プロジェクト管理:概要と実践方法を解説
あらゆる企業は、マーケティング、開発、運用など、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。その内容は一つひとつ異なりますが、それぞれ始まりと終わりがあります。担当チームは、関係者の期待に応えながら、予算と予定の範囲内でプロジェクトを完了する必要があります。
それを実現するのが、プロジェクト管理です。プロジェクト管理は、社内の他の管理の役割や戦略とは異なり、具体的かつ的を絞った取り組みです。優れたプロジェクト管理は、チーム間の連携を促進し、作業を効率化して、測定可能な成果をもたらします。
本記事では、プロジェクト管理の概要、利点、実践方法を解説します。
プロジェクト管理とは?
プロジェクト管理とは、チームを率いてプロジェクトを遂行し、予算および予定の範囲内に完了するためのプロセスまたはフレームワークを指します。 プロジェクト管理の戦略と実践は、建設や災害救援などの現場から、経営やマーケティングといったオフィス業務に至るまで、幅広い分野で取り入れられています。
プロジェクトとは、ひとつの目標を達成するための一連のタスク、成果物、取り組みを指します。プロジェクトには、プロジェクトマネージャー、チームメンバー、社内外の関係者、顧客が関わります。多くのプロジェクトマネージャーは、タイムラインの可視化、タスクの整理、チームの連携、進捗状況の報告をおこなうために専用のツールを使用します。
プロジェクト管理とチーム管理の違い
プロジェクト管理は、プロセスと実践方法において重複する部分があるものの、一般的なチーム管理とは異なります。最も大きな違いは、プロジェクト管理では、特定のタイムフレームの独立した業務範囲に取り組むことです。一般的な管理では、実験、検証、適応により多くの時間をかけることができます。一方、プロジェクト管理では、効率的に進める必要があります。そのため、プロジェクトマネージャーには、俊敏性や統率力などのさまざまなスキルが求められます。
プロジェクト管理は、各プロジェクトの内容が少しずつ異なるため、他の管理業務とも一線を画します。プロジェクトマネージャーは、新しい目標、さまざまなリソース、スケジュールの変更に対応するために、常に戦略を調整する必要があります。チームマネージャーは、効率的なプロセスを構築すれば、何度も再利用できます。一方、プロジェクトマネージャーは、同じ戦略をもう一度利用することはほとんどできません。
プロジェクト管理の利点
Wellingtoneのレポートによると、企業の89%が、少なくともひとつ以上のPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を編成しています。その理由は容易に理解できます。企業の40%が、PMOは、プロジェクトのもたらすメリットを常に最大化できると回答しています。また、プロジェクト管理は、自社だけでなく顧客にもメリットをもたらします。
自社のメリット
プロジェクト管理は、プロジェクトを成功に導くだけでなく、社内の各チームにさまざまなメリットをもたらします。
- 効率性: プロジェクト管理は、チームがプロジェクトを順調かつ予定どおりに進めるのに役立ちます。プロジェクトをスムーズに進行できるようにすることで、チームはプロセスではなく、製品やサービスに注力できます
- 成長と開発: 作業に取り組みながらプロジェクトを管理するのは、容易なことではありません。専任のプロジェクトマネージャーを配置すれば、チームは作業に集中し、新たな課題に取り組めるようになります。これにより、従業員体験の向上、スキルとキャリアの強化、離職率の低下を実現できます
- 生産性の向上: プロジェクトマネージャーは、チームがプロジェクト管理ではなく自身の作業に専念できるようにすることで、リソースを解放します。これにより、従業員はより多くの作業を遂行できるようになります
顧客のメリット
顧客は、開発プロセス全体を通して、効率的なプロジェクト管理によるメリットを享受できます。
- 質の高い成果物: 納期と予算を遵守してプロジェクトを完了させることは、顧客満足度の向上につながります。また、従業員がそれぞれの能力を自在に発揮できるようにすることで、より質の高い成果物を顧客に提供できます
- コミュニケーションの簡素化: 優れたプロジェクト管理では、ひとりの従業員があらゆる連絡事項を管理し、チーム全員と共有することで、コミュニケーションラインを明確にできます。プロジェクトマネージャーは、社内チームと社外関係者を橋渡しする役割を担います
- 透明性と説明責任: プロジェクトマネージャーは、目標を明確に定義することで、正確なレポートを作成できます。チームの責任と進捗状況を把握し、予算とタイムラインに関する最新情報を、タイミングよく顧客に提供できます
プロジェクトのメリット
慎重かつ徹底したプロジェクト管理は、プロジェクト自体にもメリットがあります。関係者全員が、これらのメリットを享受できます。
- 優れた組織編成: プロジェクトのタイムライン、目標、予算を明確にすることで、スコープクリープを抑制し、プロジェクトを順調に進めることができます
- 柔軟性の向上: 適切な計画を立てることで、課題を予測し、すばやく対処できます。プロジェクトマネージャーは、予想される変更と予想外の変更を考慮することで、プロジェクトを可能な限りスムーズに遂行できます
プロジェクト管理の8つの要素
プロジェクト管理の要素は、企業やプロジェクトごとに異なります。しかし、一貫性のあるフレームワークはいくつか存在します。プロジェクト管理において考慮すべき事項は、主に3つのテーマ(制約)に分類できます。それは、「時間」、「スコープ」、「コスト」です。
時間
プロジェクトは、時間の制約があります。そのため、作業をスケジュールどおりに進めることは、プロジェクト管理の基本となります。
- 統合管理:プロセスと戦略を調整し、個人とチームを適切にまとめるための計画を作成するプロセスです。一般的に、プロジェクト計画を活用します
- スケジュール管理:まず、現実的なタイムラインとその管理方法に関するガイドラインを策定します。タイムラインを監視し、必要な変更をおこなう手順も明確にします
スコープ
計画から実行に至るまでのプロジェクトスコープを策定および維持するためには、次の項目を適切に管理する必要があります。
- スコープ管理:プロジェクトを目標、タスク、サブタスクに分割し、チームがプロジェクトを予算および予定の範囲内に完了できるようにするための、実行可能な計画を策定します。WBS(作業分解図)とガントチャートは、スコープ管理に役立ちます
- リスク管理:起こり得る課題とその可能性、課題が発生した場合にプロジェクトマネージャーが講じるべき措置を特定するプロセスです。将来のリスクに備えて事前に計画を立てることで、プレッシャーが軽減され、最善の決断を下すことができます
- 品質管理:品質管理は、プロジェクトの進行中にプロジェクトマネージャーが負うべき主な責任のひとつです。あらゆる取り組みを監督し、顧客の期待に応えられるようにすると同時に、予算とタイムラインの目標も達成できるようにします
- コミュニケーション管理:プロジェクト全体を通じて、チームメンバーと関係者全員の足並みを揃えるのに役立ちます。明確なコミュニケーションラインを確立して誤解を解消し、会議で議論された内容を文書化する必要があります
コスト
3つ目の制約は、コストです。プロジェクトを予定どおりに完了したとしても、ROIが低ければ、成功とは言えません。
- コスト管理:プロジェクトの予算を設定および監視することです。プロジェクトスコープの策定からプロジェクトの完了に至るまで、人員、期間、設備、資金などの必要なあらゆるリソースを考慮する必要があります
- リソース管理:プロジェクトマネージャーの裁量でプロジェクトのために利用できる、あらゆるリソースを最適化するプロセスです。事前に計画を立てたとしても、開発中に問題が発生しないという保証はありません。そのため、必要に応じてリソースをいつでも調整できるようにすることが重要です
プロジェクトのライフサイクル
2週間の開発スプリントであれ、6ヶ月間に及ぶリブランディングであれ、あらゆるプロジェクトは同様のライフサイクルを辿ります。そのライフサイクルは5つの手順で構成されており、戦略的な管理プロセスの基盤となります。
5つの手順とは、「立ち上げ」、「計画」、「実行」、「監視/制御」、「終結」です。
立ち上げ
プロジェクトの立ち上げ段階では、プロジェクトマネージャーはプロジェクトのビジョンを把握し、目標を設定および文書化して、関係者からの承認を得る必要があります。また、プロジェクト憲章とステークホルダー登録簿を作成します。
- プロジェクト憲章:プロジェクトの目的、目標、関係者、リスク、リソース、依存関係を明確に定義した文書です
- ステークホルダー登録簿:プロジェクトの影響を受ける関係者、プロジェクトの影響度、プロジェクトマネージャーと関係者のコミュニケーション方法を定義した文書です
計画
計画段階では、プロジェクトマネージャーの手腕が試されます。効果的なプロジェクト管理は、綿密な計画から始まります。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの計画、スコープ、スケジュール、制約事項、WBS、リスク分析を含むロードマップを作成します。
また、社内チームとコミュニケーションし、チームの能力を把握して、適切なタスクを割り当てることで、目標達成に向けてチームを統率します。
実行
実行段階では、入念に練り上げられた計画を実行に移します。プロジェクトマネージャーは、ロードマップを慎重に進めることが求められます。
プロジェクトの進行中、プロジェクトマネージャーは、チームの開発、関係者の関与、品質管理、継続的なコミュニケーションについて検討する必要があります。また、リソースと予算を適切に配分しましょう。
監視/制御
監視と制御の段階までに、チームはプロジェクトを完了するために必要なリソースとビジョンを十分に備えている必要があります。ここで、目標の達成に向けて、入念な計画と実行が実を結び始めます。
チームがタスクに取り組む中、プロジェクトマネージャーは、スケジュール、支出、パフォーマンス、成果物の質を注意深く監視し続けます。プロジェクト管理ツールは、この段階で特に役立ちます。期限が迫っているタスクや予算の超過を把握できるからです。
終結
優れたプロジェクト管理を実現するには、プロジェクトを入念かつ確実に終結させる必要があります。最後のタスクを完了し、次のプロジェクトへ移るだけでは不十分です。次のように取り組む必要があります。
- 関係者または経営陣への成果物の正式な提供:完了したプロジェクトの正式な引き渡しと承認が必要です
- サンセット/ポストモーテムミーティング:プロジェクトの成果と課題について、チームで話し合いましょう。そこで得た教訓を、今後のプロジェクトに活かすための機会となります
- データのアーカイブ:プロジェクトに関連するデータを保存します。次のプロジェクトの妨げにならないように、ファイルを整理してアーカイブします
- 称賛と解散:優れた成果を上げたチームメンバーに感謝し、プロジェクトを効率的に進めた努力を称賛したあと、チームを正式に解散します
プロジェクト管理の手法
プロジェクト管理には、フレームワークを作成し、プロジェクト管理のさまざまな側面を正確に実行するためのガイドラインがいくつかあります。特に広く普及している手法として、ウォーターフォール、アジャイル、リーンが挙げられます。一般的に、これらの手法は、他の手法と組み合わせて利用されています。
ウォーターフォール手法
ウォーターフォール手法とは、プロジェクトを複数の工程に分割し、各工程を順番に進めていくアプローチです。各工程は、次の工程が始まる前に完了するため、全体の流れを可視化すると、滝の流れのように見えます。
こうしたプロジェクト構造により、エラーを早期に発見しやすくなり、スコープクリープとそれに伴う遅延を回避できます。しかし、このような厳格な工程管理には課題もあります。ウォーターフォール手法は俊敏性に欠けるため、ひとつの工程で遅延が発生すると、プロジェクト全体のタイムラインが大幅に延長されがちです。
アジャイル手法
アジャイル手法は、開発部門によって生み出されたものです。その原則と実践は、他の事業部門においても採用されるようになっています。プロジェクトを小さいタスクに細分化し、プロジェクトのライフサイクルを通じて、それらのタスクを短期間で繰り返しおこないます。アジャイル手法の人気の高まりにより、スクラムやカンバンなどのさまざまなサブカテゴリーが誕生しました。
アジャイル手法を導入すれば、リソースを効率的に活用し、課題や要件の変更に柔軟に対応できるため、多くの企業から支持されています。ただし、スコープクリープを抑制するには、チームの緊密な連携と慎重な管理が必要なため、場合によっては導入が困難なこともあります。
リーン手法
リーン手法は、日本のリーン生産プロセスに端を発しており、効率性に重点を置いています。プロジェクトマネージャーは、時間や労力などの無形資産を含むリソースのムダを排除し、生産性を最適化するための継続的な改善サイクルに取り組みます。リーン手法の原則の多くは、アジャイル手法と組み合わせて採用されることが多いです。
ムダのない管理により、間接費の削減、チームワークとコラボレーションの促進、従業員体験の強化、ROIの向上につながります。ただし、厳格に階層化された企業には適していない場合があります。
シックスシグマ手法
シックスシグマ手法とは、生産プロセスの継続的な改善を目的として開発された、一連の戦略です。統計モデリングを通じて、反復プロセスのエラーを低減します。
シックスシグマ手法はリーン手法と類似しているため、混同されがちです。主な違いは、リーン手法はムダの排除に重点を置いているのに対し、シックスシグマ手法はエラーの低減を重視していることです。両者は、併用することで相乗効果が期待できます。そのため、多くの企業は、両方を組み合わせたリーンシックスシグマ手法を採用しています。
クリティカルパス手法
クリティカルパス手法とは、プロジェクトのスケジュールを適切に管理するための戦略です。あらゆるタスクを特定し、所要時間を決定します。また、各タスクの依存関係を把握する必要があります。各タスクは重複する可能性があります。しかし、依存関係にあるタスクを結びつけたときに最長となる連鎖、すなわち「クリティカルパス」を特定することで、タイムラインの大部分を決定できます。
クリティカルパス手法は、潜在的な課題の特定、リソースを効率的に活用するためのスケジューリング、現実的なタイムラインの策定など、プロジェクト計画に役立ちます。
プロジェクト管理のツールとヒント
ガントチャートやカンバンボードなど、プロジェクトマネージャーがプロジェクトを計画および監視するのに役立つツールは、数多くあります。プロジェクトの秩序を保つためのツールを導入する場合であれ、独自のスプレッドシートを作成する場合であれ、どのツールが自社に適しているのかを把握することは、予算内でプロジェクトをスムーズに進めるのに役立ちます。
- ガントチャート:各タスクに割り当てられた時間が、プロジェクト全体のスケジュールとどのように調和しているのかを可視化できます。また、各タスクの進捗状況と依存関係を詳細に把握できます。ガントチャートを利用すれば、プロジェクトの全体像を把握できるため、時間の適切な管理やリソースの効率的な活用に役立ちます
- カンバンボード:チームのワークフローを一連の列、タスクを列内のカードで表します。タスクは各列を進んでいきます。スケジュールの過密を防ぐために、各列で保持できるタスクの数には制限があります。カンバンボードを使用してワークフローを可視化することで、より多くのリソースを必要としているタスクを特定できます
プロジェクトに最適なツールを選定したら、プロジェクトを確実に成功させるためのベストプラクティスを考慮する必要があります。 - 計画: チームの作業効率を最大化したとしても、包括的な計画がなければ、プロジェクトが遅延する可能性があります。目標、タイミング、リソース、成果物など、プロジェクトのあらゆる側面を考慮する必要があります
- コミュニケーション: 計画を実行に移したら、関係者全員に最新の進捗状況を共有することが重要です。チームメンバーは、自分のチームの責任だけでなく、他のチームの責任についても把握する必要があります。必要に応じて、外部関係者にも定期的に進捗状況を報告するようにします
- スコープ: 優先順位の変化、顧客の要求、コミュニケーション不足により、プロジェクトが当初の目標から外れてしまう可能性があります。プロジェクトの要件とスケジュールを明確に定義し、関係者が変更を要請するためのプロセスを確立することで、プロジェクトが当初の計画を超えて拡大しないようにします
- スケジューリング: プロジェクトで発生するあらゆる課題を予測することは不可能です。しかし、現実的なスケジュールを設定しておくと、課題が発生したときに柔軟に対応できます。予期せぬ変更を考慮しながら、タスクを割り当て直すことが可能になります。また、特定のタイムラインと成果物の期日をチームに伝えることで、チーム全員がプロジェクトの全体的な進捗状況を確実に把握できます
- リソース管理: 各タスクに必要なリソースの計画を立案することで、ムダを排除し、変化する需要に適応できます。リソースを適切に分配することで、予算をより効果的に使用できます
プロジェクト管理をはじめましょう
プロジェクト管理の取り組み方は、企業ごとに異なります。しかし、どの企業にとっても非常に価値のある分野です。プロジェクトを適切に計画し、綿密に管理することで、チームの作業効率を高め、優れた成果物を顧客に届けることができます。
プロジェクト管理を進化させる準備ができたら、まずはプロジェクトマネージャーを任命することから始めましょう。既存のチームメンバーの中に、自然な流れでプロジェクトチームを統率するようになった従業員や、多くのスキルの有している従業員がいるかどうか確認しましょう。社内でプロジェクトマネージャー候補が見つからない場合は、新たな人材の採用を検討しましょう。
優れたプロジェクト管理を実現するには、優れたツールが必要です。そこで、Adobe Workfrontの出番です。あらゆる作業を一元的に管理して、進行中の作業を可視化し、テンプレートや自動化されたワークフローを用いて、ベストプラクティスを標準化することで、キャパシティを高め、優れた作業を大規模におこなうことができます。
Adobe Workfrontが、チーム間の連携の促進、プロジェクトの高速化、生産性の向上、期限の遵守にどのように役立つのか、製品ツアー と 動画 をご覧ください。