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精度の高いマーケティングスコアを基に有望な医療関係者を厳選してMRに提供

株式会社ツムラ

創業

1893年

所在地:東京都

https://www.tsumura.co.jp/

導入製品:

課題

・コロナ禍でMRの対面営業が難しくなった

・多忙なMRにとって確度の高い有望医療関係者の情報が必要だった

・漢方製剤はあらゆる診療科が対象で、医療関係者の興味や課題も様々だった

成果

・売上高の伸長トレンドに変化が生まれ、増収に貢献

・顧客の行動をスコア化し、1日5通程度に絞り込んだホットリードを提供

・習熟度別や診療科別にセグメントしたマーケティング施策で最適なコンテンツを配信

「医療関係者一人ひとりを重視して、求める情報を、求める方法で提供することを目指しています」

医薬営業本部 医薬マーケティング部 デジタルコミュニケーション推進課 課長 石橋 茂氏

医療用漢方製剤の製造/販売を行う株式会社ツムラは、コロナ禍で医療関係者を訪問できない事態に見舞われた。しかし、直ちに医療関係者向けのwebサイトをリニューアルし、動画などのコンテンツ配信を開始。あわせてAdobe Marketo Engageも導入してデジタルマーケティングを推進し、webサイトの反応からパーソナライズした情報提供を行うことで、顧客接点を回復した。

コロナ禍でMRの訪問が不可能に。デジタルチャネルの強化に乗り出す

ツムラの主力事業は、病院やクリニックといった医療機関で処方される医療用漢方製剤の製造/販売である。医療機関への営業担当者であるMR(医薬情報担当者)にとって最も重要な活動は、医療関係者に対しての医薬品の安全性や有効性などの情報提供活動だ。

同社は約750人のMRを擁しており、医療機関へ訪問して対面で情報提供を行ってきた。しかし、2020年のコロナ禍以降、直接訪問できない状況が全国的に増加。2カ月間訪問できないケースも生じたという。

そこで同社は、医療関係者への情報提供を絶やさないために非対面チャネルの検討を開始。その1つの手段として、21年4月に医療関係者向けのwebサイトを大幅にリニューアルし、「TSUMURA MEDICAL SITE」としてオープンした。

本webサイトは、医師や薬剤師などの医療関係者が、生涯にわたって漢方医学を学べる環境作りを目的に情報を発信している。

「ツムラグループが制定しているパーパスは、『一人ひとりの、生きるに、活きる。』です。医療関係者への情報提供においても一人ひとりを重視して、医療関係者が求める情報を、求める方法で提供することを目指しています」と、同社 医薬営業本部 医薬マーケティング部 デジタルコミュニケーション推進課 課長の石橋茂氏は語る。

webサイトの立ち上げは、企画開始から4カ月という短期間で実現。それと並行して、同サイトの利用者に向けてパーソナライズした体験提供のため、Adobe Marketo Engageの導入検討も開始した。

Adobe Marketo Engage運用は組織横断プロジェクトで推進

Adobe Marketo Engageの契約は22年1月より開始し、同年4月から稼働。運用を担当したのが、同社 デジタルコミュニケーション推進課 主任の吉川悠太氏だ。吉川氏は同年3月までMRとして活動していたが、4月からAdobe Marketo Engageの運用チームに合流。外部のコンサルタント支援を受けながら、Adobe Marketo Engageの基本を学び、2カ月後には、外注していたメルマガの配信業務を内製化した。さらにその翌月から、セグメント分けした配信も実施している。

メルマガを内製化したことで課題として浮上してきたのが、施策の「個別化」だった。「社内に組織横断型のAdobe Marketo Engageの導入プロジェクトを立ち上げました。私たちの他、コンテンツ制作や営業管理、教育に携わっている部署からも参画してもらい、定期メルマガやイベント案内メールなど、プロジェクトメンバーがアイデアを出し合いながら進めました」(吉川氏)

プロジェクトでは毎月の定例会議を開催し、施策の個別化と同時にマーケティングの自動化を進めるためには何に取り組めば良いのかを議論していったという。

「習熟度」×「診療科」のセグメントで顧客をセグメント化

Adobe Marketo Engage導入プロジェクトで個別化を議論していくうちに、個別化に対してはセグメントの切り方がポイントだということが分かってきた。同社では、セグメントを「習熟度」と「診療科」の2つの軸で分類。背景には、製薬業界の中でも漢方薬という分野のユニークさがあるという。

「弊社では、全診療科の先生方にアプローチします。製薬業界では全診療科が対象になるのは珍しいかもしれませんが、あらゆる診療科の先生方に医療用漢方製剤をお役立ていただいています。最終的には『習熟度』×『診療科』を掛け合わせてセグメント分けしたいと考えています」(石橋氏)

医薬営業本部 医薬マーケティング部

デジタルコミュニケーション推進課 課長

石橋 茂氏

自動化に関しては、社内向け、社外向けの2方向での取り組みを実施している。社内向けは、有望な医療関係者の情報をMRへ通知する「アラートメール」の自動化を実装。

会員サイト「TSUMURA MEDICAL SITE」では、Adobe Marketo Engageを活用し、関心が高く、早急な情報提供を望む可能性が高い医療関係者に焦点を絞っているという。具体的には、各会員の閲覧履歴データを収集し、ページ閲覧に1ポイント、同社の講演会への出席に10ポイントなどのように評価し、合計が100ポイントを超える場合に「関心の高い医療関係者」と判定され、それを担当するMRに通知される仕組みが構築されている。

「この重要なリード情報は、約750人のMRに対して1日に5件程度しか通知されないようになっています。MRの多忙さを考慮し、関心が高く、早急な情報提供を求めるリードに絞って通知しているのです」(石橋氏)

一方、社外への自動化について、現在実装を進めているのが休眠会員向けのメール施策だ。60日間「TSUMURA MEDICAL SITE」を訪問していない場合、休眠会員と定義し、サイトの人気コンテンツとログイン方法を記載したメールを自動送信している。また、動画を見た医療関係者に対し、関連する処方の情報を自動で届ける取り組みも検討中だ。

吉川氏は、Adobe Marketo Engageの導入効果を現場のMRから直接聞き取っている。そこで、大学病院を担当するMRから、次のような成功事例を聞くことができたという。

「大学病院はコロナ禍の訪問規制が厳しく、担当MRはアポイントの依頼メールを何度か送っていたのですが、返信のない状態が続いていました。ある日、厳選された有望医療関係者をアラートメールによってMRに自動でお知らせをしました。MRへのアラートメールには、Adobe Marketo Engageの興味スコアを活用して、該当する医師が閲覧しているコンテンツ情報を記載しています。具体的には、『TSUMURA MEDICAL SITE』の『製品情報』『動画コンテンツ』などの掲載コンテンツの分類でスコアリングした情報です。担当MRがそれを見て顧客の興味分野を把握し、関連した情報を添えてメールを出したところ、アポイントが取れたそうです」

数値目標を設定して達成度を細かく確認

デジタルコミュニケーション推進課では、メルマガの数値目標を設定して施策の効果を評価している。施策は会員向けと非会員向けに分かれており、まず会員向け施策の指標には、web講演会のAdobe Marketo Engage経由での視聴申し込み数を設定。毎回300件を目標にしているが、現在は平均約320件と目標値をクリアしているという。

「集客できている要因は、メルマガの開封率とクリック率の高さにあります。開封率は47~48%、クリック率は8~9%ほどあります。ただし、開封率の目標は50%、クリック率の目標は10%を掲げているので、目標にはまだ少し届いていません。開封率をさらに高める対策として、件名の個別化を考えています。例えば、件名に送信先の名前を入れたり、診療科別にセグメント化を進めたりするなど、その診療科の先生方が興味を持ってくれそうなタイトルにしていく計画です」(吉川氏)

医薬営業本部 医薬マーケティング部

デジタルコミュニケーション推進課 主任

吉川 悠太氏

一方、非会員向けメルマガでは、1回の配信で20件の会員登録を目標にしている。現在は平均約18件で、目標まであと一歩のところだ。

「メルマガの配信数は3万件を超えたところです。メルマガの配信頻度は、会員向けが月に4通、非会員向けが月に2通です。現在、コンテンツそのものの個別化を進めています。Adobe Marketo Engageをはじめとしたデジタル施策によって、すべての活動のデータが取得できるようになりました。そのデータを基に、医療関係者一人ひとりの背景や行動をとらえ、それに応じた活動の推奨を考えています」(石橋氏)

同社では、第1期中期経営計画の最終年度である24年度までに、10処方以上の漢方製剤を処方する医師を50%以上にするという目標を対外的にも発表している。臨床医師が32万人と言われる中、その半数の16万人に10処方以上の漢方を処方してもらうことは、かなり高い目標だ。

石橋氏は、「目標達成のためには、会員数をもっと増やす必要があります。1本のメールで会員登録20件を獲得するペースでは追いつきません。また、質においても一人ひとりに対応した情報をお届けしなければいけません。今後はメールの自動化にさらにフォーカスするとともに、ナーチャリング施策を進めたいと考えています」と語った。

※本記事は、パワー・インタラクティブ社が制作し2023年4月に公開したAdobe Marketo Engageの導入事例を再構成したものです。掲載された情報は公開当時のものです。

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