「マーケティングトレース」でマーケティング思考を手に入れよう
『マーケティング思考力トレーニング 戦略の引き出しを増やすマーケティングトレース』(フォレスト出版)の著者であり、学習コミュニティ「マーケティングトレース」を主宰されるブランディングテクノロジー株式会社CMO 黒澤友貴氏をお迎えして、2021年4月6日にウェビナーを開催しました。
今回ご紹介いただいた「マーケティングトレース」とは、任意企業の商品やサービスのマーケティング戦略を想像しながら、マーケティングのフレームワークに落とし込んで分析するトレーニング方法のこと。誰もがマーケティング思考を身につけられるという「マーケティングトレース」について、ご紹介していきます。
もくじ
- 「マーケティングトレース」とは?
- 「マーケティングトレース」をやってみよう
- 「マーケティングトレース」をマーケティング戦略に活かすために
「マーケティングトレース」とは?
あなたの企業では戦略がないまま、広告運用やSEOの最適化など、特定チャネルの最適化に走っていませんか?戦略の欠陥は戦術で補うことはできません。戦略を考え、組織に浸透させる発想を持っている人が1人でも多くいる企業は組織として強さがあります。
「マーケティングトレース」とは、マーケティングのフレームワークを活用して、成功企業の商品やサービスで用いられている戦略を"トレースする=写す・なぞる"、いわばマーケティング思考を鍛える筋トレのようなものです。
成長企業の裏には、優れたマーケティング戦略がある。それをトレースして、自ら言語化・構造化することで、自社のビジネスに活かしていくことを目的としています。
『模倣の経営学』井上達彦著(日経BP)によると、模倣のポイントは次の3つです。
- 遠いところから真似る...同業他社を分析するのではなく、まったく異なる業界の有料企業を分析します。
- 本質から真似る...表層的な施策を真似るのでは意味がありません。重要なのは、ビジネスモデルや戦略といった本質を理解して真似ることです。
- 徹底的に真似る...対象となる企業の戦略を構造化して全体像を掴むことで、徹底的に真似られるようになります。
「マーケティングトレース」で使用するフレームワークは、「PEST分析」「5Forces分析」「STP分析」「4P分析」の4つです。まず「①PEST分析」「②5Forces分析」で事業環境を理解し、次に「③④STP分析」で差別化要素の明確化を行い、「⑤4P分析」で自社がお客様に提供する価値の届け方を決めていきます。
そして最後に、成功要因を自分なりに要約して、自分ゴト化できれば完了です。
これらのステップを落とし込んだ「マーケティングトレース」のワークシートがこちらです。
順に詳しく見ていきましょう。
マーケティングのフレームワークについてはこちらの記事でも解説しています。
マーケティング入門マーケティング分析とは?代表的な手法や用語、便利なツールを解説 記事を見る
「マーケティングトレース」をやってみよう
<トレース企業>
まずはトレースする企業を選定します。B2B企業がB2C企業をトレースしても、まったく問題ありません。大切なのは、模倣のポイントにもあった通り、自社と遠い領域を選ぶことです。「マーケティングトレース」は、あくまでも思考の訓練を目的として行うものなので、あまり深く考えすぎなくて大丈夫です。最近、気になっている企業やネクストユニコーンと評される企業など、任意で選んで構いません。
<理念/ビジョン>
トレースする企業のwebサイト等から得た情報を転記します。
<① 外部環境分析(PEST分析)>
PEST分析は、「政治」「経済」「社会」「技術」それぞれの要素について、ビジネスを取り巻くマクロ環境を分析するフレームワークです。戦略を構築する上で前提となる世の中の動きを探る、新しいニーズがどこで生まれるのかのヒントを得る、外部環境の変化に対する適用方針を決める、といった目的で活用することができます。
ここでは外部環境によるビジネスにとっての「機会と脅威」を見極めたいので、過去と未来の視点で分析することを意識してください。
<② 競合の定義(5Forces分析)>
5Forces分析は、業界構造を理解するために用いるフレームワークです。「新規参入」「直接競合」「代替品」「買い手」「売り手」の5つの要素で読み解いていきます。
5Forces分析は縦軸と横軸に分けて考えると整理しやすいです。縦軸では業界内のプレイヤーの構造を分析していきます。一方、横軸では業界内の利益のつくり方を分析していきます。
「マーケティングトレース」を行うために設定した企業にとっての競合を分析する際には、「業界競合」と「価値競合」の2種類の観点で見る必要があります。
例えばNetflixの場合。業界競合はAmazon Prime VideoやHuluといった動画配信プラットフォームとなりますが、価値競合ではNintendoやスマホゲームといった余暇を楽しむ価値を提供している企業が競合となります。この価値競合の観点は見落とされがちなので、注意してください。
<③ ターゲティング/重点顧客>
STP分析では、「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」について考えていきます。STP分析を行わずにペルソナを設定すると、負のサイクルに入りやすくなってしまいます。ペルソナ設定の前にSTP分析でマーケティング戦略の土台をつくり、価値を届けるターゲットを定め、競合との違いを特定しておくことが重要です。
<④ ポジショニング>
ポジショニングマップは、みなさんも一度は目にしたことがあるのはないかと思います。しかし、みなさんが頭を悩ませるのは、何を2軸に定めるかという点です。
顧客の選択肢は無数にあります。まずは軸となる候補、すなわち自社の優位性を洗い出し、それを2軸に据えて競合をマッピングしていくと良いでしょう。これが今後、顧客とコミュニケーションを図る際のマーケティングメッセージの土台となります。
次の3つのポイントで2軸を決めていきましょう。
- 自社の独自性を活かせているか?
- 競合との差別化が表現されているか?
- 顧客の想起を表せているか?
<⑤ マーケティングミックス(4P)>
マーケティングの4Pでは「商品」「価格」「流通」「広告」の4つについて分析していきます。よくマーケティング=広告と考えてプロモーションの最適化に終始しがちですが、これら4つのバランスをしっかりとりながら、自社の事業フェーズに合った価値の届け方を設計することが大切です。
<⑥ トレース企業の成功要因を整理>
ここまでの分析結果をもとに、どこが成功要因となっているのかを抽出して言語化しながら模倣できる状態にしていきます。
<⑦ 自分がその企業のCMOだったら?>
最後は⑥で得た知見をもとに、「自分がその企業のCMOだったら?」と仮定して、次にどんな戦略を立てるのかを考えてみましょう。
「マーケティングトレース」をマーケティング戦略に活かすために
「マーケティングトレース」は、海外の最先端事例を用いて社内勉強会をしてみたり、自社と競合を比較して打ち手を見極めてみたりするのにも使うことができます。
とはいえ、「マーケティングトレース」はあくまでも自分の解釈です。本当に合っているかどうかはわかりません。自社の戦略立案で実際に使うには、ちょっと説得力が足りないんですね。そこで有識者インタビューや行動観察調査などのリサーチを組み合わせて、裏を取ることをオススメしています。
成果が出る企業は、上から下へ考える、つまり戦略から運用へ落とし込んでいきます。しかし、これからのマーケティングでは、それだけではなく、Adobe Marketo Engageなどデジタルマーケティングで取得したデータ資産を活かし、下から上へ考える、つまりデータをもとに戦略を進化させていくことで、成功確率が高まると考えています。
今回ご紹介した「マーケティングトレース」のワークシートは、こちらからDLしていただけます。また、多くのマーケターが「マーケティングトレース」を実践した内容がnoteでたくさん公開されていますので、こちらも合わせてご参照ください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-003287-product-marketo-engage-jp