



本社: 神戸市
創立: 昭和24年
「スポーツでつちかった知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」というビジョンを掲げ、シューズやアパレル、スポーツ用品、各種サービスなどを提供
課題
ビジネスのグローバル化を受けてデジタルアセット管理を見直したい。
成果
・必要なデジタルアセットがすぐに見つかる
・グローバル統一のデジタルアセットでブランド強化
・バージョン管理のミスを削減
・マーケティング以外の業務効率化に期待
「デジタルアセット管理の全社統合を実現したことで、マーケティングはもちろん、設計・開発など、幅広い用途でアセットの共有や活用を行いやすくなりました」
IT 統括部 デジタルサプライチェーン部 水本 貴博 氏
日本を代表するスポーツブランドだったアシックスは、現在、グローバルブランドとして大きな飛躍を遂げています。ビジネスのグローバル化が加速する中、同社はマーケティング体制を大きく見直しました。その一環として取り組んだのがデジタルアセットの統合管理です。製品画像の撮影から管理を一元化することで、必要なデジタルアセットがすぐに見つからない、地域によって使っているデジタルアセットが異なるといった課題を解決。ムダな業務の削減とブランドの強化を実現しています。
ビジネスのグローバル化を受けてデジタルアセット管理を見直し
「スポーツでつちかった知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」というビジョンを掲げるアシックスグループ。現在、同社は「デジタルドリブンカンパニー」になることを戦略に据えており、シューズやアパレル、各種スポーツ用品に加えて、デジタルを活用した多様なサービスを提供しています。例えば、アプリなどのデジタルチャネルを通じてトレーニング計画や足型・走り方に適したシューズ・ウェアを提案。お客様にパーソナライズ化したスポーツ体験を提供しています。
もちろん、ベースには各製品の持つ強みがあります。人間の動きを深く分析し、独自開発した素材や構造設計技術を採用した同社の製品は、トップアスリートのみならず、スポーツを楽しむあらゆる人々の運動を最適にサポートします。その品質が高く評価され、現在、アシックス製品のユーザーは日本だけでなく世界中に広がっています。
「2010年代の中頃から海外市場でのビジネスが急成長。現在は売上高の約7割が海外売上となっています」とアシックスの水本貴博氏は言います。このようなビジネスのグローバル化に伴って、同社はマーケティング体制を大きく見直しました。具体的には、グローバルマーケットを日本、北米、欧州、中華圏、オセアニア、東南・南アジア、その他(南米、韓国)に分け、神戸のグローバル本社が司令塔として各エリアの市場ニーズを分析し、地域特性に応じたマーケティング活動を推進しています。このグローバルビジネスに最適化した環境の中で、同社はデジタルアセット管理の仕組みも大きく見直しています。
「店頭ポスターやEC、webカタログなどに使う製品画像などのデジタルアセットはマーケティングのための重要な資産ですが、従来は、うまく管理できていませんでした。例えば、保管場所が統一されておらず、場合によっては担当者のPCの中で保管。販売パートナーから『あの製品の画像を支給して欲しい』と依頼されたものの、誰が管理しているのか、どこに保管されているのかがすぐに分からないということもありました。また、世界共通で販売している製品であっても各地域で個別に撮影していたため、同じ製品なのに微妙に色味や印象が違うということも発生。管理の効率、ブランド保護の両面で課題を感じていました」と大橋辰也氏は言います。
日本での導入実績を通じてアドビソリューションを高く評価
課題を解決するために、同社はデジタルアセットのグローバル統合管理の実現に向けた検討を開始。最終的に現在のアメリカのコンテンツチームに製品画像の撮影、編集、統合管理の役割を一本化した上で、デジタルアセット管理の基盤も全社で統合。各地域はその世界共通DAM(Digital Asset Management)を通じて、製品画像を入手するという新体制の構築を決めました。
DAMに採用したのがアドビのAdobe Experience Manager Assets(AEM Assets)です。
「もともと日本では、デジタルコンテンツの配信基盤として、現在はAdobe Experience Manager Assetsに統合されているDynamic Mediaを使っており、豊富な機能や使いやすさを評価していました。アセット管理を行うDAMは配信基盤との親和性が高い方が有利と考えてAdobe Experience Manager Assetsの採用を決めました」とアシックスの石崎健氏は言います。
必要なデジタルアセットを検索して、すぐに使用できる
同社は、関連するシステムの切り替えのタイミングを考慮したりしながら、約4年をかけて撮影などの業務、およびAdobe Experience Manager Assetsをベースとするデジタルアセット管理の統合を図りました。現在は、世界中から撮影対象となる製品がアメリカのスタジオに送られ、そこで一元的に撮影や編集などの制作作業を実施。そのデジタルアセットがAdobe Experience Manager Assetsでグローバルに共有されています。1年間で約4万にものぼる新デジタルアセットがAdobe Experience Manager Assetsに登録され、トータルでは約70万にも上るデジタルアセットが管理されています(図)。
「アセット制作を専門チームに集約したことで、マーケティング担当などの利用者は、アセット検索の窓口となる『ブランドポータル』を通じて、すぐに必要なアセットを検索し、入手できます。ブランドポータルは、実施中のキャンペーンごとに必要なアセットをまとめて入手できるようにするなど、様々な工夫を行っています」と同社の石崎氏は言います。
この仕組みによって、デジタルアセットを効率的に活用できるようになった上、全地域で同一製品・同一画像の統制が図られ、グローバルブランドの強化につながっています。以前は製品画像のバージョン管理を徹底するのが難しく、旧デザインの製品画像を誤って使ってしまうというミスも発生していましたが、そのようなミスも抑止できます。
「グループ全体で見れば同じ製品を何度も撮影していたわけですが、そうしたムダもなくなっており、あくまでも試算ですが20~30%のムダの削減につながっていると考えています」と大橋氏は言います。
また、デジタルアセット管理の統合によるメリットは、マーケティング以外の業務にも波及しています。例えば、設計・開発業務では、実物の試作品の開発リードタイム短縮を目的に、開発関係者が海外の各製品企画担当に向けて360度回転が可能な3Dデジタルモデルを展開。それを共有しながら、設計のブラッシュアップを図るなどしています。「実物の試作品を共有するよりも当然、スムーズに共有できます」と水本氏は話します。
連携拡大とセキュリティ強化の両立を目指す
このようにデジタルアセットの統合管理によって、同社は様々な成果を上げています。今後のテーマは、Adobe Experience Manager Assetsのさらなる有効活用。すでにECとはAPIを通じて連携し、デジタルアセットを自動配信できる仕組みを整えていますが、SNSなど、他の多様なチャネルや社内システムとも同様の連携を図っていきたいと考えています。
「先ほど開発中の3Dモデルについて述べたように、特に社内共有の用途では機密性の高いデータを扱う頻度も増えるでしょう。外部とはオープンに連携させつつ、セキュリティの強化も図っていく。相反する課題ですが、ぜひ両立させたいですね。アドビの提案にも期待しています」と石崎氏。デジタルアセットのさらなる有効活用に向けたチャレンジを継続しながら、同社は日本発のグローバルスポーツブランドとしてさらなる成長を目指す構えです。
水本 貴博 氏
石崎 健 氏
大橋 辰也 氏
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