マーケティングアトリビューション:概要から最適なツールの選び方までを徹底解説
バイヤーズジャーニーは多様化しており、バイヤーが利用するチャネルやデバイスも増え続けています。マーケターは、そうした状況において競争力を維持するためには、優れたアトリビューションツールが不可欠であることを認識しています。しかし、膨大な選択肢の中から最適なツールを見つけ出すのは、容易なことではありません。
幸いなことに、多くのツールは特定のユースケースや業界向けに設計されており、長所と短所を明確に把握することができます。各ツールの主要な機能を比較することで、自社に適したツールを特定することができます。
本記事では、マーケティングアトリビューションの概要と、アトリビューションツールを選ぶ際にどのような点を重視すべきかについて、ベンダー10社を比較しながら解説します。
まず、次の基本事項について説明します。
続いて、ベンダー10社を比較し、最適なアトリビューションツールを選ぶための方法について解説します。
マーケティングアトリビューションとは?
マーケティングアトリビューションとは、マーケティング接点にコンバージョンや売上に対する貢献度を割り当てることで、ROI(投資利益率)が高いチャネルと施策を特定するための手法です。 マーケティング部門が成果を上げている施策を把握できるように、データをわかりやすく説明することを目的としています。
マーケティングアトリビューションは、次のようなさまざまな方法でビジネスをサポートします。
- オーディエンスの的確な把握: アトリビューションモデルを構築および導入することで、バイヤーズジャーニーを包括的に検討することができます。
- マーケティング施策の強化: オーディエンスにとって最も効果のある接点を把握することで、マーケティングリソースを戦略的に配分できます。
- マーケティングROIの最適化: コンバージョンへの貢献度が高い接点やチャネルに対して、予算を優先的に割り当てることで、投資の価値を最大化できます。
アトリビューションツールとは?
アトリビューションツールとは、アトリビューションプロセスにおけるあらゆるデータを一元管理する基盤です。 優れたアトリビューションツールは、各アトリビューションモデルを分析し、効果の高いチャネルにより多くのリソースを割り当てるのに役立ちます。
専用のツールがなくてもマーケティングアトリビューションを導入することはできますが、スプレッドシートを利用するなど、手作業が増えることになります。アトリビューションツールを利用すれば、手作業による膨大な時間と手間を節約し、マーケティング部門がより戦略的かつクリエイティブな施策に集中できるようになります。
また、ベンダーのサポートを受けることで、アトリビューションに関する課題を迅速に解決できます。実績のあるツールを導入すれば、アトリビューションの理論と実践のギャップを解消し、データを活用して施策を強化して、売上を伸ばすことができます。
モダンなアトリビューションモデル
一般的なアトリビューションモデルには、ファーストタッチとラストタッチがあります。ファーストタッチモデルでは、最初の顧客接点に対して、コンバージョンに関する最も多くの貢献度を割り当てます。一方、ラストタッチアトリビューションは、顧客が最後に接触したチャネルに対してコンバージョンの貢献度を割り当てます。購入に至るまでの接点が多様化している今日のバイヤーズジャーニーにとって、これらのモデルは単純すぎるかもしれません。
複雑なバイヤーズジャーニーを的確に把握するためには、マルチタッチアトリビューションやクロスチャネルアトリビューションを導入する必要があります。これらのモデルは、顧客接点の価値をより現実的な視点で分析することを目的としています。
マルチタッチアトリビューション
マルチタッチアトリビューションは、ファーストタッチモデルとラストタッチモデルの偏りを排除し、バイヤーズジャーニーの各接点に貢献度を割り当てることを目的としています。コンバージョンに至るまでの要素を一つひとつ検証することで、各チャネルがどのように影響し合っているのかを把握できます。
マルチタッチアトリビューションの種類は、ルールベースとアルゴリズムのふたつがあります。ルールベースの手法では、ジャーニーの各接点に貢献度をどのように割り当てるのかは、マーケターの判断に委ねられます。
ルールベースのマルチタッチアトリビューションには、次の5つのモデルがあります。
- 線形マルチタッチアトリビューション: 各接点に貢献度を公平に割り当てます。
- 時間減衰マルチタッチアトリビューション: バイヤーが購入段階に近づくほど、接触の貢献度が高まります。
- U型マルチタッチアトリビューション: ファーストタッチとラストタッチにより多くの貢献度を割り当てます。
- W型マルチタッチアトリビューション: ファーストタッチ、リードの獲得、ラストタッチに対して、より多くの貢献度を割り当てます。
- フルパスマルチタッチアトリビューション: ファーストタッチ、リードの獲得、機会の創出、ラストタッチを重視します。
ルールベースのマルチタッチアトリビューションモデルは、詳細にカスタマイズすることも可能です。
関連記事:『Multitouch attribution — what it is, and how to do it well(マルチタッチアトリビューションとは:その仕組みと実践する方法)』
アルゴリズム手法では、統計モデルとAI(人工知能)を利用して、ジャーニーの各段階に対して貢献度を割り当てます。アルゴリズムのモデルは、ルールベースのモデルよりも客観的な分析が可能ですが、その精度はアルゴリズムの性能に左右されます。
アルゴリズムのマルチタッチアトリビューションには、主要なモデルがふたつあります。
- フラクショナルアトリビューション: マシンラーニング(機械学習)を利用して、各接点に対して貢献度を細かく割り当てます。アルゴリズムは、どの接点により多くの貢献度を割り当てるべきかを詳細に分析し、その結果をもとに施策を調整できます。
- インクリメンタルアトリビューション: アルゴリズムを利用して、コンバージョンに影響を与えたマーケティング要素に対してのみ、一定の貢献度を割り当てます。インクリメンタルアトリビューションは実証的なプロセスであり、特定の接触がなければ発生しなかったマーケティング施策を、定量的に分析できます。
クロスチャネルアトリビューション
クロスチャネルアトリビューションでは、ラジオ、TV、電子メール、ソーシャルメディアなど、複数のチャネルで発生している接点に対して貢献度を割り当てます。基本的な要素はマルチタッチアトリビューションと同じですが、バイヤーズジャーニーで顧客と接触する可能性のあるあらゆるチャネルを考慮します。
チャネルがどのように影響し合っているのかを明らかにすることで、より多くのリソースを投入すべき要素を把握できます。
ここまでは、マーケティングアトリビューションの概要と、さまざまなモデルについて解説しました。続いて、主要なアトリビューションツールを紹介します。
1.Adobe Marketo Measure
Adobe Marketo Measureは、接点の追跡、アトリビューションモデル、分析、レポートなど、包括的な機能を提供し、多くのB2B企業が抱えているアトリビューションの課題を解決します。マルチタッチアトリビューションとクロスチャネルアトリビューションを組み合わせた「EverytouchⓇアトリビューション」により、プロセス全体を自動化できます。
主な機能:
- バイヤーズジャーニーの各段階でデータを収集
- 使いやすいダッシュボード
- 制限のないCRMレポート
- 包括的なスケーラビリティ
- データセットや任意のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールとの容易な統合
Adobe Marketo Measureは、B2Bマーケティング向けに設計されており、B2Cに比べて複雑化しやすいバイヤーズジャーニーを分析できます。膨大なデータの処理など、高度な自動化を必要とする大規模企業のニーズにもしっかりと対応します。
2.Appsflyer
Appsflyerは、モバイルアプリのデータを利用したマーケティングアトリビューションに焦点を当てています。特に、インストールデータとアンインストールデータの流入経路を詳細に分析できます。ユーザーフレンドリーな設計で、容易にインストールできます。設定をすばやく調整し、Facebook、Opera、Adroll、Matomy、Mobvista、GameAnalytics、Kiipなど、さまざまなアプリケーションと連携できます。
主な機能:
- 業界標準のプライバシーとセキュリティにより、顧客データを保護
- 正確かつ実践的なインサイト
- 柔軟性に優れたプラットフォームで、あらゆるビジネスニーズに対応
ただし、レポートをダウンロードできない、アプリケーションを終了して再度開くたびにログインし直す必要があるなど、いくつかの欠点があります。
3.Hubspot
Hubspotは、CRMとマーケティングデータを連携させて、バイヤーズジャーニーの各接点に貢献度を割り当てることができます。顧客とのあらゆる接触を追跡することで、売上につながった接触を、その顧客のデータと紐づけることができます。また、レポート機能を使用して、各チャネルがどの程度の成果を上げているのかを把握できます。
主な機能:
- コンタクトアトリビューションレポート
- 売上アトリビューションレポート
- カスタムオブジェクトによってビジネスに適したデータを提供
- 行動イベントの追跡
Hubspotの他のツールを既に利用している場合は、同社のアトリビューションツールを採用することで、使い慣れたインターフェイスを利用できることや、統合が容易といった利点があります。しかし、同社のツールのみを使用することで、収集できるデータが制限される可能性があります。そのため、より正確なインサイトを獲得するには、サードパーティの情報源と統合する必要があります。
4.Ruler Analytics
Ruler Analyticsは、クロスチャネルアトリビューションツールであり、単一基盤からあらゆるデータにアクセスできます。施策、チャネル、キーワードを追跡し、コンバージョンに関する詳細なインサイトを提供して、マーケティング施策を売上に直接つなげることを目的としています。
マーケターは、さまざまなルールベースのモデルを比較し、ブランド認知を向上させているチャネルを追跡して、顧客が購買に至った接点やその他の要因を特定できます。
Ruler Analyticsは、Google AdsやGoogle Analyticsなどのさまざまなツールと連携できるため、Ruler Analytics上で、任意のレポートツールを利用してマーケティング施策を計測できます。
主な機能:
- バイヤーズジャーニーの追跡
- 機会アトリビューション
- オフラインコンバージョンの追跡
- ライブチャットの追跡
Ruler Analyticsは特に、電話による接触の追跡とアトリビューションデータの保持に役立ちます。他のチャネルを通じたマーケティング施策を主軸としている場合は、そのニーズに適した別のツールを探す必要があるかもしれません。
Ruler Analyticsの欠点は、ターンキー方式ではないことです。つまり、webサイトにJavaScriptコードを配置する必要があります。また、WordPressプラグインがない場合は、footer.phpファイルに手動で追加するか、phpファイルに追加するために別のプラグインをインストールする必要があります。
5.Dreamdata
Dreamdataは、B2B向けのアトリビューションツールです。既存のテクノロジースタックと統合して、売上関連のあらゆるデータを一元管理し、信頼できる唯一の情報源を構築できます。カスタマイズ可能なマルチタッチアトリビューションモデルにより、バイヤーズジャーニーの各接点を検証し、売上の予測、施策の拡大、ROIの追跡、ビジネス成長のベンチマーク分析を推進できます。
主な機能:
- カスタマイズ可能なマルチタッチアトリビューションモデル
- 既存のテクノロジースタックとの統合
- 統合されたデータ基盤
- ビジネスニーズに対応する柔軟なスケーラビリティ
Dreamdataは、初心者には敷居が高いかもしれません。多くの利用者は、インターフェイスを使いこなし、あらゆる設定を適切におこなうまでに時間がかかります。同社はオンボーディングサポートやトレーニングを提供していますが、マーケティングオートメーションをすばやく強化できる、使いやすいツールを求めている場合は、習得に時間がかかりすぎる可能性があります。
6.Google Attribution
Google Attributionは、マルチタッチアとクロスチャネルの両方に対応するアトリビューションツールであり、Google Analyticsの一部として提供されています。利用者は、線形、接点ベース、時間減衰の3種類から、自社のマーケティング目標に適したモデルを選択できます。データドリブンアトリビューションと呼ばれるマシンラーニングアルゴリズムを利用して、複数のチャネルにわたって、各接点がどのようにコンバージョンに影響しているのかを把握できます。
Google Attributionは、基本的な機能のみを利用できる無料版と、月額コストをカスタマイズして、より高度な機能とサービスを利用できる有料版があります。同社のあらゆる製品と同様に、同社の他のアプリケーションやプログラムと連携できるため、同社のツールを既に導入している場合は大きな利点となります。
主な機能:
- 複数のアトリビューションモデルの比較
- Googleのデータへのアクセス
- あらゆるデジタルパフォーマンスを包括的に把握
- アシストコンバージョンの追跡
欠点として、サードパーティとの連携が制限され、ダッシュボードのカスタマイズオプションが少ないことが挙げられます。
7.Neustar
Neustarは、オンラインとオフラインの施策を追跡できる、豊富な機能を備えたツールです。マーケティング部門は、オムニチャネル施策において、コンバージョンに影響を与えているバイヤーズジャーニーの要素を把握できます。Neustarが提供するデータを利用すれば、施策をリアルタイムで最適化し、マーケティングリソースを最大限に活用できます。
主な機能:
- サードパーティ連携
- モバイルに対応するメディア追跡
- オンラインとオフラインの追跡
- 事前に統合されたアプリによるデータの収集
主な欠点として、Neustarの価値を最大化させるには、多くの手作業が必要となることが挙げられます。
8.Singular
Singularは、データを一元管理し、支出を成果と紐づけることができるアトリビューションツールです。マルチタッチとクロスタッチのアトリビューションモデルを利用して、複数のチャネルにわたって、コンバージョンに至るまでの経路を追跡および計測できます。
主な機能:
- 2,000以上の統合オプション
- どこからでもマーケティングデータにアクセス可能
- 信頼できる唯一の情報源を構築し、マーケティング施策を強化
- コストの集計
- 不正の防止
Singularは、5つ以上のチャネルでマーケティング施策を展開している、小規模および中規模の企業に適しています。また、ゲーム、小売、旅行、音楽、金融など、モバイルアプリが重要な要素となっている業界向けに設計されています。
ただし、データの読み込みに時間がかかるため、膨大かつ多様なデータセットを扱う場合、レポートの生成に遅れが生じる可能性があります。
9.Nielsen Attribution
Nielsen Attributionは、マーケティング施策のパフォーマンスを詳細に計測できます。オーディエンス測定、メディアプランニング、マーケティング最適化の3つの機能を利用できます。
オーディエンス測定では、クロスチャネルデータを利用して、オーディエンスの全体像を把握できます。ターゲットオーディエンスにいつ、どこで、どのようにリーチすれば良いのかを特定することで、メディアプランニングを活用し、投資すべきチャネルを判断できるようになります。さらに、マーケティング最適化機能を利用すれば、バイヤーズジャーニーにおいて、施策が顧客にどのような影響を与えているのかを把握し、ROIを最大化できます。
主な機能:
- Facebookとのネイティブ連携
- オフライントラッキングの統合
- Nielsenが提供するインサイトへのアクセス
一方、利用者は、Nielsen Attributionのインストールと統合に課題があることを報告しています。一部のデータは手作業で更新する必要があるため、ターンキーツールのように、導入してすぐに使用できるわけではありません。インストールが完了すれば、使いこなすのはそれほど難しくはありません。
10.Branch
Branchは、クロスチャネルアトリビューションとモバイルの連携に焦点を当てており、あらゆるマーケティング施策の進捗状況を把握できます。特に、複数のチャネルにわたって、接点とコンバージョンの結びつきに注目します。
分析ダッシュボードで成果を測定し、データを任意のセグメント数に分割できます。また、利用者数に制限はありません。
主な機能:
- 匿名データの予測モデル
- ダッシュボード上でデータのセグメンテーションが可能
- 不正の防止
主な欠点は、他のツールと統合できないことです。マーケティングプロセスの一部として、分析ソースを既に導入している場合は、それらのデータを利用するためにツールを乗り換えるか、追加の措置を講じる必要があるでしょう。
マーケティングオートメーションを活用しましょう
バイヤーズジャーニーは、複雑化し続けています。堅牢なアトリビューションツールを利用すれば、どの要素がコンバージョンに貢献しているのかを、より的確に把握できます。
ツールを選定する際は、まず、自社にとって優先度の高いチャネルとアトリビューションモデルを特定する必要があります。優れたアトリビューションツールは、シングルタッチアトリビューションだけに限らず、さまざまな機能を備えています。接点を特定し、それらがチャネルとどのように結びついているのかを把握すれば、クロスチャネルとマルチタッチのどちらをより重視すべきかを判断できるようになります。
Adobe Marketo Measureなら、チャネル全体におけるエンゲージメントを測定し、あらゆる接点の影響を把握することができます。マーケティング部門が、そうした影響を実証し、売上を向上させるために必要なツールが揃っています。Adobe Marketo Measureが、自社のビジネスにどのように役立つのか、動画をご覧いただくか、アドビの担当者までお気軽にお問い合わせください。