ファネル指標:セールス施策とマーケティング施策を最適化する方法

カスタマージャーニーは、かつてないほど複雑化しています。これは、企業と顧客のやり取りによって構築されますが、必ずしも連続したプロセスではありません。マーケティング施策では、見込み客を惹きつけ、セールスフローを誘導し、最終的に購入へと導くことが求められます。

カスタマージャーニーの各段階では、通常、さまざまな感情、見識、選択が伴います。これらは主観的で計測が難しいため、マーケティング部門と営業部門は、データ収集とカスタマージャーニー管理において、「ファネル」という概念を使用します。ファネル指標は、データを計測および活用し、施策の成果と改善点を特定するのに役立ちます。

ファネル指標を適切に導入し、定期的に調整することで、カスタマージャーニーにおける成果を定量化、追跡、向上し、マーケティング部門と営業部門の連携を強化できます。本記事では、ファネル指標の概要、利点、主要な指標について解説します。

  1. コンバージョン率
  2. 売上
  3. リード
  4. コスト
  5. エントランス
  6. ブランド認知度
  7. ブランド検討度
  8. ブランドロイヤルティ

ファネル指標とは?

マーケティングファネルとセールスファネルでは、見込み客がコンバージョンに至るまでの経路を追跡します。適切なファネル指標を策定することで、カスタマージャーニーのあらゆる段階における戦略を改善し、マーケティング部門と営業部門の連携を強化できます。

ファネル指標とは、顧客の数、ベロシティ、コンバージョン率を追跡および測定する一連のKPIであり、マーケティング施策とセールス施策の有効性を明らかにするのに役立ちます。 これらの指標は、バイヤーズジャーニーの各段階に焦点を当て、各施策のパフォーマンスを定量化します。

ファネル指標が重要である理由

ファネル指標を策定することは、セールス施策とマーケティング施策に関するインサイトを獲得するための、重要な出発点となります。しかし、多くの企業は、これらの指標にもとづいて、施策のパフォーマンスと影響を正確に測定できていません。

ファネル指標を利用すれば、リスクと機会をリアルタイムで把握できます。企業は、ファネルのパフォーマンスデータを収集して分析することで、さまざまなメリットを得ることができます。

根本的な課題や重点分野の特定

カスタマージャーニーの各段階で施策を強化できなければ、ファネル全体のパフォーマンスが低下し、あらゆる段階で見込み客を失いかねません。ファネル指標を利用すれば、パフォーマンスの低い施策をすばやく特定して対応するのに役立つ、一連のパラメーターを策定できます。

予測精度と戦略の改善

正確な売上予測により、サプライチェーン、在庫、マーケティングおよびセールスの費用を管理できます。ファネル指標を適切に組み合わせることで、今後の収益源についてより詳細なインサイトを獲得し、的確な判断を下すことができます。

部門間の協働の支援

パフォーマンスを最大化するには、マーケティング部門と営業部門の協働が不可欠です。ファネル指標を利用して、成果に対する各部門の貢献度を計測することで、ビジョンの共有、共通の目標設定、より緊密な連携を促進できます。

8つの主要なファネル指標

マーケティングは、セールスプロセスの出発点であり、見込み客をセールスファネルへ導くことを目的としています。見込み客がジャーニーを進み、購入に近づくほど、ファネルは狭くなります。

1.コンバージョン率

コンバージョン率は、自社がどの程度見込み客を顧客に転換できたのかを表す指標です。コンバージョン率を追跡することで、エンゲージメントが最も高いチャネル、オーディエンス、施策を特定できます。

また、営業部門の成果を把握し、より注意が必要なチャネルや施策を明らかにすることができます。例えば、アプリの利用者やwebサイトの訪問者がショッピングカートを放棄した場合、注文プロセスを簡素化したり、即時割引を提供したりするなど、新たな取り組みの機会として活かすことができます。

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2.売上

総売上にもとづいたパフォーマンスの測定は、全体像を把握することは難しいものの、有効な手段となります。この指標を使用してカスタマージャーニーを分析すれば、売上増加に貢献している要因を把握できます。

企業は、商談件数や、現在の売上と売上予測の比較など、関連する指標を追跡する必要があります。また、見込み客がファネルのある段階から次の段階へ移動するまでの所要時間も計測できます。これらのインサイトは、成約率の低いリード、コスト、ブランド認知度などの課題を把握し、それらを改善する機会を特定するのに役立ちます。

3.リード

リードの特定、追跡、管理は、マーケティングおよびセールスの取り組みにとって不可欠な要素であり、最終的には売上につながります。リードのフォローを怠ると、機会の損失や無駄な投資につながる可能性があります。

リードを測定する最善の方法のひとつは、リードスコアリングです。リードスコアリングとは、ファネルにおける各リードの行動をもとにスコアを割り当てる、セールスおよびマーケティングの取り組みを指します。例えば、リードは、ニュースレターに登録すると10点、ソーシャルメディアでフォローすると5点、ウェビナーに参加すると20点というように、行動にもとづきスコアを付加します。見込み客のエンゲージメントが高いほど、リードスコアは高くなります。

営業部門とマーケティング部門は、リードスコアを使用して、マーケティング部門から営業担当者にリードを引き渡すタイミングを判断できます。また、マーケティング施策の包括的な評価にも役立ちます。例えば、特定のマーケティング施策のリードスコアが低い場合、その施策が適切なオーディエンスにリーチできなかった理由を検証する必要があります。

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4.コスト

コストに焦点を当てたファネル指標は、他の指標と組み合わせることで、投資が売上にどのように影響しているのかを把握するのに役立ちます。

マーケティング部門と営業部門のデータを利用して、チャネル、商品、サービスごとにCPL(リード単価)またはCAC(顧客獲得コスト)を算出し、特定分野への投資が効果的かどうかを判定できます。例えば、サービスを階層化するためにリソースをより有効に活用し、より価値の高い見込み客に特別なオファーを提供する一方で、成約率の低い見込み客を低コストのチャネルへ誘導できます。

5.エントランス

ファネルのエントランスに関する指標は、企業がセールスファネルに入るリードの数を把握し、そうしたリードがどこから来たのか、そしてその理由を特定するのに役立ちます。エントランスとしてカウントされるものは、企業によって異なります。例えば、小売企業はポイントカードの登録件数を、B2B企業はレポートのダウンロード件数をエントランスとして追跡できます。

エントランスを追跡することは、マーケティングリソースをどこに投資するのかを決定するのに役立ちます。例えば、エントランスのリードの数が少ない場合は、マーケティング予算を増やすか、電子メール施策を強化すべき時期に来ているかもしれません。多くのリードをセールスファネルへ誘導できているにもかかわらず、売上が横ばいまたは減少している場合は、リード数やコンバージョン率などの指標を検証しましょう。

6.ブランド認知度

ブランド認知度は、カスタマージャーニーの初期段階において重要な役割を果たします。ブランド認知度が低い場合、綿密に計画されたセールス戦略やマーケティング戦略が失敗する可能性があります。

ブランド認知度を計測するための指標はいくつかありますが、最も基本的なものは、トラフィックとブランド言及数です。

ブランド認知度を追跡することにより、企業は広告およびマーケティング施策の効果を包括的に把握できます。有料広告、広報施策、パフォーマンスマーケティングなどのチャネルを通じて、ブランド認知度を向上させましょう。

7.ブランド検討度

見込み客が企業を認知するようになると、企業とそのサービスに関する情報を収集し始めます。これには、webサイトやショールームでの接触、商品やサービスの購入などが含まれます。

ブランド検討度 は、ブランド認知度と似ていますが、より具体的な指標となります。商品やサービスの品質にもとづいて購買する人もいれば、機能、カスタマイズ、価格帯を重視する人もいます。その一方で、ますます多くのバイヤーが、企業の使命や循環型経済への取り組みなどに注目するようになっています。

つまり、ブランド検討度 は、顧客体験を測定するための指標になります。業種や商品に応じて、カスタマーサービスの問い合わせ状況やレポートの検証、webサイトやアプリのユーザーテスト、見込み客や既存顧客に対する簡単なアンケートなどを実施しましょう。

これらのインサイトは、ダイレクトマーケティング施策の展開やトークスクリプトの作成に役立ちます。例えば、ラグジュアリー商品を提供している場合は、その価値を強調しましょう。環境への影響が顧客にとって重要な懸念事項である場合は、サプライチェーンのグリーン化や持続可能な生産および包装プロセスを訴求しましょう。

8.ブランドロイヤルティ

多くのマーケティングファネル指標は、リードを営業部門に渡す前のカスタマージャーニーに関するインサイトを提供します。しかし、営業部門に引き継いだ後のプロセスに関する情報も収集することが重要です。マーケターがブランドロイヤルティを計測するための指標は、いくつかあります。

ブランドロイヤルティが低い場合、顧客がファネルに戻る可能性は低いため、ファネルの上部に影響を与えます。通常、新規顧客を獲得してコンバージョンに導くよりも、既存顧客に販売する方が効率的であるため、常に顧客が離れないように対処する必要があります。ブランドロイヤルティが低い場合は、その理由を突き止め、改善するための計画を立てましょう。

ファネル指標の統合

ファネル指標は、カスタマージャーニーの各段階を包括的に改善するのに役立ちます。それらを効果的に分析することで、どの戦略が成果を上げているのか、またどこでビジネス機会を失っているのかを把握できます。セールスファネルとマーケティングファネルを把握するのに必要なさまざまな指標を活用するには、膨大なデータを管理しなければなりません。

Adobe Customer Journey Analyticsなら、マーケティングファネルとセールスファネルの指標を単一基盤から測定できます。チャネル全体におけるカスタマージャーニーの状況をリアルタイムで把握し、市場の動向、戦略の改善点、ビジネス機会を特定して、マーケティング施策とセールス施策を調整できます。

Adobe Customer Journey Analyticsは、Adobe Experience Cloudの一部です。Adobe Customer Journey Analyticsがファネル指標の最適化にどのように役立つのか、動画概要ページをご覧ください。