プロジェクト管理入門:基礎知識と実践手順を解説

A woman speaks with a man about how to manage a project.

プロジェクトを適切に管理できることは、業種を問わず、あらゆる企業にとって重要な能力のひとつです。しかし、プロジェクト管理の手法、専門用語、概念は数多くあるため、プロジェクトを効果的に管理するためにどのような手順を踏めばよいのかわからないかもしれません。優れたプロジェクト管理を実現するための正しい手順を学ぶことで、多様な選択肢の中から、自社に最適な手法を見つけ出すことができます。

既にプロジェクトに取り組んでいる、今後取り組む予定がある、プロジェクト管理スキルを向上させたいなど、ビジネスを成長させるためには、プロジェクト管理のベストプラクティスに従う必要があります。この記事では、プロジェクト全体を効果的に管理するための実践的な手順を解説します。

主な内容:

プロジェクト管理の手順:

  1. 調査と目標の設定
  2. ビジョンステートメントの作成
  3. 手法の選定
  4. チーム編成とコミュニケーション
  5. プロジェクトスコープの定義とタスクの割り当て
  6. プロジェクトリスクの特定
  7. 関係者のエンゲージメントの促進
  8. プロダクトロードマップの作成
  9. 十分なリソースの確保
  10. スケジュールの策定
  11. ソフトウェアの選定
  12. キックオフミーティングの実施
  13. 進捗状況の確認と調整
  14. マイルストーン達成の確認

プロジェクト管理の概要

プロジェクト管理とは、チームを率いてプロジェクトを遂行し、予算および予定の範囲内に完了するためのプロセスを指します。プロジェクトのあらゆる要件を満たすために、人材、ツール、成果物など、プロジェクトのあらゆる側面を管理する必要があります。

プロジェクト管理は社内タスクだけでなく、クライアント向けのタスクが含まれる場合もあります。具体的には、マーケティングコンテンツの制作、新しい製品やサービスの立ち上げ、資材の調達などをおこないます。

プロジェクト管理は、ほぼあらゆるビジネスプロセスにとって有益です。効果的なプロジェクト管理を実現することで、次のようなメリットを得られます。

プロジェクト管理では、プロジェクトの成功率を高めるために、承認されたプロセスに従ってプロジェクトを統率するリーダーが必要です。具体的なプロセスはチームごとに異なりますが、ここではプロジェクトを包括的に管理するための一般的な手順を紹介します。

1.調査と目標の設定

プロジェクトを正式に開始する前に、事前調査をおこない、計画を立てることが重要です。その目的は、プロジェクトがビジネスの成功に必要である理由を明らかにすることにあります。

プロジェクトを通じて解決しようとしている問題は何かを明確にしましょう。例えば、アプリのユーザーエクスペリエンスの強化、登録者の獲得と維持、新製品の認知度と売上の向上などが挙げられます。また、そのプロジェクトにリソースを投入することが重要である理由も明確にする必要があります。例えば、マーケティングプロジェクトは重要ですが、欠陥の多い製品をマーケティングしても意味がありません。予算、スキル、スケジュールの制約も、プロジェクトの優先順位を左右します。

この段階を統括するのは、必ずしもプロジェクトマネージャーであるとは限りません。プロダクトオーナー、マネージャー、経営陣が責任者となる場合もあります。

2.ビジョンステートメントの作成

ビジョンステートメントは、プロジェクトのアイデアを明確にし、戦略的プランの基盤を構築するのに役立ちます。プロジェクトの要点を簡潔にまとめた「エレベーターピッチ」の役割を果たします。ビジョンステートメントの作成手順は、次のとおりです。

3.手法の選定

さまざまなプロジェクト管理手法やフレームワークを把握し、タスクをどのように優先順位付け、遂行、可視化すべきかを判断する必要があります。ここでは、プロジェクト管理を加速させる主な手法を紹介します。

1.ウォーターフォール手法

従来のプロジェクト管理手法のひとつであるウォーターフォール手法では、プロジェクトを複数の工程に分割し、各工程を順番に進めていきます。プロセスの最後に製品を検証します。この手法は、曖昧な部分がほとんどない単純なプロジェクトに適していますが、イテレーションを何度も繰り返したり、フィードバックを組み込んだりする必要がある場合は推奨されません。

2.カンバン手法

カンバン手法とは、プロジェクト管理プロセスを可視化するアプローチです。物理的またはデジタルのカンバンボードを用いて、タスクを「計画中」、「進行中」、「完了」といった複数の工程に分割します。カンバン手法は、複数のプロジェクトの進捗状況をひと目で把握したい場合に最適です。ただし、プロジェクトの変更が頻繫に発生する場合は、カンバンボードで整理しながら管理することが困難になります。

3.スクラム手法

スクラム手法では、プロジェクトを小さいタスクに細分化し、「スプリント」と呼ばれる一定の期間内に各タスクを迅速に完了する必要があります。各スプリントでは、ひとつの課題やタスクに焦点を当てます。毎日チーム全員でミーティングを実施し、タスクの進捗状況を共有して、課題に対処します。スクラム手法は、所要期間が予測可能なタスクを管理するのに最適です。ただし、スピードが重視されるため、人材不足の場合は推奨されません。

4.アジャイル手法

アジャイル手法は、スクラム手法と同様にのスプリントを繰り返してプロジェクトを進めますが、スプリントの期間は長くなります。ひとつのアジャイルスプリントに2週間から数ヶ月かかることも珍しくありません。アジャイル手法は、検証とフィードバックを繰り返しおこなうソフトウェア開発のために考案されました。タスクを短期間で繰り返しおこなうことで、製品が完成する前にフィードバックを収集し、迅速に対応できます。ソフトウェア開発などの反復的なプロジェクトには最適ですが、人材不足の場合は推奨されません。

5.V字モデル

V字モデルとは、ソフトウェア開発向けに生み出されたもうひとつの手法です。V字モデルは、ウォーターフォール手法を改良し、プロセスの最終段階だけでなく、各工程の終わりに、次の工程に進む前に製品を検証します。この手法は、小規模なプロジェクトに最適です。ただし、綿密な計画を立てる必要があります。

4.チーム編成とコミュニケーション

プロジェクト管理手法を選択したら、チームメンバーを選出し、その役割と責任を定義する必要があります。一般的に、チームの規模が小さいほど俊敏性が高まるため、チームの人数を最小限に抑えましょう。少なくとも、プロジェクトスポンサー、プロジェクトスコープを定義する担当者、プロジェクトマネージャーを指名する必要があります。

続いて、チームメンバーとコミュニケーションを取る必要があります。チーム全員が最新の情報を入手できるように、毎週ミーティングを実施しましょう。ミーティングでは、単に何をすべきかを説明するだけでなく、具体的な実行計画について話し合うことが重要です。プロジェクトマネージャーは、チームメンバー全員の状況を常に把握し、プロジェクトの進捗を定期的に共有する必要があります。また、プロジェクトの要件や期限などの詳細情報を伝達し、社内リソースを確保する必要があります。

プロジェクト管理とは、チームを率いてプロジェクトを遂行し、予算および予定の範囲内に完了するためのプロセスを指します。

5.プロジェクトスコープの定義とタスクの割り当て

プロジェクト管理を成功させるには、プロジェクトスコープが現実的かどうかを把握する必要があります。プロジェクトスコープ、チームの制約事項、プロジェクトの境界を定義し、プロジェクトで対応すべきタスクとそうでないタスクを明確にすることが重要です。不明確な点がある場合は、プロジェクトスコープを最小限の範囲に留めることをお勧めします。初回イテレーションの完了後、必要に応じて別のプロジェクトを立ち上げることができます。

また、プロジェクトの目的を把握し、成功に導くための目標を設定する必要があります。目標は、プロジェクトの価値を決定づけるものです。例えば、webサイトの訪問者数の増加、売上の向上、新しいプロジェクトの立ち上げ、といった目標を設定できます。一方、目的は、プロジェクトの実行手順を説明します。例えば、ソーシャルメディアに投稿してwebサイトへのアクセスを増やす、アフィリエイトプログラムを立ち上げて売上を向上させる、新製品を開発するために市場調査を実施する、といったことが挙げられます。

プロジェクトマネージャーは、これらの業務をすべてひとりで遂行する必要はありません。目標を達成するために必要なタスクを明確に定義したら、各タスクを信頼できるチームメンバーに割り当てましょう。成果を最大化するためには、各メンバーの強みを発揮できるかどうかを考慮する必要があります。また、最も重要なタスクを最初に対応してから、緊急性の低いタスクに取り組むようにしましょう。

6.プロジェクトリスクの特定

起こり得るあらゆるリスクを予測することはできませんが、プロジェクトを妨げる可能性のある課題を自問自答することが重要です。潜在的なリスクについて事前に対策を検討することで、重大な問題が発生する前に解決できる可能性が高まります。例えば、1日に3つのブログ記事を作成する必要がある場合、その作業負荷を管理できるコピーライターを雇う必要があります。期限までに作業を完了することを妨げるような、チームメンバーに対する制約や外部要因がないかどうかを検討しましょう。

リスク管理計画を策定することで、プロジェクトの進行を阻む可能性のある課題を特定し、対策を講じることができます。あらゆるリスクを軽減することはできませんが、次の観点からリスクについて検討することをお勧めします。

7.関係者のエンゲージメントの促進

関係者とは、プロジェクトに関与する社内外のあらゆる人を指します。関係者はプロジェクトの成功に影響を与える可能性があるため、適切なタイミングでフィードバックを求めることが重要です。例えば、新しいwebサイトのコンテンツを制作する場合、法務部門が重要な関係者となる可能性があります。

関係者のエンゲージメントを促進する最善の方法は、関係者に最新情報を常に共有することです。事前に期待値を設定し、プロジェクトの進捗状況に関する最新情報を継続的に提供しましょう。コミュニケーション計画は、関係者と良好な関係を構築するためのロードマップです。最新情報をいつ、どのように、誰に提供する必要があるのかを詳細に定義できます。

8.プロダクトロードマップの作成

プロダクトロードマップを作成し、プロジェクトの目標と成果物の概要を説明する必要があります。プロダクトロードマップは、タスク、要件、マイルストーン、留意事項をタイムライン上に視覚的に表示するツールです。具体的な内容は、プロジェクト管理手法によって異なります。

プロダクトロードマップは、関係者の期待値を管理するのに役立ちます。わかりやすいビジュアルにより、関係者はビジョンや計画を把握しやすくなります。また、計画の伝達や他のチームとのリソースの調整も容易になります。

: A graphic that shows an example of a project management roadmap.

9.十分なリソースの確保

プロジェクトを遂行するには、リソースが必要です。プロジェクトを開始する前に、効率を最大化するためにリソースを事前に計画、スケジュール、配分することが重要です。リソースには、人材、ソフトウェア、対象分野の専門家、物理的な素材が含まれます。また、実際のチームメンバーとリソースにもとづいて、実現可能な計画を立てる必要があります。例えば、専門家に対するニーズが、チームの作業量および作業スケジュールと一致していることを確認する必要があります。

十分なリソースを確保できなければ、成果を上げられなかったり、期限に間に合わなかったりする可能性があります。多くの場合、プロジェクトが失敗する主な原因は、予算不足です。予算を超過している場合、または期限を過ぎている場合は、次の3つのオプションを検討しましょう。

  1. 期限を延期する
  2. 期限に間に合うように予算を増額する。必要に応じて人材を増やす
  3. 期限に間に合うようにプロジェクトスコープを縮小する

これらのオプションはいずれも、関係者の要件と一致しないため、望ましいものではありません。しかし、リソースの問題はプロジェクトにつきものであり、品質を損なうことなくプロジェクトを遂行するために、可能な限り最善の措置を講じることが重要です。

10.スケジュールの策定

手順8で作成したプロダクトロードマップをもとに、プロジェクトの各工程に適切なチームメンバーを配置します。ロードマップ内の大きなタスクは、小さいタスクに分割し、それぞれ担当者を割り当てる必要があります。各工程が完了するまでにどの程度時間がかかるのかを把握していれば、チームに過剰な負担をかけることなく、全体のタイムラインを予定どおりに進めることができます。

チームの作業負荷と期限のバランスを取るために、現実的なスケジュールを設定することが重要です。成果物や期限を調整する必要がある場合は、関係者と話し合う必要があります。

11.ソフトウェアの選定

今日のデジタルファーストな時代で成功を収めるには、プロジェクトを手作業を管理していては間に合いません。次のようなメリットをもたらす、プロジェクト管理ソフトウェアを導入する必要があります。

プロジェクト管理方法を学ぶことで、さまざまなフレームワーク、専門用語、概念の違いを明確に把握できます。

12.キックオフミーティングの実施

キックオフミーティングとは、プロジェクトの立ち上げ段階で実施する最初のミーティングです。プロジェクトのチームメンバーと関係者全員が参加する必要があります。キックオフミーティングの目的は、関係者全員が同じ認識を持ち、プロジェクトのビジョンを共有し、質問に答えることです。優れたキックオフミーティングは、プロジェクトをスムーズに進めるのに役立ちます。プロジェクトマネージャーは、キックオフミーティングの価値を最大化するために、綿密な計画を立てる必要があります

キックオフミーティングの一般的な構成要素は、次のとおりです。

  1. チームメンバーの紹介(5から10分): チームメンバーはそれぞれ自己紹介します
  2. クライアント/コンテクスト(5分): プロジェクトの概要を全員に説明します
  3. スコープと成果物(20分): プロジェクトのタスクと期限を説明します
  4. アプローチ(10分): プロジェクトのロードマップを共有し、実行計画を説明します
  5. 役割と責任(5分): 特定のチームメンバーに責任を割り当て、誰が何を担当するのかを明確にします
  6. チームワーク(5分): どのチームメンバーが共同作業または承認する必要があるのかを明確にします
  7. タイムライン/スケジュール/マイルストーン(5分): プロジェクトのマイルストーンについて合意し、それぞれ期限を設定します。プロジェクト管理ソフトウェアを活用して各マイルストーンと期限を管理し、チームのモチベーションを維持することが望ましいです
  8. 次のステップ(5分): キックオフミーティングの終了後、最初に取り組む必要があるタスクのリストを作成します
  9. 質疑応答(5から10分): ミーティングを終了する前に、質疑応答の時間を設けます

13.進捗状況の確認と調整

優れたプロジェクト計画を策定したとしても、あらゆる予期せぬ問題を考慮することはできません。必要な調整ができるように、計画にある程度の柔軟性を持たせることが重要です。

プロジェクトが予定どおりに進まない場合は、計画を見直す必要があります。例えば、プロジェクトスコープが期限に対して大きすぎる、またはチームメンバーがプロジェクトに必要な専門知識を有していないことが判明した場合は、データをもとに計画を変更する、リソースの追加を要求する、スコープを縮小する、といった必要な調整をおこないます。

14.マイルストーン達成の確認

マイルストーンは、プロジェクトのロードマップ上の重要な節目であり、チームが大きな成果を上げたことを意味します。特に、チームが予定よりも早くプロジェクトを完了できた場合は、その努力と功績を称えましょう。

マイルストーンの達成を祝うには、次のような方法があります。

プロジェクトインサイトで、プロジェクト管理を超えるスケールを実現

プロジェクト管理方法を学ぶことで、プロジェクト管理のさまざまな側面を明確に把握できます。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトを効果的に管理するために必要な要素を把握することで、スコープクリープを回避することもできます。

プロジェクト管理を成功させるためには、プロジェクトのライフサイクル全体を容易に管理できる、優れたプロジェクト管理ソフトウエアが必要です。

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