Adobe Real-Time Customer Data Platformを使用してオーディエンスのセグメンテーションを強化します。
05-21-2025
ヘルスケア分野で競争力を維持するには、高まる患者の期待に応えるパーソナライズされたデジタル体験を提供することが不可欠です。消費者はシームレスなインタラクション、タイムリーな情報提供、自分に合ったサービスを求めています。しかし多くの組織は、厳格なプライバシー規制に準拠しながら断片化したデータの統合という課題に直面しています。
このガイドでは、患者エンゲージメントを高め、パーソナライズされた医療サービス への需要拡大に応える方法を解説します。さらに、Adobe Real-Time Customer Data Platform(CDP)がHIPAAコンプライアンスを遵守しながらデータを統合し、オーディエンスセグメンテーションを強化し、患者体験全体を向上させる仕組みをご紹介します。
この記事の内容:
より多くのヘルスケア利用者が期待するパーソナライズされた体験
患者を含む医療サービス利用者は、画一的な体験にうんざりしています。調査対象となった 医療サービス利用者の過半数 が、自身の個人データを使って慢性疾患を管理したり、健康に関する洞察を得たり、パーソナライズされた製品や保険の提案を受けることに前向きだと答えています。
関連性とカスタマイズに対する期待の高まりは、デジタル化された医療サービスへの移行と密接につながっています。デロイトの調査により、医療サービス利用者の65%は対面診療よりもオンラインでの診療やコミュニケーションを好んでいることが明らかになりました。
CDC によれば、成人の58.5%がインターネットを利用して健康や医療情報を得ており、女性の利用率は男性よりも高いことが分かっています。医療提供者とデジタルでやり取りする割合が最も高いのは30歳〜44歳の成人であり、その割合は47.7%に達しています。
これらの傾向は、医療機関が正確かつリアルタイムなデータを活用し、オーディエンスを効果的にセグメントすることで、デジタルチャネルを通じてタイムリーで有益、かつパーソナライズされたコンテンツを届ける必要性を浮き彫りにしています。
医療サービス利用者は、パンデミック以前には想像もできなかったほど多様なデジタル体験と対面体験を期待するようになっています。たとえば、オンライン診療を提供する医師にも、地域のクリニックで診てもらう主治医と同じように自分の履歴を理解してほしいと望んでいます。さらに、次回の診察や関連検査について適切なタイミングでリマインドされることも期待しています。そして、自分の病歴を何度も繰り返し説明したり、紙のフォームに記入したりする手間から解放されることを望んでいます。
しかし、現時点ではほとんどの医療機関がこうした期待に応えられていません。オンラインとオフラインに散在する顧客データを統合し、意味のあるプロファイルにまとめ上げることができないうえ、HIPAAなどの厳格なプライバシー規制にも対応する必要があるからです。アドビはこの業界の大きなニーズを認識し、その解決策として、医療分野向けAdobe Experience Cloudの最初のプロダクトとして Adobe Real-Time CDP をリリースしました。
解決策 — Real-Time CDP
Web、モバイル、メール、コールセンター、対面など、すべての接点で一貫したパーソナライズ体験を提供するには、患者ごとの統合ビューが欠かせません。そして、その出発点はデータです。たとえば患者がインフルエンザの症状を検索した場合には、プライバシーを損なうことなく、最寄りのクリニックの情報、ワクチンの在庫状況、フォローアップケアなど、関連性が高くタイムリーな情報を自動的に提示できます。
Real-Time CDP は、事実上あらゆるソースから 顧客データを収集 することで、このレベルのパーソナライゼーションを可能にします。Webサイトやモバイルアプリといったクライアント側プラットフォームから体験データをリアルタイムで収集し、さらにCRMやマーケティングオートメーションツール、電子カルテなどの外部システムからもシームレスに データを取り込み ます。
収集されたデータは Real-Time CDP によって集約および標準化され、患者ごとに動的で一貫性のある統合プロファイルが作成されます。これらのプロファイルは数秒で更新され、アドビ製品と他社システムの双方に共有されます。その結果、患者がヘルスケアジャーニーのどの段階にいても、常に最新かつ完全な履歴とニーズを踏まえた対応が可能になります。
Real-Time CDPで実現するHIPAAコンプライアンス
医療機関向けに設計された Real-Time CDP は、すべてのデータが HIPAA に準拠した方法で収集および保存されることを保証します。個人を特定できる情報(PII)や、過去、現在、未来の健康状態に関する保護対象健康情報(PHI)を容易に識別および保護し、アクセスルールを適用できます。そのため、すべての顧客データがコンプライアンスと倫理の両面で適切に扱われていることに安心していただけます。
Real-Time CDP により、医療機関は患者や保険者をはじめとする関係者に対して、高品質でパーソナライズされた体験を提供できるようになります。患者がどのように医療サービスと関わり、何を優先し、どこで課題に直面しているかを把握できれば、より適切で関連性の高い体験を提供する体制を整えられます。
医療機関は Real-Time CDP を活用して、次のことを実現しています。
- パーソナライズされた体験とオファーを通知する。 Real-Time CDPはプロファイルデータを即時に更新し、顧客接点のシステムへ反映します。これにより、各顧客の状況に最も適したコンテンツやオファーを、その瞬間に提供できます。
- カスタマージャーニーを包括的に把握する。 Real-Time CDPは、あらゆるチャネルを通じた顧客と医療機関の関わり方を一元的に把握することを可能にします。これにより、たとえば複雑すぎるフォーム入力など、組織がすでに入手済みのデータを繰り返し求められるといったボトルネックを発見し、改善することが可能になります。
- 貴重な顧客インサイトを引き出す。 Real-Time CDPはAIや機械学習を活用した分析を支え、顧客行動のパターンを浮き彫りにします。こうしたパターンにより、顧客が新しいヘルスケア商品やサービスを購入しそうなタイミングや、提供者を変更しそうな時期を予測できます。このようなインテリジェンスを活用すれば、医療提供者は将来のニーズを先取りした体験や介入を提供できるのです。
統合データによる患者エンゲージメントの理解
現在の医療サービス利用者は、小売や銀行、動画配信サービスと同じレベルの利便性とパーソナライゼーションを、医療機関にも求めています。特にオンラインでのケア管理において、その期待は高まっています。多くの患者は、利便性とコストを理由としてオンライン診療を選んでいます。しかし、多くの医療機関は、シームレスなデジタル体験を提供できていません。患者は連携のとれていないプラットフォーム間を行き来することを余儀なくされ、画一的な対応を受け、自身の健康情報にアクセスすることすら容易ではありません。
医療機関におけるエンゲージメントを高めるためには、診察や会計といった日常的な接点のみならず、デジタルから対面まで一貫したパーソナライズ体験を構築することが求められます。堅牢なデータ基盤と、電子カルテ・請求システム・医療提供者向けプラットフォーム・薬局ネットワークなどを連携させることで、病院やクリニックは予約や保険の確認から患者の質問対応までを効率化できるようになります。患者にとっては、デバイスや診療環境が違っても、診察予約や検査結果などの健康情報にシームレスにアクセスできる環境が整うことになります。
その実現を後押しするのが、適切なテクノロジーです。Real-Time CDPは患者データをリアルタイムで統合し、個々の患者に最適化されたコンテンツや先回りしたアプローチ、セルフサービスツールを提供することを可能にします。さらに、電子カルテやwebサイト、アプリなど複数のプラットフォームに分散するデータを接続することで、オンライン診療の予約から検査結果の確認まで、スムーズで一貫した体験が実現します。すでに大規模なデジタル変革に取り組んでいる医療機関も現れています。
米国最大級の医療グループであるMercy Healthは、患者がオンラインで直面する数多くの不便を認識していました。デジタル変革に着手するまで、Mercyのwebサイトは、医師の検索や連絡先など基本的な情報を提供するだけでした。また、オンライン体験は対面診療の個別対応とは比べものにならないほど、誰にも通り一遍なものでした。
Mercy はその状況を変えたいと考えました。デジタルマーケティングチームは、デジタル全般、新しいチャネル、そして物理的な拠点に至るまで、測定可能で常に患者一人ひとりに対応した体験を構築するという高い目標を掲げました。Mercy Healthのwebサイトは、アドビのソリューションの活用により生まれ変わりました。今では、支払いや予約、検査結果の閲覧、各種セルフサービス情報へのアクセスまでものが、mercy.net上で、患者自身が行えるようになっています。さらに、デジタルプラットフォームと診療システムのデータを統合した顧客プロファイルに基づき、個別化されたコンテンツやリマインダーも受け取れるようになっています。
Adobe Customer Journey Orchestrationによるデジタル体験のパーソナライズ
ヘルスケア組織はデジタルツールに投資を進めていますが、真にパーソナライズされた体験を実現するにはまだ課題があります。大きな障壁のひとつが、患者の受け身なエンゲージメントです。患者が定期的に情報を更新したり、デジタルシステムを活用したりしない場合、提供者は完全かつ最新のプロフィールを構築することが難しくなります。この正確性を欠いたデータは、推奨される治療計画から、積極的なアウトリーチやフォローアップケアに至るまで、幅広い領域に影響を及ぼします。
たとえば、多くの患者はプライバシーへの懸念から、自ら 積極的に電子カルテを管理・更新することをためらいます。特にメンタルヘルスや性の健康、慢性疾患などのセンシティブな分野では顕著です。また、ツールが使いにくい場合や、医療提供者側からの支援や働きかけがない場合には、患者は医療データに関与しづらいことが調査で明らかになっています。それでも、能動的に関与するメリットは大きなものです。患者が自ら記録を維持することで、診察の合間の空白を埋め、新たな懸念を早期に発見でき、また診察時の情報の繰り返し説明を減らすことで、貴重な時間を節約できます。
ここで真価を発揮するのが、Adobe Customer Journey Orchestrationです。Real-Time CDP と組み合わせることで、医療提供者は患者の行動や嗜好にリアルタイムで応答できるようになります。たとえば、患者がフォローアップを予約したり、提供者のwebサイトで特定の症状について閲覧したりした際、そのデータが収集および分析され、患者が現在どの段階にいるのかを把握できます。こうしたインサイトは、パーソナライズされたコンテンツの提示、ケアのリマインダー、あるいはメールやSMSによるメッセージなど、次に取るべき最適な行動へと導きます。
リアルタイムのデータと行動コンテキストに基づいてジャーニーを設計することで、ヘルスケア組織は画一的なアウトリーチから脱却し、よりパーソナライズされたデジタル医療体験へと進化できます。さらに、最新のやり取りに応じて患者プロフィールを継続的に更新および精緻化するため、あらゆるメッセージや通知、推奨が常に関連性が高く、タイムリーで、個々の健康目標に合致したものとなります。
Adobe Customer Journey Analyticsが医療機関にもたらす力
高まる消費者の期待に応えるため、医療提供者は、厳格なHIPAAコンプライアンスを維持しながら、オンラインとオフラインの両方から患者データを統合し、完全かつ実用的なプロフィールを構築する必要があります。そこで活躍するのがAdobe Customer Journey Analyticsです。
Customer Journey Analytics は、患者行動の背後にある「なぜ」を明らかにします。柔軟なデータフレームワークにより、予約システムや電子カルテから、webサイト、モバイルアプリ、コールセンターまで、多様なデータを一元的に統合できます。組み込みのガバナンス機能やカスタマイズ可能な権限管理によって、あらゆる段階で患者のプライバシーが守られ、医療提供者は安心してインサイトを活用できます。
すべての患者にパーソナライズされた医療体験を届ける
ヘルスケアブランドは表面的な指標にとどまらず、患者ジャーニー全体の文脈を理解する必要があります。Real-Time CDP や Journey Orchestrationと組み合わせることで、Customer Journey Analytics はつながりのあるパーソナライズ体験を提供する強力なツールとなります。それにより成果を高め、信頼を強化し、リアルタイムなエンゲージメントへの需要に応えられるのです。
関連するユーザー事例
https://business.adobe.com/fragments/resources/cards/thank-you-collections/rtcdp