組織でカンバンボードの利用を最大化する方法
カンバンボードはシンプルですが、チームリーダーがより多くを実現するのに役立つ、非常に強力なプロジェクト管理ツールです。カンバンボードの使用方法を学んだら、それらを整理してあらゆる作業プロセスやプロジェクトに活用できます。
このガイドの内容:
- カンバンボードとは?
- カンバンボードのタイプ
- カンバンボードの有効性
- カンバンボードを使用する理由
- カンバンボードの使用方法
- カンバンボードの歴史
- カンバンボードとスクラムボード
- Adobe Workfrontでカンバンボードを使い始める
カンバンボードとは?
カンバンボードは、プロジェクトマネージャーがワークフロー効率の最大化、進行中の作業量の制限、個別タスクの可視化を行うことができるアジャイルプロジェクト管理ツールです。カンバンボードは列で分割されており、各列はワークフローの段階を表しています。これらの列の中には、個別のタスクを表すカードがあります。タスクが完了するとこれらのカードを次の列へ動かし、プロジェクトの開発プロセスを通じた進捗を自然に表すことができます。カンバンボードには物理的なものとデジタルなものがあります。
カンバンボードは、繰り返し可能なプロセスを個別の段階やステップに分割するプロジェクト管理フレームワークであるカンバン手法の基礎です。プロジェクトマネージャーやチームメンバーは、カンバンボードを確認することで、ワークフロー内の各タスクや割り当てのステータスを把握できます。
カンバンボードの要素
カンバンボードは、チームやプロジェクトの固有のニーズに合わせて変えることができます。ただし、すべてのカンバンボードには、基本となるコンポーネントがいくつか含まれます。
- カード: 各カンバンカードは、完了する必要がある、具体的な作業項目やタスクを表しています。
- 列: ほとんどのカンバンには、未着手、実行中、および 完了 の3つの列があります。
- 進行中の作業(WIP)制限: 進行中の作業では、現在チームがアクティブに取り組んでいる作業の数がわかります。WIP制限は、指定された期間に進行中にできるタスクの最大数です。
- コミットメントポイント: コミットメントポイントは、チームがプロジェクトに取り組み始める時点です。
- デリバリーポイント: デリバリーポイントはワークフローの終わりを表します。一般的に、製品またはサービスが顧客に提供された時点で、チームはこのポイントに到達します。
- スイムレーン: スイムレーンは、カンバンボード上の水平の線です。この線は、販売やマーケティングなど、異なる作業カテゴリを区別します。
これらの要素をカンバンボードに組み込んだら、プロジェクトの必要性に基づいてカスタマイズを開始できます。例えば、チームの規模や利用可能なリソースの数に基づいてWIP制限を設定できます。
カンバンボードのタイプ
1.物理的なカンバンボード
物理的なカンバンボードには、ホワイトボード、黒板、掲示板、チームメンバーが操作できる何か大きな表面などを使用できます。「カード」にはカード状のメモや付箋などを使用できます。列やスイムレーンは通常、ボード本体にテープを貼るか、線を描画してして定義します。
多くのチームはインタラクティブで没入感のある物理的なカンバンボードを好みます。実体のある大きなボードを掲示すると、スマートフォンやコンピューターでデジタル版を閲覧する際には得られない強いインパクトがあります。
2.デジタルカンバンボード
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他の多くのビジネスツールやプロセスと同様、カンバンボードもデジタル化されています。デジタルカンバンボードは作業管理プラットフォームやツールで作成および管理されます。権限を持つユーザーは、このインターフェイスでカードを作成したり、タスクを移動したりできます。
デジタルカンバンボードの最大のメリットは、リモートチームやハイブリッドチームのニーズに対応できるという点です。また、デジタルボードは散らかることもありません。新しいボードを設定する準備が整うと、プロジェクトマネージャーは現在のボードをアーカイブに移して別のボードを構築するだけで済みます。
カンバンボードの例
ソフトウェアカンバンボード
多くのソフトウェア開発チームは、カンバンボードを愛用しています。モバイルアプリソフトウェア開発チームのカンバンボードには、次のような列が含まれます。
- 開発する機能
- ビルド準備完了
- テスト準備完了
- 完了
このボードのカードの一例として、メインメニューのコードの記述、iOS版の最新機能のテスト、アプリAndroidデバイスのバッテリー性能に与える影響の評価などが考えられます。また、チームはスイムレーンを追加して、テストやコーディング、マーケティング関連のタスクを分離することもできます。
カンバンボードでは、どの作業が進行中かを正確に可視化し、開発プロセス全体を通じて各作業項目を慎重に追跡できるため、開発チームが俊敏性を維持するのに役立ちます。また、カンバンボードは、作業の継続的デリバリーをサポートし、製品の品質や開発効率を向上するため、開発チームにも便利です。
製品の研究開発カンバンボード
製品の研究開発(R&D)チームも、カンバンボードを活用することでメリットが得られます。このようなチームはおそらく、カンバンボードの標準的な3つの列(未着手、実行中、完了)を使用します。自分たちのプロジェクトに合わせてより具体的に列をカスタマイズすることもきます。例えば、次のような列を使用できます。
- 設計
- マーケティング
- プロトタイプエンジニアリング
- テスト
- 完了
R&Dチームのデリバリーポイントは、製品の市場投入です。これを達成したら、次のプロジェクトに切り替えることができます。
製品の研究開発業務にカンバンボードを組み込むと、リソースを過度に分散させることがなくなり、複数のプロジェクトを同時に管理できるようになります。カンバンボードにより、プロジェクト管理を効果的に推進し、開発期間を短縮し、全体的により優れた製品を生み出すことができます。
カンバンボードの有効性
ワークフローの計画
カンバンボードを適切に管理することで、プロジェクトマネージャーは、チームの進捗状況を把握し、より包括的に管理できるようになります。誰もがあらゆるタスクを一元的に確認し、プロセスを効率よく進めることができます。カンバン手法をサポートするツールを導入すれば、容易に作業リクエストの優先順位を決定し、作業負荷のバランスを取り、それぞれの作業に適切な担当者を割り当てることができます。
進捗状況の追跡
プロジェクト、目標、チームの処理能力を一元的に把握できるため、チームは最も重要な作業に優先的に対応できます。Adobe Workfront作業管理アプリケーションでは、個々の投稿者は自身の期限と成果物を明確に定義することができます。
課題の特定
カンバンボードを使用すれば、プロジェクトマネージャーは、課題に対処できるチームメンバーを容易に把握できます。誰がどのタスクを担当しているのかひと目で把握できるので、必要なスキルを有した従業員を素早く特定して、遅れが生じているタスクを割り当てることができます。
カンバンボードを使用する理由
あらゆるチームは、カンバンボードを使用することでぞれぞれ独自のメリットを発見できます。ただし、カンバンボードを使い始めると、すべてのチームが経験する全体的なメリットもあります。
- チームエンゲージメントの向上: チームメンバーは、カンバンボードを使用して、完了したタスクをToDoリストから動かすことで、全体的なエンゲージメントを高めることができます。
- プロジェクトの視認性の向上: カンバンボードを使用すると、プロジェクトマネージャーやチームメンバーはどのタスクが完了し、どのタスクが進行中で、デリバリーポイントに到達するために完了する必要があるタスクはどれかを、リアルタイムで視覚的に管理できます。
- 見落としのリスクの低減: 全員が各自の担当業務にバラバラに取り組むと、重要なタスクを見落としやすくなります。カンバンボードは視覚的なToDoリストを提供するため、プロジェクトマネージャーはカンバンボードを見るだけで、すべての重要なタスクが完了したことを確認できます。
- 重複の削減: なかには、特定の作業カテゴリに当てはまらないタスクもあります。その際は、スイムレーンを使用することでチームがそのタスクに注意を払い、タスクを適切なメンバーに割り当てることができます。
- コラボレーションの強化: カンバンボード、特にWIP制限は、チームメンバーが一度に取り組む作業が多くなりすぎるのを防ぎます。これによりコラボレーションが促進され、重要な作業を効率的に完了できる適切なリソースをチームで確保できます。
これらは、カンバンボードの使用に関連する多くのメリットの一部に過ぎません。このシンプルかつ効果的なプロジェクト管理ツールを使い始めると、他にも多くのメリットを実感できることでしょう。
カンバンボードの使用方法
1.ワークフローを可視化する
この立ち上げ段階の間に、カンバンボードの基礎を築きます。物理的なボードを使用する場合は、必要な列の数とレーンの数を決定します。デジタルボードを作成する場合は、WIP制限を設定し、作業カテゴリを定義します。残りはソフトウェアが実行します。
2.作業単位ごとにカードを作成する
次に、プロジェクトを完了するために必要な作業またはタスクの単位ごとにカードを作成します。これらのカードの目標は、大きなタスクを、シンプルで完了しやすい単位に分解することです。
作成するカンバンボードが物理的なものであってもデジタルカンバンボードであっても、カードの作成プロセスは似ています。重要なのは各カードの作業スコープを絞り込み、具体的にすることです。例えば、ソフトウェア開発チーム用のカードを作成する際には、カードに「顧客新規登録ポータルの作成」、「月間サブスクリプションの構築」といったタスクを含めることができます。これらのカードを見れば、タスクの内容や、どのタスクのスコープに制限があり、プロジェクトに関連しているかが明確にわかります。
3.ブロッカーを特定する
ブロッカーは、チームがタスクカードの作業または完了するのを妨げとなる問題です。物理的なボードを使用する際は、これらは一般的に、赤いマグネットや押しピンで示されます。デジタルボードではブロッカーは、カード周囲の赤い枠線、停止信号のアイコンなどで区別できます。チームがブロッカーに遭遇した場合は、WIP制限の範囲内であれば、次のタスクに焦点を移すべきです。
4.指標を追跡する
デジタルカンバンボードは、リードやタスクのサイクルタイムなどの指標を自動的に収集して追跡します。タスクのサイクルタイムは、あるタスクから別のタスクへ進むのにかかる時間を明らかにするので、チームの効率性を図る上で重要な指標です。物理的なボードを使用している場合は、カードが移動した日付を書き留めます。この情報を使用することで、各列に存続している期間を追跡することができます。
カンバンボードの歴史
カンバンボードは長年ソフトウェアチームに活用されてきましたが、この強力なツールとその基礎となるプロジェクト管理手法が最初に構想されたのは1940年代でした。
当時、トヨタのエンジニアであった大野氏は、会社の在庫の管理プロセスを最適化しようと苦慮していました。在庫とサプライチェーンの管理業務に対処するため、大野氏は「カンバン」方式を生み出しました。
当初のカンバンボードは、上記の3つの列で構成されていました。大野氏のフレームワークには、タスクカードと、カードを次の列に移動できない場合の基本ルールがありました。
当時は大野氏自身も気付いていませんでしたが、彼の功績は、ジャストインタイム製造原則の確立に向けた基礎を固めたことにあります。このような概念は、メーカーがムダを減らして生産性を向上し、売上をかつてないほど高めるのに役立ちました。
カンバンボードとスクラムボード
スクラムとカンバンは両方とも、俊敏性を推奨し、チームのエンゲージメントを向上するプロジェクト管理手法です。それぞれのアプローチはカンバンボードを使用してワークフローを可視化し、透明性を推進します。ただし、フレームワークはいくつかの点で異なります。
- スクラムスプリントではボードに確定的な開始日と終了日が記載されますが、カンバンワークフローには絶対的な日付はありません。
- カンバンボードはプロジェクト全体を管理するのに使用されますが、スクラムボードは各スプリントごとに新しく作成されます。
- スクラムボードには、一定数のタスクと各作業の締め切りが記載されています。カンバンボードには決まったタスク数もなく、作業の各部分に厳密な期日が設定されるわけでもないので、よりオープンかつ柔軟性のある方式です。
こうした違いはあるものの、いずれのボードとその関連手法も、コラボレーションを促進し、シームレスなプロジェクト管理を推進するのに役に立ちます。
Adobe Workfrontでカンバンボードを使い始める
Adobe Workfrontでは、かつてないほど簡単にカンバンボードをワークフローに組み込むことができます。
リアルタイムのレポート
カンバンボードは、チームのコミュニケーションを一元管理し、全員の足並みを揃えるのに役立ちます。Adobe Workfrontのカンバンには、タスクの完了率が示され、「更新」タブで最新の進捗状況を共有できます。また、タスクの関係者にタグを付けたり、関連するDropboxフォルダにリンクしたりできます。
目標の調整
経営陣は、ビジョンを明確に伝えることで、主軸となる戦略に基づいて、適切なカンバンカードのみがバックログに追加されるように周知できます。さらに、プロジェクトマネージャーは、カンバンカードの重要度に応じて優先順位を付け、ボード上で重要度の高いカードが優先的に渡されるようにすることで、チームが重要なタスクに専念できるようになります。
作業の自動化
Adobe Workfrontのカンバンボードは、ワークフローを自動化することで、プロジェクトの受注プロセスを合理化します。列内でカードを作成したときや別の列に移動したとき、または一定期間列内に留まったりしたときに、自動的にアクションをトリガーできます。
シナリオプランニング
シナリオプランニングは、経営陣の賛同を得るのに役立ちます。例えば、マーケターは、複数の施策について、予測される成果や必要なリソースを比較検討できます。