繰り返されるプロジェクトの遅延、絶えない顧客トラブル、なかなか解消しないプロセスのボトルネック。こうした問題がチームの成功を妨げていませんか?その場しのぎの対処は手軽ですが、多くの場合は表面的な症状にしか効かず、根本の問題が後から再び顔を出します。そこで役立つのが根本原因分析(RCA)です。
RCAは、一時的な解決策にとどまらず、問題の根本的な原因を特定することで、真の解決につなげる強力かつ体系的なアプローチ。根本原因を理解し、そこに働きかけることで、持続的な改善を実現し、同じ問題の再発を防ぐことができます。
この記事の内容:
根本原因分析(RCA)とは?
根本原因分析(RCA)は、問題や不適合の根本的な原因を明らかにするための、さまざまな体系的手法の総称です。「表面的な症状を処理するよりも、根本的な課題を体系的に防ぎ、解決する方がはるかに効果的」という考え方に基づいています。根本原因とは、その要因を取り除けば同じ問題が再発しなくなる「本当の原因」のことです。
草むしりにたとえるとわかりやすいでしょう。雑草の目に見える部分(つまり症状)だけを抜いても、またすぐに生えてきます。本当に解決するには、土の中にある根っこ(つまり根本原因)をしっかり取り除く必要があるのです。
根本原因 vs. 症状 vs. 要因
効果的にRCAを行うには、この違いを理解することが不可欠です。
- 根本原因: 問題が存在する根本的な原因。 根本原因を取り除くか、修正すれば、同じ問題の再発は防げるはずです。
- 症状: 問題の目に見える兆候または結果(例:プロジェクトの遅延、顧客からの苦情、機械の停止、Webサイトのトラフィック低下など)。 症状だけに対処しても、せいぜい一時的な改善にしかなりません。
- 要因: 問題の発生を助長したり悪化させたりする条件やアクション。ただし根本的な原因そのものではありません。たとえば、ガレージの床に落ちていた釘を踏んでタイヤがパンクした場合、釘は直接的な原因です。けれど、その釘が床にあった 理由(たとえば屋根の雨漏りで釘箱が壊れた)の方が、根本原因に近いものになります。要因に対処すれば問題の再発を遅らせることはできますが、完全にはなくせません。
根本原因分析のやり方
根本原因の分析にはいくつかのアプローチがありますが、すべて同じ一般的な構成に従います。
1. 問題または目標を定義する
RCA(根本原因分析)の最初のステップは、解決すべき問題や改善すべき点を定義することです。そのためには、問題を十分に理解し、詳細に把握することが重要です。
問題や改善目標を十分に理解するために時間をかけてください。関連データを収集し、分析結果を文書化します。たとえば、次のようなものがあります。
- 問題が企業全体に及ぼす影響
- 問題の発生頻度や非効率性を感じる頻度
- 現在の問題やプロセスの測定方法
たとえば、ある運用管理者が、新製品の発売が頻繁に遅れることに気づいたとします。この管理者は、データやインサイトを集めることで、製品リリースが予定より遅れる頻度を自信を持って報告できるようになり、問題を具体的に説明することができるようになります。また、ビジネスに関連する問題についても議論することができます。 発売がいつも遅れていると、顧客体験と顧客の信頼を低下させ、解約が増え、売上にマイナスの影響を与えます。
2. 考えられる根本的な原因をブレインストーミングする
問題を特定したら、その原因となる可能性のある、あらゆる問題や事象をリストアップします。プロセスを効率的に改善する場合は、現在のワークフローのあらゆる部分を詳細にリストアップします。最初は根本原因の検証にこだわらず、ブレーンストーミングして思いつく限りの項目をリスト化します。
そして、考えられる原因ごとに、実際にどのような影響があるのかを分析します。原因のように見えて、そうではないものを除外するために、追加調査が必要な場合もあります。最後に、残っている原因に優先順位を付けます。どの影響が最も大きく、どれが小さいかを特定します。
製品リリースの遅れに対処する運用管理者の例を見てみましょう。まずチームのカンバンボード やその他の製品開発プロセスから始め、あらゆる段階で考えられる根本原因をブレインストーミングして洗い出します。運用管理者は、次のような可能性を挙げるかもしれません。
- アイデアが「To Do」項目のままになっている時間が長すぎる。または、時間通りに開始されていない
- チームメンバーに作業がすぐに割り振られていない
- 承認に時間がかかりすぎている
- 顧客からのフィードバックに時間がかかりすぎている
- 顧客からのフィードバックが失われている
このように、考えられる根本原因を洗い出した上で、運用管理者は、それぞれの原因を分析します。たとえば、チームメンバーに質問したり、デジタルカンバンカードのデータを確認したりして、顧客からのフィードバックを取得するのにかかる時間や、それが社内でどのように共有されているのかを調べます。
3. 解決策を考える
システムやプロセスのパフォーマンスを低下させている問題の根本的な原因を特定し、詳細を明らかにしたら、可能な解決策をブレインストーミングで検討します。関連部門の担当者にインタビューをおこない、その業務に携わっている人たちから意見や提案を聞くのも良い方法です。
たとえば、運用管理者の例で、顧客のフィードバックが遅延の主な原因になっていると仮定します。管理者はチームと一緒に、可能な解決策を話し合います。おそらく、フィードバックを集めるために現在使用しているチャネル、フィードバックを集めるための戦略、チームとの共有方法などについて話すはずです。解決策として考えられるのは、より意図的にフィードバックを収集するプロセスを開発すること、寄せられたコメントやアイデアを管理する担当者を任命することなどが考えられます。
4. 解決策を実行する
解決策を立案し、検証した後は、新しいプロセスや修正を戦略的に実施します。その際、問題との関係が深いチームメンバーからの賛同や、経営陣からのサポートが必要になるかもしれません。チームで作業する場合は、担当者や プロジェクトマネージャー を割り当て、実装が滞ることがないようにします。
この例では、運用管理者が、フィードバック要求のプロセスを改善する役割をチームメンバーのひとりに割り振り、受け取ったレビューを管理する役割を別のひとりに割り振ります。管理者は、これらのチームメンバーと定期的な報告の機会を設けて、実装が円滑に進んでいることを確認する必要があります。
5. 成果を監視する
監視期間は、導入した解決策によっては数週間から数か月に及ぶこともあります。提案した解決策がうまくいっていない場合は、調整をおこないます。何度調整してもうまくいかない場合は、他の原因も含めて解決策を検討し、実行に移します。
先ほどの例に戻ると、運用管理者は、少なくとも数回の製品リリースサイクルの間、新規顧客のフィードバックプロセスを監視します。まず、チームが以前より多くのフィードバックを得ていること、少なくとも以前より速くフィードバックを得ていることを確認することで、フィードバックを要求する新しいプロセスが効果的であることを確認します。マネージャーは、フィードバックがこれまで以上に早くチームに共有されるようにする必要があります。最後に、運用管理者は、製品のリリーススケジュールを確認し、顧客フィードバックのループが改善されたことで、全体的なリリースのタイムラインが改善されたかどうかを確認します。
もし、運用管理者が、フィードバックが迅速化されていない、あるいは、新しいフィードバックプロセスが製品発売期限の遵守に役立っていないことに気づいたら、ステップ2の根本原因リストに戻り、別の原因に対する解決策を練ります。フィードバックのループが速くなった結果、製品の発売がよりタイムリーになったとしても、別の原因を選び、プロセスをさらに改善することが可能です。
RCAの手法とアプローチ
根本原因分析では、問題や事象の要因を特定します。RCAプロセス全体が柔軟であるように、根本原因の分析にもさまざまな手法やアプローチがあります。
- 変更分析 変更影響分析とも呼ばれるRCA手法で、基準からの逸脱を比較することで、その根本原因を特定します。システムのパフォーマンスに影響を与えた可能性のある、人、設備、インフラ、情報、その他の要因の変化を調査します。
- 要因ツリー分析 要因ツリー分析と呼ばれるRCA手法で、特定の問題事象につながったあらゆるアクションと条件(または要因)を記録し、視覚的に示します。
- 事象分析 要因分析と一括して扱われることもあるRCA手法で、問題事象に至るまでのアクションや状況を 時系列で 把握し、迅速に証拠を収集します。そこから、原因や寄与する要因を特定することができます。事象分析は、爆発事故のような単発の大きな問題によく使用されています。
- バリア分析 安全インシデントでよく使用されるバリア分析は、適切なバリアがあれば問題は発見でき、防止できたという前提にもとづくRCAアプローチです。バリア分析では、特定の危険要因が引き起こすさまざまな影響に注目し、バリア(またはコントロール)が事故を防止できなかった状況を調査します。
- 「5 Whys」分析(なぜなぜ分析) 1970年代にトヨタが普及させた5 Whys分析は、「Why?(なぜ)」と「What caused the problem?(なぜそうなったのか)」という質問を5回まで繰り返すことによって、問題の根本原因をすばやく突き止めるためのRCA手法です。5 Whys分析はシンプルでスピーディー、そして比較的シンプルな問題に向いています。ただし、バイアスの影響を受けやすく、原因が複数ある場合でも1つしか特定できない可能性や、結果が再現できない可能性があります。
- 石川(フィッシュボーン)ダイアグラム 原因結果図としても知られている石川ダイアグラムは、問題に寄与する事象の原因を調べるRCA分析手法です。石川ダイアグラムは魚の骨格のようなダイアグラムで、関連する原因を魚の骨格状に小分類にグループ化することから、「フィッシュボーンダイアグラム」というニックネームが付けられました。この骨格構造により、どの根本原因が最も重要である可能性が高いかを特定することができます。
- ケプナートリゴー根本原因分析 KT法とも呼ばれるこのRCAモデルは、状況分析、問題分析、解決策分析、潜在的問題分析の4段階の問題解決を通じて、問題と意思決定を切り離すものです。
- パレート分析「問題の80%は20%の原因から生じる」というパレートの法則にちなんで名づけられました。パレート分析のプロセスは、最も大きな利益をもたらす解決策を選択するものです。
これらの手法の中には、要因の根本原因を特定し、可能な是正措置をリストアップすることから、「ツリー」ダイアグラムや「ツリー」分析とも呼ばれるものがあります。たとえば、変更分析は、ツリーダイアグラムを使って変更の原因と影響を説明できるため、「変更ツリー分析」とも呼ばれます。
適切なRCA手法の選択
最適な根本原因分析の手法は、状況によります。この表をガイドとして活用してください。
根本原因分析の例
RCAは製造業やITの不具合だけに使うものではありません。ビジネスのあらゆる領域で活用できます。根本原因分析の活用例をいくつか紹介します。
プロジェクト納期の改善:
問題: 主要プロジェクトが常に納期遅れで納品される。
簡易RCA(5 Whys):
- なぜ遅れる?タスクの見積もりが甘かった。
- 理由は?実行中に スコープクリープ が発生した。
- 理由は?初期要件が不明確だった。
- 理由は?計画段階で関係者の意見が不十分だった。
- 理由は?キックオフプロセスが急ぎすぎていた。
根本原因: プロジェクト開始時の関係者調整と要件定義が不十分だった。
解決策: スコープと要件に対して関係者全員の承認を必須とする、よりしっかりしたキックオフプロセスを導入する。
顧客離れの低減:
問題: 第3四半期における顧客離れ率が許容範囲を超えて高い。
簡易RCA(フィッシュボーンのカテゴリ):
- プロダクト:機能の不足、不具合
- サービス:サポート対応が遅い、オンボーディングの質が低い
- 価格:競合他社に比べて高すぎる
- コミュニケーション:エンゲージメント不足
- ブレインストーミングの結果、サポート対応の遅さが主要因であることが判明。
根本原因(サービス面の深掘り): サポート需要の予測が不正確だったため、ピーク時間帯にサポートチームの人員が不足していた。
解決策: 履歴データと予測分析に基づいたサポート人員配置モデルを改善し、セルフサービスオプションを導入する。
マーケティングキャンペーンROIの向上:
問題: 最近のメールマーケティングキャンペーンで、ROIが想定より大幅に低かった。
簡易RCA(フィッシュボーンのカテゴリ):
- オーディエンス:セグメントが不適切、リスト疲れ
- コンテンツ:メッセージが曖昧、CTAが弱い
- タイミング:送信日/時間が不適切
- 技術面:配信エラー、リンク切れ
- 分析の結果、オーディエンスのセグメント化 の不備が指摘された。
根本原因: 最新のエンゲージメント行動ではなく、古いデモグラフィックデータに基づいてセグメント化していた。
解決策: セグメント化戦略を見直し、最新の行動データを優先する形に更新。さらに、今後のキャンペーンではA/Bテストを導入する。
根本原因分析の目的は?
根本原因分析の主な目的は、問題の再発を防ぐ解決策を特定し実行することであり、それは継続的改善の核となる取り組みです。
根本原因分析を行うことで得られる主なメリットは次のとおりです。
- プロセスとシステムの改善 ワークフロー、手順、組織構造の欠陥を特定し、修正します。
- 効率の向上とコストの削減 ムダ、手直し、ダウンタイム、および関連する財務損失を最小限に抑えます。
- 安全性の向上とリスクの低減 事故、エラー、損害の防止に不可欠であり、特に規制の厳しい環境や高リスク環境において重要です。
- 継続的な改善の推進 RCAを継続的な取り組みに統合し、業務とパフォーマンスの最適化を図ります。
- 意思決定の改善 効果的でターゲットを絞ったソリューションの開発のために、データに基づくインサイトを提供します。
効果的な根本原因分析のためのベストプラクティス。
根本原因分析を最大限に活かすために、次のベストプラクティスを押さえておきましょう。
- 具体的でデータに基づいた分析を行う。 問題を明確に定義し、仮定ではなく事実と証拠に基づいて分析を行います。
- 多様で知識豊富なチームを巻き込む。 プロセスやシステムについて異なる視点と現場知を持つメンバーを集めます。
- 個人を責めず、システムに焦点を当てる。 個々のミスだけでなく、プロセスやシステムの不具合を探します。目的は罰することではなく、改善することです。
- 体系的なプロセスに従う。 抜け漏れを防ぐために、体系的な手法を使う。
- 徹底的に深掘りし、根本原因を検証して裏付ける。 症状や途中の原因で立ち止まらないようにします。5 Whysのような手法を使用します。特定した根本原因に対処すれば再発を防げるか、きちんと検証します。
- 具体的で、すぐ実行に移せる解決策をつくる。 解決策は根本原因に直結させ、明確な手順、責任者、期限を定義します。
- 実行をやり切る仕組みとモニタリングを徹底する。 解決策を実装し、時間をかけて効果を継続的に追跡します。ループを閉じます。
Adobe Workfrontがプロセス改善の取り組みにどのように役立つか。
根本原因分析(RCA)の本質は、将来の問題を防ぐためにプロセスを理解し、改善することにあります。RCA自体は分析の取り組みですが、その結果生まれる解決策を実行し、モニタリングするには強力なワークマネジメント機能が必要です。
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