Macy's Herald Square New York旗艦店

Macy’sが大規模なパーソナライゼーションによってブランド愛と顧客ロイヤリティを育成している方法

百貨店界を象徴する世界最大級の百貨店のMacy’sは、「顧客一人ひとりに合わせた顧客体験とチャネルをまたいだコミュニケーションを通じて、売上とブランドロイヤリティを向上させる」という目標を掲げています。

「パーソナライゼーションは目新しいものではありません。新しいのは、複数のチャネルにまたがって規模の大きい一対一のパーソナライゼーションを実現するための当社のアプローチです」と、Macy’sのカスタマージャーニー担当シニアバイスプレジデントのBennett Fox-Glassman氏は述べています。顧客が何を求めているかについて即時的なインサイトを得ることで、カスタマイズされたオファー、パーソナライズされたデジタルおよびアプリ体験、そしてきわめて関連性の高いコミュニケーションを提供することができます。こうした的確な体験は、収益性の高い成長、ブランド愛、そしてロイヤルティを育みます。

Fox-Glassmanu氏は、2022年から、Macy’sの最新のカスタマージャーニー変革を主導しています。この取り組みには、アドビのテクノロジーの利用拡大と、ビジネスの成功に向けた新しいチームと働き方の構築が含まれていました。

目標の設定、ユースケースの特定

Macy’sは、顧客との関連性をさらに高めたいと考えていました。同社が広く宣伝している1日限定のセールイベントは、売上を上げるには最適ですが、顧客のロイヤルティやブランド愛を育むにはあまり適していません。顧客との関係を強化しなければ、消費者が実質的にほぼ無限の選択肢を手にしているこの業界で、Macy’sが成功を維持するのはますます難しくなるでしょう。

「顧客が時間を費やす場所で、顧客のスタイルや興味を反映したコミュニケーション手段を使って、顧客にリーチしないといけません。価格だけがすべてではありません。顧客は、私たちが顧客の声に耳を傾け、応答していると感じる必要があります」とFox-Glassmanu氏は述べています。

同社は既に、webサイトでのカスタマイズされたレコメンデーションやパーソナライズされたメールオファーなど、パーソナライゼーションへの取り組みを開始していましたが、メッセージがチャネル間で一貫していませんでした。買い物客は、購入するものを決める前に、webサイトやメールからソーシャルメディアや店舗訪問へと移動し、また戻ってくることが多いことを認識したFox-Glassman氏と彼のチームは、顧客がブランドとやり取りするたびに、連続した体験を提供することを目指しました。

Macy’sは、アドビのプロフェッショナルサービスチームと協力し、顧客基盤の大部分にアプローチできる5つの優先分野を特定しました。

  1. 初回購入から2回目の購入を促進
  2. 追加購入で「コーディネートを完成」
  3. オンライン顧客に実店舗での買い物、実舗顧客にオンラインでの買い物を誘導
  4. Macy’sのクレジットカードの利用を促進
  5. 高額購入顧客をリエンゲージし顧客離れを阻止

「ロイヤルカスタマーの囲い込みが、連続したジャーニーへの新しいアプローチの価値をアピールする鍵であることは分かっていました」とFox-Glassman氏は述べています。

大規模なパーソナライゼーションの基盤

重点分野を特定したMacy'sは、テクノロジーに目を向け、Adobe Real-Time CDPAdobe Journey OptimizerAdobe Customer Journey AnalyticsAdobe Experience ManagerAnalyticsTargetの実装に追加しました。

アドビのプロフェッショナルサービスチームの支援を受け、データソースをつなぎ合わせ、各顧客の統合プロファイルを構築しました。ロイヤルティ会員から得た既知の顧客情報をオンラインおよびオフラインでのやり取りのデータと組み合わせることで、顧客一人ひとりに合わせたアプローチを実現しつつありました。

顧客が実店舗で購入する場合でも、アプリで価格を確認する場合でも、オンラインで閲覧する場合でも、情報はリアルタイムで統合プロファイルにフィードされます。子供服や家庭用品を購入すれば、そのアクティビティが継続的なコミュニケーションに反映されます。あらゆるチャネルにおいて、顧客の同一のリアルタイムデータを使用することで、同社は、これまで不可能だったレベルのパーソナライゼーションを提供できるようになりました。

しかし、真のOne to Oneのパーソナライゼーションは1度で終わるものではありません。同社は、あらゆるやり取りがカスタマイズされているとあらゆる顧客が感じられるようにする必要があります。つまり、個々の顧客に語りかけるメッセージをより多く用意する必要があります。アドビの支援を受け、同社はコンテンツ需要を満たす方法を調査しています。その中には、コンテンツ制作を支援する生成AIの活用、部門間の連携方法の改善、マーケティングコンテンツのオーケストレーションや配信、測定の自動化などが含まれます。

「お客様には、自分たちのためにコンテンツが作られていると感じていただきたいと考えています。コンテンツサプライチェーンを統合することで、全面的にパーソナライズされた体験に対する需要の急増に対応できるようになるでしょう」とFox-Glassman氏は述べています。

コラボレーションがもたらした成功

Macy’sの変革はテクノロジーだけに留まりません。プロジェクトの初期段階で、同社は、顧客情報のサイロ化を打破し、部門間の連携を図るためにカスタマージャーニーチームを立ち上げました。

「顧客プロファイルとカスタマージャーニーの構造を統一したことで、部門間の連携が改善され、変化が起きた際にも迅速に対応できるようになりました。「また、リアルタイムダッシュボードでパフォーマンスを追跡しているので、チームは自分たちの仕事がビジネスにどのような影響を与えているかを確認することができます」とFox-Glassmanu氏は述べています。

Macy’sが期待するもの

マーケターは、過去の購入履歴に基づいたパーソナライズメッセージで、以前の優良顧客と再エンゲージし、その後、顧客がwebサイトを訪問した際に、同じコンテンツとオファーを表示できます。あるいは、Macy’sのロイヤル会員がMacy’sカードの特典に気づかずに取引を行った場合、カード特典を思い出してもらうために、即座にメールやアプリ通知が送られます。

「パーソナライズされたオファー、レコメンデーション、好みのコンテンツを受け取ると、顧客は大切にされていると感じ、リピーターになります。「当社の目標は、当社のロイヤルカスタマーがショッピングニーズを満たすために真っ先にMacy’sを思い浮かべるようにすることです」とFox-Glassman氏は述べています。

初めての顧客にMacy’sでの継続的なショッピングを促す場合、Adobe Journey OptimizerのAIが過去の購買履歴や好みに基づいて、最も魅力的なオファーを自動的に提示します。その結果、同社は、マーケターにすべての決定を任せることなく、新規顧客に対してより多くのメッセージを作成し、より迅速に対応できるようになりました。

同時に、AIは、あらゆる買い物客にパーソナライズされたメールメッセージとオファーを動的に作成するのを支援します。例えば、顧客が食器を購入した場合、自動的にメールを送信し、カトラリーや大皿、ガラス製品などを購入して食器セットを完成させるよう促すことができます。

「最初のユースケースだけでも、すでに素晴らしい成果が得られています。さらに重要なのは、顧客との関係を強化することで、継続的な成功の基盤を築いていることです。私たちは、部門間の連携方法と、顧客体験を最優先する目的で、使用しているテクノロジーを一新しました。次に何ができるのか、今から楽しみでなりません」とFox-Glassman氏は述べています。