根本原因分析とは?
経営陣にとって、効率性の追求は不変の目標です。繰り返される問題や非効率的なプロセスは、リソースを浪費し、ROIを制限し、従業員の士気を低下させます。しかし、このような根深い問題を解決し、確立されたシステムを改善するのは容易なことではありません。多くの管理者は、問題の状況を緩和することにすぐに取りかかろうとしますが、永続的な変化に最初から取り組むべきです。
根本原因分析(RCA)は、問題について実際に考えることができるように構成されているため、効果的な変化をもたらすことができます。
ここでは、次のことを学びます。
RCAとは?
RCAとは、問題や非効率性の要因を明らかにし、それを解決するための最適な方法を特定するための体系的なアプローチです。 表面的な状況に注目するのではなく、根本的な原因を特定して修正すれば、問題の再発を防止し、既存のプロセスを改善できるという考えにもとづいています。
RCAは、大小の事故、保守および製造上の問題、医療ミス、環境問題、生産性の問題、日常のヒューマンエラーなどについて、問題解決や必要な予防措置の概要を示すためによく使用されます。
RCAの実行方法
RCAにはいくつかのアプローチがありますが、すべて同じ一般的な構成に従っています。
1. 問題または目標を定義する
RCAの最初のステップは、解決すべき問題や改善すべき点を定義することです。そのためには、問題を十分に理解し、詳細に把握することが重要です。
問題や改善目標を十分に理解するために時間をかけてください。関連データを収集し、分析結果を文書化します。たとえば、次のようなものがあります。
- 問題が企業全体に及ぼす影響
- 問題の発生頻度や非効率性を感じる頻度
- 現在の問題やプロセスの測定方法
たとえば、ある運用管理者が、新製品の発売が頻繁に遅れることに気づいたとします。この管理者は、データやインサイトを集めることで、製品リリースが予定より遅れる頻度を自信を持って報告できるようになり、問題を具体的に説明することができるようになります。また、この問題がビジネス全体にどのように関係するのかを説明することもできるようになります。発売がいつも遅れていると、顧客体験と顧客の信頼を低下させ、解約が増え、売上にマイナスの影響を与えます。
2. 考えられる根本的な原因をブレインストーミングする
問題を特定したら、その原因となる可能性のある、あらゆる問題や事象をリストアップします。プロセスを効率的に改善する場合は、現在のワークフローのあらゆる部分を詳細にリストアップします。最初は根本原因の検証にこだわらず、ブレーンストーミングして思いつく限りの項目をリスト化します。
そして、考えられる原因ごとに、実際にどのような影響があるのかを分析します。原因のように見えて、実はそうではないものを除外するために、追加調査が必要な場合もあります。最後に、残っている原因に優先順位を付けます。どの影響が最も大きく、どれが小さいかを特定します。
製品リリースの遅れに対処する運用管理者の例を見てみましょう。まずチームの「かんばん」ボードやその他の製品開発プロセスから始め、あらゆる段階で考えられる根本原因をブレインストーミングして洗い出します。運用管理者は、次のような可能性を挙げるかもしれません。
- アイデアが「To Do」項目のままになっている時間が長すぎる。または、時間通りに開始されていない
- チームメンバーに作業がすぐに割り振られていない
- 承認に時間がかかりすぎている
- 顧客からのフィードバックに時間がかかりすぎている
- 顧客からのフィードバックが失われている
このように、考えられる根本原因を洗い出した上で、運用管理者は、それぞれの原因を分析します。たとえば、チームメンバーに質問したり、デジタルかんばんカードのデータを確認したりして、顧客からのフィードバックを取得するのにかかる時間や、そのフィードバックが社内でどのように共有されているのかを調べます。
3. 解決策を考える
問題の根本的な原因、あるいはシステムやプロセスのパフォーマンスを低下させている根本的な原因を特定し、詳細を明らかにしたら、可能な解決策をブレインストーミングで検討します。関連部門の担当者にインタビューをおこない、その業務に携わっている人たちから意見や提案を聞くのも良い方法です。
たとえば、運用管理者の例で、顧客のフィードバックが遅延の主な原因になっていると仮定します。管理者はチームと一緒に、可能な解決策を話し合います。おそらく、フィードバックを集めるために現在使用しているチャネル、フィードバックを集めるための戦略、チームとの共有方法などについて話すはずです。解決策として考えられるのは、より意図的にフィードバックを収集するプロセスを開発すること、寄せられたコメントやアイデアを管理する担当者を任命することなどが考えられます。
4. 解決策を実行する
解決策を立案し、検証した後は、新しいプロセスや修正を戦略的に実施します。その際、問題との関係が深いチームメンバーからの賛同や、経営陣からのサポートが必要になるかもしれません。チームで作業する場合は、担当者やプロジェクトマネージャーを決めて、実装が滞ることがないようにします。
この例では、運用管理者が、フィードバック要求のプロセスを改善する役割をチームメンバーのひとりに割り振り、受け取ったレビューを管理する役割を別のチームメンバーに割り振ります。管理者は、これらのチームメンバーと定期的な報告の機会を設けて、実装が円滑に進んでいることを確認する必要があります。
5. 成果を監視する
実装したソリューションによっては、モニターの期間が数週間から数カ月に及ぶこともあります。提案した解決策がうまくいっていない場合は、調整をおこないます。何度調整してもうまくいかない場合は、他の原因も含めて解決策を検討し、実行に移します。
もう一度先ほどの例に戻ると、運用管理者は、少なくとも数回の製品リリースサイクルの間、新規顧客のフィードバックプロセスを監視します。まず、チームが以前より多くのフィードバックを得ていること、少なくとも以前より速くフィードバックを得ていることを確認することで、フィードバックを要求する新しいプロセスが効果的であることを確認します。また、寄せられたフィードバックが、以前よりも迅速にチーム内で共有されることも確認します。最後に、運用管理者は、製品のリリーススケジュールを確認し、顧客フィードバックのループが改善されたことで、全体的なリリースのタイムラインが改善されたかどうかを確認します。
もし、運用管理者が、フィードバックが迅速化されていない、あるいは、新しいフィードバックプロセスが製品発売期限の遵守に役立っていないことに気づいたら、ステップ2の根本原因リストに戻り、別の原因に対する解決策を練り始めます。フィードバックのループが速くなった結果、製品の発売がよりタイムリーになったとしても、別の原因を選び、プロセスをさらに改善することにするかもしれません。
RCAの手法とアプローチ
RCAでは、問題や事象の要因を特定します。RCAプロセス全体が柔軟であるように、根本原因の分析にもさまざまな手法やアプローチがあります。
- 変更分析:変更影響分析とも呼ばれるこのRCAのアプローチは、逸脱の根本原因を特定するために、逸脱と標準を比較するものです。システムのパフォーマンスに影響を与えた可能性のある、人、設備、インフラ、情報、その他の要因の変化を調査します。
- 要因分析:要因ツリー分析とも呼ばれるRCA手法で、特定の問題事象につながったあらゆる行為と条件(または要因)を記録し、視覚的に示します。
- 事象分析:要因分析と一括して扱われることもあるRCA手法で、問題事象に至るまでの行動や状況を時系列で把握し、迅速に証拠を収集します。そこから、原因や寄与する要因を特定することができます。事象分析は、爆発事故のような単発の大きな問題によく使用されています。
- バリア分析:安全インシデントでよく使用されるバリア分析は、適切なバリアがあれば問題は発見でき、防止できたという前提にもとづくRCAアプローチです。バリア分析では、特定の危険要因が引き起こすさまざまな影響に注目し、バリア(またはコントロール)が事故を防止できなかった状況を調査します。
- 「5 Whys」分析(なぜなぜ分析):1970 年代にトヨタが普及させた5 Whys分析は、「Why?(なぜ)」と「What caused the problem?(なぜそうなったのか)」という質問を5回まで繰り返すことによって、問題の根本原因をすばやく突き止めるためのRCA手法です。
- 石川(フィッシュボーン)ダイアグラム:原因結果図としても知られている石川ダイアグラムは、問題に寄与する事象の原因を調べるRCA分析手法です。石川ダイアグラムは魚の骨格のようなダイアグラムで、関連する原因を魚の骨格状に小分類にグループ化することから、「フィッシュボーンダイアグラム」というニックネームが付けられました。この骨格構造により、どの根本原因が最も重要である可能性が高いかを特定することができます。
- ケプナートリゴー根本原因分析:KT法とも呼ばれるこのRCAモデルは、状況分析、問題分析、解決策分析、潜在的問題分析の4段階の問題解決を通じて、問題と意思決定を切り離すものです。
- パレート分析:「問題の80%は20%の原因から生じる」というパレートの法則にちなんで名づけられました。パレート分析のプロセスは、最も大きな利益をもたらす解決策を選択するものです。
これらの手法の中には、要因の根本原因を特定し、可能な是正措置をリストアップすることから、「ツリー」ダイアグラムや「ツリー」分析とも呼ばれるものがあります。たとえば、変更分析は、ツリーダイアグラムを使って変更の原因と影響を説明することもできるため、「変更ツリー分析」とも呼ばれます。
RCAに関するリソース
RCAについてより詳しく知りたい場合は、以下の資料を参照しください。
- The 5 Whys: 5 Whys分析に関する包括的な資料です
- A complete guide to data analysis and how to keep your business competitive in 2022: ビジネスの競争力を維持するために収集したデータをどのように活用するかを学びたい場合に必読のガイドです
- Root Cause Analysis: The Core of Problem Solving and Corrective Action:原因究明よりも問題解決のプロセスに重点を置いた資料が必要な場合におすすめします
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RCAでは、問題の根本的な原因を特定することによって、問題の再発を防止します。また、RCAは長年にわたるプロセスを改善する際にも活用できます。
RCAはシンプルですが、必ずしも容易ではありません。大きな問題を分析したり、組み込まれたプロセスを改善したりするには、多くのデータと分析が必要であり、優れたツールが必要となります。Adobe Workfrontは、作業を戦略に結びつけ、より優れたコラボレーションを促進し、測定可能なビジネス成果を実現する作業管理ソフトウェアです。
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