部門連携の力で魅力的な顧客体験を実現する方法

Adobe Marketo Engageのユーザー様をゲストに招き、Adobe Marketo Engage活用について存分に語っていただく「Marketo Studio(通称Mスタ)」。今回は、株式会社SmartHRのマーケティンググループ ナーチャリングリードユニットの伊藤正太氏に、「属人化しないAdobe Marketo Engageの運用とオペレーション体制の構築方法」や、「組織横断でのナレッジ共有とデータマネジメント」について、MUG Day(ユーザー総会)で大変好評だったセッションをより詳しく語っていただきました。アドビ 松井真理子よりご紹介します。

もくじ

  • なぜナーチャリングに力を入れるのか?
  • 最適な顧客体験を目指す3つの取り組み
  • Adobe Marketo Engageと共に追求する顧客体験

なぜナーチャリングに力を入れるのか?

現在80名ほど所属しているSmartHR様のマーケティンググループは、目的別にユニットが分かれています。中でも伊藤正太氏の所属するナーチャリングのチームは、デジタル広告やイベントなどで獲得したリードに対する興味育成から商談化支援、導入後のアップセル/クロスセルまで担当しており、メールを主軸にインサイドセールスが商談獲得しやすい状態まで推し進める役割を担っているそうです。

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同社がAdobe Marketo Engageを導入されたのは2019年頃。当時は「マーケティングが保有する情報を、インサイドセールスや営業が読み解けない」、逆に「SFAやCRMに蓄積されたインサイドセールスや営業が保有する情報を、マーケティングが活用できない」といった課題があったと言います。

こうした課題を解消するために行われたのが、次の2つの取り組みでした。

①Adobe Marketo Engageでデータマネジメントをシステマチックに実現する

Adobe Marketo Engageと各種ツールやSFAを連携し、データマネジメントのベースとなるデータ管理をAdobe Marketo Engageで行う。

②実業務を考慮した可視化とオペレーション体制を構築する

マーケティング/インサイドセールス/営業/カスタマーサクセスのそれぞれの部署にオペレーション部門を設置し、データを活用する部署の活用方法に応じて、データの見え方や表現を細かく設計する。社内の情報をうまくアウトプットして活用できるようにする。

これらの取り組みを行った結果、組織の壁を越えたデータマネジメントが定着し、対応者が変わっても組織を横断してお客様に寄り添ったコミュニケーションを実現できるようになった他、長期的なより良い顧客体験を提供できるようになりました。

最適な顧客体験を目指す3つの取り組み

ここからは、SmartHR様が最適な顧客体験を実現するために実施していることとして、具体的な3つの取り組みをご紹介していきます。

①属人化しない運用とオペレーション体制の構築

SmartHR様のナーチャリング組織には20名が所属しており、その中でさらに次のように4つのユニットに分かれています。

・ナーチャリングリードユニット(未導入企業の育成を担当)…11名

・ナーチャリングエクスパンションユニット(導入済企業に向けたアップセル/クロスセルを担当)…3名

・コンテンツユニット(メールなどコンテンツの質向上を担当)…1名

・マーケティングソリューションユニット(Adobe Marketo Engageの運用設計をはじめとする支援を担当)…4名

なぜ、ここまで同社でナーチャリング組織が拡大しているかというと、新規よりも、過去に獲得したリードの割合がかなり高くなってしまっているからだと言います。つまり、これまで獲得したターゲットとするリードに対し、継続的に接点を持ちながら商談や受注の創出を目指していくことが必要だったのです。加えて、マーケティング組織全体も拡大していることから、施策の量が増えて細かくなっていることもナーチャリング組織拡大の背景にあるそうです。

では、具体的にどのように属人化しないAdobe Marketo Engage運用とオペレーション体制を構築されているのでしょうか。

まず1つ目は、「いつ休んでも大丈夫な組織になろう」をコンセプトに、初心者目線でマニュアルを整備することと、入社後3カ月かけた伴走型のオンボーディングに取り組むことです。そして2つ目は、インシデント対応フローを整備するとともに、トラブルやミスがあったときの再発防止に向けてケースを共有することです。

他にも、Adobe Marketo Engageのプログラムをテンプレート化し、マイトークンを調整するだけで完了するようにしていたり、社内でAdobe Marketo Engageに関するナレッジ共有を日々行っていたりもしているそうです。

「属人化しない運用とオペレーションにするために、かなりの時間と工数をかけているため、初心者のメンバーが増えてもスキルの平準化ができるようになりました。ただし、メンバーが増えれば増えるほど、どんどん施策が増えて運用が複雑化するので、『顧客体験向上委員会』を立ち上げる/『広く、深く、安全に』をコンセプトに、チームに求められる役割を再認識/組織の再編成といった改善の取り組みを、日々継続しているところです」(伊藤氏)

②顧客の状態に応じた利用意向を高めるマーケティング活動

最適な顧客体験を生み出すためには、顧客の状態に応じた利用意向を高めるマーケティング活動が不可欠だと語る伊藤氏。今回はナーチャリングチームが担当している幅広い活動領域のうち、「ISへのリード供給」から「商談獲得/実施」、「受注/契約獲得」における“最興味獲得”の取り組みについて、ご紹介いただきました。

ここでは顧客の状態を「まだ興味が薄そうなお客様」「商談に至らなかったお客様」「受注に至らなかったお客様」の3つに分類し、それぞれに担当者をつけて、分析/施策の企画/実装を行っていると言います。

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また、同社ではマーケティング以外の部門が取り組んでいる施策もあるため、そちらとも連動して訴求するよう工夫されています。例えばインサイドセールスと連動する施策として、インサイドセールスが実際にお客様とお話しした後に記録した所感をもとに、確度の高いお客様には導入事例の動画を送付し、確度の低いお客様にはブランディング寄りのご挨拶を送る、といった具合です。

さらにデータアナリストと協働して、複数の行動軸で「コンバージョンはしないけど確度が高いと言える顧客行動はないのか?」「条件を達成しているorしていないで商談化率に差異はあるのか?」といったお客様の傾向を分析する取り組みも行っているそうです。

③“SmartHRらしさ”の体現と組織横断でのデータマネジメント

顧客体験を下支えしている要素の一つとして、「お客様が接するコンテンツのすべてに共通して、“SmartHRらしさ”を体現できているか」という点が挙げられると言います。具体的には、パーソナリティ、トーン&マナー、言い回し、デザインなどの素材や基準を統一し、それらをもとにコンテンツを作成しているのです。この“SmartHRらしさ”をまとめたものは「SmartHR Design System」として、一部公開されているそうなので、ぜひ皆様もご参考にされてみてはいかがでしょうか。

加えて、日々配信しているメールの文章をチームメンバー同士でフィードバックし合うようにしており、マニュアル化や言語化しにくい“SmartHRらしさ”を追求し続けている他、校正ツールにSmartHR様らしい表現を辞書登録しておくことで、推敲する際に自動で指摘が入るような工夫もされているそうです。

データマネジメントの観点では、マーケティングが使用するAdobe Marketo EngageとIS以降が使用するSalesforceの最新情報をAPIで連携して同期しており、部門によって必要な情報がカスタマイズされて可視化できるようになっています。

Adobe Marketo Engageでは、トリガーキャンペーンを30以上設定しており、例えばお客様がebookをダウンロードした際にフォームに入力された情報によってAdobe Marketo Engageの情報が更新され、Salesforceに同期されます。お客様が触れた最新のコンテンツは何か、最新の流入元はどこかといった情報はすべてスナップショットで保存されるため、インサイドセールスがお客様とトークする際にはそれらを確認することで、お客様の興味/関心をある程度掴んだ上で会話することができるのです。

Adobe Marketo Engageと共に追求する顧客体験

最後に、今後の展望として伊藤氏は次のように語りました。

「引き続き SmartHRを好きになってもらえる顧客体験 を目指します。そこで重要になってくるのが、顧客接点のあるインサイドセールス/営業との協力体制です。マーケティングで見えないお客様のインサイトをインサイドセールス/営業が持っていることが多いので、そこの情報をきちんとキャッチアップして、施策に活かしていくことが非常に重要だと思っています。

また、まだまだAdobe Marketo Engageで使えていない機能がたくさんあるため、メンテナンスを考慮しながらシンプル化/自動化を推進して属人化しない運用へと、今後さらに進化させていきたいと考えています」

今回ご紹介いただいた、『部門連携の力で魅力的な顧客体験を実現』 は、一番大切なことなのに日々の業務に忙殺されると忘れてしまいがちです。自社のことを好きになってもらえるためのマーケティングとは、顧客体験とは何か、引き続きコミュニティを通じてユーザーの皆様と議論していきたいテーマでした。次回の「Marketo Studio」もどうぞお楽しみに。

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/customer-success-smarthr