々なリソースを活用して、プロジェクトを効率的に完了するのに役立ちます。準備が整ったら、バックログを確認し、短期間で取り組む価値があり、実現可能なタスクを選択してます。
スムーズでアジャイルなスプリント計画を促進するために設計されたツールを活用すれば、可能な限り最高の結果を得ることができます。
Adobe Workfrontは、リソース管理、設定可能なダッシュボード、ネイティブな統合機能を備えており、優先順位や期限の変更に迅速に対応できるようにチームをサポートします。Adobe Workfrontは、従業員、チーム、企業が作業の目的を達成することを支援するために構築されました。現在では、3,000以上の組織と世界のトップブランド10社が毎日の作業で活用しています。