電話と郵便のコミュニケーションから脱却 少人数のチームで顧客エンゲージメントを大幅に向上
東京電力エナジーパートナー株式会社
本社:東京都中央区銀座8 丁目13 番1号 銀座三井ビルディング
東京電力グループの電力、ガス小売事業者であり、電気に関しては日本最大の契約者数を保有。関東圏を中心に、一般家庭に電気とガス、工場などの事業者に向けて電気を販売している。
アクセス会員数が増加
・メールアドレスが少なく、デジタルの施策をほとんど実施できていなかった
・電話や郵便物でのコミュニケーションが中心で、顧客エンゲージメントを高める施策を十分に実施できていなかった
・少人数で顧客エンゲージメントを高める施策のきめ細かな実施が難しい
・メールアドレスを取得した顧客に対して、自社サイト「くらしTEPCO web」の案内をタイミングよく実施。継続的なアクセス会員数が前年同期と比べて26%上昇
・「コミュニケーションポイント」や「節電ポイント」などの施策の認知促進を実施し、ポイントがたまった顧客に交換を案内。交換先が多数あることの認知も向上し、メリットを感じてもらえるように
・Adobe Campaignとアドビのサポートを有効活用し、マーケターの施策検討時間を創出
「お客様とのデジタル接点は当社にとって大きな財産です。Adobe Campaignを導入したことで、社内のニーズにも積極的に応えられる体制が整ったので、この財産をさらに有効活用できると思います」
赤木 宏充氏
販売本部お客さま営業部 くらしサポートグループ チームリーダー
東京電力グループの電気、ガス小売事業を手がける東京電力エナジーパートナー株式会社は、膨大な顧客データベースを保有していながらも、顧客との接点は電話や郵便物が中心となっていた。電力小売り自由化の時代に競争が激化する中、デジタルコミュニケーションの強化に着手した。
同社のマーケティングオートメーション(MA)導入の中心となった販売本部お客さま営業部 くらしサポートグループ チームリーダーの赤木宏充氏は、2017年に同社に入社。デジタルチャネルをどうやって強化していくかが、最大の課題だったという。
デジタル施策として取り組んだのは、主に2つの領域だった。まずコンテンツの充実。自社の情報サイト「くらしTEPCO web」のコンテンツを増やし、Eメールをはじめとした接点のコミュニケーションを強化していった。もう1つが、顧客の状況に合わせて最適なタイミングで情報を発信することだった。「当社から一方的に情報を送りつけるのでなく、必要な情報を必要なときに届けることで、継続的な関係の維持を目指しました」(赤木氏)。
だが、同社の保有する1000万件以上という膨大な顧客数に対して、送信可能なメールアドレスは数十万件にとどまっていた。絶対数としては多いが、顧客規模からするとあまりに少ない。デジタルマーケティングの準備はメールアドレスの獲得から始まったという。
まずは、オンラインから登録済みの顧客を増やすことにより、メールアドレスの取得を進めていった。
特に狙い目は、転居などで契約情報の変更が必要な顧客に対する勧誘だ。引っ越し繁忙期にオンラインから契約手続きしてくれた顧客へのポイントを増額するなど、キャンペーンを展開して、メールアドレスの獲得を積極的に進めた。
重要なポイントは、顧客ごとに最適なタイミングでメールを送り、その反応を確認することだ。「会員登録して1カ月経ってから、『会員登録ありがとうございます』というメールが来ても、お客様の印象はかえって悪くなります。タイムリーに情報を届けるためには、MAの仕組みを取り入れる必要がありました」(赤木氏)。
赤木氏のチームではMAツールの検討を開始し、以前から売り込みを受けていた大手ベンダーのシステムを試すことになった。だがテストを開始してから、このまま決めてしまうことに疑問が湧く。
「そこで、アドビのイベントに参加してみたところ、すぐにアドビの担当者から、Adobe Campaignの提案と、無料で試す機会をいただきました。この2つのツールを試すことができれば、十分だろうと判断しました」
約半年に及ぶテストの結果、同社ではAdobe Campaignの採用を決定。アドビのクロスチャネルキャンペーン管理ソリューションであるAdobe Campaignを選んだ理由について、赤木氏は、ツールとしての使い勝手の良さ、内外のエンタープライズ企業の実績が示す大規模運用にも耐えられる性能などを挙げる。だが、それらを上回って強く背中を押したのは、アドビのサポート力だったという。
販売本部お客さま営業部
くらしサポートグループ チームリーダー
赤木 宏充氏
販売本部お客さま営業部
販売促進グループ
平松 翔氏
「導入の決定打は、Adobe Campaignに付帯していた『プレミアサポート』だったと断言できます。アドビ側のコンサルティング担当と、テクニカルサポートスタッフの両面から丁寧に支援をしてもらえる体制は、非常に安心感がありました」(赤木氏)
アドビのサポートは、問い合わせに対して必ず答えが出るまで並走してくれたと赤木氏は言う。「検討の結果、最終的に不可能と分かった場合も、こちらが腹落ちする説明をしてくれたので、納得ができました」。
特に赤木氏が評価したのは、サポートが個人の力量からもたらされるものではなく、組織的に行われている点だ。「実際に、開発途中でアドビ側の担当コンサルタントが異動し、別の人に代わったことがあります。かなり不安でしたが、新しい担当者の対応レベルがまったく変わらないことが分かり、安心しましたね」。
現在、同社のデジタルマーケティング施策は、メールとLINEの2つのチャネルを主に用いて進められている。新たに同社に合流し、現在Adobe Campaignを用いたデジタルマーケティング施策を担当するのは、販売本部お客さま営業部 販売促進グループの平松翔氏だ。
「くらしTEPCO web会員のお客様に対して、会員ポイントを付与しています。300ポイントまでたまると一般的なポイントに交換できるのですが、そのタイミングで素早くメールやLINEでお知らせすることで、ポイント利用を促しています。また、一定期間webサイトを訪問されていないお客様には、ログインすることのメリットや、お勧めのコンテンツを改めてお知らせしています。さらに、一人ひとりのお客様に最適なチャネルを配信することで、お客様のエンゲージメントはより高まると考えています。Adobe Campaignと連携させたAD広告等も必要に応じて利用し、有効な配信チャネルをあてるようにしています。」(平松氏)
21年6月に導入したAdobe Campaignの効果は確実に表れている。まず、くらしTEPCO webの初回ログイン率が、前年と比べて5%増加。また、継続的なアクセス会員数も前年同期と比べて26%の上昇を示している。会員に付与しているポイントの交換額も、前述した対象者への通知などの施策によって前年同期と比べて約2倍に増えているという。
何より、顧客とのコミュニケーション業務の圧倒的な効率化が図られた。赤木氏は「Adobe Campaignの導入で運用が劇的に軽くなり、本来すべき施策の構想と結果の検証に力を入れることができるようになりました」と話す。
実際にメールの件名やコンテンツのA/Bテストを実施し、効果の違いを検証した際、メールの件名によって開封率が変わるものの、強いコンテンツがあれば、中身のリンクをクリックしてくれる人は多いということが分かったのだ。
平松氏も「当社のお客様はメールの文言を最後まで読んでくださる方が非常に多いと感じています。Adobe Campaignは、細かい反応が見やすく表示できるので、次の施策の設定がしやすいことがメリットだと感じています」と語る。
同社は今後、電気の利用についてより感度の高い顧客層へのコンテンツも充実させ、深いコミュニケーションができるようにPDCAを回していくことを検討。また、社内システムとMAの連携も予算化され、今後進めていくことが決まっているという。MAチームのメンバーは限られているが、同社ではアドビをはじめとした外部のサポートを有効活用しながらプロジェクトを進めていく所存だ。
「もともと当社は、何でも内製で進めたがる社風なのですが、今回のMAプロジェクトのように、専門性が高い人材をすぐにそろえることは難しく、外部との連携を活用する方法論は正解だったと思います」(赤木氏)
また平松氏は、「Adobe Campaignを活用して施策の修正や戦略検討のサイクルを早めることで、変化の激しい時代に対応していきたい」と語った。
※掲載された情報は、2022 年9月現在のものです。