マーケティングの目的は「問い合わせ」を増やすことか?
「もっと問い合わせを増やせないの?」マーケターであれば、社内の営業部門からこんなリクエストを受けた経験があるのではないでしょうか。
Webサイトからの問い合わせは、お客様の要件が固まっていることが多く、結果が目に見えやすいため営業が要望する気持ちはよく分かります。しかし、「問い合わせを増やす」ことだけが、マーケティング部門の仕事なのでしょうか。アドビでの実体験を基に、論理的な答えが出せるように考えてみましょう。
もくじ
- 問い合わせ重視で見落としがちなこと
- リード獲得の長期的な効果
問い合わせ重視で見落としがちなこと
実は、アドビのMA「Adobe Marketo Engage」では、過去2年の新規受注における問い合わせ起点の商談の割合は、**件数ベースで10%に過ぎません。**残りの90%は、webサイトの資料ダウンロードやイベント出展、広告経由の新規リードによってもたらされているのです。
また、Forresterの2019年の調査では次のような結果が出ています。
B2BやB2Cの検討型商材であれば、衝動的に購入を決めることはほとんどなく、B2Bでは平均7.9回、B2Cでは8.4回のマーケティング接点を経て購買に至る。
これは、問い合わせに至る前の段階で、検討を前に進める何かしらの接点が複数回あったことを意味しています。
そのため、営業につなぐ前のマーケティングの段階で「問い合わせの数」ばかりを重視すると、現実に以下のようなことが起こります。
- 競合企業に出遅れて商談が不利に進む
- お客様の動きに商談数が左右され、売上の見通しが立たない
- カスタマージャーニーに沿ったコミュニケーションが取れず商談数が伸びない
- マーケティングチャネルが限定され、認知が高まらない
リード獲得の長期的な効果
一方で、「リード獲得」とは、見込み客の個人情報を取得し、直接コミュニケーションができる状態になることを指します。まだ問い合わせするほどではないものの、「ビジネス上の課題がある」「興味関心を持っている」という方に対してコミュニケーションをとっていくため、長期的な戦略が必要になりますが、以下のようなメリットもあります。
- 競合に先駆けて、検討初期から直接のコミュニケーションを取れる
- お客様の動きをより望ましい方向へ変える対策ができる
- 過去の実績から商談創出の遷移率を算出し、将来の見通しが立てられる
- ターゲット企業のアプローチ先を比較的低いハードルで取得できる
- 多様なマーケティングチャネルを通じて認知獲得施策にも投資できる
上述した調査結果にもあるように、購買に至るまで平均で7〜8回の接点があるわけですから、その接点をお客様に委ねるのではなく、なるべく早い段階で接点を直接持つことによってお客様が購買に至るまでの行動を可視化できます。それにより、より購買に繋がりやすい行動へ誘導したり、お客様が欲しいと思う情報を、欲しいと思うタイミングで提供することで顧客体験が向上し、信頼感を高めることが可能になります。
「問い合わせを増やしてほしい」という声にこたえるためにも、問い合わせまでのお客様の動きを理解することは大切です。そして、問い合わせの数を追い求めることは、ビジネスにとって必ずしも最善策ではないことを知り、中長期的な関係を築くこと、さまざまな接点を持つことを心がけてマーケティングに取り組んでもらえれば幸いです。