【Adobe Summit 2023 Report】HIPPAに対応し、コンプライアンスを遵守しながら進めるパーソナライゼーション

Adobe Summit 2023では、さまざまな業界向けに、製品やソリューション、事例について取り上げる数多くのセッションが開催されました。その中で、ヘルスケア業界向けのセッションでは、パーソナライゼーションの困難な課題に立ち向かう2社から幹部を招いたパネルディスカッションが大きな注目を集めました。

もくじ

  • Adobe Healthcare Shieldの提供を開始
  • デジタルを使わないやり方をデジタル化するのも1つの方法

Adobe Healthcare Shieldの提供を開始

パーソナライゼーションの実現にあたっては、最適なデータ収集と管理、有意義なコンテンツの配信、そしてチャネルを横断したカスタマージャーニーの整備という全業種共通のベースラインがあります。そして、他の業種の先進企業は、これらを実現し、すでに実行段階に入っています。この事実は、他の業種の顧客でもある消費者が、最先端の顧客体験に触れていることを意味します。当然ながら、さまざまな調査によって明らかになったように、大半の消費者はヘルスケア企業からも同様の顧客体験を得たいと考えています。

デジタルの世界で競争に勝つパーソナライゼーションを実現するためには、デジタルチャネルを充実させ、デジタルファーストの思想を持つことが必要です。ヘルスケア企業も、同様の意見を持っており、この分野への投資を積極化しようと考えてはいます。しかしながら、この業界にはセキュリティとプライバシーという大きな課題が横たわっています。

アドビが512人のヘルスケア企業幹部を対象に実施したアンケート調査によると、ヘルスケア業界はパーソナライゼーション領域で他業種に比べて大きく遅れを取っています。30%の企業がようやく端緒についたばかりで、多くは遅れている要因として「ツールがない」ことを挙げています。

こうした声にこたえるべく、アドビはHIPPA(Health Insurance Portability and Accountability Act:電子化された医療情報のプライバシー保護/セキュリティ確保について定めた法律)に対応するAdobe Healthcare Shieldなど業界特化ソリューションの提供を開始しました。HIPPAで規定されているPHI(Protected Health Information:個人を特定できる医療・保健情報)の処理方法に準じて個人情報を管理し、リアルとデジタルをまたいだ顧客行動の追跡を可能にすることで、ヘルスケア企業のパーソナライゼーションを加速することが期待されています。

デジタルを使わないやり方をデジタル化するのも1つの方法

アドビのTom Swansonがモデレーターを務め、CVSヘルス社のBen Meck氏、およびElevance Health社のKim Myers氏という2人のマーケティングテクノロジー部門幹部を壇上に招いた今回のパネルディスカッションにおいて、会場からの質問が多く飛び、最も議論が白熱したのもこのトピックについてでした。

興味深いことに、Ben Meck氏はヘルスケア業界からスタートしたもののB2Cブランドのデジタルマーケティングを担当した経験があり、Kim Myers氏は業種をまたいだ数回の転職経験があります。他業種を知る2人のキャリアについて、Swansonは「デジタルマーケティングは他業種の経験が生きる」と好意的です。では、2社はコンプライアンスを遵守した上で、臨床データなどのPHIを含む顧客個人情報を、どのように行動データなどと統合し、パーソナライゼーションを進化させようとしているのでしょう。

Myers氏は、「弁護士やコンプライアンスの専門家を雇ってできること/できないことを切り分けています」と話します。HIPPAに非準拠のシステムを経由しない方法でPHIをパーソナライゼーションに生かすアプローチで、現状はまずまずの改善が見られたようです。「現時点では、電子メールマーケティングにおいて、メッセージの送り方ひとつをとっても慎重に実施しています。実際に、既往症を類推されるようなメールを傍受されるリスクもありますからね。Adobe Healthcare Shieldがあれば、もっと自由な顧客アプローチが可能になるはずで、大いに期待しています」。

Meck氏は、「HIPAAに対応していないツールは、顧客向けのマーケティング領域のようにより安全な領域で始めるよう工夫しています」と話します。現状はパーソナライゼーションには至っておらずセグメントベースにとどまっていますが、それでも一歩前進したととらえています。「最も難しいのは、セグメントに対するユースケースを考えること。マーケティング的なユースケースではなく、たとえば顧客の健康状態をより良くする提案のような、ヘルスケアデータを適切に利用した上でユーザーが必要とするコンテンツを提供する活動は成功しています」。

両者は、顧客の同意を得た場合でも、PHIをHIPPA非準拠のシステムで扱わないといいます。その上でMeck氏は、さらにパーソナライゼーションを進化させるために、いますぐに取り組めるヒントを会場にシェアしてくれました。

「実は、同意をうまく処理するやり方はあるようなのです。ちょうど今、HIPAAサンドボックスを構築してデータ統合に取り組んでいるところなのですが、以前に顧客の同意を得てプロセスを進めることに成功したチームに話を聞いて、そのやり方をそのままAdobeのシステムに落とし込むことができました。テクノロジーを使わずに、コンプライアンスを遵守した上で、メッセージを配信する方法を発見しているチームが、皆さんの組織にもあるかもしれません」

本セッションは以上となります。