中古品Eコマースとマーケットプレイスの台頭

ここ2年ほどで小売業界の状況は一変し、COVID-19をきっかけに加速したEコマース移行への勢いはとどまるところを知りません。大手調査会社Statista(英語)によると、今後4年間で世界のEコマースの総売上は50%成長し、2025年に7兆4,000億ドルに達すると推定されています。

しかし、デジタルに最も精通している企業においても、Eコマースの売上規模にはまだ成長の余地があります。コンサル大手McKinseyの報告(英語)によると、新規参入の障壁が低い業態であるにもかかわらず、米国のEコマースストアの90%以上の年間収益は100万ドル未満に留まっています。

ここで課題となっているのが、多くの企業がEコマースの新たなトレンドとパンデミックの影響という2つの側面を効果的に結びつけられていないことです。例えば、現在の「リコマース(英語)」(中古品のEコマース販売)の盛り上がりは、主に世界的なサプライチェーンの障害による商品不足や再入荷の長期的な遅れに起因しています。一方で、米国におけるEコマースマーケットプレイス(個人・法人が自由に参加できるEコマース市場)の売上は2020年に急増し、パンデミックの初期段階において45%の伸び(英語)を示しました。

2022年も後半に差し掛かり、企業はこういったEコマース市場の新しいトレンドに歩調を合わせていく必要があります。最も成功している企業は、安定した成長を維持するためにこうした変化を常に認識し、ビジネス戦略を流動的に変化させています。例えば、中古品在庫を扱う新しいプログラムを試験的に導入したり、マーケットプレイスを既存のオムニチャネルアプローチに取り入れたりすることが考えられます。

中古品でB2Cを推進する

中古品を買うというコンセプトは、古着を買ったり地元のフリーマーケットを良く利用する人々にとっては、決して新しいものではありません。しかし、パンデミックによる商品の供給不足によって中古品が一般消費者から再注目されている現在、中古品業界全体がオンライン市場を席巻しようとしています。2021年のホリデーシーズンには、パンデミック前に比べて253%増となる60億通もの「在庫切れ」メッセージが提示(英語)され、ショッピング最盛期には、この品薄状態がさらに顕著になりました。

企業経営の観点からも、さまざまな業界で中古品セグメントへの投資が財務的に有利になっています。中古アパレルで高い人気を誇るECサイトThredUpの年次小売レポート(英語)によると、古着ファッションの世界市場は加速度的に拡大しており、2026年までに通常のアパレル市場に比べて3倍の成長が見込まれているとのことです。自動車業界に目を向けると、アイルランドでは中古車が小売価格を上回る価格で販売されており、パンデミック以降50%の価格上昇を記録しています。

さらに、消費者側もオンラインで中古品を販売することが当たり前になり、不用品販売によるメリットを享受しています。米国とヨーロッパ数か国でマーケットプレイス大手のeBayが個人を対象に行ったリコマースに関する最新調査(英語)では、回答者の75%が新たな収入源を得るために中古品の販売を始めたことが明らかになっています。

中古品業界を牽引するもう一つの要因は、循環型経済を推進するサステナブルな行動が重視されるようになったことです。特にファッション業界では、Z世代とミレニアル世代が、無駄な消費による環境破壊に注目しており、その対策を望んでいます。実際、売れ残り商品を廃棄するような企業(英語)に非難が集まるほどに、彼らにとってこれは重要なことなのです。

中古品の販売によってサステナビリティを取り入れたいと考えている成長企業にとっては、単なる企業メッセージの発信にとどまらない具体的な取り組みを示していくことが不可欠です。このような意識の高まりの中で、若い消費者は環境保護への関心が高く、「中古品」や「プレラブド」(誰かが大事に使っていた品)であっても自分が支持したい企業を探しています。

特に、Z世代とミレニアル世代の消費者は、環境への負荷を軽減するために中古品の購入を積極的にしているため、中古品の需要は現在のサプライチェーン問題が解決した後も持続する(英語)可能性があります。特に、サステナビリティと企業責任が企業のイメージ形成に重要な役割を果たすため、小売業者は中古品の販売をビジネスモデルに組み込むことを考慮するべきです。以下に、オンラインマーケットプレイスが中古品業界への参入経路の一つとなり得ることを説明します。

オンラインマーケットプレイスの台頭

中古品の再販をめぐるこれまでの状況を考えると、オンラインマーケットプレイスがさまざまな買い手と売り手のやりとりの要として機能していることは間違いありません。実際に、2021年の世界のEコマース全体の67%をオンラインマーケットプレイスの売上が占め、上位100のマーケットプレイスで合計3兆2300億ドルが消費されています。皆さんも、AmazonやeBayのようなオンラインマーケットプレイスで何かを購入した経験があるでしょう。

オンラインマーケットプレイスは、わかりやすく言えば従来の百貨店に例えることができます。どちらも、さまざまな企業が商品を展開するプラットフォームとしての役割を担っていますが、現代の消費者は、ワンストップショッピングの利便性があり、類似商品と価格比較ができるマーケットプレイスのほうを好みます。

さらに、マーケットプレイスによって売り手は流動性(経済学でいう価値の交換のしやすさ)を手に入れ、売り手側は買い手につながりやすく、買い手側は欲しい商品を見つけやすくなるという、合理的な状況が生まれます。このインタラクションを実現するために、Airbnb(英語)のような企業は、従来のホテルチェーンのように自社所有の不動産を提供する代わりに、売り手としてプラットフォームを利用するホストが提供する宿泊施設を整理・統合することを選択しました。消費者には効率的でカスタマイズ可能な検索機能で情報提供し、同様に、ホストには潜在的な顧客である旅行者とのつながりを提供する。これがAirbnbの成功の秘訣です。流動性は双方向に働くので、需要と供給がうまくバランスすれば、マーケットプレイスに参加する全員が恩恵を受けられます。

前述のように、中古品業界は大きな成長を遂げており、オンラインマーケットプレイスは小売の大きな原動力となっています。例えば、アパレル再販業界のリーダーであるVestiaire Collective(英語)は、マーケットプレイスモデルを効果的に活用してブランド古着を販売しているグローバルなオンラインファッション企業です。同社は、マーケットプレイスの成功には流動性が重要であることを認識し、買い手と売り手の間にあった障害をテクノロジーを活用して解決しています。そうすることで、同社は高い人気を得ており、中古品の販売とマーケットプレイスモデルの融合を目指す企業にとって理想的な成功事例となっています。

しかし、企業は拙速にマーケットプレイスに参加するのではなく、自社のオムニチャネルアプローチの構築や発展の延長線上にオンラインマーケットプレイスがあることを認識する必要があります。アドビの「2022 Digital Trends - Retail in Focus」レポート(日本語)によると、消費者は、企業がオンラインと実店舗を横断したシームレスな顧客体験が提供されることを求めており、ライブサーチのようなセルフサービス機能によって会計までの流れがスムーズになることを期待しています。マーケットプレイスの利用は、Eコマースに新規参入する企業にとっては理想的な出発点となり、デジタルに精通した企業(英語)にとっては売上拡大のための次のステップになるでしょう。

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*本記事は、アドビが2022年6月22日に投稿したブログの抄訳です。

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