「Adobe LLM Optimizer」で始めるAI対策の第一歩。アドビ・アクセンチュア共催「AIエージェントと共創するマーケティング最前線」イベントレポート

AIエージェントが人々の日常に浸透するにつれ、企業のwebサイトやマーケティングのあり方も大きな転換期を迎えています。そこで、2025年11月17日に、アクセンチュア株式会社とアドビは「AIエージェントと共創するマーケティング最前線」と題した共催イベントを開催。

生成AI、特にChatGPTやPerplexityなどのLLM(大規模言語モデル)に「引用されやすい」情報構造とはどのようなものか。AIに正しく“選ばれる”ブランドになるために、今、着手すべきことは何なのか——。AI時代におけるブランド露出と、顧客エンゲージメント強化を支援する注目のソリューション「Adobe LLM Optimizer」の紹介とともに、これからのマーケティングの核心に迫りました。

「まだAI経由のトラフィックが少ないから」と安心してはいけないワケ

まずは、アクセンチュアの久田祐通氏をお招きし、アドビのマニッシュ プラブネ(Manish Prabhune)とともに、「AIエージェント時代のコミュニケーショントレンド」について語り合いました。

「これまで企業が生活者とコミュニケーションを取る際には、マス広告やSNS広告、キャンペーン施策など、必ず何かしらのメディアが介在してきました。しかし、これからはメディアの代わりに、AIエージェントが介在する時代に入っていきます」と語る久田氏。これにより、「①ユーザー理解」「②ユーザーリーチ」「③意欲醸成」「④購買」の4つにおいて、以下のような変化が生じると言います。

  1. ユーザー理解…現在はファーストパーティやサードパーティのCookieデータをもとに過去のユーザー行動から推測していますが、今後はユーザーがAIと対話した瞬間にユーザーの意図を読み取って、ユーザーを理解するようになります。
  2. ユーザーリーチ…従来はメディアでの接触から認知が始まっていましたが、これからはAIエージェントとの対話の中で最初のブランド接触が始まります。
  3. 意欲醸成…これまでは静的で完成されたクリエイティブが中心でしたが、今後は“リキッド”つまり液体のように可変性のあるコンテンツをモジュールとして提供し、それをAIが再構成することで、パーソナライズを図るようになります。
  4. 購買…今までは生活者が能動的にサイトを遷移しながら、欲しいものを選択し、決済していましたが、これからはAIエージェント同士がつながり、自律的に購買まで進むようになります。

「このように、生活者行動の起点が“検索”から“AIとの対話”に置き換わると、AIに情報が届いていなければ、ブランドが存在しないのと同じことになるのは、言うまでもありません。webサイトのアクセシビリティやユーザビリティについて、人間向けだけではなく、AI向けに最適化を図ることが極めて重要になるのです」(久田氏)

アクセンチュア株式会社

Accenture Song

マネジング・ディレクター

久田 祐通氏

それに対し、「『アクセス解析のデータを見ていると、まだLLMからのトラフィックはわずかしかないため静観で良い』と語る人も多いですよね」と語るマニッシュ。実際、アドビのwebサイトでもLLMからのトラフィックは、全体の0.1%に過ぎないと言います。

ですが、アドビの調査によると「AI経由のトラフィックと、通常のトラフィックを比較すると、1カ月ほど前にコンバージョン率が逆転した」というデータが出てきました。つまり、AI経由のトラフィックのほうが、より高い成果を上げられるようになったということです。

「『0.1%しかない』と軽視しないでください。重要なのはトラフィックの量ではなく、AIの回答の中で“ブランドがどう引用されているか”です。AIとの対話には、検索行動では計り知れない、深い“意図”が含まれています。この意図データと独自データを掛け合わせて新しい体験を作っていくことが、これからのマーケティングのあるべき姿だと考えています」(マニッシュ)

さらに、AI向けのアクセシビリティ向上(いわゆるAEO/LLMO/GEOなど)のためにアドビが行っている具体策として、ホワイトペーパーのダウンロードに必要なフォーム入力を廃止した他、「はてなブログ」でクリエイターによる細かな機能の活用事例を紹介している、と明かしたマニッシュ。「専門性や権威性、信頼性があれば、AIは自然と引用してくれます。とはいえ、ここはまだまだ未知の領域。これからもアドビとアクセンチュアで挑戦していきましょう」と語り、セッションを締めくくりました。

アドビ株式会社

デジタルエクスペリエンス事業本部

インダストリー ストラテジー マーケティング プリンシパル

マニッシュ プラブネ(Manish Prabhune)

 AI対策に向けて「Adobe LLM Optimizer」でできることとは?

続いては、アドビの鵜瀬総一郎と今井裕志が登壇し、AI向けのアクセシビリティ向上を支援する「Adobe LLM Optimizer」をご紹介しました。

鵜瀬は「現時点でのAI最適化には次の8つのポイントがあり、これらを網羅しているのがAdobe LLM Optimizerです」と話します。

  1. 顧客接点におけるLLMの比重増加
  2. LLM上でのアウェアネス
  3. LLM上でのブランドコントロール
  4. ゼロクリックによるトラフィック減少
  5. LLM上でのエンゲージメント
  6. LLMからのトラフィック獲得
  7. 離脱と接触コンテンツ最適化
  8. LLM経由でのコンバージョン獲得

次に、Adobe LLM Optimizer を使っている様子を見てみましょう。

AIエージェントは、JavaScriptで動的に生成されるSPAのようなページを読み取るのが苦手です。下の左側の図のように、AIエージェントから見ると白紙に見えてしまっていることが分かります。右上の17%という数字は、AIからの可視性を数値化した「視認性スコア」と呼ばれるものです。これでは、企業がどれほど優良なコンテンツを提供していても、AIにとっては存在しないのと同じなのです。

Adobe LLM Optimizerでできるのは、AIからの見え方を確認するだけではありません。アトリビューションを理解し、競合他社の情報を調査した上で、規範的な推奨事項を示します。

さらに、Adobe LLM Optimizerは単体でご利用できますが、Adobe Experience Managerをご利用の場合、提示された改善策をAdobe Experience Managerが自動的にデプロイする機能の提供も予定されています。

「将来的にはアドビの世界だけに閉じるのではなく、他社のテクノロジーとも連携して利用できるような実装も予定しています。今は3カ月後の予測も難しい状況ですが、我々もいろいろなメジャーチェンジを加えながら開発を継続していきます」と鵜瀬は語りました。

アドビ株式会社

執行役員

鵜瀬 総一郎

次に、今井によるAdobe LLM Optimizerのデモンストレーションが行われました。

このプロダクトの目的は、LLM上でのブランドのプレゼンスを最適化/最大化し、ビジネスへの利益貢献を実現することです。

そのため、「①今、何が起きているのかを理解する」「②その状況に対して、どのアクションを取るべきかを提示する」「③アクション後の結果を継続的に捉えていく」という大きく3つのプロセスを繰り返し回していきます。

具体的にAdobe LLM Optimizerで見ていくポイントは、以下の6つです。今井はデモ画面を示しながら、それぞれに応じた機能を解説しました。

  1. LLM Agentトラフィックがブランドコンテンツに適切に接触できているか?

    →貴社サイトに対してAIエージェントが行ったリクエスト数、成功状況、レスポンス速度品質、エラー内容を可視化します。

  2. オウンドサイトはLLMの要求に沿ったコンテンツを提供しているか?

    →LLMを経由して貴社サイトに訪問したユーザーのトラフィックを可視化。バウンス、同意率、地域、参照コンテンツを分析します。また、ページごとに想定される“ユーザーの意図”をカテゴライズし、LLM経由のユーザーがどのページに対してどの程度流入しているかを把握します。

  3. LLMにおいて競合を含めコンテンツがどのように理解/認知/引用されているかを把握できているか?

    →URLインスペクターにより、自社コンテンツだけでなく、競合や第三者のメディアにおいて、LLMから引用された特定のURLが、どのようなプロンプトで何回引用されたのかを把握して、LLMの自社ブランドに対する理解/認知を探ります。

  4. LLMにおける自社のプレゼンス状況を把握できているか?

    →カテゴリ/トピック/プロンプトを自動生成し、主要LLMからの応答を分析。引用、メンション、センチメントの状況と推移を可視化します。(メンション…LLMの回答内にブランド名が含まれていること。引用…LLMの回答にURLが含まれ、そこからの流入が発生する状態にあること。)

  5. 顕在化された課題に対して具体的な対応策を検討/実行可能か?

    →ここまでで可視化された現状をもとに、具体的な改善策が提示されます。例えば、robots.txtの改善、動的レンダリング部分の最適化、SPA構造への対応といった技術的な改善策から、Q&A構造の導入、参照率の高いメディアへの投稿、コンテンツのモジュール化などのコンテンツの改善策まで、マーケターが次の一手を迷わず進められるよう、実効性の高い提案をします。

  6. 上記のプロセスを通じた改善状況の推移が可視化され、継続したプロセスになっているか?

    →「視認性スコア」によって、ブランドのLLMにおけるプレゼンスを定量的に捉え、継続的に改善し続けることで、ビジネスへの貢献を最大化していきます。

アドビ株式会社

デジタルエクスペリエンス事業本部

ソリューションコンサルティング部

プリンシパル ソリューション コンサルタント

今井 裕志

AIエージェントによってwebサイトやマーケターの役割はどう変わるのか

そして、アクセンチュアの矢野一路氏により、AI時代のマーケティング戦略の描き方についてお話がありました。

そもそも、なぜ「AIに伝わる情報」と「人間に伝わる情報」の間に、違いが生まれるのでしょうか。この理由について矢野氏は「マーケティングコミュニケーションが“情報探索”から“目的達成”へシフトしているからではないか」と説きます。これまでのwebサイトは探索してもらうことを前提に、コンテンツが設計されていました。

アクセンチュア株式会社

Accenture Song

プリンシパル・ディレクター

矢野 一路氏

しかし、AIエージェントはユーザーの目的を達成するために存在しているため、対話が重要になります。つまり、現状のwebサイトには「Q=目的」が欠落していることから、AIには分かりにくい構造になっていると考えられるのです。実際、FAQやクチコミに対する返信のようなコンテンツを、AIはよく参照しているという話もあります。

だからと言って、AI対策はSEOの延長線上で考えられるものではありません。「必要としているお客様に、適切なフォーマットで、正しい情報を届ける」という本質的な価値は変わらないものの、AI時代になると、従来のようなセグメント単位での施策実行ではなく、真の意味でのOne to Oneマーケティングが実現可能になります。

こうした変化を踏まえ、矢野氏は「webサイトは単なる情報の置き場所ではなく、“サービスを提供する場所”へと進化していきます」と語ります。よりユーザーの目的に直結した価値提供を行う場として、webの役割が再定義されようとしているのです。

矢野氏はこのコンセプトにもとづいた事例として、AIエージェントが外部ECサイトも含めた購入手続きまで代行するAmazonの「Buy for Me」や、特定用途に特化した4つのAIエージェントを連携させ、社内業務の効率化やサービス向上を図るWalmartの「4 Super Agents」を紹介。

「AIがパーソナルエージェントとなり、一人ひとりの個客の“今”に最適化した目的や価値を語るコンテンツを提供することで、長期的な関係構築を図るマーケティングへと進化していきます」と語る矢野氏。これによりマーケターの役割も次のように変わると言います。

・施策の質と量を最大化するために、AIと人間の協働を推進する“オーケストレーター”へ

・作業はAIに任せ戦略立案に注力する、マーケティング領域の“ビジネスパートナー”へ

・AIによる分析や予測を活用しながら大胆に意思決定する、新たな挑戦への“アクセラレーター”へ

とはいえ、矢野氏は「これらをすべてマーケターに求めるのは現実的ではありません」とも指摘。そのため企業としては、まずグローバル共通のガイドライン整備を進め、ブランドとコミュニケーションの戦略を統一して、AIエージェントやマーケターへの“インプット”を適切に整えることが重要と語り、セッションを終えました。

90分にわたる濃密なセッションの後には、ネットワーキングも実施。AIエージェントが新たな顧客接点となるマーケティングの未来について、登壇者と参加者で活発な議論が交わされ、会場は終始熱気に満ちていました。

※本記事の内容は、イベント当日の情報にて記載しています。