ヘルスケア業界向けミートアップイベントを開催!これからの同業界におけるデジタルマーケティングのかたちを示す

テーブルに並んだ人々 中程度の精度で自動的に生成された説明

5月16日、アドビプロフェッショナルサービス主催による「Adobe Customer Experience Meet Up for Healthcare」が、リッツ・カールトン東京にて開催された。ミートアップイベントには、製薬メーカー、医療機器メーカーなどのヘルスケア企業にてデジタルおよびITに従事するマーケティング担当者の他、アドビ社員が参加。アステラス製薬の小泉氏と大石氏の講演そしてパネルディスカッションへと続いたセッションの後には、ランチ及びネットワーキングの場も設けられた。

もくじ

  • アステラス製薬におけるアドビソリューションを活用したメールコミュニケーションとMRへの情報発信
  • Marketo Engageを活用してオウンドメディアのユーザー数を大幅に向上
  • SNSとMarketo Engageの連携
  • デジタルマーケティングを組織に浸透させるために重要なポイント

アステラス製薬におけるアドビソリューションを活用したメールコミュニケーションとMRへの情報発信

この日の講演で貴重な事例の紹介を行ったのは、アステラス製薬株式会社Omni Channel Strategy&Operationsの小泉 晋之介氏と、同組織の大石 幸太氏だ。両氏の講演では、小泉氏と大石氏が交互に登壇し、同社のオウンドメディア「ASTELLAS MEDICAL NET」におけるAdobe Marketo Engage(以下、Marketo Engage)の活用の経緯とその成果などについて紹介した。

同社は製薬会社であり、顧客の多くは医療従事者である。そんな同社において運用の効率化とエンゲージメント向上の大きく2つのテーマで活動を行っているのが、両氏が所属している部署である。

「最適なカスタマージャーニーを描くべく、どのチャネルで何をつくるのか、戦略を立案して、その実現のためのフレームワークを構築する役割を担っている」(小泉氏)

両氏のチームでは、グローバルレベルで重複している作業をなるべく1本にまとめる活動を推進している。コンテンツをつくる際にも、例えばイタリアでつくったコンテンツであれば欧州全般で利用する、アメリカのコンテンツであれば日本でも利用する、といったグローバル間でのコンテンツリユースも検討しているという。そしてエンゲージメントの強化に向けて、アドビの5つのソリューションを活用しているのである。

ここからは、アステラス製薬で進めているデジタルコミュニケーションとその施策について紹介された。

Marketo Engageを活用してオウンドメディアのユーザー数を大幅に向上

まずは大石氏が、Marketo Engageを活用したメールコミュニケーションの事例を紹介。昨年度の同社のオウンドメディアでは、Marketo Engage経由でアクセスしたユーザー数は274%も増加したという。こうした目覚ましい成果を実現したのは、大きく4つのポイントでMarketo Engageが活用されたからだ。

まず1つは顧客がメールを見る時間帯に応じた分割配信であり、2つ目は動的コンテンツ配信である。

「1つのプログラムをつくりつつ、動的にコンテンツを出し分ける仕組みがMarketo Engageにはある。そのおかげで、工数を抑えつつ、ターゲットに合わせたコンテンツを届けることができた」(大石氏)

3つ目は行動別配信で、4つ目は職種別、ターゲット別に最適化したコンテンツを届ける属性別配信である。

「行動別配信では、Webシンポジウムへの出席履歴など、顧客ごとの行動に基づいた情報を蓄積することで、シナリオ別にパーソナライズされた情報を、Marketo Engageにより自動化するとともに的確に届けられるようになった。そしてこうした4つのポイントに基づいたMarketo Engageの活用により、オウンドメディアへのMarketo Engage経由のアクセスの274%もの向上を果たすことができた」(大石氏)

会議室にいる人たち 自動的に生成された説明

SNSとMarketo Engageの連携

続いて小泉氏が、SNSとMarketo Engageを活用したMRへの情報配信の取り組みについて語った。

医師の情報収集源としては、一番初めにMRに連絡する割合は3割弱、オウンドメディアが1割ほどとなっているという。また、MRから情報を得てその後にオウンドメディアで確認や、その逆の流れなどもある。

「MRの面談内容の質を向上させるため、複数のKPIを設定し最適化を図っている。そのためにMarketo Engageを用いることで、コンテンツについて何を見たか、いつ配布したかなどの細かい情報を瞬時に関係者がわかるような体制にしている」(小泉氏)

これによりリアルタイムに情報共有するとともに通知の設定も複数設定できるようになり、また医師が情報を見たという通知が担当MRに届くようにもなった。

「通知を受けたMRが医師のもとに伺うと、一度止まっていた処方が復活したなど、我々が想定していたより多くの効果が得られた。このためMRからも、ぜひ続けてくれといった声が寄せられており、対象製品を拡大していこうとしているところだ」(小泉氏)

ノートパソコンの前に立っている男性 低い精度で自動的に生成された説明

オウンドメディアの改善に向けてのアドビソリューション

続けて小泉氏は「ASTELLAS MEDICAL NET」の満足度調査についても触れた。アンケート回答数は、インセンティブを付けなかったにも関わらず想定を上回り、60%以上の回答が「良い」と、かなり評価が高かった。

アステラス製薬では、この情報を次の施策に活かすべく、大きく2つのアドビソリューションの活用に向けて動き始めている。

「まず1つはAdobe Analyticsであり、注力製品に絞ってどのコンテンツを見てどんな評価をしたのか、また製品ごとの傾向の違いなどもわかるので、成功パターンを拡げていくことができるし、その成功の種を他の製品に転用ということも可能となる」(小泉氏)

もう1つは“アクセスの訪問者×評価が高かった人×MR当たりのエンゲージコスト”を導き出すことで、MR1人当たりのコストをかなり削減しているという。

デジタルマーケティングを組織に浸透させるために重要なポイント

講演後のパネルディスカッションでは、小泉氏、大石氏の両氏と、アドビプロフェッショナルサービス事業本部 ビジネスコンサルティング本部 オペレーショングロース部の部長、冨田 洋平によるパネルディスカッションが、大きく3つのテーマで行われた。

スーツを着た男性たち 自動的に生成された説明

テーマ1:デジタルマーケティングを組織に浸透させる上で大切なポイント

大石氏:一番大事なのは成果を感じてもらうことだと思う。デジタルマーケティングの実践により、こういう良い効果があるのだと1人でも多くに理解してもらうことであり、例えば、マーケターからメールの開封率が落ちているという声があったときには、開封率が高かったメールキャンペーンの共通項を示すようにする。そうしてPDCAサイクルをまわしていきながら、より成果を実感してもらえるようにする。

小泉氏:デジタルマーケティングを推進していくリーダーが必要だろう。小さい製品グループの中でも1人が経験してリーダーとなると、他の製品へと広がっていくことが今回の我々の取り組みからわかった。

大石氏:成功パターンをリスト化しておくと次に横展開しやすくなるというのもある。

冨田:アステラス製薬さんの事例からも、まずはやってみて、成果を見出すというのは、すごく良いことだと思った。

テーマ2:組織間の巻き込み、MR連携、外部ベンダー活用などで大変だったこと

大石氏:最も苦労したのが組織間の巻き込み。デジタル推進に他部署をどう巻き込んでいくかが大変だった。そこでも、まず小さなところから仲間を増やすことがポイントとなった。そのためにデジタル推進系の人間が研修会を開いたり、どのようなことを行っているのかが見てわかるようなプラットフォームを構築したりして、アンバサダーを増やしていった。そうすると評判が口コミで広がり、最終的には、上司から話してもらうなどして、組織全体にも変化が見られるようになった。

小泉氏:デジタル活用を推進しようと叫んでもどうしても押し付けのようになってしまうもの。しかしそれでもうまくいったのは、デジタル推進側にMR出身者を入れていることが大きいはず。製薬会社にとってセールスの柱はMRなので、何を求めているのか話してもらうなどすることで、なかなか崩れなかった壁も崩れていった。そういったパターンが最近増えていると感じている。

テーマ3:アドビソリューションを正しく活用するために必要なこと

大石氏:各ソリューションがすごくシームレスにつながるのがメリットなので、このメリットをアンバサダーや各関係者に説明していくのが大事ではないか。実際に我々も、共有化プラットフォームをつくり、お互いにどんなことをしているのか可視化して、うまく活用し成果をあげたアンバサダーを称賛することで、ならば自分もといったように活用が広がっていった。デジタルソリューションをわかりやすく説明することと、活用により成果を出した人をしっかり評価することがポイントとなると言える。

小泉氏:アドビソリューションには、設計した施策を回していける環境があり、実際にそれをトラックしていけるということを理解しておくべきだろう。やろうと思ったことが何でもやれるというのに近い。そこでROIを意識しながら活用していくのが正しい使い方ではないか。

一連のセッションの終了後は、ランチ及びネットワーキングの時間が設けられた。そこでは登壇したアステラス製薬の2人に質問するだけでなく、アドビからもAdobe Experience Managerに詳しいソリューションアーキテクトや、Marketo Engageのコンサルティングを担当しているコンサルタントも参加し、活発な情報交換が行われた。

空港のロビーにいる人たち 自動的に生成された説明

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