ユーザーフロー図の包括的なガイド

ユーザーフロー分析について
ユーザーフロー分析(顧客フロー分析とも呼ばれます)は、定義されたプロセスまたはシステムの様々な段階における、リソース、情報、個人の移行や動きを調査するものです。その主な目的は、こうしたプロセスを個別のステップに細かく分解し、生産性を低下させたり、望ましい成果を妨げたりする固有の非効率性、潜在的なボトルネック、問題点を特定することです。
ユーザーフロー図は、素材、データ、エネルギー、さらには顧客が、特定の環境内でどのように移行するのかを正確に理解することに重点を置いています。そこから獲得したインサイトにより、エンジニア、アナリスト、ビジネスリーダーは、全体的なパフォーマンスを向上させるための的を絞った調整を実施できます。フロー分析に正確さと徹底さを欠くと、組織の戦略的目標の達成能力に大きな影響を与える可能性があります。
ユーザーフロー分析を効果的に実施するには、システム思考にもとづく視点を採用する必要があります。これは、単一の直線的な経路を追跡するだけにとどまりません。Webサイトのページ、アプリケーションの画面、マーケティングの顧客接点、カスタマーサポートとのやり取りなど、様々なシステムコンポーネントが、利用者の行動にどのように総合的に影響しているのかを理解することが、ユーザーフロー分析の主な目的です。このアプローチでは、ユーザーのジャーニーは孤立したものではなく、より広範なシステムのダイナミクスによって形成されるものと認識しています。たとえば、あるページでのボトルネックを特定するには、そのページの上流の原因と下流の影響を、全体的なサイトやアプリケーションのアーキテクチャ内で理解する必要があります。
ユーザーフローとは
ユーザーフロー とは、顧客がwebサイトやアプリケーションを利用する上で通る可能性のあるあらゆる経路のことです。ユーザーフローは、ユーザージャーニーの可視化やマップ化を意味することもあり、フローチャートやユーザーエクスペリエンス(UX)フローと呼ばれることもあります。ユーザーフロー図では、利用者が製品に触れて購入するまでのあらゆるステップを図で示し、製品内の移動をマップ化します。ユーザーフロー図の目的は、サイトやアプリのどこで特定の情報を提供すれば、特定の行動を取るように利用者を促し、最終的なやり取りに導くことができるのかを明らかにすることです。
ユーザーフローとカスタマージャーニーの違い
機能
ユーザーフロー
カスタマージャーニー
ユーザーフロー図のメリット
ユーザーフロー分析には、最適なユーザーエクスペリエンスを構築するためのロードマップとなる図が含まれます。ユーザーフロー図には、次のようなメリットがあります。
- 利用者がwebサイトやアプリケーションをどのようにナビゲートするのかを視覚化
- ユーザーエクスペリエンスの視覚化
- ユーザーフローの最適化
- チームメンバーからのフィードバックを効率的に受け取る
ユーザーフロー分析とユーザーフロー図のそれぞれのメリットについて、詳しい説明は次のとおりです。
ユーザーナビゲーションの過程を視覚化
ユーザーフロー図で、webサイトやアプリを閲覧する利用者が体験していることを追体験できます。自社製品に慣れ親しんでいると、そのユーザーナビゲーションやユーザーエクスペリエンスがわかりやすいものと思いがちです。しかし、それは顧客の体験とは異なるかもしれません。
ユーザーフロー図と分析によって、利用者の視点からサイトやアプリを利用する流れを確認できます。利用者が遭遇することを観察することで、つまずきや障害を特定し、体験をシームレスにする方法を見つけ、自社の目標と利用者のニーズを一致させることができます。
UXのビジュアライゼーション
ユーザーフロー図は、アプリを俯瞰し、それぞれの要素やページがどのように連動しているのかを示すこともできます。特定のプロジェクトのためにwebサイトの一部に集中しすぎて、全体像を見失ってしまうこともよくあります。ユーザーフロー分析は、体験全体を視覚化するため、あらゆるジャーニーに対して最適化できます。
ユーザーフロー図は、ページやステップがどのように連携して、製品のナビゲーションにおけるユーザー体験を強化したり、逆に妨げたりする流れを示したものです。これにより、行き止まり、孤立ページ、不十分な経路などを容易に特定できます。
その主なメリットのひとつは、デジタルエクスペリエンスにおけるボトルネックや問題点を特定できることです。フロー分析により、利用者が困難に直面したり、不必要に操作が遅くなったり、タスクを中断したり、またはサイトやアプリケーションを完全に離脱してしまう場所を正確に特定できます。こうした具体的な障害に対処することは、よりスムーズな経路を構築するために不可欠です。
特定されたボトルネックを体系的に排除し、ナビゲーションを合理化することで、情報の検索、取引の完了、機能の使用など、利用者が目標を達成するまでの効率を大幅に改善できます。これにより、ユーザーエクスペリエンスの最適化に直接貢献できます。
ユーザーフローの最適化
ユーザーフロー分析は、変更を本番環境に導入する前に試験的に実施するために不可欠です。ナビゲーションの変更や新しいセクションの追加が必要な場合は、まずはユーザーフロー図に追加しましょう。これにより、その変更がサイト構造やユーザージャーニーにどのような影響を及ぼすのかを検討できるようになります。
ユーザーフロー図で変更を可視化することで、アプリのユーザー中心設計を維持し、ローンチ前に問題を発見しやすくなります。また、ユーザーフローに深刻な影響を与え、後から修正するのに多大な時間とリソースを要するような、未検証の変更を急いで導入するリスクを回避できます。
チームメンバーからのフィードバックを効率的に受け取る
複数のチームメンバー、特にセールス部門やマーケティング部門などのUXチーム以外の関係者からのフィードバックを統合する場合、ユーザーフロー分析は、そうしたインサイトを一元化するための効率的な方法となります。ユーザーフロー図は視覚的なことから、あらゆる部門の関係者にアプリのナビゲーションを容易に示すことができます。ユーザーフロー分析には、シンプルな図形、わかりやすい経路、最小限のテキストで構成される図が含まれるので、重要な共同作業者は容易に貴重なフィードバックを提供できます。
ユーザーフロー図の作成方法
ユーザーフロー図の作成には、利用者調査、製品の価値に関する深い知識、クリエイティブな思考が必要です。ユーザーフロー図は、ユーザーフロー分析の主要な構成要素です。
- カスタマージャーニーを把握する
ユーザーフロー図を設計するための最初のステップは、利用者とそのジャーニーについて把握することです。
魅力的なバイヤーペルソナを構築することで、利用者について把握できます。バイヤーペルソナとは、重要なオーディエンスセグメントを表現したもので、利用者のニーズ、欲求、動機、行動を把握するのに役立ちます。バイヤーペルソナは、利用者を次のステップに促すために、サイトの各ページにどのような情報を掲載すべきかを決めるのに役立ちます。
また、バイヤーペルソナだけでなく、顧客との初めての接触から購入に至るまでのあらゆるステップをまとめたカスタマージャーニーマップの構築も検討しましょう。各ペルソナのカスタマージャーニー全体を把握することで、自社のwebサイトやアプリがどの段階で関わってくるのかが明確になります。これにより、UXに求められる重要なインサイトを得ることができます。カスタマージャーニーの初期にwebサイトにアクセスするペルソナと、ジャーニーの終盤にアプリにアクセスするペルソナでは、異なるユーザーフローが必要になります。
- 自社の目標を特定し、利用者の目標と整合性を取る
Webサイトのセクションやページには、購入、ニュースレターの購読、無料トライアルの申し込み、ウェビナーへの参加など、様々な目標があります。しかし、それらが利用者の目標を正確に反映しているとは限りません。
利用者の目標を特定するのは難しいことですが、構築したペルソナやカスタマージャーニーマップを参考にすることができます。利用者がアプリを利用する過程で、どのような悩みを抱えているのかを調べます。利用者の目標がわかれば、ユーザージャーニーの現在の場所に合わせてユーザーフローを設計または調整し、利用者の求めているものを提供し、自社が望んでいる終点に利用者を到達させることができます。
自社の目標ではなく、利用者の目標から始めるのは直感に反するかもしれませんが、利用者が求めていることがわからなければ、フローの最後までナビゲートすることはできません。
- 利用者の検索手段を把握する
ユーザーフローの終点が明らかになったら、次は始点を確認します。カスタマージャーニーマップを見直し、利用者が自社、自社製品、自社サイトを見つける方法をすべてリストアップしましょう。これらがユーザーフローの始点になります。
ユーザーフロー図の一般的な始点には、次のようなものがあります。
- 直接トラフィック
- オーガニック検索
- SNS
- 電子メール
- 有料広告
- 紹介サイト
- プレス
利用者がサイトにアクセスする経路によって、ニーズや終点に到達するまでの時間が異なります。たとえば、直接トラフィックでサイトに到達した利用者は、既に欲しいものが決まっていて、そのまま製品ページに移動するかもしれません。一方、広告をクリックした利用者は、その企業についてまだよく把握しておらず、サイト内をランダムに移動するかもしれません。
- 利用者が必要とする情報を見極める
次に、ユーザーフローの終点と様々な始点の間の空白を埋め、オーディエンスの体験を最適化してサイト内を導く方法を正確に特定する必要があります。バイヤーペルソナとカスタマージャーニーマップを利用して、各ステップを決定します。これらのステップでは、利用者の悩みに対処し、不安や疑問を解消し、購入者が求める情報を提供する必要があります。
たとえば、有料広告をきっかけにwebサイトにアクセスした潜在顧客が、「会社概要」のページをクリックした場合、その顧客は「誰から買おうとしているのか」を知りたがっていることを意味します。このようなユーザーエクスペリエンスを円滑にするには、ターゲットランディングページに会社情報を掲載することや、製品ページから会社概要ページに移動するための、わかりやすいCTAを作成することが考えられます。
利用者がユーザーフローを先に進めるためには、それに必要な情報を提供するタイミングも重要です。利用者が何を達成したいのか、何を躊躇しているのか、どのような疑問を持っているのかを、各ステージで考えてみてください。そして、それらの課題に適切なタイミングで対処できるように、ユーザーフローのステップを最適化します。
- フローをマップ化して可視化する
既にこの段階では、始点から終点までのユーザーフローの各ステップにおいて、利用者が何を必要としているのかを把握できているはずです。次は、それを可視化しましょう。ユーザーフローをマップ化するには、物理的なホワイトボードやデジタルホワイトボード、構築やコラボレーション用のソフトウェアなどを利用します。
- フィードバックを受け、改良し、最終調整する
ユーザーフロー図が完成したら、チームメンバーと共有し、フィードバックを受けます。
デザイナー、開発者、製品エンジニア、営業担当者、マーケティング担当者など、組織内のステークホルダーに共有しましょう。こうした関係者の視点は、フローの中で起こりうるつまずきを特定し、ユーザーエクスペリエンスを合理化して改善するための優れた方法を見つけるのに役立ちます。フィードバックを適用し、必要に応じて変更します。
最終調整したユーザーフロー図の承認を受けたら、UXデザイナー、web開発者、ソフトウェア開発者、エンジニアに最終的なユーザーフロー図を共有し、実用的なデジタルリソースに作り変えてもらいます。デザイナーや開発者は、実際の利用者の協力を得てユーザーフローを検証し、そのフィードバックをwebサイトやアプリのさらなる改善に活かします。
ユーザーフロー図のベストプラクティス
このシンプルなUXフローでは、一般的な図形、記号、色を使用して各ステップを伝えています。矢印の線に沿って追加されたテキストは、ログイン情報が正しいかどうか、利用者が「はい」または「いいえ」をクリックしたかどうかなど、各決定の結果を伝えています。
効果的なユーザーフロー図を作成することは、インサイトを明確に伝え、行動を促すために不可欠です。確立されたベストプラクティスに従うことで、ビジュアライゼーションは見た目が美しいだけでなく、正確で理解しやすく、目的に合ったものになります。
- オーディエンスと目的を定義する: ビジュアライゼーションを作成する前に、対象とするオーディエンス、答えようとしている具体的な質問、伝えようとしている決定事項を明確に特定します。それに応じて、複雑さと詳細のレベルを調整します。
- 適切なビジュアライゼーションタイプを選択する: データと調査した関係を正確に表現するチャートまたは図を選択します。フロー図はパス分析に固有のものですが、一般的な原則が適用されます。時間経過やカテゴリ間の単純な比較には、棒グラフまたは折れ線グラフを使用します。カテゴリ数が多すぎる場合や正確な比較を行う場合は、円グラフは使用しないようにします。Adobe AnalyticsやAdobe Customer Journey Analyticsのフロービジュアライゼーションなどの専用ツールを使用して、利用者の経路を分析します。
- シンプルさと明確さを最優先に: 混雑した見た目は避けましょう。不要な要素(過剰なグリッド線、重複するラベル、純粋に装飾的なグラフィックなど)を削除します。余白を効果的に活用し、コンポーネントを分離し、視覚的な構造を作成します。データの理解しやすさが常に最優先であり、複雑なデザインに重点を置かないようにします。
- 色を戦略的かつ責任を持って使用する: 色は、カテゴリの区別、重要なデータポイントの強調、強度(ヒートマップなど)の表示、ブランドの一貫性の維持などといった目的を果たすために使用する必要があります。限られたカラーパレットを使用し、ニュートラルな基本色を採用し、明るいアクセントカラーは強調のために控えめに使うようにします。色覚障害のあるユーザーも考慮して、色の選択の一貫性(たとえば、同じ色が異なるものを表していないこと)とアクセス性を確保します。
- 明確なラベルとタイトルを付ける: すべての重要な要素(軸、ノード、パス、セグメント)は、明確かつ簡潔にラベル付けする必要があります。ビジュアライゼーションの主なテーマを要約した、情報を伝えるタイトルを付けます。メインビューを乱雑にすることなく、追加のコンテキストや正確な値を提供するには、ツールチップや注釈を使用します。
- 適切なデータスケーリングを使用する: スケールがデータを正確に反映するようにします。棒グラフの軸は、比率の誤表示を防ぐため、通常は0から開始します。データの分布とストーリーに応じて、線形スケールと対数スケールのいずれかを選択します。複数のチャートを並べて比較する場合は、スケールの一貫性を維持します。
- 可能な場合はインタラクティブ機能を有効にする: 最近の分析プラットフォームでは、多くの場合、インタラクティブなビジュアライゼーションが可能になっています。ポインタを合わせると詳細が表示される、クリックしてドリルダウンできるノード、フィルターオプション、ズーム機能などの機能により、ユーザーは自分でデータを調べ、フォローアップの質問をして、理解を深めることができます。必要に応じて詳細情報を提供することで、最初の表示をわかりやすく保ち、詳細な分析が容易になります。
- 必要なコンテキストを提供する: ビジュアライゼーションが単独で効果を発揮することはほとんどありません。データが何を表しているかを明確にし、重要な発見を強調し、ニュアンスや制限を説明する説明テキストを添えるようにしましょう。
- 理解度を確認する: 可能な限り、ターゲットオーディエンスの代表者にビジュアライゼーションをテストし、情報が正しく解釈され、意図したメッセージが明確に伝わっていることを確認します。フィードバックをもとに繰り返し改善しましょう。
Customer Journey Analyticsによるユーザーフロー分析の実装
フロー分析は、特にデジタル環境における顧客の行動に適用される場合、単純な経路の追跡を超えた、現代のビジネスにとって戦略的に不可欠な要素となっています。この分析は、組織がユーザーのデジタル環境での行動を理解し、問題点やチャンスとなる重要なポイントを特定し、最終的には業務効率の向上、コンバージョン率の改善、顧客満足度とロイヤルティの向上といった主要なビジネス成果を促進するために、エクスペリエンスを最適化するための不可欠な視点を提供します。
Customer Journey Analyticsは、ユーザーフロー分析の可能性を最大限に引き出す上で重要な役割を果たします。インタラクティブな探索、ディメンション分析、堅牢なセグメンテーション、そして最も重要なクロスチャネルデータの統合など、ユーザーフローを詳しく、柔軟に、スケーラブルに調査するのに必要な、洗練されたツールを提供します。
フロー分析手法とそれをサポートするテクノロジーへの投資は、技術的なアップグレードであり、戦略的な取り組みでもあります。この分析から得られるインサイトは、デジタルカスタマーエクスペリエンスに直接影響を与え、業務を合理化し、最終的には収益にプラスの貢献をもたらします。フロー分析を習得するには、データを解釈するための鋭い分析力を持ち、Customer Journey Analyticsなどの強力なツールに熟達し、より広範なジャーニーのコンテキストの中で顧客を理解することに絶えず注力する必要があります。
Adobe Customer Journey Analyticsを利用すれば、カスタマージャーニーを構築するための重要なデータを収集し、webサイトやアプリのユーザーフロー図の作成に利用できます。
Adobe Customer Journey Analyticsなら、あらゆるチャネルから収集した数年分の顧客行動データをひとつインターフェイスにまとめ、堅牢なユーザーフローを構築することができます。その方法については、概要ビデオをご覧ください。