5 Whys根本原因分析とは:概要と活用方法を解説

あらゆる企業が何らかの問題を抱えています。その中には、解決に多大な時間と労力を必要とするものもあります。たとえば、ソフトウェアアップデートの通知が期限内に届かない、繁忙期に在庫が常に少なくなるといった問題は、容易に解決できない大きな問題の一例です。迅速に解決できる場合もありますが、たいていは根本的な解決には至らず、問題は再発します。

成功を収めている企業は、困難な問題の原因をすばやく特定し、再発を防止するための解決策を実行する方法を身に付けています。「5 Whys」手法は、ほとんどの問題の根本的な原因を見つけることができる、実績のある問題解決手法です。この手法は、どのような企業にも容易に適用でき、持続可能な解決策を講じるために活用することができます。

この記事では、次の項目について解説します。

5 Whys手法とは?

5 Whys手法は、豊田自動織機を創業した発明家兼実業家の豊田佐吉氏が開発した手法です。同氏は、問題を真に解決するためには、取締役会の枠を超え、問題の状況を直接把握している人々の知見により根本原因を見つける必要があると考えました。この5 Whys手法は非常に効果的であったため、トヨタ生産方式に組み込まれることになりました。

「トヨタの科学的アプローチの基本は、問題を見つけるたびに[なぜ=Why]と5回問うことです。なぜを繰り返すことで、問題点だけでなく、その解決策も明らかになります」
大野耐一氏(トヨタ生産方式の生みの親)

5 Whys手法は、企業におけるプロセスの成果を向上させるためのフレームワークである、シックスシグマのDMAIC(定義、測定、分析、改善、管理)手法の一部でもあります。

5 Whys手法では、問題に直接接しているメンバーからなるチームを集めた後、まず「なぜこの問題が発生するのか?」と問いかけます。その答えに対して繰り返し4回「Why」と問いかけることによって、最終的な答えを導き出すものです。質問を重ねるごとに、問題の根源、つまり根本原因に近づいていきます。

「Why」に対する答えが原因の特定に有効でなくなったら、質問を繰り返すのをやめて、解決策の策定に移行します。この手法は5 Whys手法と呼ばれていますが、「Why」と問いかける回数に決まりはありません。3回でも10回でも、答えが有効でなくなったら、質問を止めて構いません。

5 Whys手法を利用するタイミング

企業は、持続的成長や収益性に対する大きな障害となる恐れのある困難な状況に対処する際に、まとまりがつかなくなることがあります。

5 Whys手法の強みは、問題の状況と密接に関係している人々が、適切で事実にもとづいた答えを提供すれば、ほとんどの問題の解決に役に立つということです。特に、データ入力や個人的な判断(在庫や部品の再注文)を伴うような、人間的なやり取りの要素を伴う問題の解決には効果的です。

5 Whys根本原因分析の使用方法

5 Whys手法は、非常に建設的であると同時に、驚くほどシンプルです。最初に適切なチームを組織化することにさえ気をつければ、企業が直面するほとんどの問題や課題の真相を突き止めることができます。

従来、オフィス内のチームはホワイトボードや紙を使用して、各ステップを把握していましたが、リモートチームやハイブリッドチームはコラボレーションアプリを使ったバーチャルな手段に切り替えています。専用ソフトウェアでは、5 Whys分析をサポートすることができます。

1.チームの組織化

5 Whys分析を成功に導くための最初のステップは、情報に精通したチームを組織化することです。チームへの参加者は、問題や課題に接していて、プロセスや障害についての一次情報を有している必要があります。小規模で、部門横断的、学際的なチームが最も効果を発揮します。チームメンバーは別々の部門や異なる役職から集め、経験値もさまざまなレベルにわたっている必要があります。多様な背景と視点を持つチームは、問題の根本的な原因についてより優れた知見をもたらす可能性が高まります。
チームを編成したら、ファシリテーターを選びます。
ファシリテーターの役割は、「Why」の議論を促し、チームが問題の本質に迫ることに集中できるようにすることです。ファシリテーターは、各ステップのプロセスを導き、メンバーが自由に発言できるように信頼関係を築きます。

2.問題の定義

チームの最初の仕事は、問題を明確に定義することです(問題提起)。可能であれば、問題を実際に確認し、それを図示して議論します。問題提起は、現状とあるべき姿の違いを説明するものでなければなく、最終版の合意に至るまで、文書化と修正を続けます。

「一部の顧客が、請求書を期限内に支払わない」は、問題提起の一例です。これは明確で簡潔であり、物事のあるべき姿、つまり期限内に支払いを受けることと何が違うのかを説明しています。

3.最初の「Why」

なぜ問題が発生しているのかを見極めます。これは、5 Whysプロセスの中で最も広い範囲の質問です。たとえば、「なぜソフトウェアの更新通知が顧客に届くのが遅いのか」や、「なぜ繁忙期に常に在庫が少なくなるのか」などです。

そして、質問用の明確で簡潔なフレーズをチームで合意し、それを記録します。問題の真の原因を掘り下げるには、意見や憶測ではなく、事実にもとづいた答えであることが重要です。

4.繰り返し4回の「Why」

最初の「Why」の答えに、繰り返し質問します。この過程は、答えが問題の根本原因の洞察に有効でなくなるまで続けられます。最終的な答えは、根本原因としてチーム内で合意形成する必要があります。

より複雑な状況では、問題の原因が複数存在する可能性があり、「Why」の繰り返しにより、答えが複数に分かれて、いくつか可能性のある根本原因が導き出されることもあります。問題の種類や複雑さによっては、5回よりも少ない回数で終了することもありますが、通常は5回程度の質疑応答が必要です。

5.次のステップの特定

根本原因を特定できたら、その解決策をチームで議論し、問題解決のためのステップを特定する必要があります。5 Whys手法では、このステップを「対策」と呼んでいます。複数の根本原因が特定された場合は、ひとつずつ順番に解決していく必要があります。

そして、チームの適切なメンバーが、状況を解決するために必要な対策の実行に責任を負います。

6.解決までのプロセスのモニター

チームは定期的に会合を持ち、対策が成功したかどうかを監視する必要があります。問題が解決しない場合は、状況が好転し始めるまで、解決策を修正する必要があります。

問題が解決したら、そのプロセスを文書化し、結果と洞察を組織全体で共有する必要があります。このステップは、今後の問題予防のためのリスク管理計画の策定にとって特に重要です。

5 Whys手法の実例

ここで、5 Whys手法の効果を示す実例を挙げてみましょう。営業部門とマーケティング部門がページビューレポートを確認し、既存製品ページの閲覧数が最近減少していることに気付いたとします。この場合の5 Whysは次のようになります。

問題:webサイトの既存製品ページの閲覧数が減少している

根本原因:適切なスキルを持つマーケティング担当者の補充ができない

対策:マーケティング担当者の増員が可能になるまで、製品部門がwebサイト用の新しいコンテンツを制作する

この例では、部門横断的なチームが5 Whys手法を使って、既存の製品webサイトの閲覧数が減少している原因を分析し、問題解決のための次のステップを特定しました。根本的な原因は最初から明らかだったわけではなく、マーケティング担当者の採用が難しいことにあることが特定されました。その対策として、マーケティング部門でwebサイトの定期的な更新作業を再開するための補充要員を雇用できるまで、製品部門に協力を依頼し、webサイトの更新コンテンツの提供を求めました。

その後、定期的にミーティングを開き、解決策の進捗を確認することが重要です。このケースでは、製品部門が提供したコンテンツが技術的すぎて、webサイトにはふさわしくありませんでした。そこで5 Whysチームは、マーケティング部門がコンテンツを顧客のニーズに合わせて修正するように提案しました。製品部門とマーケティング部門が協力することで、人手不足の中、webサイトの既存のコンテンツを刷新し、新製品を発売することができました。

5 Whys手法を始める

5 Whys根本原因分析手法は、企業で発生するほとんどの問題の原因を突き止めることができる優れた手法です。効率的で費用対効果が高いだけでなく、従業員間のコミュニケーションが活発になり、部門を超えたコラボレーションが促進されます。また、問題を早期に発見し、迅速に解決するためのツールを従業員に提供することで、問題の予防にも役立ちます。

5 Whys手法を始める際には、適切なチーム作りが重要な第一歩であることを忘れないでください。問題と関係が深いさまざまなスキルレベルのメンバーを、さまざまな部門から集めましょう。

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