ソニー銀行が注力するデジタルマーケティング強化アドビと共にデータ活用文化の醸成を目指す

ソニー銀行

設立

2001年

所在地:東京

従業員数:498名(2019年3月31日現在)

moneykit.net

メールの配信頻度が従来の

4〜5倍に

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課題

・顧客の属性や行動データが膨大に蓄積していたものの、十分に活用できていなかった

・システムごとにデータが分散しており、簡単に活用できるシステム環境ではなかった

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成果

・アドビをパートナーに迎えて社員教育などを実施。データ活用文化が徐々に醸成されている

・基幹システムやアドビのソリューションのデータを統合して、可視化、分析できる環境が整った

・チャレンジした施策が成果につながることで、社員たちの積極性がさらに高まっている


 

「アドビのコンサルタントは、私たちのビジネスを理解した上で、厳しいことも率直に提言してくれます。具体例とストレートな説明が、現場の社員の納得感につながっています」

 

ソニー銀行株式会社執行役員 マーケティングサイエンス部  コンテンツ企画部 担当 ルゾンカ 典子


順調な成長の陰でデータの利活用に懸念

2001年に設立されたソニー銀行。「フェアである」ことを理念に掲げ、インターネットを活用した「個人のための資産運用銀行」としての事業を展開しています。

 

すでにネット銀行の老舗である同社ですが、現在もリテールバランス(預金・投資信託・個人ローンの合計)は増大し続けており、2019年3月末には、その金額が4兆円を突破。経常利益やROEも上昇を続けています。

 

また、最近では11通貨対応のVisaデビット付きキャッシュカード「Sony Bank WALLET」に「Visaのタッチ決済」機能を搭載して、より利便性を強化し、幅広いオンライン決済サービスを提供するなど、キャッシュレスの老舗としての存在感を高めています。

 

このように順調に成長を遂げてきた同社ですが、その順調さが、逆に社員から危機感や挑戦心を奪っているのではないかという懸念がありました。それが顕著に表れていた領域の1つがデータ活用、およびデジタルマーケティングです。

 

基本的に店舗を持たない同社にとって、Webは重要な顧客との接点になります。その接点を最適化するには、顧客の行動データを分析して得た洞察を基に仮説を立て、検証しながら、改善を繰り返す必要があります。

 

顧客に金融商品を提案するメールの配信も同様です。データを見ながら、いつ、どのような属性の顧客に、どのような内容のメールを送ると効果的か、顧客セグメントはどう分類すべきかを検証して次の施策を検討し、成果を高め続けなければなりません。 

 

「しかし、膨大なデータを蓄積し、ツールも導入されてはいるものの十分に使いこなせている状況ではありませんでした。例えば、マーケティング部門の社員にツールの使い方やデータの見方を聞いても、返事がなかなか返ってこないという状況でした」と同社のルゾンカ典子氏は振り返ります。

 

また、システム環境では、開業から約20年が経過する間にシステムがサイロ化、部分最適化されてしまっており、全社でデータを共有し、活用していくための基盤がないことも課題でした。 このような課題を解決するため、同社は中期経営計画にデジタルマーケティングの強化を盛り込み、データ活用基盤の構築を開始。同時に、社員が積極的に、熱量を持ってデータを活用していく文化を醸成し、定着させるための改革に取り組むことも決めました。

率直に提言するコンサルタントの姿勢を評価

このデータ活用文化の醸成、定着を推進するためのパートナーとして同社が選んだのがアドビです。

 

「初期の段階でアドビのコンサルタントと話をする機会があったのですが、最初から親身になって相談に乗ってくれました。そこで指摘されたのが、組織全体が冷めている、ということでした。ここまではっきりと言うコンサルタントは決して多くありません。ですが、やんわりとした指摘では、どれくらい危機的なのかということを測りかねることも多い。具体例を挙げながらストレートに指摘してくれるアドビの姿勢は信頼できるものでした」とルゾンカ氏は言います。

 

また、Adobe Analytics、Adobe Targetがすでに導入されており、その使いこなしにつながることもアドビのコンサルティングサービスであるAdobe Professional Servicesの採用につながりました。

 

このような経緯でアドビを改革パートナーに迎えた同社は、3カ年計画を立て、すでに社員教育に取り組んでいます。

 

「最初の1年目は基本的なトレーニング。ツールの活用方法を学び、カスタマージャーニーを考えながら施策を練り上げるハンズオンを行ったり、実際に企画した施策を実施して、成果を確かめたりしました。2、3年目は、1年目とは違うツールの学習に加えて、セグメンテーションなど、より高度な内容の施策にチャレンジしています」(ルゾンカ氏)。

 

ツール教育を担当すると同時にアドビのコンサルタントは、わからないことがあれば常に問いかけられる、あたかも同社のメンバーのような距離感で日々の業務をサポートしています。

 

「アドビのコンサルタントは、外部の視点から『デジタルマーケティングに何が必要か』を語るのではなく、私たちと同じ視点で『ソニー銀行にとって何が必要なのか』を本音で語ってくれます。一緒にパーティを組んで大きな山を登頂していく仲間のように感じました。様々なIT企業と取引がありますが、このような対応を行ってくれたのはアドビが初めてです」と同社の米山廣樹氏は語ります。

 

システム環境の面では、基幹システムや営業支援システム、そして、Adobe AnalyticsやAdobe Targetなどのデータを連携させてダッシュボードで可視化できる仕組みを作り上げました。また、新たにデジタルマーケティングを強化するためのツールとしてAdobe CampaignとAdobe Audience Managerも導入しています。

ハンズオンで策定したカスタマージャーニーの例:ハンズオンを通じてペルソナを策定。顧客のライフスタイルに関する仮説を立てて、提供できる顧客体験や態度変容のきっかけを整理、可視化した。

自発的にデータを活用する企業文化が徐々に醸成

改革は、まだ途上ですが、ルゾンカ氏は、企業文化が変わりつつある兆しを感じていると言います。

 

徐々に変化するメンバーたちの意識

 

同社は、改革の一環として、目的と役割を明確にし、よりデータを活用しやすくするために組織体制を改めました。

 

現在、マーケティング部門は、実際のWebデザインや様々な施策の実装を担当する「コンテンツ企画部」と、大きく企画業務を担当する「マーケティングサイエンス部」の2部体制となっています。さらにマーケティングサイエンス部は、広告宣伝を担当する「マーケティング課」、顧客体験改善の企画を行う「CX企画課」、データ抽出や分析を支援する「データアナリティクス課」へと細分化し、それぞれが有機的に連携できる組織を作り上げています。

 

この新しい体制の中で、同社の社員たちは、自発的にデータを活用し、互いに成果やノウハウを共有したりしながら、これまでには見られなかったデータ主導の業務スタイルを身につけつつあります。

 

「以前は、データ分析して新しい施策を考えようとしても、何から手をつけていいのかわからないという状況でした。一方、現在は、そのプロセスを具体的にイメージできます。私のマーケティング課が担当する広告出稿では、以前より細かくセグメンテーションを行い、広告を出し分けることで投資効果を高めていこうという機運が熟してきています」と同社の伊達修氏は言います。

 

また、米山氏も「以前は『冷めている』と指摘された通り、ノウハウの共有もあまり行われていませんでした。しかし、最近では自発的にデータ活用やデジタルマーケティングに関する勉強会を開催し、部門を超えたメンバーが参加するようになっています」と社内で起こっている変化について語ります。

 

教育だけでなく、必要なデータをすぐに得られるシステム環境を整備したことも、このような変化を後押ししています。新しいシステム環境は、コンバージョンに至ったリードに関する情報だけでなく、その結果に何が左右したのかといった原因分析を行いやすくなっています。原因と結果を把握できれば、より良い結果を出すための検討も行いやすくなります。

 

「これによって、上長が指示を出さなくても、現場の社員が自分たちの考えに基づいて、自発的に動くようになっています。また施策の週次レポートを作成する動きも、現場主導で進んでいます。自分たちが手にしている数字に自信があるからこそ、積極的な情報共有を行おうというモチベーションも生まれているのではないでしょうか」とルゾンカ氏は話します。

 

データを基にWebサイトを改善

 

育ちつつある新しい文化の中で生まれたデジタルマーケティングの成功施策についても紹介します。その1つがWebサイトの改善です。

 

「Adobe Targetを使って、スマートフォンのトップ画面のA/Bテストを繰り返し実施して、導線の改善を進めました。テストを重ねて、初めて外貨を購入するユーザーに最適な導線を作った結果、外貨の購入率が2倍ほどに向上しました」と伊達氏は話します。

 

Webサイトの改善には、Adobe AnalyticsとAdobe Audience Managerが威力を発揮しました。

 

Adobe Analyticsを利用すれば、Web上の行動を捕捉することができますが、そのデータをAdobe Audience Managerの属性情報とひも付けることで、どんな属性のユーザーが、どんな行動をしているのかを把握できるようになります。

 

「例えば、すでに投資信託を購入しているお客様とそうでないお客様とで、投資信託の紹介ページにおける行動は大きく異なりました。それを受けて、すでに購入済みのお客様向けには詳しい情報を記載したページ、まだ購入していないお客様向けには、基本的な解説を中心にしたページを用意しました。これによりコンバージョンレートは上昇しました」(米山氏)

 

メール配信の自動化で配信効率が向上

 

Adobe Campaignによってメール配信の効率も向上しています。

 

「以前のメールシステムでは、配信対象となるお客様を別のシステムから抽出して、そのメールアドレスをCSV形式でエクスポートし、それをメール配信システムにインポートした上で配信を行っていました」と伊達氏。そのため施策の実施に数日かかることも多く、タイムリーな実行が難しかったといいます。

 

一方、現在は、対象ユーザーの抽出、配信までのプロセスが完全に自動化されています。「Adobe Audience Managerとも連携しており、あらかじめ設定したシナリオに応じたお客様へのメール配信も簡単に行えます」(伊達氏)。

 

これによって配信タイミングが大きく変わったメールが、バースデーメールです。以前は手間がかかることから、月に1回まとめて送信していましたが、現在は、毎日、顧客の誕生日にメールを配信しています。

 

また、メールへの反応に応じて、別のシナリオに切り替えるなど、複数のシナリオを組み合わせた配信設定も容易に行えます。「この自動化によって、メール施策のサイクルが速くなり、新規施策の実施頻度は以前の4.5倍になりました」と米山氏は言います。

 

このように、自分たちで考え、実施した施策が成果につながることで、ソニー銀行の社員たちは、データの有効性を確認。それが、さらなるデータ活用文化の醸成と定着につながっています。

 

「とはいえ、これらの成果も、まだデジタルマーケティング高度化の第一歩。これまではアドビの強力な支援を受けながら改革を進めてきましたが、今後はアドビの手から離れた状態で、自走していく必要があります」とルゾンカ氏は強調します。

 

かつて同社がそうであったように、現在も異業種からの参入が相次ぐ金融業界は、さらに激しい競争が繰り広げられています。そうした競争を勝ち抜き、これからも顧客に選ばれる銀行であり続けるためにソニー銀行は、手綱を緩めることなく改革を断行していきます。

 

※掲載された情報は2019年12月現在のものです。

榎本 裕美子 氏

マーケティング サイエンス部CX企画課長

米山 廣樹氏

南川 潤子 氏

マーケティングサイエンス部マーケティング課長

伊達 修氏

榎本 裕美子 氏

執行役員マーケティング サイエンス部コンテンツ企画部 担当

ルゾンカ 典子氏

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