モバイルファーストの世界 さらにHammond氏によれば、「2017年、当社はモバイルファーストビジネスへの変革を遂げました。つまり、メディアキャンペーンやクリエイティブからコマースやデータに至るまでのあらゆる行動、あらゆる判断の中心をモバイルに移行したのです。現在では、当社サイトの訪問者のおよそ60%がモバイル経由となっています。モバイルデバイスの性能や通信速度の向上に伴い、その数はますます増加しています。今やモバイルが出発点となる段階に達したのです。社内でも、デザインやUXを始めとするあらゆるものがモバイルから始まっています」。
こうした変革への取り組みにおいて、同社のコンテンツ管理システムの課題が浮き彫りになりました。「WordPressを使用していたのですが、グローバルブランドであるため、様々な言語に対応するのが困難でした。迅速さと美しさを兼ね備えたスケーラブルなソリューションではなかったのです」とHammond氏は述べています。
エクスペリエンスメーカーへの道 2019年、Helly Hansenはより強力なコンテンツ管理システムへの移行を決断します。それが、Adobe Experience Manager でした。Hammond氏は「これで、当社のあらゆるマーケティングキャンペーンやロイヤルティプログラムを統合できるようになりました。特に重要なのは、個々のページや言語の処理について気にする必要がなくなったことです。Adobe Experience Managerならボタンをクリックするだけで、タイミングよく適切な場所にコンテンツを自動的に配置してくれます」と、その利点について語っています。
デザイン面でも同様の検討が行われました。「デザインシステムは、WordPressからAdobe XD に切り替えました。当社のニーズに合っており、Adobe Experience Managerとの連携に最適だからです。従来は、認知度を高めるために、それぞれの体験に必要なコンテンツを作成し、大きな負担になっていました。WordPressを利用した制作手法は、決して効率的なものではありませんでした。Adobe Experience Managerへの移行により、売上だけでなく、ブランドの認知や検討段階における訴求力も高まっています」と同氏は続けています。
「アドビがMagentoを買収したと聞いて本当に喜びました。おかげで、これまで分離していたアプリケーションシステムやサービスが統合され、選択の幅が広がりました。Adobe Experience Managerへの移行は体験の構築を目的にしていましたが、時間や労力を大幅に削減し、顧客を中心に考え、重要なことに集中しながらページやコンテンツを制作できるようになりました」とHammond氏は話しています。
コンテンツとコマースの融合 こうしてHelly Hansenでは、季節の変わり目や新製品の発表の際に、より大規模な体験を構築して、最新のテクノロジーをアピールできるようになりました。その一例が、世界の最も過酷な環境向けに開発された、丈夫で防水性に優れたアウタージャケットHELLY TECH®のサイトです。Hammond氏によれば、「コンテンツとコマースの真の融合を実現し、このような素晴らしい体験を提供できるようになりました。購入できる商品とともに、読んでいるコンテンツや閲覧記録に合わせてカスタマイズした商品を提示しています。当社のロードマップとしては、コンテンツの移行から始め、体験の強化を実現し、コマース部分を統合しています」。
さらに同氏は、「当社では、顧客体験を最優先に考えています。例えば、実店舗では雪崩救助システムの説明を受けた上で、RECCO対応のLife Pocket™を備えた製品を購入することが可能です。Life Pocket™は、NASAのテクノロジーとPrimaLoft®を組み合わせて開発され、-30℃の環境でも携帯電話の凍結やシャットダウンを防ぐテクノロジーです。当社の取り組みで最も重視していることは、あらゆる人の安全を守り、快適に過ごせるようにすることです。それは1877年から変わりません」と続けました。
同社は、環境保護にも取り組んでいます。サプライチェーン全体で環境に対する責任感を高めることを目標に、Sustainable Apparel Coalition(SAC)への参加を発表しています。また、環境に与えるダメージを軽減する取り組みとして、PFCの使用量の削減にも挑んでいます。Hammond氏によれば、「当社の次の課題はサステナビリティの実現です」。
次の領域はデータ Hammond氏とTollefsen氏は大きな成果を成し遂げました。「2016年はマイナス成長からのスタートでしたが、2020年にはビジネスを3倍以上に成長させることができました。当初は4人体制のeコマースチームでしたが、今や大きく成長し、46人体制のデジタル担当グループになりました。当社のデジタル変革の初期段階では、コマースをグローバルな消費者向けメディア用チャネルに変えることに専念していました。今では、顧客は当社にとって心臓のようなものになりました」と、Hammond氏はその成果を語っています。さらに、同社の変革の第2段は、チャネルから顧客を重視したデータドリブン型ビジネスへの移行であり、「2022年ごろまでには、プラットフォームに依存しないコンシューマーブランドへの変革を実現します。当社は過去143年間にわたって大きく進歩してきましたが、やるべきことはまだまだあります」と今後の取り組みについて語っています。