顧客エデュケーションを活用して、顧客の価値実現までの時間を短縮する方法
組み立て式家具店で、キッチンキャビネットを購入したとします。多層包装を開封すると、木板25枚、ネジ100本、様々なサイズの蝶番15個が入っています。購入したときの興奮は、徐々に薄れていきます。5時間後、組み立てが完了すると、キッチンキャビネットの外側が内側を向いていることに気が付きました。
公平に言えば、家具メーカーは家具の組み立て方法に関する説明書を提供しています。しかし、説明書だけでなく、ステップバイステップの動画やインタラクティブなガイド付き学習パスも利用できれば、キャビネットの組み立てをはるかに早く完了させることができたでしょう。
顧客は、製品を楽しみ、投資からすばやく利益を得たいと考えています。新規顧客を獲得するのは、簡単なことではありません。顧客の関心を維持することは、さらに困難です。製品に関する顧客エデュケーションを積極的に行うことは、顧客が自社の製品やサービスから価値をすばやく引き出せるようにするための第一歩となります。セルフヘルプガイド、ウェビナー、パーソナライズされた製品チュートリアル、デモなどのオンボーディングおよびトレーニング用アセットは、顧客が製品をすばやく理解し、積極的に使用するように促進するのに役立ちます。顧客のエンゲージメントが高まるほど、ロイヤルティも向上します。
顧客エデュケーションが重要な理由
一般的な問題に関するヘルプやサポートのために、顧客から頻繁に問い合わせを受けることに気が付いた場合、ターゲットを絞ったエデュケーションを提供することで、顧客がそれらの問題を自分で解決できるように支援できます。新規ユーザーは、アカウントの設定やモバイルデバイスでのアプリケーションの操作など、製品を使いこなすことが難しいと感じる可能性があります。Forresterの調査では、顧客エデュケーションが、製品採用率の向上、セールスサイクルの短縮、サポートコストの削減、問題解決時間の短縮、顧客維持率の向上に役立つことが明らかになっています。
顧客オンボーディングの改善
効果的な顧客オンボーディングに関する2022年のForresterのブログ記事によると、顧客は購入後90日以内に、サブスクリプションを更新するかどうかを決定します。つまり、顧客と良好な関係を構築できるかどうかは、オンボーディング体験に大きく左右されます。オンボーディング段階でのトレーニングでは、製品の仕組みや主要なソリューションだけでなく、見落とされがちな機能をわかりやすく解説し、価値実現までの時間を短縮することが重要です。
セールスサイクルの短縮
カスタマージャーニーに合わせて教育プログラムを調整することで、パーソナライズされたメッセージを作成し、製品がどのように役立つのかを顧客に伝えることができます。例えば、意思決定の段階で、教育アセットを通じて、自社を選択することは正しい決断であることを顧客に伝えて、安心感を与えることができます。
顧客ロイヤルティと紹介率の向上
顧客が製品の価値を理解できるようにすることで、顧客ロイヤルティが最大20%向上します。また、優良顧客は、口コミで製品を紹介してくれる可能性が高くなります。IDCの調査では、顧客エデュケーションプログラムがもたらす上位3つのメリットの1つとして、紹介率の増加が挙げられています。優良顧客はまた、リピート購入する可能性が最大70%高くなっています。顧客ロイヤルティを育むことで、最大20%のビジネス成長を実現できます。
効果的な顧客エデュケーションプログラムを作成する方法
効果的な顧客エデュケーションプログラムを作成するには、顧客のニーズや課題を理解する必要があります。それらのニーズや課題に基づいて、顧客エデュケーションアセットのストーリーや順序、プログラムの目標を決定します。
1. 売上への影響を測定するための目標を設定
顧客エデュケーションプログラムの目標を設定すると、プログラムのパフォーマンスを監視できるだけでなく、関係者の賛同を得て維持するのにも役立ちます。2024年のForresterの調査レポートによると、関係者は売上への直接的な影響を確認したいと考えており、83%がアップセルとクロスセルの機会の増加を望み、77%が製品の採用率を監視しています。さらに、エンゲージメント、顧客満足度、製品の採用率などの指標を追跡することで、新しい製品機能のアイデアやマーケティングキャンペーンなどに関する意思決定に役立てることができます。
次の5つの指標は、Forresterが2023年に実施したソートリーダーシップに関する調査結果をまとめたレポート「Level Up Customer Experience (CX) with Customer Education Programs(顧客エデュケーションプログラムによる顧客体験(CX)の向上)」において、企業が導入している主要な測定指標の一部です。
- 顧客満足度(CSAT): 教育プログラムに対する顧客満足度を調査します。まずベンチマークを設定し、その後のデータを比較して、顧客エデュケーションプログラムを拡大しながら満足度を監視します。
- ネットプロモータースコア(NPS): 顧客に、自社を推奨する可能性を評価してもらいます。特定の回答を選んだ理由を、詳細に説明してもらうことが重要です。
- 顧客維持率: 顧客エデュケーションが成功すると、顧客維持率が高まります。顧客維持率が低い場合は、戦略を見直す必要がある可能性があります。また、Forresterのレポートでは、回答者の58%が、顧客エデュケーションが顧客維持率の向上や顧客離れの低減につながるという認識を示しています。
- 問題解決時間: 効果的な顧客エデュケーションプログラムは、セルフヘルプを通じて顧客に情報を提供するだけでなく、全体的な問題解決時間を大幅に短縮することもできます。上級管理職のほぼ3分の2(63%)が、顧客学習戦略によって問題解決時間を短縮できたという認識を示しています。
- クロスセルのコンバージョン率: 顧客エデュケーションにより、製品に関する疑問や悩みが解消され、顧客の製品に対する理解が深まります。これにより、アップグレードの申し込みや他の製品の試用に関する、顧客の誤解や認識不足といったリスクを低減できます。実際、回答者の58%が、顧客エデュケーションがアップセルやクロスセルの機会によるウォレットシェアの向上に貢献したと回答しています。

2. 配信形式とチャネルの選択
多様な学習方法とチャネルを組み合わせることで、学習に対する顧客の様々な好みに対応できます。顧客エデュケーションを提供するために最もよく使用される形式は、次の5つです。
- トレーニング補助教材およびマニュアル
- 製品デモ
- 動画
- PowerPointチュートリアル
- 自分のペースで進められるeラーニング
Adobe Learning ManagerのようなヘッドレスLMSは、あらゆる教育コンテンツを任意のチャネルで配信することで、顧客のeラーニング体験を変革できます。顧客は、ブランド体験を離れることなく、動画の視聴やコースの登録を行えます。AIによるレコメンデーションや認定資格を使用してコンテンツをパーソナライズすることで、顧客は有益な教育コンテンツを簡単に見つけて活用できるようになります。
3. 顧客エデュケーション向けLMSの選定
アドビのレポートによると、企業の66%が、顧客向けトレーニングを提供するためにLMSを使用しています。LMSを選定する際に注目すべき点は、次のとおりです。
- カスタマイズ: 顧客エデュケーション向けLMSでは、ロゴやブランドカラーを追加するだけでなく、詳細なカスタマイズが可能である必要があります。コースの検索、進捗状況の追跡、ゲーミフィケーション要素など、学習体験に影響を与える、カスタマイズ可能なダッシュボードを備えているかどうか確認しましょう。アドビのLMSなら、ヘッドレス機能により、多くの労力を費やすことなく、フロントエンドにコースのレコメンデーションを自動的に表示できます。
- パーソナライゼーション: Adobe SenseiなどのAIは、レコメンデーションのパーソナライゼーションを強化するのに役立ちます。ユーザーが使用しているコンテンツや学習者データを分析することで、次のステップを提案できます。これにより、顧客は製品から最大限の価値を簡単に得ることができ、企業はアップセルやクロスセルを行うことができます。
- 高度なレポート: LMSは、現在の顧客エンゲージメントを測定し、将来の顧客エデュケーションのニーズを特定するための、詳細な分析を提供する必要があります。これにより、戦略を継続的に改善できます。
- 統合: LMSは、ビジネス成長に合わせて拡張する必要がありますが、そのスケーラビリティは、統合に左右されます。よく使用するその他のツールと統合できるLMSソフトウェアを探しましょう。例えば、Adobe Learning ManagerとAdobe Marketo Engageを統合して、学習データに基づいたマーケティングキャンペーンを推進できます。
- 柔軟性: 顧客は、コンテンツを使用するために面倒な手続きを踏む必要はありません。Adobe Learning Managerは、9つの形式のコースコンテンツを1つのウィンドウでシームレスに表示できる、柔軟なプレーヤーを提供します。さらに、モバイルモジュールやオフラインモジュール、ウェビナー、対面コース、マイクロラーニングなど、柔軟な学習オプションに対応しています。
4. フィードバックループの構築
米国のTVドラマ「Friends」のあるエピソードで、主人公の1人であるRachelは感謝祭のデザートを作るために、牛肉、豆、玉ねぎをソテーしました。友人たちは、Rachelを傷つけないように、その料理をおいしそうに食べるふりをしました。Rachelが2つのレシピを1つの料理として作ってしまったことを指摘した人は、誰もいませんでした。
この象徴的なシーンは、顧客からの率直で正直なフィードバックの必要性をよく表しています。顧客からの貴重なインサイトは、コースのコンテンツによって製品の使いやすさが向上したかどうかを把握するための指針となります。
顧客にフィードバックを共有するように促しましょう。教育コンテンツがどの程度役に立ったのか、魅力的であるか、適切な接点で提供されているかどうかを尋ねましょう。共有されたレビューは、オーディエンスのニーズに合わせたコンテンツを制作するのに役立ちます。
5. 学習パスのパーソナライゼーション
最適な学習方法は、人によって異なります。例えば、自動車の運転方法を学ぶ際に、教官から個人指導を受ける必要がある人もいれば、実際に自動車を運転する前に、何度もシミュレーションを行う必要がある人もいるでしょう。
パーソナライズされた学習は、個人の好みに基づいて、様々な形式で提供できます。パーソナライズされた学習パスを作成するには、関連するコンテンツをシーケンスで整理します。動画、ウェビナー、書面のガイドなど、複数の形式を含めることが理想です。新規ユーザーをパーソナライズされたオンボーディングパスに導き、そのユーザー固有のニーズに最適な機能を紹介することを想像してください。シーケンスには、各機能の場所、設定方法、期待できるメリットが表示されます。進捗状況バーには、オンボーディングを完了するために必要な時間が表示されます。学習した内容を再度確認する必要がある場合は、書面のガイドを利用できます。オンボーディング動画を再度視聴する必要はありません。また、新しい機能がリリースされると、役割、企業の規模、興味に基づいたレコメンデーションが表示されます。コースを完了せずに終了すると、数日後にリマインダーが表示されます。
Adobe Learning Managerのような強力なLMSを使用すると、進捗状況インジケーター、パーソナライズされたレコメンデーション、ゲーミフィケーション、通知などの要素を組み込み、顧客のモチベーションとエンゲージメントを維持できます。
6. 支持者のコミュニティを構築
顧客との関係は、信頼の上に成り立っています。顧客の信頼を裏切ると、批判を招くことになります。一方、信頼関係の構築に尽力すれば、顧客をブランドアンバサダーへと変えることができます。顧客エデュケーションを活用して、ソーシャルラーニングやゲーミフィケーションによる有意義な体験を創出することで、業界で自社の製品やサービスを積極的に支持してくれるコミュニティを構築できます。
Adobe Learning Managerのディスカッションフォーラムや、一般公開されている進捗状況の更新などのソーシャルラーニング要素を通じて、eラーニングコンテンツが提供する価値を他の顧客に示すことができます。このように、優良顧客は他の顧客のエンゲージメントを促進します。これは、仮想的なドミノ効果のようなものです。
共有可能なバッジやパブリックリーダーボードなどのゲーミフィケーション要素も、コミュニティ意識を育みます。バッジは、最も熱心なブランド支持者であることや、特定の分野の専門知識を示すために使用できます。様々な資格や自信を備えたこれらの顧客は、自社を推奨し、他の顧客を支援する可能性が高くなります。
顧客エデュケーションのベストプラクティス
顧客エデュケーションプログラムを導入するための第一歩は、顧客エデュケーションの目標を設定することです。ターゲットを絞ったeラーニングコンテンツを提供することは、これらの目標の達成に向けて成果を上げるために不可欠です。
さらに、次のベストプラクティスを実践することで、効率性を最大化しながら、顧客エデュケーションプログラムを運用できます。
- カスタマージャーニーに合わせてコンテンツを調整: 顧客がジャーニーのどの段階にいるのか、その段階で最も関連性の高い教育コンテンツは何かを把握します
- コンテンツを最新の状態に保つ: ナレッジベースを最新の状態に保つことで、顧客の利益のために最も価値のある、関連性の高いエデュケーションの提供に尽力していることを示しましょう
- 最適なコンテンツとペーシングを組み合わせる: 誰もがブログ記事を読んだり、動画コースに登録したいわけではありません。様々な学習方法を提供して、顧客が最適なペースで製品やサービスについて学べるようにしましょう
- コミュニティの奨励: ディスカッションフォーラムやチャットは、顧客のライフラインです。サポートチームが対応できない場合、これらのオプションによって顧客の不満を低減できます
- 成果の監視: 顧客エデュケーションプログラムの成果を監視し、データに基づいた継続的な改善を行います。ボトルネックや不満の原因を把握するには、定性的なフィードバックも不可欠です
Adobe Learning Managerで顧客エデュケーションプログラムを合理化
前述のキッチンキャビネットの例は、顧客が適切な教育資料をほとんど持っていない場合に、どのような悲劇か起こるのかを示しています。イラスト付きの説明書よりも、「失敗を避けるためのヒント」に関する一連のチュートリアルの方が、はるかに役に立つでしょう。
Adobe Learning Managerのような強力なLMSは、顧客エデュケーションに役立つ重要なコンテンツを提供し、製品の採用を加速させることができます。単一の統合学習プラットフォームを通じて、自分のペースで進められるトレーニングと、インストラクター主導のトレーニングの両方を提供できます。
さらに、ヘッドレス機能により、既存のCMSやフロントエンドのオンラインプレゼンスにLMSを簡単に組み込むことができます。これにより、顧客は価値を得るために、複数のwebサイトやアプリにアクセスする必要がなくなります。
Adobe Learning Managerのパーソナライズされたインタラクティブな学習パスを使用すれば、顧客一人ひとりのニーズや好みに合わせて教育体験をパーソナライズできます。画一的なアプローチは、もはや許されません。
Adobe Learning Managerの顧客エデュケーション機能が、製品の導入を加速させ、ブランド支持者による満足度の高いコミュニティを構築し、顧客が価値を実現するまでの時間を短縮するのにどのように役立つかをご覧ください。
関連トピックス
https://business.adobe.com/fragments/resources/cards/thank-you-collections/learning-manager