創業
DXのための取り組みが明確に
デジタルによる顧客体験の向上
デジタルマーケティングにおける課題や、目指す姿を明確化する
調査・分析結果がレポートとして目に見える形になったことで全員が共通認識を持ち、一丸となって解決に取り組んでいく体制が整った
分析を踏まえて、課題や解決の道筋をはっきりと明示したアドビのレポートは非常に納得感があった
webを様々な問い合わせが集まる重要な顧客接点と位置付けてリニューアル
アドビのコンサルティングサービスをきっかけにした生活空間事業部の取り組みを全社で共有。今後の展開に活かす
執行役員 西谷 壮一郎 氏
印刷事業で培ってきたものづくりノウハウに、情報加工技術を掛け合わせて新たな付加価値を創出しようとしている大日本印刷株式会社(DNP)。建物の内外装化粧材の印刷を中核事業とする同社の生活空間事業部は、その取り組みを加速するに当たって、アドビのコンサルティングサービスを利用した。アドビが世界中の企業を支援する中で確立したフレームワークを活用して現状分析や課題抽出を実施。その上で顧客体験向上に向けた戦略や施策を提案するサービスだ。現在、同事業部はアドビの提案を参考にしながら顧客接点を改善するためにwebのリニューアルに着手している。
創業以来、本だけでなく、様々な場面で私たちの暮らしを支え続けているDNP。印刷と聞くと、多くの人が書籍や雑誌をはじめ、紙に対する印刷を思い浮かべるだろう。だが、私たちの身の回りでは、紙以外にも様々なものが印刷技術によって加工されている。
住宅用の建材もその1つだ。壁や床、ドアなど、住宅の様々なフィルムなどの建材印刷物によって表面化粧されることにより、デザイン性はもちろん、傷や汚れ、色あせなどへの耐性を高めている。DNPの生活空間事業部は、高度な技術力と豊富な実績を持つ、この分野の代表的な事業者である。
現在、DNPは全社を挙げて印刷事業で培ってきたものづくりノウハウに、情報加工技術を掛け合わせて新たな付加価値を創出する「P(印刷)&I(情報)イノベーション」を推進している。経済産業省と東京証券取引所が共同でDXに積極的に取り組む企業を選定・公表する「DX銘柄2020」にも指定されるなど、このDNPのP&Iイノベーションは、DX事例としても大きな注目を集めている。
もちろん生活空間事業部も、このP&Iイノベーションに取り組んでいる。「建材の受発注を紙文書やFAXで行うケースが少なくないように、建設業界はデジタル化が遅れている業界の1つです。しかし、住宅選びや設計プロセスにXR技術を応用するなどDXの兆しも見えています。私たちも積極的にデジタル活用に取り組み、業界全体が変革していく大きなきっかけになれればと考えています」とDNPの西谷壮一郎氏は話す。
しかし、一言でデジタルといっても、業務効率化のためのシステム導入、顧客体験を向上するためのサービス改善、デジタルを組み合わせた新しい製品の開発など、取り組みは多岐に渡る。そこで、DNP生活空間事業部は、最も重要なテーマとしてデジタルによる顧客体験の向上、つまりデジタルマーケティングをピックアップした。
デジタルマーケティングの強化に向けて、同事業部はアドビのコンサルティングサービスに依頼を行うことにした。「課題や目指す姿をはっきりとさせ、効果の高い取り組みを推進していくために、デジタルマーケティングの専門家の評価や意見を聞きたいと考えました」と同事業部の井上理恵氏は話す。
近年、アドビはクリエイティブやデジタルマーケティングのためのソリューションを提供するだけでなく、デジタルマーケティングを実践していくための構想策定、戦略構築、組織変革を支援するためのコンサルティングサービスを提供している。
サービスは目的ごとに体系化されているが、今回、DNPは、競合との顧客体験のベンチマーク比較、組織や文化のデジタル成熟度評価、目指すべき顧客体験と業務の設計、戦略や施策に関する提言、取り組みを自己評価するためのKPI設定、そしてロードマップ案の提示まで、デジタルマーケティングに向けたプロジェクトのあらゆる側面をカバーした「Adobe CX Strategy Services」を利用することにした。
「アドビは、世界中で多くの企業の顧客体験向上を支援してきた実績を持っています。今後、DNPが全社を挙げてDXを推進していく中では、既存事業にとらわれない第三者の力を頼りたい場面も出てくるはず。今回、生活空間事業部がアドビの支援を受け、その内容を知っておくことは、いずれDNP全体のためにもなると考えました」と井上氏は話す。
Adobe CX Strategy Servicesで行う調査・分析の概要
約4カ月をかけて、アドビは同事業部の顧客体験について調査と分析、評価を行い、それをレポートにまとめ、最終報告を行った。
「コンサルティングを受け、フレームワークやメソッドがしっかりと確立されているという印象を受けました。実際、最後に受け取ったレポートは『戦略』『組織』『基盤』という3つのレイヤーごとに、現在の大きな課題、それが原因となって発生している具体的な問題、そして、問題解決のために取り組むべきことがはっきりと示されていました。中には、自分たちでも漠然と感じていた課題もありましたが、それらもはっきりと明示されたことで、全員が共通認識を持ち、一丸となって解決に取り組んでいく大きな原動力となりました」と井上氏は話す。
例えば、現在、同事業部はwebサイトの改善に取り組んでいる。これまで同事業部のwebサイトはサンプル・カタログ請求といった機能を備えているものの、ほとんどの依頼は電話やFAXで受けており、顧客接点としてはあまり機能していなかった。
「電話やFAXでは、蓄積するデータにも限りがあり、製品がどこで、どんなふうに使われているのかをトレースするのも難しい状況でした。そこでwebをお客様からの様々な問い合わせが集まる重要な顧客接点と位置付けリニューアルを図っています」と井上氏は話す。
もちろん、このwebのリニューアルだけで同事業部が目指す顧客体験が実現するわけではない。「やっと一歩目を踏み出した状況ですが、動き出したことの意義は非常に大きい。多くの企業と協力しながらDXに向けた取り組みを加速させ、業界全体で「住まい」という大きな買い物をされるエンドユーザーの体験を向上していきたいと考えています」と西谷氏は強調した。
執行役員 西谷 壮一郎 氏
生活空間事業部 井上 理恵 氏
担当コンサルタントの声 アドビ株式会社 ビジネスコンサルタント 三嶋 春菜
今回、DNP生活空間事業部様には、営業推進におけるデジタル活用というテーマで提言させていただきました。西谷様より「自分が一番デジタルについての価値観を変えなくてはいけない」という強いメッセージをいただいたことが印象に残っています。現在の外部環境を「チャンス」と思えるかどうかでDXのスピードが変わってきます。CXストラテジーサービスで策定したロードマップを軸に、よりよい顧客体験が提供できるよう引き続き支援させていただきます。