デジタル顧客体験(CX)とは?概要とベストプラクティスを解説

Digital customer experience guide

顧客は、デジタル顧客体験(CX)とそれ以外のCXの違いを把握していないかもしれません。しかし、企業はその違いを把握しておく必要があります。ビジネスを成功させるには、顧客に最適なデジタルCXを提供することが不可欠です。

多くのビジネスリーダーは、質の高いCXを提供することの重要性を認識しています。デジタルの世界では、AI(人工知能)などのテクノロジーの進化により、顧客は、あらゆるチャネルをまたいでパーソナライズされた体験が提供されることを期待するようになっています。カスタマージャーニーの各段階で、シームレスでパーソナライズされたデジタルCXを設計、管理することで、より多くの顧客を獲得および維持し、ビジネスの長期的な成長を促進できます。

この記事では、デジタルCXの概要、重要性、ベストプラクティスを解説します。

デジタルCXとは?

デジタル顧客体験(CX)とは、あらゆるデジタルプラットフォームを通じて企業とやり取りする中で、顧客が抱く認識のことです。 これらのプラットフォームには、webサイト、モバイルアプリケーション、ソーシャルメディア、電子メールなど、デジタル接点を伴うあらゆるチャネルが含まれます。

企業は、広告だけでなく、コマースや顧客との関係構築のために、仮想世界に注目し始めています。そのため、デジタルCXは、マーケティング戦略に不可欠な要素となっています。実際、顧客の約3/4が、ひとつの取引に複数のチャネルを利用しており、半数以上がプロセス全体でパーソナライゼーションを期待しています。そのため、企業とのデジタルインタラクションの質は、これまで以上に重要になっています。

顧客は、デジタルCX全体を通じて、ジャーニーの最初から最後までスムーズかつ容易にフォローできることを期待しています。ポジティブなデジタルCXを提供することで、こうした顧客の期待に応え、好意的な印象を与えることができます。これにより、顧客は自身の体験を他者と共有したり、リピーターになったりする可能性が高まります。

今日のマーケターは、顧客の関心を惹きつけ、売上を伸ばすために、実績の有無を問わず、利用可能なあらゆるデジタルプラットフォームを検討し、最適なものを選択して使いこなせなければなりません。ポジティブなデジタルCXを実現するために活用できる接点には、次のようなものがあります。

デジタルCXとCXの比較

顧客体験(CX)には、顧客と企業のあらゆるインタラクションが含まれます。一方、デジタルCXは、デジタルインタラクションのみを指します。つまり、CXはより幅広い概念であり、デジタルCXはその一部であると言えます。

多くの顧客は、これらの概念を明確に区別することはありません。企業は、実店舗での体験と同様に、質の高いデジタルCXを提供する必要があります。そのためには、従来のチャネルとデジタルチャネルをシームレスに移行できるようにする必要があります。企業は、ブランド体験全体に対する顧客の高まる期待に応えるために、デジタルCXの取り組みを強化しなければなりません。

顧客は、デバイス、チャネル、場所を問わず、最も便利かつ魅力的な方法で、必要なものを入手できるようになります。それらをすべて実現できる、優れたジャーニーを構築すれば、顧客は長期にわたって、何度も自社の製品やサービスを利用するようになるでしょう。

デジタルCXが重要である理由

デジタルCXは、顧客が自社に対する意見を形成するのに役立つため、非常に重要です。シームレスなデジタルCXを提供することで、顧客との信頼関係を構築し、購入を促すことができます。

CXは、売上を増加させる原動力です。多くの顧客は、パーソナライズされていない体験を許容しません。実際、消費者の66%が、体験がパーソナライズされていない場合、その企業からの購入をやめると回答しています。

また、デジタルCXのスピードが遅い、または信頼性が低い場合も、同様に悪影響を与える可能性があります。デジタルの世界では、あらゆる企業がわずか数回クリックするだけで即座に取引を実行し、激しい競争を繰り広げています。そのため、優れたデジタルCXを実現できるかどうかは、潜在顧客を失うか、売上につながるかを大きく左右します。企業は、デジタルCXを最優先課題として取り組む必要があります。

シームレスなデジタルCXを提供することで、より多くの顧客を獲得し、売上を向上できます。また、顧客はより長く自社との関係を維持し、友人や家族に自身の体験を共有するようになります。

デジタルCXジャーニー

デジタルCXジャーニーは、「認知」、「評価」、「購入」、「再購入」、「支持」の5つの段階で構成されています。企業は、各段階で優れたデジタル体験を提供することで、顧客ロイヤルティを高め、成長を促進できます。ここでは、各段階がより幅広いデジタルCXとどのように相互作用するかを説明します。

Digital customer experience journey stages

  1. 認識:デジタルCXジャーニーの最初の段階では、製品やサービスで解決できる課題を抱えている顧客の関心を惹きつける必要があります。顧客は、自身の課題とその解決方法を把握しています。コンテンツマーケティング、有料広告、インテントベーストラフィックを通じて、顧客が自社を認知するようにします。
  2. 評価:次の段階では、顧客はリサーチと情報収集をおこない、複数の企業を比較検討します。自社は、品質と費用対効果が最も高い製品やサービスを提供できているか、顧客レビューをもとに、顧客からどの程度信頼されているかどうかを確認しましょう。これは、デジタルCXジャーニーの重要な段階であるため、あらゆるデジタル接点で顧客の共感を呼ぶ必要があります。

デジタル接点とは、製品に対する顧客の理解を促進する、あらゆる接点を指します。ウェビナー、デモ、無料トライアル、製品に関するホワイトペーパー、ケーススタディ、製品比較表など、あらゆる製品マーケティングコンテンツが含まれます。顧客は、ソーシャルメディア、検索エンジン、webサイトなどのプラットフォームを通じて、これらのコンテンツを見つけ出します。

  1. 購入:顧客は、さまざまな企業の中から、自社の製品を購入することを決定します。しかし、顧客が決定を下したあとであっても、技術的な障害が顧客の購入を妨げる可能性があります。この段階での重要なデジタル接点は、決済ページやサブスクリプション登録ページです。

これらのプロセスの有効性、つまり放棄率を左右するいくつかの指標を注視する必要があります。これにより、購入プロセスを開始したものの、購入する前に離脱したオーディエンスを把握できます。また、特定の期間内に実行された購入回数も重要な指標です。

  1. 再購入:この段階の目標は、自社の製品やサービスに対する顧客満足度を高め、再購入につなげることです。新規顧客を獲得するよりも、既存顧客に売り込むほうがはるかに容易なため、この段階では特に重要です。

デジタルカスタマーサポート、カスタマーサクセス、リテンションマーケティングを強化することで、顧客が何度も再購入するように促す必要があります。例えば、既存顧客をターゲットとする、24時間年中無休のカスタマーサポートチャットや、メールマーケティングキャンペーンを導入できます。ロイヤルティ化、セールス、パーソナライゼーションも強化する必要があります。

また、指標の追跡も引き続き重要です。企業の44%が、顧客維持率を把握できていません。指標を活用できるかどうかが、差別化につながります。

  1. 支持:この段階では、リピート顧客がロイヤル顧客へ転換します。これらの顧客は、ソーシャルメディアを通じて家族や友人に企業を宣伝したり、適切なチャネルで製品のレビューを投稿したりしています。また、紹介プログラムを通じて、新規顧客を積極的に紹介することもあります。

この段階では、紹介率、つまり購入総数に対する紹介購入の比率を追跡できます。多くのロイヤル顧客を獲得している企業は、デジタルCXジャーニーにおいて、適切なタイミングで優れた施策を実践しています。

デジタルCXのベストプラクティス

シームレスなデジタルCXを実現することが、自社にとって重要である理由を考えてみましょう。パレートの原理では、売上の80%が、既存顧客の20%によって生み出されていると考えられています。今日の顧客は、デジタルCXと物理的なCXを区別しておらず、ジャーニーのあらゆる段階で、より質の高いパーソナライズされた体験を期待しています。ここで紹介するベストプラクティスは、優れたデジタルCXを実現し、その成果を測定するのに役立ちます。

オーディエンスの特定

優れたデジタル体験を提供するには、さまざまな顧客タイプを理解する必要があります。顧客セグメンテーションは、購買行動にもとづいて顧客を分類し、メッセージやオファーをパーソナライズするのに役立ちます。

多くのオーディエンスを適切にセグメンテーションするには、次の質問に答える必要があります。

CXの中核を担う要素は、ターゲットオーディエンスによって異なります。ペルソナを作成することで、さまざまな顧客セグメントに柔軟に対応できるようになります。ペルソナには、基本的なデモグラフィック情報、動機、行動が含まれます。

カスタマージャーニーの追跡

最適なデジタル体験を生み出すには、顧客が自社といつどこでやり取りするのかを把握する必要があります。ペルソナごとにカスタマージャーニーを構築することで、顧客接点を追跡できます。

データの抽出も、これらの接点をより詳細に理解するのに役立ちます。顧客から情報を直接収集するか、分析ツールを使用して、ジャーニーがどのように進行しているのかを把握しましょう。接点がジャーニーの進捗を妨げている場合は、必要な調整をおこない、顧客への共感を示すことで、デジタルCXを強化する必要があります。

オムニチャネル体験の創出

Digital customer experience best practice

オンラインとオフラインの接点をまたいで、単一のシームレスなジャーニーを構築することで、オーディエンスが自身の条件に合わせて、自社とエンゲージメントできるようにします。まず、カスタマージャーニーの潜在的な接点をすべて把握する必要があります。プラットフォームとデバイスをまたいで容易に移動できるか、過去のやり取りを反映したメッセージを配信できているか、各段階で適切な量の情報を提供し、オーディエンスを正しい方向へ導いているか、といったことを検証します。コンテンツ戦略は、包括的なオムニチャネル体験を構築するために不可欠です。コンテンツ戦略は、包括的なオムニチャネル体験を構築するために不可欠です。

顧客からのフィードバックループの構築

デジタルCXが効果的かどうか、またその改善方法を把握するためには、顧客に尋ねる必要があります。アンケートや単純な評価ボックスを活用して、全体的な顧客満足度を判断します。顧客から質問や課題に関する問い合わせがあった場合は、回答や解決策が顧客にとって有益であることを確認する必要があります。また、カスタマーサービスに寄せられた電子メールには、必ず返信することが重要です。製品チームにユーザーテストを依頼することもできます。

デジタルCXのパーソナライゼーション

顧客は、企業から直接気にかけてもらえることを期待しています。顧客が企業を信頼しており、最適な体験を創出するために自身のデータを使用すると考えていれば、顧客は積極的にデータを提供するでしょう。そのためには、最適な製品、サービス、レコメンデーションをタイミングよく提供し、自社が顧客の好みを把握していることを示すことで、デジタルCXをパーソナライズする必要があります。

例えば、登録プロセスで、顧客に生年月日を提示してもらいます。これにより、顧客の誕生日に、ショッピングカートに追加されている製品に対して、割引料金を提示することができます。

分析の活用

データ分析は、顧客の行動パターンに関するインサイトを得るための優れた方法です。Adobe AnalyticsやGoogle Analyticsなどのデータ分析ツールは、ビジュアルレポートやカスタマイズされたダッシュボードを通じてデータを可視化し、データの真の価値を引き出すのに役立ちます。

改善策の模索

企業は常に、CXとデジタルCXの両方を向上させるように努力する必要があります。顧客のフィードバックとデータトレンドを活用して、試行錯誤しながら継続的な施策を展開し、その成果を測定しましょう。これらの取り組みを通じて経験を積み、望ましい顧客の感情や行動を促進するためのインサイトを獲得できます。

デジタルCXを進化させるためのツール

デジタルCXは、今日のマーケティング戦略にとって不可欠なものです。シームレスなデジタルCXを実現することで、顧客ロイヤルティを維持し、顧客を通じた自社の宣伝を促進できます。先進的なデジタルCXを提供するのは、困難に思えるかもしれません。しかし、多くの企業は、顧客管理ツールやデータという形で、デジタルCXを推進するための基盤を既に確立しています。準備ができたら、最適なツールを選択して、優れたデジタルCXを実現するための取り組みを開始しましょう。

デジタルアセット管理(DAM)とコンテンツ管理システム(CMS)の能力を組み合わせたAdobe Experience Managerなら、顧客一人ひとりに合わせてパーソナライズされた適切な体験をタイミングよく提供できます。AI(人工知能)を利用した最先端の自動化ツールにより、webサイトやIoTなどのあらゆるチャネルをまたいで、1対1のデジタル顧客体験を大規模に構築、最適化、配信できます。クラウドサービスの利点を備えたAdobe Experience Managerは、最新状態が常に維持されるため、コンテンツを最大限に活用し、高まり続ける顧客の期待に応えることができます。

Adobe Experience Managerに関して詳しくは、動画をご覧ください。